以下、当然、ネタバレしてます。

決勝は藤井聡太竜王vs佐々木勇気八段。
先手が勇気で、相掛かり。
序盤、角交換から、先手が▲7七金型、後手も追従して△3三金型という、見たことのない形になった。
これには解説の木村も、「弱い人どうしみたい」と発言し、面白かった。

評価値が表示されているが、全く五分五分のまま、こう着状態に。どうやって戦いが起こるかわからない。
駒組みが飽和になっていたとき、番組開始から30分ほどが経過していた。

これを打開したのは後手の聡太。先に一歩損するから、果敢な積極策だった。形勢は互角のまま、戦いになった。
ここはやはり本局のキーポイントだったと思う。打開した結果が互角なら、打開した側がペースを握りやすい。
人どうしの戦いは、そういう面がある。

聡太の厳しい攻めが始まった。手持ちの角を△9三角と据えて、これが強烈なニラミだった。
結局、勇気は攻めを受けきれず、2枚替えになってしまった。聡太が角銀を取り、勇気が飛車を取った。
評価値は▲30対△70ぐらいで聡太が押している時間が続く。

勇気がなんとかしようと、がんばっているのは分かるのだが、聡太の手がまったく緩まない。
聡太は候補手の一番手の手をバンバン指していく。
と金を王手で活用する△7七と、の妙手も出た。差が開く一方なのが、伝わってくる。

勇気が、最後のお願いと、詰めろ逃れの詰めろの角打ちを放ったが、聡太は動じなかった。
最後は軽々と即詰みを決め、聡太の完勝となった。116手で聡太の勝ち。つ、強い・・・。
木村「聡太の会心譜」 
聡太が大きなミスが一手もない、「藤井曲線」を描いた一局だった。

聡太は3回、考慮時間を余しての勝ち。
たしかに勇気もがんばっていたのだが、本局は相当、両者の間に力の差があった内容だったと私は感じた。
聡太の早い読みと正確な大局観、そして優れた構想力が存分に発揮されていた。
正直、聡太と他の棋士では、角一枚ぐらい、棋力が違うのではないだろうか。

カネの取れる将棋。それが聡太の力。NHK杯の優勝も、納得だ。
これで聡太は今年度、一般棋戦と呼ばれる、銀河戦、日本シリーズ、朝日オープン、そしてNHK杯と、4つ優勝というグランドスラムを成し遂げた。ついでに、新銀河戦(非公式)も優勝している。

私もついつい本局は聡太を応援して観てた(^^; 私もミーハーファンなのだろう(笑) 
はあー、聡太の強さが発揮された一局で、観てよかったよ。私は満足だ。パチパチパチ。
今日のNHK杯の感想なので、当然、ネタバレしています。気をつけてください。

私は松尾を応援して観ることにした。松尾はまだ棋戦優勝がないからだ。(新人王では優勝あり)

松尾が先手で相掛かり。豊島が横歩を取りにいって、戦いが始まった。
豊島が勇気を出して横歩を取り、松尾は玉を3段目まで上がって顔面で受けた。
一気に激しくなるかと思われたが、豊島は自重し、飛車をいったん、自陣に引き返した。
ここでの、攻め急がないという豊島の判断が素晴らしかった。
後手側は一気に攻めて勝ちにいくというのもあったかもしれないが、ソフトには指せても人間には向いてない。
あまりにもバクチだからだ。松尾から大した手がない、ということを見越しての、豊島の自重。うーん、深い。
2度目の駒組み合戦になったが、豊島は自陣を整備して優勢を拡大に成功。飛車を8筋から6筋に持ってきた構想が抜群に味が良い。

豊島が徐々に引き離し、最後は角を見捨てて桂を取るという駒の効率重視の好判断。
気が付けば松尾陣は崩壊。豊島陣は無傷。もう、豊島の独壇場。
豊島の圧勝で終わった。松尾、まったく何もさせてもらえなかった。
豊島、さすがに序盤、中盤、終盤、スキがない!ほれぼれする強さを見せてくれた。
松尾としては、相手が悪かった。
今日の一局は大差がついたが、高度で面白い内容だった。

さて、将棋フォーカスが今回で一段落で、来月からはMCが交代するとのこと。葉月さん、お疲れ様。
次のMC、サバンナの高橋さんは、「アメトーーク」の名物企画、「中学のとき、イケてないグループに属していた芸人」を最初にプレゼンした人。しゃべりは抜群にうまい。ただ、将棋番組で面白いかどうかは分からないが。
とりあえず、葉月vs高橋で、一局指して、棋譜を見せてくれないだろうか?
NHK杯の準決勝が放送された。第一局は▲松尾vs△深浦。松尾リードで迎えた終盤、深浦の勝負手△4七歩。金取りに歩を打った手裏剣の歩。それを松尾は全く無視で▲5五馬と引き付けたのが、抜群の味の良い手。松尾の会心譜だった。深浦、力を出させてもらえず。

