来年から始まると予定されていた電王戦タッグマッチについて、ドワンゴの川上会長と連盟の谷川会長から、正式に白紙撤回とのコメントがありました
連盟、よく撤回を決意したものです 自分で自分の存在意義をなくす棋戦でしたから、当然ですけどね

今回のタッグマッチの騒動、起動戦士Zガンダムから、シャア(クワトロ)のセリフで締めてもらいましょう
シャア「今日の都合で魂を売った人々の決定などは、明日にも崩れるものさ」
元の歌 Mr.Children 「名もなき詩」

ちょっとぐらいの疑問手ならば
ソフトにかけずに 観ててやる
Oh 糸ダニー ついにキター タイトルを握りしめる

もっとすごい大逆転でも
それはそれで 楽しめるんだよ
Oh 魔太郎 次世代会長 もうあんたしか居ない 

苛立つようなメガネとタブレット
感情さえもリアルに 持てなくなりそうだけど

こんな不調和な生活の中で
たまに情緒不安定になるだろう?
でも ひふみん それを忘れさせ 
どこか安らげる棋士たち

あるがままの頭脳で 指しゆけぬ弱さを
ソフトと組んで ごまかしている
知らぬ間に築いていた 「棋士」らしさの檻の中で
もがいているなら 僕だってそうなんだ


どれほど強い羽生名人でも ソフトに負ける日は やって来るんだよ
Oh ヨネさん このわだかまり きっと消せはしないだろう 

いろんな事をやってきてくれたけど
失くしちゃいけない物が やっと見つかった気がする
 
紳哉の仕草が滑稽なほど 優しい気持ちになれるんだよ
Oh 豊川 ウケないオヤジギャグ 逢う度に聞かせてくれ

将棋はきっと奪うでも 争うでもなくて 究極の平和目的ゲーム
街の企業に押されて 2つ返事の 妙な金もうけは 捨ててしまえばいい
そこから はじまるさ

10戦 して たった 2勝 何をくすぶってんだ
無双、図巧、羽生の頭脳、藤井システム 本棚をごらんよ きっと輝いているさ

成り行きまかせの企画に乗り 時にはファンを傷つけたとしても
その度 心いためる様な 連盟じゃない
ファンを想いやりゃ スポンサー去り 財政ますます ひっ迫する 

だけど
あるがままのプロ棋士を 観たいと願うから
ファンはまた傷ついてゆく
知らぬ間に築いていた プロに託した夢の中で
もがいているなら 僕だってそう 僕がまさにそうなんだ

ファン心理ってゆう形のないもの
伝えるのはいつも 困難だね
だから タニー この「名もなき棋士」を
いつまでも君に捧ぐ
元の歌 浜田省吾 「僕と彼女と週末に」

連盟が何処へ 行こうとしてるのか
もう誰にも わからない
機械と企業の See-Saw-Gameから
降りることさえ 出来ない

連盟は 一瞬の刹那に生きる 
子供は 夢見ることを知らない 

棋士を守りたい 棋士を守りたい この手で
愛を信じたい 人の心の 愛を信じたい いつの日か

「人に出来ることは機械にも出来る」と
プログラムを組む愚かな人
それがホントなら プログラマー自身も
いずれこの世で 用済み

恐れを知らぬ 無慈悲な機械は
数の力でプロを負かした

羽生を守りたい ただひとりの
渡辺を守りたい この手で
ハッシーを信じたい 棋士の心の 
タニーを信じたい いつの日か

平日に 僕は関西将棋会館に出かけた
京阪(けいはん)電車に乗って 環状線の福島駅で降りて
ローソンで買ったサンドイッチを食べ 2階の道場で パイプイスに座って
僕は色んなタイトル戦の解説会を聞いた
井上、福崎、神吉のギャグに腹筋が割れるほどの大笑いをして
阿部隆の毒舌、神崎の饒舌、長沼の親切、
コバケンの情熱、ハタチンの熱血、個性的な先生たち
マジカルエミちゃんと 僕はよく質問をした
山崎先生に矢内さんのことを訊いたときは 正直 面白かった
決して多人数ではないお客さんたちが アットホームな雰囲気を作り出していた

 
あるとき 聞いたことがない企画が持ち上がった
連盟はそれをビッグ棋戦にすると 言い始めた
それは機械に負けたから 今度は機械と協力して
最高の棋譜を作り上げるという棋戦だった
そしてそのプレマッチで ニコニコ動画で とても奇妙な情景に出会った
それは機械を搭載したメガネで タブレットを操作したプロ棋士たちが
堂々と「ソフト指し」をしている姿だったんだ

いつか子供達に この時代を伝えたい
どんな風に ファンが夢を つないできたか

羽生を守りたい ただひとりの
渡辺を守りたい この手で
ハッシーを信じたい 棋士の心の
タニーを信じたい いつの日か

連盟(きみ)を守りたい ただひとつの
連盟(きみ)を守りたい この手で
愛を信じたい 人の心の
愛を信じたい 今こそ
元の歌 アニメ エヴァンゲリオン主題歌 「残酷な天使のテーゼ」

※テーゼ・・・命題 ※パトス・・・情念

残酷な将棋のように プロ棋士よ 神話になれ

怖い 棋戦がいま 連盟のドアを 叩いても
ドワンゴだけを ただ見つめて 微笑んでる タニー
お金 くれるもの 求めることに 夢中で
運命さえ まだ知らない いたいけな瞳

だけどいつか気付くでしょう その棋戦では
遥か未来 語り草の 恥をかくこと

残酷なタッグのテーゼ 連盟をやがて滅ぼす
ほとばしる熱いパトスの 思い出を裏切るなら
この盤(そら)を抱いて輝く プロ棋士よ 神話になれ


ずっと あこがれてた 私の夢の あの棋士
羽生名人が タッグマッチに 呼ばれる朝がくる
細い右腕の 存在意義が問われてる
世界中の声あつめて 止めさせたいけど

もしもプロのソフト指しに 意味があるなら
プロはただの操作係 電王手くん

残酷なタッグのテーゼ 悲しみがそしてはじまる
抱きしめた 棋士のたましい その夢に目覚めたとき
誰よりも光を放つ ハッシーよ 神話になれ

人は悪手つむぎながら 将棋をつくる
機械なんてなれないまま 私は生きる

残酷なタッグのテーゼ 脱税でやがて捕まる
ほとばしる熱いパトスの 思い出を裏切るなら
この盤(そら)を抱いて輝く プロ棋士よ 神話になれ 
2014.09.18 電王戦タッグマッチに関する意見表明
2014.10.03 電王戦タッグマッチを考える その1 プロ棋士のコンピュータに対する認識の現状をまとめてみる
2014.10.04 電王戦タッグマッチを考える その2 プロ棋士がコンピュータの強さを認めない理由とは?
2014.10.09 電王戦タッグマッチを考える その3 2つの事例から見る、話し合うことの大切さ
2014.10.11 電王戦タッグマッチを考える その4 この棋戦の成否を決めるのは何か?
2014.10.15 電王戦タッグマッチを考える その5 連盟を根底で支えているのは何なのか?
2014.10.17 電王戦タッグマッチを考える その6 アマチュアに及ぼす影響は?

(PC上では、この記事の右肩にある『電王戦タッグマッチを考える』をクリックすると、今までの連載記事が全部出ます)

最初に書いた「意見表明」の記事と、その1~その6までの記事のまとめをしたいと思います
一言で言って、2年後の高額賞金のタッグマッチという棋戦は巨大なリスクを抱えている、ということです
もし連盟がこの棋戦を行う場合、そのリスクを分かった上で覚悟を持って行うのでしょうね?ということです

・プロ棋士自身のアイデンティティー(存在理由)をなくすリスク
・ファンの間で反対が起こるリスク
・世間の人のプロ棋士への尊敬の念がなくなるリスク
・それにより、ドワンゴ以外の他のスポンサーが離れて行くリスク
・アマチュアのモラルが低下するリスク

ホントに、これだけのリスクを抱えてる棋戦を、やるんですか?
プロ棋士vsコンピュータの5vs5の電王戦は、たった2年やっただけで、もう次回でファイナルとなることが決定したじゃないですか このタッグマッチも短命に終わるかも、とは考えないんですか? 10年、20年と続けられる棋戦なんですか?
連盟の命運を賭けるだけの価値がある棋戦なんですか?

