2021.11.30
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~康光流暴銀~
11月24日、棋王戦挑戦者決定戦トーナメントで、▲郷田vs△佐藤康光の一戦があった。
そこで出た、康光流の変則序盤作戦。それが半端なくすごかったので、話題になっていた。知っている人も多いと思う。
康光の後手一手損角換わりから、康光が向かい飛車に。
そこから7一の銀を、△8二銀~△9三銀~△8四銀~△8五銀~△9六銀と進出させたのだ。後手玉は居玉のまま。
人呼んで、「康光流暴銀」。あばれる銀と書く。
これをソフトたちはどう評価するのか気になったので、調べてみた。激指15、やねうら王、水匠4改の3つ。考慮時間は各10分。
まずは△9三銀の局面。プラスの値が大きいほど、先手側の郷田が良しであることを示している。
図1 康光流暴銀 16手目△9三銀まで

<激指15>
+262 ▲6五角 (次の先手の最善手。以下、他のソフトも同様) (+は先手側に有利なことを示している)
<やねうら王>
+480 ▲4七銀
<水匠4改>
+351 ▲2五歩
図2 康光流暴銀 20手目△8五銀まで

<激指15>
+277 ▲7七銀 (次の先手の最善手。以下、他のソフトも同様)
<やねうら王>
+620 ▲7七銀
<水匠4改>
+358 ▲7七銀
図3 康光流暴銀 22手目△9六銀まで

<激指15>
+666 ▲8六角 (次の先手の最善手。以下、他のソフトも同様)
<やねうら王>
+1021 ▲8六角
<水匠4改>
+594 ▲8六角
この一戦、康光の作戦を郷田がとがめることに成功したが、まだまだ難解な中盤が続く。郷田優勢だったが、終盤で康光が逆転勝ちを収めている。(終局は138手)
康光の作戦、なんという面白い指し方であることか。まるで将棋を覚えたての初心者だ。
康光の「俺はAIなんかには頼らねえ!」という叫びが聞こえてくるようだ。
AIは△9三銀の時点で先手側に振れているが、そんなことはおかまいなし!!AI、逝って良し!!
JOJO風に「オラオラ」や「無駄無駄」で言うと、AIがどう言おうと「微差微差微差微差~!」となるだろう。
さらに私は、尾崎豊のScrambling Rock'n'Rollという歌を思い出した。
♪自由に指したくないかい?熱くなりたくはないかい?自由っていったい何だい?君は思うように指しているかい?
今まで私が観てきた中でも、格別にすごい珍作戦。康光会長、素晴らしい!!歴史に残る一局!パチパチパチ!!
そこで出た、康光流の変則序盤作戦。それが半端なくすごかったので、話題になっていた。知っている人も多いと思う。
康光の後手一手損角換わりから、康光が向かい飛車に。
そこから7一の銀を、△8二銀~△9三銀~△8四銀~△8五銀~△9六銀と進出させたのだ。後手玉は居玉のまま。
人呼んで、「康光流暴銀」。あばれる銀と書く。
これをソフトたちはどう評価するのか気になったので、調べてみた。激指15、やねうら王、水匠4改の3つ。考慮時間は各10分。
まずは△9三銀の局面。プラスの値が大きいほど、先手側の郷田が良しであることを示している。
図1 康光流暴銀 16手目△9三銀まで

<激指15>
+262 ▲6五角 (次の先手の最善手。以下、他のソフトも同様) (+は先手側に有利なことを示している)
<やねうら王>
+480 ▲4七銀
<水匠4改>
+351 ▲2五歩
図2 康光流暴銀 20手目△8五銀まで

<激指15>
+277 ▲7七銀 (次の先手の最善手。以下、他のソフトも同様)
<やねうら王>
+620 ▲7七銀
<水匠4改>
+358 ▲7七銀
図3 康光流暴銀 22手目△9六銀まで

<激指15>
+666 ▲8六角 (次の先手の最善手。以下、他のソフトも同様)
<やねうら王>
+1021 ▲8六角
<水匠4改>
+594 ▲8六角
この一戦、康光の作戦を郷田がとがめることに成功したが、まだまだ難解な中盤が続く。郷田優勢だったが、終盤で康光が逆転勝ちを収めている。(終局は138手)
康光の作戦、なんという面白い指し方であることか。まるで将棋を覚えたての初心者だ。
康光の「俺はAIなんかには頼らねえ!」という叫びが聞こえてくるようだ。
AIは△9三銀の時点で先手側に振れているが、そんなことはおかまいなし!!AI、逝って良し!!