準決勝の第二局。▲豊島vs△羽生。中盤の折衝で、角桂と金の交換になり、豊島が圧倒的にリード。もう全然ダメで早々に終わりそう、となったところからの、羽生が大粘りで猛追。飛車の成り込み狙い、銀の不成の連発。
2回くらい形勢が互角に戻っていた。だけど羽生、勝つまでには至らなかった。長手数で豊島の辛勝。
豊島としては、あの駒得の状態からすんなり勝ち切れないというのが将棋の怖いところだ。羽生の執念が見れて良かった。逆転勝ちできなかったのは残念ではあるが。

決勝は私は松尾を応援しようと思う。松尾は地味なんで、ここで目立ってほしい。

囲碁将棋プレミアムの新銀河戦。▲羽生vs△室谷が配信された。
ネタバレを控えたいので内容は書かないが、私はとても関心があり、興味深い内容だった。
新銀河戦は構成が完璧。最初に1分の持ち時間で一手10秒加算のフィッシャー方式。10秒というのがいい。
盤駒が見やすいし、評価値は右下に縦のバーで表示され、邪魔になってない。
康光の解説、かりんちゃんの聞き手、局後のワンポイント解説。そして出場者の面々。
どれも素晴らしいと思う。これからも楽しみにしたい。
NHK杯を2局、観た。先週が、▲深浦vs△藤井聡太。
相雁木から深浦の、深い研究が炸裂し、聡太に付け入る隙をまったく与えず、深浦が完勝。今の聡太をここまで圧倒するとは、という、見事の一言に尽きる勝ち方だった。聡太、力を発揮する場面がなかった。負けた聡太が感想戦に入る前、テーブルに突っ伏してしたのが印象的で、これは絵になる負けっぷり(^^; 深浦の研究、恐るべしだ。(一説には、67手目までが研究だそうだ)

それで、昨日が▲郷田vs△渡辺明。
角換わりの相腰掛銀。郷田が打開し、一方的に攻め倒した一局。これ、中盤、郷田にすごい手が出た。図1は、▲1一角を取らずに△3二玉と、逃げた局面。

図1


ここで▲5五銀左。王手で取れる金を取らずに、攻め駒を増やす銀出。盲点になりやすい。解説の羽生も「金を取って、そこで先手に手があるかどうか」と解説していた。この▲5五銀左が指される前はAIの評価値で86%、先手優勢ということだったが指された瞬間、65%まで落ちた。しかし、渡辺が2回考慮時間を使っているうちに、評価値が85%まで回復。なんとAIが反省したのだ。AI超えのときに起こる現象だ。すごい!!
そしてさらに7手進行した。▲5五銀左以下、△3六角▲5四銀△5八飛▲7九玉△5四角▲3三歩成△同桂で、図2。

図2


郷田はここで▲4五銀。銀のタダ捨て。これが決め手となった。
解説の羽生は「うー、あー、▲3四銀くらいかと思ってた。切れ味鋭い」と評。

郷田の会心譜で、観ていて気持ち良かった。

負けた聡太と渡辺にしても、決して評価は落ちない。むしろ、こんな深浦やら郷田やらを相手に、普段は勝っているからこその、3冠ずつ保持なのだ。NHK杯、2週続けて観たが、価値があった。とても面白かった。


上記は、先日の日曜のNHK杯。
▲西山女流vs△八代七段の、途中図(54手目)です。今、後手が△5五同歩と取ったところです。
次に西山女流の指した手、それが敗着となりました。

図から西山女流の指した手は、▲8二歩でした。この手でそれまでほぼ互角だったAIの評価値が、ググッと後手に傾きました。以後は先手にはノーチャンスで、西山は一方的に負かされました。八代の竜王戦1組昇級は伊達じゃなかった・・・。

▲8二歩の何がそんなにいけなかったのか、少し考えてみましょう。
局面、ここは先手にとって忙しいです。次に後手から△5六歩という手が見え見えだからです。先手としては何か対処が必要。
しかし西山は▲8二歩と指してしまいます。
▲8二歩以下、△9三桂▲8一歩成△5六歩と進みました。そして終局(84手)まで、先手が9一の香を取る手は、ついに回って来ませんでした。