連盟がこの2年後のタッグマッチの話を断っても、ドワンゴにとってはそれほど大したダメージではないでしょう
ドワンゴのニコニコ動画の3大コンテンツといえば、「アニメ」と「政治」と「将棋」というのは有名です
それでも、ドワンゴにとっては将棋は、1コンテンツに過ぎません 
もともとドワンゴにとって将棋の電王戦というのは、降って沸いた臨時ボーナスみたいなものでした 連盟は、電王戦でドワンゴを充分儲けさせてあげて、有名にもさせてあげました 普段、ニコニコ動画はタイトル戦の中継などをしてくれてますが、それもドワンゴにとっては商売、それだけのことです 

ニコニコ動画は他にも音楽、プロ野球、教育、多彩なジャンルをやってます
一方、連盟にとってのコンテンツとは何ですか? もう、言うまでもなく、将棋でしょ? 将棋だけじゃないですか  
もし2年後にタッグマッチをやって「失敗」した場合、ドワンゴはただ将棋という1コンテンツの電王戦タッグマッチがダメだった、というだけで終わりますが、連盟は本質的にダメージを受ける危険がある、それに気づきませんか?


さて、この棋戦に反対の意見の人にぜひ認識していて欲しいのは「ファンの間で反対者数が過半数を占めないといけないんじゃないか」という考え方は、それは違う、ということです
選挙じゃないのですから、反対票が賛成票を上回る必要はないんです

ファンの間で相当数の反対がある、というだけで充分、連盟がこの棋戦を検討し直す理由になります
せいぜい3割も反対者がいれば、連盟も「これは問題になりそうだ」と感じるでしょう
あと、「連盟なんか早く潰れてしまえ」と思ってる人、こういう人は賛成票を入れるでしょう これは確実です(笑)

でもこの棋戦、ラッキーだったことも2つあると思います
1つ目は、高額賞金のビッグ棋戦にする、とドワンゴが言ってきたことです これは議論がやりやすいです
もし、ドワンゴが小額賞金で地道に開拓していく、と言ってきたのであれば、議論は加熱しにくかったですからね
2つ目は、2年後ということで、まだ議論を尽くす時間が残されている、ということです 
この2つの点は、私はラッキーだったと感じています


では、今後、プロ棋士はコンピュータとどう付き合っていけばいいのか?
その点について、私の意見を書きたいと思います 
故・米長会長は、「一番大事なことは共存共栄でね」と言っていました ドワンゴも、電王戦でプロ棋士が大きく負け越したときから、キャッチコピーになにかと「共存共栄」と触れ込むようになりました

私はそもそも、この「共存共栄」という言葉にかなり疑問を感じています 
共に在り、共に栄える・・・ これが本当に、これからプロ棋士がコンピュータと付き合う唯一の道なのでしょうか?
確かに、共に在る、というのはもう避けられないようです もうプロ棋士の間でも事前の研究ではコンピュータに考えさせる方法を何年も前から導入して、棋力向上の助けにしている人が多いと聞きます

では、共に栄える、はどうでしょうか? これは、そんな必要は全くないと思います
プロ棋士はプロ棋士どうしで戦って栄える、コンピュータはコンピュータどうしで戦って栄える、これでいいのです
言わば、「別栄」です 別々に栄えればいいのです
こういうのを生物学の用語では、「棲み分け」(すみ分け)と言いますね     

「棲み分け」の意味を調べると、こう出てきました
・生活様式のほぼ等しい異種の生物群が、生活空間や生活時間・時期を分け、競争を回避しながら共存する現象。ヤマメが下流に、イワナが上流にすむ例など。 

この「競争を回避しながら共存する」というところが大事です もう、プロ棋士はコンピュータと競争する必要はないのです
連盟も、本心では「競争はもう無理」と思ったから、5vs5の電王戦は来年でFINALにしたのでしょう?

「共存共栄」から、「棲み分け」へ・・・ 将棋ファンの意識がこう変わっていくのは時間の問題だと思います
「連盟はあと5年、耐えてくれ! あと5年もすれば、多くのファンの意識が共存共栄から、棲み分けに自然に変わっていって、タッグマッチという棋戦をやろう、なんて誰も言い出さなくなるから」 こう私は思っています 
 
最後になりますが、プロ棋士がコンピュータに負けましたが、これは連盟にとって「選べない未来」でした
いずれは来る時代の流れで、必然の未来でした 連盟にとってはどうしようもないことで、仕方なかったんです
電王戦をやろうがやるまいが、いずれはどこかで負けたのです
でも、2年後のタッグマッチをどうするかは完全に「選べる未来」です 連盟が、プロ棋士たち自らが選択して決定できる未来なのです この差はとてつもなく大きいです 

2年後の電王戦タッグマッチという棋戦、連盟は、そしてプロ棋士たちはいったいどう判断をして、どういう選択をするのか?
つまり、先を読むことが商売のプロ棋士たちが、「この棋戦を行うとどうなるのか、先を読めるのか」が問われているのですよね 
今後に注目していきたいです 短期連載はこれでいったん終了します また、何か動きなどがあったときに私はこの連載の続きを書くと思います (短期連載、終わり)
2年後の電王戦タッグマッチで、プロ棋士が高額の賞金をもらってしまうことは、アマチュアにも少なからぬ影響を及ぼすのは間違いないでしょう
次のような未来予測を私が考えてみました 201X年の週刊誌の記事です

<201X年 週刊凸凹 臨時増刊号より>

先日行われた将棋のアマチュア界最高峰の棋戦、アマ名竜戦の決勝戦でその事件は起こった。
決勝を戦うのは、初出場のA君(5歳)、そしてBさん(90歳)。 
ここまで目立った実績は全くない2人だが、このアマ名竜戦の決勝まで勝ち抜いてきた。
大勢の関係者が見守る中、決勝戦が開始された。序盤からいきなり戦いとなり、激しい攻防が続いたが、形勢は不明のまま。
2人ともほぼノータイムで指していく。あまりのレベルの高い内容に、観ていたプロ棋士の一人も、驚きを隠せない様子だ。

しかし、ここでA君のかけているメガネ、それがA君の顔に対して大きすぎることに観ていた一人が気づいた。
あのメガネは、もしや・・・? 急きょ大会本部の審判団によって対局が中断され、A君が呼ばれた。
そして発覚したことは、驚くべきことであった。A君がかけていたメガネ、それは一週間前にSomyから発売された、「あんたも名人」という将棋専用のコンピュータ搭載のメガネであった。「あんたも名人」は近年赤字決済に落ち込んでいるSomyが社運を賭けて開発したもので、定価9万9800円(税別)。A君は、このメガネで「カンニング」してこの決勝まで勝ち抜いてきた、というのだ。審判団が集まり協議され、これは当然A君は失格処分か、と思われた。

しかし、審判団が裁定結果を下す直前、Bさんが口を開いた。なんと、Bさんが「ワシも『あんたも名人』メガネをかけているのじゃ」と告白したのだ。Bさんのメガネよく見ると、A君の黒色のメガネと違って白色だが、これはSomyが色違いで生産していたホワイトバージョンであった。

これには会場の誰もが騒然となった。両者失格か・・・。
しばらく審判団による協議が続いたのち、意見がまとまり裁定が下された。
この大会の審判長の役目を負っていた、日本将棋連合の谷山会長が口を開き、こう言ったのである。
谷山「『あんたも名人』メガネをかけて対局してここまで勝ち進んだことは、この大会のルールに抵触する。しかしこの決勝戦では両者ともに同じ条件で戦っている以上、公平と言うべきである。よってこの対局を認めないわけにはいかない。決勝戦はこのまま続行し、勝ったほうを優勝者、アマ名竜とする。」

なんと、谷山会長は「あんたも名人」メガネを使用したまま対局することを認めたのである。
決勝戦は続行され、終盤はプロ棋士でも解説のサジを投げるような、難解極まる戦いが繰り広げられた。
しかし、Bさんに一手甘い手が出たところで、A君が怒涛の長手数の即詰みを決め、見事勝利。
アマ名竜を史上最年少の5歳という若さで勝ち取ったのだ。

優勝したA君「将棋は3日前に覚えた。誰にでもすぐ勝てるので楽しい。将棋は楽勝。将来はプロ棋士になって、タイトルを取って大金持ちになる。このメガネがあれば勝てる。Somyにはもっと性能のいいものを出して欲しい。あと、子供用のサイズも。」

準優勝のBさん「ワシは万年アマ10級じゃが、このメガネのおかげで大きな大会でここまで勝ち進む経験ができた。今日の対局は、終盤に自分の指したい手があり、一度だけそっちを指してしまったのが敗因じゃ。今後の大会では、メガネの指示する手をいかに100%信用できるかが大きな要素になる。技術の進歩は素晴らしい。まだまだ長生きして、現役プレイヤーとしてがんばりたいのう。ワッハッハ。」