JOJO風に「オラオラ」や「無駄無駄」で言うと、AIがどう言おうと「微差微差微差微差~!」となるだろう。
さらに私は、尾崎豊のScrambling Rock'n'Rollという歌を思い出した。
♪自由に指したくないかい?熱くなりたくはないかい?自由っていったい何だい?君は思うように指しているかい?
今まで私が観てきた中でも、格別にすごい珍作戦。康光会長、素晴らしい!!歴史に残る一局!パチパチパチ!!
2021.07.01
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~駒落ち~
今回は駒落ちを調べる。奇襲はどこへやらだ(^^;
一通りの駒落ちを調べた。そして、おまけとして特殊な駒落ちも調べた。
めんどうだったので、水匠3改のみで調査した。
右に書いてある数字が、どれだけ下手にとって有利かというもの。水匠3改が各10分考慮で出した数値。
十枚落ち・・・・6650
八枚落ち・・・・5348
六枚落ち・・・・3543
四枚落ち・・・・2731
二枚落ち・・・・2250
飛車香落ち・・・・991
飛車落ち・・・・・911
角落ち・・・・・・801
香落ち・・・・・・170
以下、特殊な駒落ち
トンボ(玉、歩、飛車、角のみ残した八枚落ち)・・・4666
金の二枚落ち(金が二枚ともない)・・・・・・・・・1632
銀の二枚落ち(銀が二枚ともない)・・・・・・・・・1146
左金落ち(4一の金がない)・・・・・・・・・・・・・773
右金落ち(6一の金がない)・・・・・・・・・・・・・647
左銀落ち(4一の銀がない)・・・・・・・・・・・・・590
右銀落ち(6一の銀がない)・・・・・・・・・・・・・584
桂の二枚落ち(桂が二枚ともない)・・・・・・・・・・543
左桂落ち(2一の桂がない)・・・・・・・・・・・・・255
右桂落ち(8一の桂がない)・・・・・・・・・・・・・241
右香落ち(9一の香がない)・・・・・・・・・・・・・117
<まとめと私の意見>
将棋の駒落ちは、面白くないと言われる。平手とはゲーム性が変わってしまうからだ。囲碁の置き石のようにはいかないのだ。
しかし、なんとか面白くする努力はすべきだと思う。十枚落ちの次は九枚落ち(玉と歩と金一枚)が順序だと私は思うし、八枚落ちの次は七枚落ち(玉と歩と金二枚と銀一枚)が順序だと思う。
そして、数値を見れば分かるが、二枚落ちと飛車香落ちの間の差が大きすぎる。ここに壁があり、多くのプレーヤーが挫折する。
角落ちと香落ちの間の差も開きすぎている。
それを解決するのが、金落ちや銀落ちだ。金二枚で約1600点差がつくから、普通の二枚落ちの次はこれをやればいい。金という守備力がないのを、上手がどうカバーするか。その次の銀二枚落ちで約1100点差あるが、これも面白そうだ。
数値では金一枚で約700点強、銀一枚で約600点弱、差が開いている。
これで、角落ちと香落ちの開きが埋められる。つまり、角落ちを卒業した人は金一枚落ちに進むのが理にかなっている。金一枚落ちで勝てるようになれば銀一枚落ちだ。左右どちらの金や銀を落とすか、上手が決めればいい。そこがまず戦略の始まりだ。桂落ちは面白くなさそうなので、銀一枚落ちの次にはようやく従来の香落ちでいいだろう。
とにかく、駒落ちは上手側が面白く指せるように工夫が必要だ。駒落ちはやるべきだと唱える人が多いが、いざ自分が指導できる棋力になったときに上手を持ってあげる、という人は少ない。その原因の一つは、大駒がない駒落ちの上手がつまらないからだ。
大駒がある金落ち、銀落ちを採用すれば、このつまらなさは解消できる。上手に大駒があることで、戦法という概念があり、上手も下手も平手感覚で指せるのだ。