ここで、▲8二歩以下の一連の手順で、「先手の狙い」、その手数を考えてみましょう。▲8二歩は、後手の桂香を取りに行った手。まずこれで1手。後手に△9三桂と、桂には逃げられる。これはすぐ読めますね。△9三桂と▲8一歩成は、「見合い」の手で、先手の1手に、後手も1手かけており、相殺され手数には数えない。次は▲9一と、と香を取る手。これで通算2手。ここで勘違いしてはいけないのが、香を取っても、まだ先手は香を使ってはいない、ということ。香は盤面に打って使って、初めて意味を持つのです。持ち駒に香が余ったまま終局になるケースも多いことでしょう。つまり、香を盤面に打つ手、これで通算3手。

①▲8二歩、で香を取りに行く手
②▲9一と、で香を取る手
③盤面に香を打つ手

この3手がワンセットなのです。①を「当てる」、②を「取る」、③を「使う」、と覚えればいいでしょう。
香一枚のために、これだけの手数をかけようというのが先手の指し手の意味。
仮に、後手の香が働いている駒なら、また話は違ってきます。さらに、作った「と金」が働くのなら、また話は違ってきます。
要するに、「遊び駒の隅の香を取って使うまでに、3手もかける意味があるのか?」ということです。

「横歩取り3年のわずらい」という格言が、昔、ありました。横歩を取ると、元の位置に飛車を戻すのに、3手もかかるので、横歩を取るときは注意しろ、という意味です。それと似たことが今回の▲8二歩にも言えると思います。「遊び香取り、3年のわずらい」。

この図の局面、▲8二歩ではなく▲6六角が、やねうら王のおススメということです。
遊び香に限らず、遊び駒を取りに行くときは、気を付けましょう。以上です。
今期から導入されたNHK杯でのAIによる評価値。(先手・後手の勝率表示)

女流代表決定戦から数えて、今日で5局目の放送だった。
今日はしっかり観た。で、評価値が出ている事への私の感想。

「プロの指し手を、マイナス方式で観てしまう」。
AIの評価値は、最善手を指したときには、びくともしない。動かない。しかし、次善手や疑問手・悪手を指したときは動く。
だから、必然的に、プロの指し手をマイナス方式で観てしまうのだ。

今までは、私はNHK杯や銀河戦をプラス方式で観ていた。そりゃ、人間どうしだから疑問手もあるけど、良い手を称賛していきたい、と思って観ていた。でもAIの評価値はそれを許さない。

そして、「私が予想していた以上に、評価値がすごく気になる」。
序盤のちょっとした評価値の動きも気になる。盤面以上に、評価値の動きを観ている番組となってしまった。

去年6月の棋聖戦、▲藤井聡太vs△渡辺明の、渡辺の16連続王手のとき、私はネットで観ていた。AbemaTVだった。
そのときも、渡辺が王手しているとき、ずーっと評価値は99%藤井勝勢と出ていた。だから藤井が正確に指して勝っても、私は何の感動もなかった。
詰むや詰まざるや?どっちだ?の感動が、もう、ないんだ。

つい最近、昔のNHK杯やら女流王将戦を観直したら、ものすごく面白かった。とりわけ早指しの棋戦には、私には評価値は不要だ。

NHK杯や銀河戦でのAI導入に、賛成の視聴者が多ければ、今後も評価値が出続けるだろう。(銀河戦に至っては、候補手も出ている) 私には寂しい時代になってしまった。
NHK杯の女流棋士代表決定戦、それにAIの評価値が出てた。(候補手はまだ出てない)
まあ、もうしょうがないか。これからどうなるか、わからないが、候補手を出すのは、やめていただきたい。
名局だった。角換わりの腰掛銀模様。斎藤の仕掛けの桂跳ねは、まさに現代将棋の象徴だ。
歩もまだぶつかっていないのに、桂を5段目に跳ねてしまうのだから。

ねじりあいから長い終盤になったが、稲葉の▲4五桂跳ね捨ては見事。あんな技、めったに実現しない。
そして斎藤の△3五銀打ちが好手に見えて、まさか敗着となるとは。
稲葉の怒涛の寄せは素晴らしかった。150手超えで密度が濃く、実に見ごたえあった一局。康光会長の解説も良かった。
久しぶりにドキドキさせてもらった。パチパチパチ。
昨日のNHK杯は準々決勝の最後の一局、羽生vs斎藤だった。
先日、NHKのBSで羽生の特集が放送された。その羽生の登場。そして相手は名人戦の挑戦者になった斎藤。
これはしっかり観る価値あり、と判断。
羽生の▲矢倉vs斎藤の△5二玉型の新しい指し方。
まさに新旧の感覚の対決。そういう意味ですごく興味を持って観た。