なお、大会後、日本将棋連合から公式発表があった。「来年からは、アマ名竜戦をポータブルコンピュータの持ち込み、及びその手を参考にしながらの対局を可とする棋戦にする。」
これにともない、アマ名竜戦の主催社であった朝読新聞は、主催を降りるとのコメントを発表した。
朝読新聞広報「棋戦の性質が大きく変わるので、我々は主催を降りることを決定した。」
代わって、株式会社ドニャンゴが新たに主催社になる見込み。
ドニャンゴの川下会長のコメント「伝統あるアマ名竜戦を主催できるのはうれしい。ドニャンゴが主催する以上、高額の賞金を用意してビッグな大会にして盛り上げて、将棋界の発展に貢献したい。アマチュアもコンピュータと共存共栄の時代。これからはアマチュア棋戦でもコンピュータの持ち込みが当たり前になっていくのでは。」 
(201X年 週刊凸凹 臨時増刊号より)



・・・上記はフィクションですが、現実にこういう事態にならないとも限りません 「アホなこと言うな」と思われるかもしれませんが、実際に「アホなこと」を2年後にプロ棋士たちが行うことが決定しているのですよ? 今だって、もうタッグマッチ自体は、すでにやっちゃってますしね 

相手も同じ条件の場合はいいだろう、そういう話では収まらないのは明白でしょう
アマチュアのモラルがもう断然低下しますね
今まではプロ棋士は、アマチュアの模範になる存在でした そのプロが「対局中にコンピュータの手を見ながら指して大金を得ている」という紛れもない事実は、アマチュアに「対局中にコンピュータの手を見ることは悪いことじゃないんだ、むしろ奨励されることだ」と認識させるのに充分すぎることですよ 
アマチュアの理屈にしてみれば、「プロですら許される、それどころか勝ったら大金と名誉がもらえているじゃないか だとすればアマチュアも当然許される」ということです

「将棋指しのモラル」は、「大会のルール」より、もっと深い部分で将棋というゲームを支えているものです それをプロ棋士自らが破壊するんですか? 

アマチュアの大会だけではなく、ネット将棋にも、間違いなく深刻なダメージを与えますね
将棋倶楽部24では、コンピュータの手を見ながら指す「ソフト指し」は厳禁です 「ソフト指し」がバレた場合、その会員は永久会員停止という厳しい罰則が設けられています 
24では過去のある時期、高段者たちが集まるタブ(区域)には、ソフト指しがあまりに蔓延したため、普通に指していた高段者たちが激減、来なくなりました 
事態を重く見た席主の久米さんは、「ソフト指し取締委員会」を設置して、手作業で一人ずつ疑惑の会員とソフトとの指し手の一致率を計算、そしてソフト指しと判明した会員を会員停止にしていきました そして、やっと普通に指す高段者たちが戻ってきたのです 

今でも「ソフト指し」をする会員とのいたちごっこは続いており、「ソフト指し取締委員会」の人たちは、ボランティアでがんばっているのです 久米席主も、度々会員に「ソフト指しは厳禁です」と呼びかけられています 
ソフト指しは高段タブに限らず、割合は少ないながらも、もっと低い段級の人も、いつ被害にあうかわかりません

24は、連盟運営のサイトです 今月の将棋世界にも、1ページ全体を使ってこういう宣伝が載っていました
「将棋連盟運営 世界最大のインターネット将棋道場で安全安心な対局を存分にお楽しみ下さい!」
山口女流と藤田女流がかわいらしくポーズをしていました
・・・全然、安全安心じゃなくなってしまうではないですか ソフト指しが堂々と行われる風潮になってしまうじゃないですか
プロ棋士自らが「ソフト指し」に当たることをやってしまうのですよ? 24ではレーティングという点数を賭けて対局しますが、プロ棋士は高額賞金を賭けて対局するのでしょう? どっちが重大ですか?   

24のみならず、他の将棋ウォーズなどのネット将棋対戦サイトにも、当然影響は及びますよ ネットでは、対局者どうしのモラルが命綱なのですよ そのモラルをアマチュアのお手本になるべきプロ棋士自らが、破壊してしまうのですか?

プロアマ問わず、「将棋指しのモラル」は「大会のルール」より根深いところに存在し、将棋というゲームを支えているのです 連盟、そしてプロ棋士たちはそれを理解してくださいよ・・・
(その7に続く 来週の水曜掲載予定 次回でこの短期連載はいったん終了です)   
その4からの続きです
「プロ棋士はコンピュータに負けた そしたら今度はコンピュータを対局中に使いながら、高額賞金をもらうようになった」
世間一般の人たちがこのことを知ったとき、どういう評価を下すのか・・・  
2年後の電王戦タッグマッチという棋戦は、本当に大きな賭けだと思います それも、とてつもなく危険な賭けです  

この棋戦が仮に「失敗」し、世間一般の人たちのプロ棋士へのイメージが大きく変わってしまったとき、それは連盟にとって、取り返しがつかないことになることは間違いないと私は思います 

しかし、プロ棋士たちはこう考えるかもしれません
「プロ棋士は将棋ファンによって支えられているんだから、世間一般の人たちの評価などは、それほど関係ない」
本当に、そうでしょうか?

そこで、今回はこの設問を考えます 「連盟を根底で支えているのはいったい何(誰)なのか?」

まず、プロ野球球団や、プロサッカークラブの主な収入源は、何でしょうか?
それはもちろん、試合を見に来てくれる観客が払う、入場料です TVの放映権料などもありますが、メインはあくまでファンに直接、球場に足を運んでお金を払ってもらう入場料です

それに対し、将棋連盟はどうでしょう? 千駄ヶ谷の将棋会館に、ファンに大勢足を運んでもらって、入場料を払ってもらっていますか? タイトル戦で、ファンが直接見にいきますか? 大盤解説会や前夜祭などで、限られたファンから直接お金を払ってもらうということもありますが、全くごくごくわずかの金額でしかありません メインの収入源は何か? それは、新聞社からのスポンサー料ですね これで連盟は収入を得て、プロ棋士は生計を立てているのです

では、新聞を購読している人、というのはどういう人たちでしょう? 世間一般の人たちですね もちろん将棋のファンも新聞は買うわけですが、将棋には全く興味がない人たちのほうがもう断然、圧倒的に多いですよね つまり、連盟のスポンサーは新聞社ですが、その新聞社にお金を出しているのは、将棋に全く興味のない人たちが圧倒的な割合だ、ということです 
連盟の収入、プロ棋士の対局料の主な出所を考えると、実は将棋に関心のない一般人のフトコロだ、ということが言えるのです

ではなぜ、新聞社は棋戦のスポンサーになり、プロ棋士の棋譜を載せたがるのでしょうか? 将棋欄を読む人は少ないのに? それは、新聞社にとって、それが社会的なステータスになる行為だからです いわば、大新聞の証、というわけです
世間一般の人たちにはプロ棋士に対する尊敬の念がある、だから新聞社にとってはプロ棋士の棋譜を紙面に載せるのは社会的ステータスになる、という図式が成り立っているわけです 

ところが、この図式が崩れたらどうでしょう? つまり、2年後の電王戦タッグマッチで、世間の人の間に「プロ棋士は自分たちより強いコンピュータの手を見ながら指している 自分の頭で考えず、ただコンピュータの指示どおり、駒を盤の上に置いているだけ 幼稚園児でもやれることをして、高額の賞金を得るようになった」という評判が広まってしまったら?

今までの「プロ棋士への尊敬の念」が、ガラガラと崩れ、「プロ棋士に対する軽べつの念」が一般に広まってしまったら?
最悪の場合、棋戦のスポンサーになっていた新聞社らが、いっせいに手を引く可能性が出てきますね
新聞にプロ棋士の棋譜を載せることが、社会的ステータスでは全くなくなるからです

それでなくとも、2年後からの電王戦タッグマッチは、竜王戦、名人戦に次ぐ高額賞金で、非公式戦とはいえ、序列3位のビッグ棋戦になるのです 序列4位以下に落ちる棋戦を主催しているスポンサーたちは、これをどう思うのでしょう?
プロ棋士がコンピュータと組んで指すという、わけのわからない棋戦が、まじめなルールでやっている自分たちの棋戦よりも格上になってしまったと感じるでしょうから、不愉快な話だと思います

プロ棋士はコンピュータにすでに負けたわけだし、ただでさえ、近年、新聞社は購読者数が落ち込んでいるのです (つい先日も、Yahooニュースで時事通信が新聞購読の割合が過去最低を更新、と報じたばかりです 2008年から毎年行っている調査で、購読者は初回の86%からおおむね減り続け、今回が74% ということです たった6年で12ポイントも減!) 