最近できた「トンボ」という駒落ちは、良い例だ。色々な駒落ちが広まれば、楽しくなると思う。
一通りの駒落ちを調べた。そして、おまけとして特殊な駒落ちも調べた。
めんどうだったので、水匠3改のみで調査した。
右に書いてある数字が、どれだけ下手にとって有利かというもの。水匠3改が各10分考慮で出した数値。
十枚落ち・・・・6650
八枚落ち・・・・5348
六枚落ち・・・・3543
四枚落ち・・・・2731
二枚落ち・・・・2250
飛車香落ち・・・・991
飛車落ち・・・・・911
角落ち・・・・・・801
香落ち・・・・・・170
以下、特殊な駒落ち
トンボ(玉、歩、飛車、角のみ残した八枚落ち)・・・4666
金の二枚落ち(金が二枚ともない)・・・・・・・・・1632
銀の二枚落ち(銀が二枚ともない)・・・・・・・・・1146
左金落ち(4一の金がない)・・・・・・・・・・・・・773
右金落ち(6一の金がない)・・・・・・・・・・・・・647
左銀落ち(4一の銀がない)・・・・・・・・・・・・・590
右銀落ち(6一の銀がない)・・・・・・・・・・・・・584
桂の二枚落ち(桂が二枚ともない)・・・・・・・・・・543
左桂落ち(2一の桂がない)・・・・・・・・・・・・・255
右桂落ち(8一の桂がない)・・・・・・・・・・・・・241
右香落ち(9一の香がない)・・・・・・・・・・・・・117
<まとめと私の意見>
将棋の駒落ちは、面白くないと言われる。平手とはゲーム性が変わってしまうからだ。囲碁の置き石のようにはいかないのだ。
しかし、なんとか面白くする努力はすべきだと思う。十枚落ちの次は九枚落ち(玉と歩と金一枚)が順序だと私は思うし、八枚落ちの次は七枚落ち(玉と歩と金二枚と銀一枚)が順序だと思う。
そして、数値を見れば分かるが、二枚落ちと飛車香落ちの間の差が大きすぎる。ここに壁があり、多くのプレーヤーが挫折する。
角落ちと香落ちの間の差も開きすぎている。
それを解決するのが、金落ちや銀落ちだ。金二枚で約1600点差がつくから、普通の二枚落ちの次はこれをやればいい。金という守備力がないのを、上手がどうカバーするか。その次の銀二枚落ちで約1100点差あるが、これも面白そうだ。
数値では金一枚で約700点強、銀一枚で約600点弱、差が開いている。
これで、角落ちと香落ちの開きが埋められる。つまり、角落ちを卒業した人は金一枚落ちに進むのが理にかなっている。金一枚落ちで勝てるようになれば銀一枚落ちだ。左右どちらの金や銀を落とすか、上手が決めればいい。そこがまず戦略の始まりだ。桂落ちは面白くなさそうなので、銀一枚落ちの次にはようやく従来の香落ちでいいだろう。
とにかく、駒落ちは上手側が面白く指せるように工夫が必要だ。駒落ちはやるべきだと唱える人が多いが、いざ自分が指導できる棋力になったときに上手を持ってあげる、という人は少ない。その原因の一つは、大駒がない駒落ちの上手がつまらないからだ。
大駒がある金落ち、銀落ちを採用すれば、このつまらなさは解消できる。上手に大駒があることで、戦法という概念があり、上手も下手も平手感覚で指せるのだ。
最近できた「トンボ」という駒落ちは、良い例だ。色々な駒落ちが広まれば、楽しくなると思う。
2021.06.22
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~目次~
全24回に渡った企画、目次を作った。クリックでそのページに行ける。
そして、カテゴリーに「奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる」を加えた。