結果は斎藤の完勝。最後は大差。
内容的には、羽生は玉が▲8八玉型だったため、後手の飛車の直射をモロに受けて被弾。玉の位置が敗因になっていた。
羽生は玉に3手かけて▲8八玉にしたのだが、それが結果的に悪かった。斎藤は玉に△5二玉の1手しかかけてない。中住まい玉の広さを存分に活かしていた。それが勝因だろう。
阪田大吉さんのブログでのAIのグラフでも、羽生にはノーチャンスの一局だったとのこと。

この一局は、若手代表である新感覚の斎藤と、ベテラン代表である羽生の将棋観の違いが表れていた。
そして結果は斎藤の完勝。新旧交代を告げた、時代を象徴する対局だったと感じた。面白かった。
2回戦 第15局 木村一基九段 vs 藤井聡太二冠 解説 羽生善治九段

先手木村で、角換わりの相腰掛銀。
序盤から、この戦型特有の、手損関係なしの、手渡しの連続という超高度な戦術。
そして中盤も無茶苦茶に高い難度。はっきり言って、私が指すのと同じゲームをやっていると思えなかった。
技術的には、たぶん聡太の△3六歩が甘かったんじゃないかなー、と思えたが、素人が口を出せるような内容ではなかった。

一局を通して聡太が良かった局面はなかったと思う。
聡太が負けたけど、じりじりと押されて、押し切られたので内容的にはもう仕方なかっただろう。
7日の0時45分から放送された対局。当然、ネタバレがあるのでまだ観てない人は注意してください。

1回戦第17局 西山朋佳女流三冠 vs 佐々木慎七段
解説 中村太地七段 聞き手 中村桃子

さあー、NHK杯に女性の登場! ワクワクするなあー。楽しみだ!
今一番、私が観たい女性、西山さんが出るとあって、期待大!

西山はNHK杯の本戦は初出場とのこと。
解説の太地「西山は中盤の迫力がすさまじいものがある。終盤にも定評がある。佐々木は居飛車、振り飛車どちらも指す。センスがある」

事前のインタビュー
西山「佐々木先生はお手本のような手厚い振り飛車を指される印象。緊張もありますがベストを尽くせるようがんばりたい」
佐々木「西山さんはセンスがあり非常に力強い将棋を指す印象。面白くていい将棋が指せればなと思っています」

太地「僕と西山さんは研究会を一緒にやってる」 ほえー、そうなのか。西山は実力を認められてるんだなあ。

先手を西山がゲット。西山、初手▲7八飛から、▲ノーマル三間vs△居飛車の持久戦に進んだ。
西山は普通の本美濃、佐々木は銀冠に組む。
佐々木の挑発に西山が乗り、6筋から戦いが始まった。
太地「西山はちょっと無理気味でも、腕力で攻めを通してしまう」

佐々木が飛車先の8筋を突破しにかかる。西山も工夫した手で返す。西山としてはここの中盤のワカレは絶対互角以上で乗り切りたい・・・!なにせ、佐々木の銀冠がかなりの堅さに見えるから。
太地「ここで間違えると一気に形勢を損ねてしまうでしょう」

残り時間、▲8分vs△5分、時間的にはちょっと西山がリードしてるが、局面はどうか?
だいぶ捌きあったが・・・? 西山、がんばれ~!
だがしかし、無情にも、佐々木の何の働きもなかった8一の桂が、大活躍してしまう。西山が4手もかけた銀と交換になってしまったではないか! ぐうううううううううー、こ、これでは西山は苦しいのでは。

西山が苦慮して打った中央の角も、両取りだったのだが、手筋の受けで完全に受けられた。
これでは、角の打ち損・・・。

太地「佐々木は竜もできたし、後手玉は堅いし、佐々木ペース」
そしてなんと、佐々木、8九に成っていた竜を△8四竜と引き上げて、「絶対、負けません」と宣言したような手を指す!
ぎゃあ、げ、激辛流~、やめてくれ~。佐々木、忖度しろよ~。
太地「佐々木がうまく指してます。カラいですね~、何もさせませんという手」

追い詰められる西山。太地「ここから佐々木はラッシュしてくるでしょうね」
だが!佐々木はラッシュしてこなかった。おお、これはまだ長くなるぞ、まだチャンスはあるか??
どうにかならんかと思って観ている私。しかし、一気の寄せこそしなかったものの、佐々木の手は乱れなかった。

ガンガン西山陣を崩す佐々木。1筋の端の取り込みもめっちゃでかい。もうどんだけ佐々木の玉、堅くて広いのよ。
先手に金銀が何枚あったら佐々木の銀冠の玉は詰みまで行くんだ?