2年後の電王戦タッグマッチには大金がかかってくるわけですから、プロ棋士たちは普通の棋戦よりも、このタッグマッチに事前の研究などの力をそそぐことになるでしょう
そうなると、普通の棋戦のスポンサーたちから、連盟に対して棋戦の賞金額の減額要求をしてくることが考えられます (このとき、スポンサーにとって都合がいいのは、竜王戦以外の棋戦は、賞金額、対局料が非公開だということです 賞金額を減らすことにより、その棋戦を潰さず、連盟に払うお金を減らすことが可能なわけです) 
普通の棋戦を主催するスポンサーたちの言い分は、「世間の人のプロ棋士に対するイメージが大きく変わったからね 連盟のブランドは地に落ちたよ これからは、お金が欲しいならドワンゴからもらえば?」ということです

2年後の電王戦タッグマッチで高額賞金をもらってしまうことが、連盟にとって、プロ棋士たちにとって、どれだけのリスクがあるのか、わかってきたでしょうか? 

まとめると、連盟のメインスポンサーは新聞社ですが、その新聞を買っている圧倒的多数は、将棋ファンでなく将棋に関心がない人たちだということです
それでも新聞社が紙面を使ってプロ棋士の棋譜を載せているのは、棋戦を主催することが社会的ステータスだからです
つまり連盟を支えている基盤の根底にあるのは、「将棋に関心のない世間一般の人たちの、プロ棋士たちに対する尊敬の念なのだ」 この事実に、プロ棋士の人たちに、原点に戻って今一度気がついて欲しいのです 

起動戦士Z(ゼータ)ガンダムというアニメがあります 最終回では、主人公のカミーユは精神崩壊を起こしますが、その直前、彼はこう叫びます 仲間が次々に大量に殺されたときのシーンです
カミーユ「生命(いのち)は、この宇宙(そら)を支えているものなんだ それを、こうも簡単に失っていくのは、それは、それは酷いことなんだよ!!」

このカミーユのセリフが、今の私の気持ちを代弁してくれています
ギズモ「世間の人が抱く将棋のプロ棋士への尊敬の念は、連盟を支えているものなんだ それを、こうも簡単に失っていくのは、それは、それは酷いことなんだよ!!」
(次回その6に続く あさって金曜に掲載予定)
では、なぜ高額賞金のタッグマッチ棋戦が重要な問題になるのか?
今回からは「高額賞金のコンピュータを使ったタッグマッチ棋戦がなぜ問題なのか、そして、問題の程度はどのくらいなのか?」という核心部分に入っていきたいと思います

これを具体的に理解するべく、一つの設問を考えます 
「2年後に始まる予定のこの棋戦の、成否を決めるのは何(誰)か?」
今回はこれを考えてみます

「2年後から始まる予定の高額賞金つきの電王戦タッグマッチ 仮に開催されたとしたら、この棋戦の成功、失敗を決めるものは何(誰)なのか?」 

・・・出場するプロ棋士と、そのがんばりでしょうか? ソフト開発者? 主催者のドワンゴの盛り上げ方? 連盟? 観た将棋ファンが喜んだどうか? この棋戦のキャッチコピーにあるように、「最高の棋譜」ができたかどうかでしょうか? あるいは、この棋戦に反対するファンが騒いだかどうか? もしくは、どうでもいいという関心のないファン?
ちょっと行を開けますので、少しの時間考えてみてください



私の出した答え、それは上記に挙げた例の中にはないです 
私の答え、それは「普段将棋に全く関心がない世間一般の人たち この人たちがどう思うか」 
これが2年後のタッグマッチの成否を決めるのだと私は思います 

タッグマッチの将棋の内容がどんなだったか、ファンが盛り上がったか、そういうことは一切関係なく、成否を最終的に決めるのは、将棋ファンも含めて将棋関係者ではない、「圧倒的絶対多数の、普段将棋に関心がなく生活している人たち」 これが私の出した結論です

竜王戦、名人戦に次ぐビッグ棋戦の誕生で、かなりの高額賞金を出すのですから、主催するドワンゴは例によって派手な演出で盛り上げようとするでしょう もちろん、連盟のほうとしても、プロ棋士対コンピュータの電王戦と同じように「普段将棋に関心のない一般の人が注目してくれるのはありがたい」と思って開催するのでしょうから、この棋戦を開催する以上は、マスコミが集まるのをこばむ、なんてことはありえないわけです 

そして週刊誌などのマスコミはネタを探すのが仕事ですし、プロ棋士が今まで見たことのない機械装置を身につけて対局している姿は「いい絵」になりますので、取材して取り上げることでしょう 
ですので、普段将棋に関心のない一般の多くの人たちにも、この棋戦でプロ棋士がやっていることが知れ渡るのは時間の問題でしょう   

では、この高額賞金のタッグマッチ棋戦のことを知ったとき、世間一般の人たちは、どう思うのでしょうか?

この棋戦が成功になるときは、世間一般の人たちがこう思ったときでしょう
「ああ、この前、将棋のプロ棋士はコンピュータに負けたって聞いたけど、今度はコンピュータを使って最高の棋譜を作り上げようとしているのか さすがプロ棋士、さらに高みを目指してがんばっているんだなあ」

一方、この棋戦が失敗になるときは、世間一般の人たちにこう思われたときでしょう
「何だ、この記事と写真? もうコンピュータにプロ棋士は負けて、プロ棋士のほうが弱いんじゃないの? それなのにコンピュータの手を見ながら試合をするようになったの? このメガネやタブレット、これでコンピュータに手を教えてもらいながらやるのか コンピュータのほうが強いんだから、プロ棋士はただその指示どおり駒を動かすだけってことにならないか? これだったら、ド素人のオレでもやれるじゃん ・・・何!? それなのに対局料が一局数十万円? 優勝したプロ棋士は1千万円以上も賞金がもらえるのか! オレなんて、1年間働いても数百万円がやっとだぞ プロ棋士っていったいどういう集団なんだ?」

「プロ棋士はコンピュータに負けた そしたら今度はコンピュータを対局中に使いながら、高額賞金をもらうようになった」
世間一般の人たちがこのことを知ったとき、上記の成功例と失敗例の、どちらの評価を下すのか・・・  
2年後の電王戦タッグマッチという棋戦は、本当に大きな賭けだと思います それも、とてつもなく危険な賭けです  

この棋戦が仮に「失敗」し、失敗例のような評価が下されたとき、それは連盟にとって、取り返しがつかないことになることは間違いないと私は思います 

しかし、プロ棋士たちはこう考えるかもしれません
「プロ棋士は将棋ファンによって支えられているんだから、世間一般の人たちの評価などは、それほど関係ない」
本当に、そうでしょうか? 次回にまた考えていきます (その5に続く 来週の水曜くらいに掲載予定)
2014.09.18 「電王戦タッグマッチに関する意見表明」
2014.10.03 「電王戦タッグマッチを考える その1 プロ棋士のコンピュータに対する認識の現状をまとめてみる 」
2014.10.04 「電王戦タッグマッチを考える その2 プロ棋士がコンピュータの強さを認めない理由とは? 」
に引き続く3回目の連載です 2年後に始まる予定の高額賞金の電王戦タッグマッチ棋戦について考えていきます

なお、今までの連載記事を探しやすいように、当ブログに「電王戦タッグマッチを考える」というカテゴリを追加しました
PC上で画面をスクロールした左下のカテゴリ欄、その一番上に持ってきました このカテゴリ欄から選んでクリックするか、または毎回の連載記事の右上にある「電王戦タッグマッチを考える」をクリックすれば、この一連の連載記事が全てまとめて出てくる仕組みです

今回は、今までにあった2つの事例を見てみます この2つの事例は、どうしても今あらためて思い出す必要があると考えました

まず1つ目は、今年3月、第3回電王戦の第2局、やねうら王vs佐藤紳哉プロのときの騒動です  やねうら王のプログラマーの磯崎氏が、対戦直前になって、佐藤紳哉プロの自宅に突然訪問して、勝手にソフトを入れ替えてしまった一件です これはルール上禁止とされていた行為でした しかしその磯崎氏の行為をドワンゴが認め、連盟も追従して認めました そのいきさつのPV(プロモーションビデオ、宣伝映像)が第1局の終局後に対局会場で流れたとき、会場は静まり返り、ニコニコ動画の画面文字は炎上、そしてファンの間で大騒動になりました 

その後にドワンゴの川上会長と連盟の片上理事らが急遽記者会見を開いて、ファンにお詫びし、ソフトを入れ替える前のバージョンに戻すことで、なんとか騒ぎが収まりました なんとも後味の悪い事件でしたが、あれは磯崎氏のみならず、完全にドワンゴと連盟の過失でした この一件は、プログラマーの磯崎氏は全くの個人の考えでやったことですが、ドワンゴ、連盟は組織で判断して下した決定です そこに、この事例の本当の重大さがあると私は思います 