企画の最後に、初期配置をもう一度、ソフトに検討させてみた。3つのソフトで各20分ずつ、各3回。(ただし激指15は、定跡なしでも4分ほどで思考完了になってしまう)
候補手3つ。▲7六歩が3番人気で、平均+35.1。▲2六歩が2番人気で平均+37.4。▲7八金が1番人気で平均+38.6という結果だった。
初期配置の最善手の評価値の平均は、+44.3だった。(9回分の最善手を9で割った)
評価値の特徴は、激指15はマイルド。やねうら王は辛口で差をつけたがる。水匠3改はその中間ということで、ちょうどいい感じで企画ができたと思う。ソフトの評価値は同じ環境でも毎回微妙に変わるので、参考までにしてほしい。
また調べたいテーマ図があれば、新たに調べるかもしれない。今のところはここまで。
~準備編~
~初手の最悪手~
~後手の2手目端歩突き~
~後手の2手目△3二金と△3二飛~
~後手の2手目△6二銀と△6二玉~
~ノーマル振り飛車~
~筋違い角の先手バージョンと後手バージョン~
~筋違い角の対策~
~筋違い角・V作戦~
~角換わり・木村定跡~
~角換わり・升田定跡と一手損△8四歩型~
~相掛かり・原始棒銀~
~2パターンの一手損角換わり~
~角頭歩~
~4手目△3三角~
~阪田流向かい飛車~
~鬼殺し・新鬼殺し~
~相掛かり・5手爆弾~
~相掛かり・源内流と△8四飛を狙い撃ち作戦~
~横歩取り・△4五角戦法と相横歩取り~
~先手早石田・後手早石田~
~右四間飛車~
~パックマン~
~端角中飛車と九間飛車~
そして、カテゴリーに「奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる」を加えた。
企画の最後に、初期配置をもう一度、ソフトに検討させてみた。3つのソフトで各20分ずつ、各3回。(ただし激指15は、定跡なしでも4分ほどで思考完了になってしまう)
候補手3つ。▲7六歩が3番人気で、平均+35.1。▲2六歩が2番人気で平均+37.4。▲7八金が1番人気で平均+38.6という結果だった。
初期配置の最善手の評価値の平均は、+44.3だった。(9回分の最善手を9で割った)
評価値の特徴は、激指15はマイルド。やねうら王は辛口で差をつけたがる。水匠3改はその中間ということで、ちょうどいい感じで企画ができたと思う。ソフトの評価値は同じ環境でも毎回微妙に変わるので、参考までにしてほしい。
また調べたいテーマ図があれば、新たに調べるかもしれない。今のところはここまで。
~準備編~
~初手の最悪手~
~後手の2手目端歩突き~
~後手の2手目△3二金と△3二飛~
~後手の2手目△6二銀と△6二玉~
~ノーマル振り飛車~
~筋違い角の先手バージョンと後手バージョン~
~筋違い角の対策~
~筋違い角・V作戦~
~角換わり・木村定跡~
~角換わり・升田定跡と一手損△8四歩型~
~相掛かり・原始棒銀~
~2パターンの一手損角換わり~
~角頭歩~
~4手目△3三角~
~阪田流向かい飛車~
~鬼殺し・新鬼殺し~
~相掛かり・5手爆弾~
~相掛かり・源内流と△8四飛を狙い撃ち作戦~
~横歩取り・△4五角戦法と相横歩取り~
~先手早石田・後手早石田~
~右四間飛車~
~パックマン~
~端角中飛車と九間飛車~
2021.06.21
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~端角中飛車と九間飛車~
♪シェリー 俺は転がり続けて こんなとこにたどりついた シェリー 俺はあせりすぎたのか むやみに何もかも捨てちまったけれど
というわけで、今回の第24回で、この企画も最終回。BGMには尾崎豊が流れている。