局面は一方的となってしまった。佐々木の放った、遠見の角が決め手となり、西山はしばらく受けていたが、駒損必至となり、潔く投げた。
108手で佐々木の勝ち。西山、完敗。佐々木の銀冠は、全く手つかず。
1筋の端が伸びた分、銀冠は戦闘開始時よりも広くなっていた。これ、すげー大差・・・orz
終局時の残り持ち時間は、西山▲2分vs佐々木△1分。

太地「佐々木の攻めが突き刺さった。中盤の6~8筋で佐々木がポイントを稼いだ。その後も佐々木は的確だった」

感想戦では、やはり後手の8一の桂と先手の左銀が交換になって、後手の有利が決定的となったとのことだった。
だが、先手の西山としては、どうやったら良かったかは示されなかった。

おおーーーい、何だよ、この大差はーーー。西山のいいところが全くと言っていいほど出せなかった。
私は「相手が佐々木慎なら勝ち目がかなりあるんじゃないか?」と密かに思っていたのだが、全くそんな甘い話ではなかった。
B2の佐々木慎、強し!それとも西山が弱いのか・・・。
そう思えてもしょうがないほどの大差がつけられて、西山は完敗してしまった。ぐうううううううう。
この悲しみをどうすればいいのやら。西山さん、三段リーグでの健闘をお祈りしています。
NHK杯 1回戦 第16局
藤井聡太 棋聖vs塚田泰明 九段
解説 谷川浩司九段 聞き手 藤田綾

聡太が出るというからには感想を書こうと思った。

解説のタニー「藤井棋聖はこの半年ほどでまた強くなった。ほとんど弱点が見当たらない。居飛車なら何でも指す。塚田はまもなく棋士生活40年。予選で強い相手に勝ってきた。居飛車の攻め将棋」

事前のインタビュー
聡太「塚田九段は居飛車党で攻めが鋭い。決断良く指すことを意識して上を目指したい」
塚田「このNHK杯は毎年のように本戦入りが出来ている。しかし1回戦を勝ってない。対戦相手が藤井聡太さんということで一瞬がっかりした。でも逆に考えれば予選を抜けたご褒美。おそらく藤井さんと指すのは本局が最後になると思うのでがんばりたい」

先手聡太で、相矢倉。脇システムみたいな形になった。
タニー「持久戦。がっぷり四つ」

角交換から、聡太が敵陣に角を打ち込む。しかしその角はすぐ死に、聡太は角銀交換の駒損となってしまう。
タニー「ここまでは塚田の構想どおりではないか」
おいおい、これ、聡太、大丈夫か。塚田は持ち駒に角2枚で、潜在力がすごそうだが・・・。

塚田が右桂を使って攻めてくる。タニー「形勢は分からないが塚田としても考えがいがある」
残り時間も、聡太▲4分vs塚田△9分。
塚田が満を持して角を打ち込んでくる。塚田のラッシュ来たか~?おーい、これ、聡太、大丈夫か。1回戦で消えるのか??

聡太の玉は9七の地点で不安定。塚田が△6九角と攻めてくるが、聡太は▲4七歩という3六の銀を助けるだけの手を指している。
おーい、これ、聡太、大丈夫なんか? もうそればっかり思ってる私(^^;

が、塚田が攻め間違えたのではないかと、タニーの評。タニー「このあたりの数手は聡太が得をした」

塚田の攻めのおかげで、聡太も駒を持った。その駒をフル活用する聡太。
その後は、聡太の猛攻を見るばかりとなった。一気の寄せで、塚田を突き放した。最後は一手違いにもならず、圧倒した。
あの7一に作った、と金が詰みに働くとは・・・。
113手で聡太の勝ち。ふうー、やったやった。どうにか勝った。

タニー「塚田の構想がうまくいっていたと思う。途中は聡太は自信がなかったと思う。△6九角に▲4七歩がすごい受けの勝負手だった。あれで寄せてみろと見切った判断が良かった」

感想戦では、塚田は角2枚で攻め立てたところでも、塚田本人は自信がないということを言っていたが、そうなのだろうか?
阪田大吉さんのブログのAI評価のグラフを見てみたい。
個人的には聡太は危なかったんじゃないかと思う。塚田の右桂(8一の桂)がモロに攻めに役立って、聡太はピンチだったと感じたが、どうなのだろうか。

ともあれ、聡太棋聖、1回戦突破だ。良かった良かった。2回戦では木村王位と当たる!これも楽しみだ。
7日には西山朋佳vs佐々木慎があるということで、これも観て感想を書きたい。
NHK杯 2回戦 藤井聡太 七段 vs 久保利明 九段
解説 杉本昌隆八段 聞き手 藤田綾女流

NHK杯に藤井聡太がまたもやお目見え。前回登場したのが先々週。
相手は銀河戦で当たった久保。そこでは久保に負かされているので、ここは藤井はリベンジぜひしたいところだろう。藤井聡太、いけええーー。