「いや、あれはドワンゴ側は川上会長が一人で決めて、連盟側も片上理事が一人でそれを追認しただけだ」と考える人もいるかもしれません であるなら、なおのこと問題なのです プロ棋士vsコンピュータの戦いという、社会的に大注目されているビッグイベントなのに、そんな軽々しく川上会長と片上理事だけでソフトの入れ替えを認めたとしたら、それが大問題なのです せめて、双方なんらかの会議を開いて、周りの関係者の意見を聞くべきだったのです 組織なのだから、周りに人はいるはず、いるべきなのです しかし、ファンへのお詫びの記者会見を聞いていると、ドワンゴ側も連盟側も、その一人ずつだけで決めてしまった、というように私には聞こえました ドワンゴ側はともかく、連盟側も片上理事たった一人の判断にまかせっきりなのか? マジで?と私は衝撃を受けたものです

このときの記者会見、今でもまだ見られます 検索では見つけにくいので、アドレスを張っておきます
「第3回将棋電王戦 第2局の対局方法の説明」
http://blog.nicovideo.jp/niconews/ni045157.html

ドワンゴも連盟も間違うことはあるのです そして、今回の高額賞金の電王戦タッグマッチのビッグ棋戦設立に関しても、もしかしたら、双方、ものすごい少数の人間だけで判断して決定している可能性がある、ということです

そして、2つ目の事例です 連盟の棋戦問題に関する近年の出来事として、忘れてはならないのが、連盟が名人戦の主催スポンサーを変えようとしたときの一件です ウィキペディアより引用します
   
2006年3月、日本将棋連盟理事会は第66期(2008年)以降の主催を朝日新聞社に移管するとの方針を示し、この時点での主催社である毎日新聞社に対し、契約を更新しない旨の通知書を送付した。事前に何の相談もなく下された理事会の決定に、長年名人戦を通じ棋界を盛り立ててきた毎日新聞社は激怒し、大きな問題となった。(中略)
毎日新聞社側はこの(連盟の)主張に対し「将棋連盟は長年、十分な契約料を貰いながら財務改善の努力を一切しておらず、金に困ったから信義を捨て、伝統を売るのか」と社説で批判した。(ウィキペディアより)

これは、大きなニュースだったので、私ももちろん覚えています 毎日新聞は社説だけでなく1枚の全面を使って「連盟の行動は信義にもとる」とデカデカと書き上げていました 毎日新聞にしてみたら、今まで連盟にずっとお金を出していたのに、連盟がいきなり通知書だけで「こんどから朝日に乗り換えるから、あんたらはもう要らんわ これは決定事項だから じゃ、そういうことで」と言ってきたのだから、そりゃあ、怒りますよね

結果はご存知のように朝日新聞と毎日新聞の共催という形で落ち着いたから良かったものの、本当に大事件でした
この一件を見ていた他の棋戦のスポンサーの新聞社たちは、こう思ったことでしょう 「どんなに長年、お金を出していて付き合いがあったとしても、将棋連盟は、唐突に通知書一通で一方的に契約を打ち切ってくる 棋戦の名前も変えず、その棋戦丸ごと他のスポンサーに移す これまで培ってきた人間関係や築き上げたノウハウなど、無視する ずっと支えてきたスポンサー側の都合を、まるで考えない それが将棋連盟という組織なのだ」 

そしてこういう行為をすると、それは当然、連盟にそのまま返ってきます ある日突然、棋戦のスポンサーから連盟に通知書が一通届き、スポンサーから「もうウチが主催している棋戦、辞めるから これは決定事項だから じゃ、そういうことで」と言われるのです 
連盟とスポンサーの双方が、その棋戦の賞金総額などを話し合って折り合いをつける そういうことが全くなく、スポンサーからいきなり「辞めるわ」の紙切れだけで、その棋戦がある日突然潰れる 今後そういうことになっても、全く文句が言えない立場に、連盟はもう少しでなるところだったのです この一件は、そういう危機だったのです

この名人戦移管の事例に関しても、連盟内部では最初からプロ棋士みんなで話し合われた形跡がほとんどなく、大問題に発展してからようやく棋士総会が開かれたのです 名人戦はプロ棋士全員の基本給を決めているメイン棋戦です そのスポンサーを変える問題、こんな超重要なこと、「まずは事前にプロ棋士みんなで意見を出し合う、それから相手側スポンサーと話し合いながらく少しづつ事を進めていく そして、双方納得したところでようやく決定に至る」
これが定跡じゃないですか? プロ棋士たちはそれを全くせず、結果、連盟を、そして自分たちを危機に陥れたのです プロ棋士のみなさん、もうこの時のことを忘れたのですか?

「やねうら王のソフト入れ替えの一件」、「名人戦のスポンサー移管で大問題に発展した一件」、この2つの事例は、重要な事を決める前に、みんなで話し合うことの大切さ、周りの意見を聞くことの必要性、このことを教えてくれているはずです
  
ただし、プロ棋士たちはこう考えるかもしれません 「今度の高額賞金タッグマッ チ棋戦は、重要なことじゃない だから話し合う必要がない」 

では、なぜ高額賞金のタッグマッチ棋戦が重要な問題になるのか?
次回からはいよいよ「高額賞金のコンピュータを使ったタッグマッチ棋戦がなぜ問題なのか、そして、問題の程度はどのくらいなのか?」という核心部分に入っていきたいと思います

・・・今回は2つの事例を取り上げるだけで、こんな分量になってしまいました 
えーっと、この短期連載、その3で終わる、と書きましたが、私はまだ全然書き足りず、終わりません(笑) まだ先に続くことになりました(笑) なお、この一連の記事に関するページリンク、引用、コピペ等は歓迎します 無断でお好きにどうぞ 
(次回、その4はあさって土曜に掲載予定です)
昨日のその1からの続きです
「プロ棋士の多くがコンピュータの強さを本当の意味で認めたなら、自分たちより強いコンピュータの手を見ながら戦って高額賞金を得るタッグマッチという棋戦は、自然と成立しなくなる」と私は思いました

ではなぜ、電王戦で大きく負け越したのに、未だに多くのプロ棋士たちが、自分たちは棋力でコンピュータに劣っていないと思っているのでしょうか? その理由を、深くまで掘り下げて考えてみましょう

この問題の根本にあること、それはズバリ結論から言って、「立場」が違う、これだと思うのです ファンは「見る側」、プロは「やる側」、この立場の違いなのです これが私が出した結論です 将棋指しに限らず、あらゆるスポーツ選手などのプロ競技選手に言えることなのですが、「見ている側は客観的に強い弱いを判断するが、プロ自身は実はそれはしない」ということです

見る側のファンは、過去の対戦成績のデータなどから、この2人の対決ならこっちが強い、ということを考え、予想します しかし、やる側の立場にあるプロにとってはどうでしょうか? 例えばプロ野球で「相手はすごいピッチャーだから、まずヒットは打てないだろうなあ」と思って打席に入るバッターがいたら、それはプロのバッターとしては完全に失格なわけです 「打てる」、「うまくすればヒットを打てる可能性がある」と思わないと、ホントにヒットは出ないわけです

プロ将棋界で考えて、目立った実績のない低クラスのプロ棋士が、羽生名人と戦うことになった場合を考えてみましょう ファンは、所属クラス、今までの勝率、過去の対戦成績、そしてタイトル獲得数の実績などを考慮して、「まず羽生が勝つだろう 羽生のほうが強いんだから」と思うわけです しかし、羽生と実際に戦うことになったそのプロ棋士がその考えでいいでしょうか? 絶対ダメです 「まず相手が勝つだろう 相手のほうが強いから」 そんなことは、戦う本人は考えてはいけないわけです 対局が決まった以上「自分に勝つ見込みがある」と思わないと、勝つ可能性がホントに全くなくなるわけです 所属クラス、過去の対戦成績、実績、そういう客観的なデータをむしろ意図的に排除、無視して、「絶対自分にも勝機がある」と思わないといけないのがプロの立場なのです 

「勝てる、やれる」と思う思考に、根拠があればそれに越したことはないのですが、根拠なんて全くなくても「とにかく互角には戦える」とまずは信じ込まないといけないわけです こういう思考は、他のプロ競技選手にも共通するものだと思います

特に、プロ将棋界は、約160人という少ない人数で、何十年もずっと対戦が続く世界です 
「相手が自分より強いから、今回は対戦せずに、逃げることにする それで負けを回避する」 という選択肢があればいいのですが、それは出来ないのです 
こういう世界に身を置いたとき、いったん「あいつはオレより強い」と結論づけてしまうと、もう2度と勝てなくなることが考えられます どんなにその相手に負け続けて対戦成績がボロボロになっても、「あいつはオレより強い」と決め付けることはしないわけです そんな判断は、「やる立場」の現役プロはしてはいけないことなのです 

一方、ファンは、どっちが強い、という判断付けをどんどんします 「見る立場」のファンとしてはどっちが強いかを考えることは大きな醍醐味なんで、しょうがないです 

もっと、考えてみましょう 
将棋というのは、運の要素が振り駒しか入り込まず、負けると、ものすごく悔しい競技です 負けると全人格を否定されたような気分にすら、なります さらにアマと違って、プロは持ち時間が長く、メイン棋戦の順位戦は持ち時間が各6時間です こんな勝負、アマは体験することがまずないです こういう勝負で、負けたときのプロは、どういう精神状態になるでしょうか? 朝10時から始まって、終わるのが深夜12時を回る、終盤まで難解な局面をどうにか乗り越えてきて、最後に詰むや詰まざるやで競り負けたときのショック・・・ あるいは、事前に何日間も膨大な時間をかけて、その一局のために準備をしてきて、完敗に終わってしまったときのショック・・・ これはアマには想像できない精神的ダメージです

そんなとき、負けた側のプロが、「オレはこの相手より弱いんだ」と思うでしょうか? 負けた直後には、そう思うかもしれませんが、プロはそこから立ち直らなければいけないわけです 何日かしたら、「この前は負けたけど、オレのほうが弱いとは認めない この次は勝つ」と、こう思わないといけないんです こういう「自分のほうが弱いことを認めない、という心の訓練を、奨励会時代から始めて引退するまでやり続ける宿命にある人たち」それがプロ棋士という人たちだ、と思うのです 大変な精神力が必要な世界だな、とあらためて感じます

また、「プロ棋士は棋力が高いので、棋譜を見ればその強さが分かるはず」というのは、必ずしも正しいでしょうか? プロは今度対戦することになる相手を研究するとき、相手の棋譜を調べることになりますが、「相手の戦法の得意、不得意、どういう考え方で指しているか 指し手の善悪」 そういうことは調べていても、棋譜を見るときも、客観的に相手の強さを測っているのではない、そういう面があると思います 

棋譜を見て、研究対象の相手がどんなに好手を連発してすごい強い勝ち方をしていても、「この相手は自分より強い」と心の底から認めてはいけないわけです 次の対戦相手が格上の相手で、その相手の棋譜を何十局と研究しても、「この相手は自分より強い」と思わずにいること、これは苦行に等しい作業で、相当な精神力が必要だと思いますね

以前、鈴木大介プロが、ニコニコ動画でこんな雑談をしていました 
鈴木「屋敷さんは昔からすごく強くて、当時奨励会員だった私と指してくれたんですが、一日中指して、私が何度挑んでも、1回も勝たせてくれないんです ホントに嫌になりました(笑)」 
それでも、そこからがんばって、鈴木プロはA級まで登りつめたのです どんなに負けていても、現状をそのまま認めてしまわない限り、この先に活路はある、そう思って努力して強くなってきた、それがプロという存在なんですよね

つまり、ファンとプロ、この差は単に「棋力の差ではない」ということです 見る立場のファンは、客観的にどっちが強いか分析するが、やる立場のプロはそうではない、そういうことです プロは「相手が強ければ強いほど、実績の差や過去の対戦データなんかは全く気にしてはいけない」そういう考え方が求められる立場なんですよね

このプロの考え方「たとえ相手と自分の差がどれほどあろうが、自分より強いことは認めない」 今まで自分を強くするためにずっと培ってきたこの根底的な考え方を、つまりプロはそのままコンピュータにも当てはめてしまっているんですよね

かくして、プロはコンピュータと戦って負けても、自分たちのほうが劣る、ということは認めないわけです 電王戦で10戦して2回しか勝てなくても、内容がどれだけ力負けしていようとも、むしろ負ければ負けるほど「そんなのは気にもしない、無視する」という思考になるわけです 
 
今までの対戦成績や内容という客観的データでどっちが強いかを考える「見る立場のファン」と、そんなことは意図的に無視することが義務とすら言える「やる立場のプロ」、ここに問題の根本がある、それが今回の私の考察の結論です このギャップ、どうやって埋めればいいんでしょうか・・・? う~ん、この立場の違いから来る考え方の違いは、永遠に埋められない気がします・・・ 

こうして考えると、「プロ棋士にコンピュータの強さを認めさせる」のは、ファン側が思っているほど単純なことじゃない、ということが分かってきます 「コンピュータと戦って、プロが負けたら、プロはコンピュータの実力を認めるだろう 何しろ勝ち負けがハッキリ出る世界なんだから」 ・・・ここまで読めば分かるように、それは見るファン側の論理で、浅はかな考えだったわけです 

「プロがコンピュータの強さをちゃんと認識すれば、2年後のタッグマッチに関してプロが危機感を持って自分たちで話し合いの場を設けるはず」 この考えは、見る立場のファンからの一方的な甘い考えだったのです プロ棋士は「相手の強さを本質的に認めないことを日々訓練している存在」、「そしてそうしなければ相手に勝っていけない存在」なのですからね

あの、私は、そういう「プロ根性」を持っているのがダメだと言っているわけじゃ全然ないんですよ 分かりますよね? プロ根性を持っていなくて、対戦相手が自分より格上だからって、初めから負けると思っているやっている棋士がいたら、そんな対局、私は全く見たくないですもん 佐藤紳哉プロのように、「豊島? 強いよね 序盤、中盤、終盤、スキがないと思うよ でもオレは負けないよ 駒たちが躍動するオレの将棋を皆さんに見せたいね」 対戦相手が強いときこそ、こう言って対局に臨んでくれたら、見ているファンは拍手喝采するわけです

でも、コンピュータという今までと違う全く異質なものが出て来て、「タッグマッチで高額賞金をもらったらどうなるのか」という状況を、今きちんと理解すべき時に、そのプロ根性が、逆に障害となってしまっているのは確かだと思います・・・

「プロ棋士があと2年間の間にコンピュータの強さを客観的に認める可能性、それは極めて低い」というのが、現在私のたどり着いた結論です・・・
 
しかし、話を今後、先に進めるために、棋士たちの考えの背景を知ることが必要だと思ったから、書いたわけです また、ファンの間でタッグマッチについて議論するとき、ファンの議論が堂々めぐりしていてもダメなわけです その議論の中身の向上の一助になれば、と私は思っているのです マジに心からそう思って書いています 今回のタッグマッチの一件、私は本気で深刻に受け止めています

「タッグマッチやコンピュータに関して、一切話し合う必要などないという考えがプロ棋士たちの現状 しかもプロ棋士たちがあと2年の間にコンピュータの強さを客観的に認める可能性は、極めて低い」 では、私たちファンはどうすればいいのか? 2年後から正式に始まろうとしている高額賞金のタッグマッチについて、プロ棋士たちに、今、話し合いをしてくれるように、何か手立てはないのでしょうか? そして、この一件の問題の本質とは? 行き着く先とは? それはまた次回、私の考えを書きたいと思います (その3に続く 来週木曜ぐらいに掲載予定です)
電王戦タッグマッチの話です 私が前回の9月18日に書いた「意見表明」の記事で、席の足跡《CURIO DAYS》のブログで反響をいただきました どうもありがとうございます 今日から短期連載で、3回に渡って電王戦タッグマッチについて考えてみたいと思います

さて、私は「プロ棋士はコンピュータを使った対局では賞金を受け取ってはいけない」と主張しました そして、「プロ棋士のみなさん、この棋戦について、とにかくまず話し合ってください」と書きました 今のところは、プロ棋士たちが「話し合いの場を持とう、作ろう」という動きは何も見られません

2016年から正式に始まる予定のタッグマッチ棋戦は、竜王戦・名人戦に次ぐ高額の賞金がドワンゴ側から用意される、とのこと 優勝者には少なく見ても1000万円以上の賞金が与えられるのでしょう これだけのお金が賭けられれば、プロ棋士が今まで以上に勝つ確率が高い手を選択することはもう間違いないでしょう すなわち、コンピュータに依存する度合いが、去年や今年のタッグマッチよりも格段に高まるのでは、と推測されます

そこで、私は思うわけです
「なぜなんだろう? ネットの24での bonkrasやponanzaの圧倒的な強さを知らなかったとしても、今までの電王戦で、どんなプロ棋士も、コンピュータの強さはもう分かったはず 10戦でプロ側の2勝7敗1分けという数字からも証明され、何よりプロ棋士ほどの高い棋力があれば、棋譜の内容を見れば、コンピュータの強さは一目瞭然ではないのか? こんなに強いコンピュータとタッグマッチでと組んで戦えば、コンピュータの考えばかり採用してしまう危険があるのは明らかではないか 2年後にコンピュータと組んで、主導権をプロ側が握れるとは到底思えない」と・・・

「なぜプロ棋士たちは棋力が高いのに、未だにコンピュータの強さを認識しないのか?」 この謎に深く迫るために、今回はまず、今までのプロ棋士たちの発言をまとめてみました

先日の9月20日のタッグマッチの解説では、藤井プロがこう解説していた場面がありました
藤井「このタッグマッチというのは、コンピュータの言うことだけ聞いていれば勝てる、そんな単純な話じゃないんですよ」
しかし、この発言、これから先のことも見通して言っているのでしょうか?