藤井聡太は2012年奨励会入会、2016年四段。竜王戦4組、C1。3回目の本戦出場。
久保は1986年入会、1993年四段。竜王戦1組、A級。24回目の本戦出場。

解説の杉本「藤井は2016年デビューということで、まだ3年しか経ってないんですね。早指しも強いので楽しみ。居飛車の本格派。久保は振り飛車という戦法が苦戦する中、振り飛車で活躍が光る」

先手藤井で、いつもの居飛車。後手久保はノーマル四間飛車。持久戦模様で角交換が行われ、こう着状態になっている。
杉本「最近、藤井と会う機会が減っている。藤井が忙しいのか、遠回しに会うことを断られているのか(笑)」
そんな雑談をしていると、手待ちで藤井は金を左右に、久保は玉を左右に動かし、なんと千日手に~。
あら~、藤井、先手番だったのに、仕掛けることができなかったか。うーん、まあ経験値の差か・・・。
杉本「久保の作戦がうまくいった」

さて千日手指し直し局。先手久保で、なんと立石流に! これはB級戦法ではないのか。
藤井の対策が注目されたが、特に工夫がない。銀冠で△4二金型なのが工夫といえばそうだが。

藤井が何も策を出さないと、すごい単純な飛車交換を狙われて不利になりそう、と思われたところ、藤井が自陣角を打って打開していった。筋違い角だし、あんまり良さそうな手とは私には思えなかったが、しょうがないか。
考慮時間の残り、久保▲9回vs藤井△5回と、ちょっと差がついている。
杉本「振り飛車が充分」

しかし、藤井も只者(ただもの)ではない。1筋の端に活路を求め、戦いを拡大していった。
まだやれるぞ、藤井、いけええーー。
そして、もう戦いが広がっているというのに、今頃になって飛車先を突破しようと△8六歩と突く!
杉本「すごい手が来ましたねー。間に合うかどうかギリギリ。久保としては行けるとみてるでしょう」
そ・う・た! そ・う・た! 心の中で藤井を応援している私(笑)
この△8六歩、間に合うか?? 久保に天使の跳躍と呼ばれる桂の跳ね出しを許しており、状況は難しい。

さらに久保が1筋の端を逆襲してきた。げっ・・・。
杉本「端は後手(藤井)が攻める場所と思ってたけど、先手(久保)から攻めるんですねえ」
ううっ、どうなる? 形勢も次の一手も全然わからなくなってきた。
杉本「本局も中終盤のねじり合いになりそうですね。後手(藤井)陣は金銀がバラバラでいかにも危ない。形勢はどうなんでしょうか」
おいおい、形勢を言ってくれよ(^^; 観てるこっちにはもっとわからないんだから。

すると、だんだん藤井が本領を発揮してきた! 美濃を崩す△4八歩! 攻防の△2五角!
杉本「藤井のしぶとい指し回しですね。これは久保がいいとは言えない気がしてきました。藤井がいっぽ抜け出したかも」
そして藤井は、成れる飛車を成らずに違う手を指す。さらに、さきほど打った△4八歩を成り捨てて、2度目の△4八歩と打つ!
杉本「(手の意味が)難しすぎて説明が・・・できません(^^;」
さすが藤井聡太、他のプロたちにできない事を平然とやってのけるッ。そこにシビれる!あこがれるゥ!

だが久保も並のプロではない。底歩を打って、藤井の竜を遮断し、端から逆転の一撃を狙っている。
藤田「どちらが速いかですね」
考慮時間がお互い▲0回vs△0回に! いよいよクライマックス!
決めに出た藤井、どっちが読み勝っているんだ??
杉本「大変な局面になりました。どうなってるんでしょうね」
ぐあー、ドキドキドキドキ!

藤井が攻める、しかしなんか変調・・・? 攻撃のカナメの馬を引かされるようでは、おかしい??
久保のなんという凌ぎだ、これ、久保玉、寄るのか??
杉本「さすが久保の終盤力ですね。藤井は、もう久保玉を詰ますしかないが」
一瞬、藤井の頭がガクッと下がった。そして苦悶の表情を浮かべる藤井。形勢がモロに表情に出てる・・・(笑)
王手ラッシュを続けたが、明らかに駒が足りない。 久保玉は助かっている。あああー、これは・・・ 勝負あり・・・。
137手、藤井が投了を告げた。 ああああああああああああ・・・ 藤井聡太が負けてしまったーーー。