今年4月に第3回電王戦の第5局が終わったとき、Ponanzaの開発者の山本さんが、こうインタビューに答えていました
山本「去年の10台のクラスタを組んだマシンより、今年の1台のマシンのほうがPonanzaの棋力は強くなっていると思います」 
これが、コンピュータの進歩の現実なんですよね 2年後の賞金つきのタッグマッチのときは、コンピュータはどれだけさらに強くなっているのか、空恐ろしくなります

その同じインタビューの場で、谷川会長はこう答えました
朝日記者「電王戦、プロから見て昨年度が1勝3敗1分け、今年が1勝4敗という結果だったんですが、レギュレーションとかの話はあると思うんですけど、現状はコンピュータがどういう実力にあるのか、ということをお訊ねしたいんですが? 例えばプロ棋士の中で何位くらいとか、プロの棋戦に出ればタイトルを取るんじゃないか、とか」
谷川「非常に難しい質問ですけども、昨年、今年の結果がありますので、やはりプロでも、えー・・・ その・・・ 中位・・・ 以上の実力があるということは認めざるを得ないかなと思っております」

去年の第2回ではコンピュータはA級の三浦に圧勝、今年の第3回ではレギュレーションでコンピュータ側に相当ハンデがあったのにプロの1勝4敗、そんな現状を目の前で見ても、谷川会長は「コンピュータはプロの中では中位以上の実力」という評価なのです プロ棋士は約160人ですから、真ん中は80位です 80位以上ですか・・・ 

何もこういう発言は谷川会長に限ったことではなく、同じ席で、森下プロはこう言いました
森下「プロ側が手元に盤を置いて動かしながら考えることができて、1手15分というルールで指せば、私はトップソフト5台に5戦全勝する自信があります」

先崎プロは、8月に発売された将棋年鑑の中でこう書いています
先崎「今人間とコンピュータの棋力はどうやらいい勝負なんですよ。で、その状態で戦うとどうしても人間は機械には勝てないんです。(中略)人間にとっては勝負というのはそうやって神経をすり減らすものですから。棋力が同じ機械には理屈からいって勝てないんです。」
私はこれを読んで、おいおい、勝てない、ということは棋力に差がある、という何よりの証明なのでは?と思ったのですが、とにかく先崎プロは、こういう認識なのです

他にも、菅井プロが第3回の電王戦出場前に、こう言っていました
菅井「これからはコンピュータのほうが強くなるという意見が多いと思うんですけど、自分は10年ぐらいしたら、人間のほうが強いんじゃないかなと思いますね コンピュータに抜かされることはないと思いますね」  

とにかく、こういう風に、「プロ棋士はコンピュータの強さを認めない」という風潮があるのです もちろん本来なら、誰がどれだけ強いか、という評価は人それぞれで、全く個人の自由なわけです しかし、このプロ棋士のコンピュータに対するこういう捕らえ方が、タッグマッチの問題をはじめとして、「コンピュータに関して、そもそも話し合いをしない」ということに直結していると私は思うのです 「コンピュータはプロ棋士より弱い、どんなにひいき目に見ても互角程度、だからコンピュータについて自分たちプロ棋士が話し合うことなど何もない」 こういう結論が出てしまうわけです プロ棋士たちにとっては「そもそも、話し合う理由がない」というわけです

ただ、全棋士がコンピュータの強さを認めていないのか、と言えば、そうでもないのでしょう 阿部光瑠プロは違いますね
阿部光瑠「ソフトとすごい対戦している人だったら、あれ(三浦vsGPSの△8四銀)を見ても驚かない  何でもやってくるって考えてるのがむしろ当たり前で 自分300局もやってるから分かるんですけど、そうしないとクセも見抜けないので 強いものだと認めてしまって、受け入れて指せば自分も強くなれるんで」

渡辺プロがつい最近出した本、「渡辺明の思考」にはこう書かれています
ファンからの質問(要約)「プロの公式戦において、荷物検査はあるのでしょうか? もしないなら、途中で席を立って現在の局面を調べられてしまう可能性があるのではないですか?」
渡辺「まず現在のところ荷物検査はないです。でも僕は、あったほうがいいと思っています。以前、携帯の持ち込みを禁止しようという話になったのですが、結局はまとまらなかったんです。 (中略)こういうことは言いたくないけど、この一局だけはどうしても勝ちたい、しかも大金が得られる、という将棋で不正をしないと言い切れるんですかね。状況によってはその人のモラルに任せるというのが、かえって酷ということもあるのではないでしょうか。 (中略)ただ、『ルールは必要ない』と考えている棋士が一定数いるので、それに関しては強く言えない部分があります。」
電子機器の持ち込み問題について、今はまだ何も明文化された規制がないんですね・・・

今回はまず、プロ棋士の認識の現状が、どうなっているかの確認でした 次回では、ではなぜ、「プロ棋士の多くはコンピュータの強さを認めない」という、こういう考え方になるのか これを考えてみます この原因を突き止めてみたいと思いました 「プロ棋士の多くがコンピュータの強さを本当の意味で認めたなら、自分たちより強いコンピュータの手を見ながら戦って高額賞金を得るタッグマッチという棋戦は、自然と成立しなくなる」と私は思ったからです

なぜ、電王戦で大きく負け越したのに、未だに多くのプロ棋士たちが、自分たちは棋力でコンピュータに劣っていないと思っているのでしょうか? 「そりゃ、単純だよ、プロは子供の頃から将棋一筋で生きてきて、プライドが高いからだ」という意見がすぐに返ってくることでしょう もちろん、それはそうで、激しく同意なのですが、もっと深くまで掘り下げて考えてみましょう (明日の、その2に続く)
今、阪田大吉さんの「将棋のブログ」で、あさってから始まる、電王戦タッグマッチについてのアンケートが取られています 今日18日午前1時現在のところ、
・こういうのもアリだ・・・61件
・これはNGだ・・・45件
・どうでもいい・・・17件 

この電王戦タッグマッチの件について、私の意見を表明させてもらいます こんなおおげさな表現するのは、このブログを書きはじめて以来、初めてのことなのですが、それくらい重大なことと思います プロ棋士とコンピュータのタッグマッチ、今年はプレマッチをやり、再来年の2016年から、賞金を出して本格的にやるそうですね

今回意見を書くに当たり、まず私は、去年、ニコニコ動画で行われたタッグマッチを観てみました 5チームで行われ、佐藤慎一プロとPonanzaのペアが優勝していましたね 私は「プロがコンピュータの手を参考にしながら指す」という行為をすることに、嫌悪するのではないか?と観る前には思っていましたが、そんなことはありませんでした わき合い合いと笑いある中にも真剣勝負で、棋譜の内容が高度になり、長時間の放送を、楽しめました 面白かったです ただ、去年の方式では、どれくらいの割合でコンピュータの手を採用しているのかが、完全にはわからない仕組みでしたね 感想戦でプロが明かさなければ視聴者に伝わりませんね 

さて、ではタッグマッチを行うことに賛成派なのか?というと、私はこれまでは、「やりたければ、やればいい」と思っていました 今、現状では楽しめるだろうし、喜ぶお客もいるでしょう なぜ、冷めた言い方なのかというと、「この棋戦は短期間の内に、成立しなくなる棋戦」ということが私には予想されるからです 

5年、どんなに長くても10年も続かないでしょう どうしてかと言うと、もう今後はプロよりコンピュータのほうが圧倒的に強くなり、コンピュータの指し手に100%従ったほうがいい、という状態になることがもう想像に難くないからです 全部コンピュータの手を選ぶようになったら、もうこのタッグマッチの棋戦は成立しません 当然ですよね

今までは、人間とコンピュータのタッグ>コンピュータ>人間と思われた時代もありました でも、もう将来的には、コンピュータ単体>人間とコンピュータのタッグ、になることが分かっています チェスの世界では、現にもうそうなっているそうです コンピュータの指し手に、人間は考えを差し挟む余地がなくなるんです これは残念ですけどね

第2回電王戦で▲三浦vs△GPSの将棋で、GPSが全く人知を超えた指し手を続けて勝ってしまった、あの棋譜を見たら、ある程度棋力のある将棋ファンなら、それが分かると思います あの△8四銀からのずっと細い攻めをつないだ継続手の数々に、とても人間が途中で口出しできるもんじゃありません それに、約700台のコンピュータをつないだGPSじゃなくても、第3回電王戦では、たった30万円のPCの習甦が、中終盤、圧巻の指し回しで菅井プロを完敗に追い込んだ一局は、みんな観たはずです

タッグマッチでは近い将来には、100%コンピュータの手を採用とまではいかなくとも、重要な局面ではことごとくコンピュータに頼り、プロは序盤の作戦と、最後の絶対間違いのない単純な寄せだけを担当することになるでしょう このタッグマッチ棋戦、はっきり言って、5年続けばいいほうと思います もうチェスという前例があるのだし、今までのコンピュータ将棋の歴史や、電王戦での内容を観ていれば、それくらいの予測はつきますよ 

ちなみに、人間vsコンピュータの、5vs5の電王戦ほう、これは来年の第4回が「FINAL」です 5vs5の電王戦という棋戦の早い終局も、私には予想どおりでした だって、2007年のBonanzavs渡辺竜王の内容、あれを見れば、あの時点でもうコンピュータがトッププロに並んだことが明快に分かるじゃないですか? 2007年の時点で渡辺竜王が負けそうになったんですから、それから5年以上が経過して行われた電王戦って、プロが大負けすると予想するのが普通、でしょう

第1回電王戦で米長会長が戦う前のニコニコ動画の告知PV(プロモーションビデオ、宣伝映像)で、コンピュータに詳しいと思われていた棋士、連盟のモバイル部門の担当をしておられる遠山雄亮プロは、「まだまだこっちも弾は残ってるんで はっはっは」と高らかに笑っておられました (今でもニコニコ動画でそのPVは観れます) このときの遠山プロ、電王戦がたったの第4回で、3年後に終わる、ということが予想できていましたか? プロ10人が戦って2勝しかできず、もうこれ以上続けられんわ、ということで早々の終了を余儀なくされた、それが電王戦の事実じゃないですか それと同じく、この電王戦タッグマッチも、長くは続かない棋戦なんですよ 私は嫌味を言いたいんじゃないんです、こういう事実と予測が大事になってくるから、しょうがないんです

さて、だから、私は本来は、タッグマッチは、やろうがやるまいが「どうでもいい派」だったんですよ どうせ、5年くらいで終わる、のだから、観たい人が観ればいいし、観たくない人は観なければいい、私も観るかどうかは気分で決める、それだけの話でした

が! ここからが重要です あるブログの内容を読んで、考えが変わりました 即席の足跡《CURIO DAYS》 ここの9月15日付けの記事を読んで、ハッと気付きました これは、今、とんでもないことが起ころうとしているんだ、と、この記事がわからせてくれたんです 主張の多くは、もうここの記事に書かれてあるので、そちらを参考にしてください 私も全面的に賛同です 下にアドレスを張っておきます

http://blog.goo.ne.jp/nanapon_001/e/d8051fd58f664fd75917a7f7087042bf?fm=rss

私の意見表明、主張というのは何か?それは、「電王戦タッグマッチは開催してもいいが、プロ棋士が賞金を受け取ってはいけない」ということです これが私の言いたいことです プロがコンピュータを使いながら指すタッグマッチは、あくまで「遊び」、と位置づけておくべきです プロが賞金を受け取るのは、してはいけません! しかも、「竜王戦、名人戦に次ぐ高額の賞金」ということじゃないですか ものすごく危険です 賞金が多額であればあるほど、受け取ってはいけません!!

なぜ、危険なのか? 開催すれば、やっている最中は、それなりに盛り上がり、反対意見や雑音もかき消されるかもしれません しかし、このタッグマッチ棋戦は、早晩、終わる運命です この棋戦が終わった後に、何が残りますか? それは、「プロ棋士が対局中にコンピュータの手を参考にしても、高額の賞金がもらえた棋戦があった」という事実です これが残るんです 対局中にコンピュータを使ってお金をもらってしまうことは、今まで生きてきたプロ棋士全員がずっと続けてきた、「対局中は自分の頭で考えて一切の責任を取ること、それで賞金がもらえる」という大前提を崩すことになるのです

そして、いったんタッグマッチで賞金をもらったら、このことが、日本将棋連盟という組織が残る以上、今後永遠に、じわじわと効いてくるんです これからの棋士には、普通の棋戦で、「いかにコンピュータに頼りたい気持ちを抑えながら戦うか」というのが、大テーマとして伸し掛かってくるんですよ 手持ちの携帯端末、スマホやタブレットなどを使えば、たちどころにコンピュータが高度な手を示してくれる・・・ そんな時代がこれから来るんです ポケットの中にあるスマホで検索すれば、自分が考えるより、はるかに優れた手がわかる・・・ 対局室にスマホなどの持ち込みが禁止されても、プロは持ち時間が長いので、席を中座することが楽々可能です 別室のバッグの中にはスマホがある それで調べれば最善手がわかる・・・ そんな状況で、自分の頭で考えて指さないといけないんです

これからそういう時代が来るのに、「コンピュータの手を見ながら指しても、高額の賞金がもらえた棋戦が過去にはあった」という事実は、プロ棋士の頭の片隅に絶対に生き続け、プロ棋士を「コンピュータの手を参考にしたい」、「ちょっとぐらいコンピュータの手を見てもいいんじゃないか」と誘惑してくるのです 

これは、恐ろしいことです ほんの短期間、賞金をもらってしまったがために、プロ棋士のモラルを、そしてプロ棋士をプロ棋士たるべくしているもの、「対局中は自分の頭で考えて指して対局料をもらう」、というアイデンティティを根底から破壊しかねないのです この電王戦タッグマッチの高額の賞金というのは、一度手を出したがために、一生後遺症に苦しむ、まるで覚せい剤みたいなものだと思いますね 大げさじゃなく、です
   
ニコニコ動画のドワンゴ側に、悪意があるとは思えません 川上会長は、タッグマッチがいつまで続くかなんて、知ったこっちゃないのでしょう ただ一時の利益を追求しているだけです まあ、そのことは私は何とも思いません ドワンゴというのは、資本主義の中での株式会社で、利益追求が第一目的なのですからね でも! 連盟は違うのです 公益社団法人なのです 守っていくべき伝統、文化、理念があるのです

川上「お金をいっぱいあげるから、プロ棋士がコンピュータと組んで戦う大棋戦を作りたい、いいよね?」
谷川「あ、はいはい 何だかよくわからない棋戦だけど、お金をいっぱいもらえるんですね いつも本当にありがとうございます」
今の状態は、こういう状態じゃないですか 谷川会長しっかりしてください! そして片上理事、コンピュータに疎い谷川会長を助けてあげてください!

谷川「あれから考えましたが、対局中は自分の頭で考えてこそ、お金がもらえる それがプロのプロたるゆえんです コンピュータの思考を見ながら戦う以上、プロ棋士にとっては遊びにしかなりません 遊びではお金は受け取れません それに、私のところの組織は、公益社団法人なのです 利益追求が目的の株式会社とは違います ですから、やるとしたら賞金抜きでやらせてもらいます」
誰か、谷川会長にこう言わせてください! 今のままでは、ホントに高額の賞金を受け取ってしまいます

橋本崇載プロが、反対運動を起こす、とのこと 全面的に支持します ただ、私はタッグマッチ自体は、やってもいいと思うんです プロもコンピュータを使って楽しく遊んでもいいと思います もう、名人戦の舞台でもコンピュータが事前に発見した手が指され、それが勝敗を分ける重要な要素になる時代です プロもコンピュータを使って棋力を上げようということ自体はいいと思うんです  

だけど、対局中にコンピュータを使って、その結果、高額の賞金をもらってしまうことは、本当に危険極まりない、将来に大きな禍根を残すことだと確信します 非公式戦だからいいだろう、じゃダメです 賞金をもらってしまうことに、大問題があるのです

とにかく、プロ棋士のみなさんは、まず議論をするべきです 話し合いもなーんにもなくて、ただ川上会長と谷川会長の間だけで、こんな大棋戦が成立しそうな流れになってるじゃないですか もう連盟のページにも、2016年からこの棋戦を作る、と書いてありますしね まず、理事会、そして臨時の棋士総会を開くべきです こんなときのために理事は居るし、棋士総会もあるのでしょう?

棋士のみなさん、今、考えないとダメです 賞金をもらって既成事実ができてしまってからでは、遅いんです 今まで、プロ棋士は「対局中にコンピュータに頼らないのは当たり前のことだ」として、モラルだけでなんとかコンピュータと付き合ってきました でも、今、もうちゃんと考えなければならないときが本当に来たんです! 再来年には高額賞金を賭けたタッグマッチが始まってしまいます それまでに、「コンピュータを使用した対局では、プロ棋士は賞金はもらえない」という取り決めを、きちんと制度として作らなくてはいけない時が来たんです!

利益追求の株式会社ではない存在、日本将棋連盟という公益社団法人を、今こそ、正会員であるプロ棋士のみなさん一人ひとりが守ってください! この一件、本気で考えてください!