杉本「終盤の入り口は藤井が良かったと思う。そこからの久保の粘りが素晴らしかった。端から逆襲してクルっと体を入れ替えたのが素晴らしかった。藤井には少し残念だった」

うーーーーーん、藤井、最後の寄せに出た場面、手順前後とかそういうミスがあった感じだ。
駒損して馬を作って攻めたのに、また馬を引かされるようではおかしかった。
ただ、見ごたえ充分な、これぞ将棋の醍醐味っていう勝負だった。
最初は久保の作戦勝ちから、藤井が力を見せて逆転模様、そして最後はまた逆転で久保勝ちという内容だったと思う。
藤井にも久保にも、プロならではの手がたくさんあって、すごく充実した内容だった。とっても面白かった。
ひとつ、今後のことを思えば、藤井は立石流に対しての対策をもっと練ったほうが良いだろう。

藤井、これで銀河戦に続き、久保に往復ビンタを食らってしまった。痛い。
これで銀河戦でもNHK杯でも藤井が負けていなくなり、里見もNHK杯で負けていなくなり、折田アマも銀河戦で負けていなくなり、これから私は何を楽しみに生きていけばいいんだー。
「藤井ロス」の心境がもう私に広がっている。あああー。アッチョンブリケ。
NHK杯 2回戦 稲葉陽 八段 vs 里見香奈 女流五冠
解説 千田翔太 七段 聞き手 藤田綾 女流二段

里見の登場ということで、またNHK杯の感想を書く。1回戦の高崎戦では、高崎の猛攻を見事にしのいで快勝した里見。
今回はどうなるか。相手はバリバリ強豪の稲葉。

稲葉は竜王戦1組、A級、7回目の本戦出場。里見は2回目の本戦出場。

解説の千田「稲葉は軽快な棋風なんですけど終盤粘り強く逆転勝ちも多い。里見は軽快な棋風でなおかつ鋭い攻め味で終盤も緩みなく指す」

事前のインタビュー
稲葉「里見には10年前に一度、公式戦で負かされている。大変な強敵」
里見「稲葉はトップ棋士でA級の大変強い棋士。自分の力を精一杯出し切りたい」

先手稲葉で、対抗形になった。持久戦となり、▲銀冠穴熊vs△中飛車+高美濃。
8筋で歩の交換があったのだが、稲葉は▲8七歩と打ち、穴熊を強化する順を選んだ。
手堅い・・・。稲葉の守りの銀は▲9七銀という変わった形になっている。
この▲9七銀の形をとがめられるかというのを、千田がずいぶん言っている。

里見の飛車は向かい飛車から中飛車に落ち着いたのだが、△2二飛~△3二飛~△3一飛~△5一飛と、だいぶ手数がかかっている。そして1筋も突いてパス1回。個人的には里見側も銀冠まで囲いたかったけど・・・。

戦いが起こり、里見が桂損したが、里見の駒は中央に使えている。
千田「後手に不満があるようにも見えない、微妙な局面」
里見、がんばって~。しかし、手数が進み、千田「ちょっとこのあたり後手が損している」

長い中盤、稲葉が飛車を成り込んでどうなるかと思われたところ、稲葉に妙手が出た。
成り込める飛車を引いて守りに使う、柔軟な発想の一手。
千田「あ、なるほど。こういうのが冷静なんですね」
ぐあ~、これで里見からの早い攻めがなくなってしまった。稲葉、いじわるしないで攻め合ってくれよ~。

その後、稲葉が駒得できるようになり、差が開いてしまった。里見は最後は詰めろをかけるのが精一杯。
▲9七銀型の稲葉の穴熊、充分に堅さを発揮した。123手で稲葉の快勝となった。あ~あ。

千田「序盤で里見が若干先手の陣形を崩してポイントを得たと思ったんですけど、▲9七銀と悪形にしたけどその形をうまく崩せなかった。稲葉の指し方が巧みだった」

・・・里見はボロ負けではないけれど、特にこれといったチャンスもなく順当負けという表現が合っていると思う。
んー、A級棋士の壁は高かったか。稲葉の飛車を受けに使った手で、あれでしびれてしまったなあ。
やはり後手も序盤で銀冠まで囲いたかった。▲9七銀型をとがめるのは、コンピュータならできるんだろうけどね。

里見といえば、今、男子プロに「いいところ取りで10戦以上で6割5分」に近くなっているが、今回の負けでちょっと遠のいてしまった。これからも里見の対男子プロの勝敗には注目していきたい。
NHK杯 1回戦 阪口悟 六段 vs 藤井聡太 七段
解説 井上慶太 九段 聞き手 中村桃子女流

藤井聡太がNHK杯に登場! これが1回戦の最後の対局ということだ。

坂口は竜王戦4組、C1 予選で藤原、小林裕士、中村亮介に勝ち本戦初出場
藤井聡太は竜王戦4組、C1 成績優秀によりシード 3回目の本戦出場

井上「坂口は生粋の大阪生まれ大阪育ち。中飛車を得意とする豪快なさばきが特徴。
藤井は受けて良し、攻めて良し、柔軟性が持ち味」

事前のインタビュー
坂口「念願の本戦に出れましたので、一局でも多く見てもらいたい。中飛車をやりたいので、できたら先手番が欲しい」

藤井「早指しなので持ち時間を有効に使って決断良く指したい、過去2回出場の経験を活かしたい」

藤井聡太は過去2回の成績は、初出場では千田と森内に勝ったが3回戦で稲葉に敗退、2回目では初戦の今泉に敗退だった。
今期はぜひガンガン勝ち上がってほしいところだ。

坂口は藤井の倍くらい体重がありそうに見える(^^;
井上「坂口は年齢制限のギリギリで四段に上がった。教室を開いているので、生徒が応援しているだろう」

井上「藤井聡太は29連勝したが、22連勝目の相手が坂口で、そこで藤井は終盤にミスして、パーンとふとももを叩いたのが印象的だった」
あのシーンはワイドショーで放送されたねえ。面白い場面だったよ。

さて、先手坂口で▲中飛車+木村美濃vs△袖飛車+4筋に金銀3枚の囲いという図。
藤井から積極的に仕掛けていった。
これ、藤井の角が、2二に居たままの壁駒で、まったく使えそうにないが、大丈夫なのだろうか。
私としては、すごく嫌な予感がするのだが。

中盤戦、藤井が、香を取って駒得したが、坂口も馬を作って、形勢は難しそう。
一進一退の難解なやりとりが続く。井上さんの予想が、よくはずれる。

藤井が4一の金を△3一金と寄って、手を渡す。藤井陣はエルモ囲いに近い形になった。
井上「これは流行りの手、プロの手やなあ」
中村桃子「お互いに絶妙に手を渡し合って」

藤井は竜、坂口は馬という強力な駒を中心に戦いが続く。
藤井が竜を見捨てる大胆な発想を見せた。しかし坂口は竜を取らない。際どい攻防。ぐうー、藤井は勝てるのか?ドキドキだ。

もう時間もない終盤、藤井が坂口陣に迫るべく△2四桂と打ったが、それが狙われた。
井上「△2四桂は、良い手がどうかわかりませんね。藤井は戦力不足。急ぎすぎたんじゃないか。坂口が優勢じゃないか」
うわー、藤井、ピンチ! だれか助けてー。 1回戦で消えないでー。

が、藤井も負けてはいない。井上の形勢判断がガクガク揺れ動く(笑)
藤井は流れの中で、なんとずっと壁だった角を、世に出すことに成功!!
△5一香と打ったときは、なんのための香打ちなんだろうと思っていたが、角を使うための△5一香だったのか!
やったーー ニート角が働いたー。これで一気に展望が開けた。
さらにその角を成り込まず、相手玉をにらむ位置に逃げ、井上を感心させた。
これは指されてみれば当然の手だが、意外と盲点だ。

そしてついに出た、藤井の鬼手というべき一手!
竜を相手の馬の利きに逃げるという、とてもきれいな「一本」と言いたくなる一着!(△6四竜)
これに井上が絶賛。井上「ああっ、かっこいい手が出ましたね。これはええ手やわ。そんなことやったらアカンわ~」
いやいや、アカンって(笑) こんな手をどんどん見たいんです(笑) 

そのあとも丁寧に指し回した藤井、見事、難局を制し、120手で勝利! ふいいいーー、苦労したなー。

井上「投了図は駒損がひどいので、投げたのは仕方ない。中盤戦のねじりあい、お互いによく辛抱した。
坂口が良くなりそうな場面もあったんじゃないかと思うが、藤井がうまくまとめて駒得を活かした。さすが。△6四竜が決め手」

本局、藤井は攻めていった銀もずっと負担だったし、壁角だったしで、そうとう危ない橋を渡っているように私なんかには見えたのだが、まさにうまくまとめたなあ。感心しきりだ。コンピュータの指し手を見てるかのように駒が終盤で働いてくる、魔法のような手の組み合わせ。うーん、藤井聡太、かっこいい!

坂口もよく善戦し、楽しませてくれた。実は坂口相手なら藤井は簡単に勝っちゃうかも、なんて私は思っていたが、プロをなめるもんじゃないね。

本局、藤井の強いところが見れて、大満足! 見ごたえたっぷりでとっても面白かった。
来週は里見女流vs稲葉ということで、これも感想を書かないと・・・。ちょっと最近、好カードが多く、更新がハードでお疲れぎみだ(^^; しかも本日はこれからJT杯で藤井聡太vs三浦の中継があるんだよね。それもぜひ見たい。