今回は2つ取り上げる。まずは端角中飛車。初手から▲9六歩△3四歩▲5六歩△8四歩▲5八飛△6二銀▲5五歩△5二金右。
これはタイトル戦で指されている。1996-07-11 王位戦 ▲深浦康市 vs. △羽生善治の一局だ。
図1 端角中飛車 △5二金右まで

図1から▲9七角と出たのが深浦の作戦だった。これは成立しているのか。
例によって、「イメージと読みの将棋観2」に、図1に対するプロの意見があるので、それを紹介する。
羽生「▲9七角と出ちゃうと若干不利」
佐藤康光「▲9七角と上がると先手は苦しくなる」
森内「やったらやったで面白いのでは?でも自分が敢えてやるかといわれれば、やりませんけど」
谷川「(▲9七角と上がらずに)△8五歩に▲7六歩と突けば一局」
渡辺明「厳密には、△8五歩に▲9七角と上がるのはちょっと無理なんでしょう」
藤井猛「▲9七角から▲5六飛で持久戦になる。一局だけならうまくいくかもしれないが、先手がよくなるのは限られたパターンしかない。▲9七角と上がってしまうと、先手勝率のイメージは30%」
▲9七角を否定する棋士がほとんど。ではソフトの見解はどうか。
まず、図1を水匠3改に10分、考えさせた。すると、-152という数値を出した。ソフトは振り飛車を不利飛車と見るし、▲9六歩も何だか一手パスのような手なので、こんな数値で妥当だろう。
そこで次に、図1から▲9七角と上がった局面を3つのソフトに考えさせた。
各10分、考えさせた。候補手は3つで調べたが、載せたのは2つ。
<激指15>
-215 △8五歩 (▲9七角とした場合の後手の最善手)
-215 △9四歩 (▲9七角とした場合の後手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<やねうら王>
-435 △4二銀
-430 △8五歩
<水匠3改>
-295 △9四歩
-281 △4二銀
プロ棋士6人が言うとおり、▲9七角と上がると、のきなみけっこうなマイナスになってしまった。相変わらず、やねうら王は差をつけるね(^^;
5筋がすぐに突破できるわけではないので、形を決めすぎなのだと思う。
なお、▲深浦vs△羽生では、羽生が5筋を金銀4枚でガッチリ守って勝っている。
さて、次。次もプロの実戦から。
2001-07-01 将棋日本シリーズ ▲佐藤康光 vs. △先崎学
九間飛車って何だと思われるだろうが、後手が△9四歩~△9五歩~△9二飛~△9四飛と浮く作戦だ。
上記の実戦では初手から▲7六歩△9四歩▲2六歩△9五歩▲2五歩△3二金▲4八銀△7二銀▲7八金△9二飛と進んだ。
それが図2。
図2 九間飛車 △9二飛まで

△9二飛で、後手は作戦の正体を現した。この図2をソフトはどう見るか。
<激指15>
+122 ▲2四歩
+76 ▲3八銀
<やねうら王>
+342 ▲3六歩
+338 ▲6八玉
<水匠3改>
+232 ▲3六歩
+196 ▲6九玉
この▲佐藤康光vs△先崎の戦いは、後手が3筋の位を取り、△9四飛~△3四飛と形良く駒組みすることに成功した。
序盤を互角にすることに後手が成功している。しかし結果は康光の勝ち。
~今回のまとめ~
端角中飛車も、九間飛車も、なかなかうまくいかないようだ。まあそれが奇襲たるゆえんだが。
でも、こういう将棋を試してくれるプロたちには敬意を表したい。昔はソフトがなかったから、自力で考えてたんだろうし。
♪シェリー いつになれば 俺は這い上がれるだろう シェリー どこへ行けば 俺はたどりつけるだろう シェリー 俺は歌う 愛すべきものすべてに
明日、目次のページを作って、この企画の終わりとしたい。ではでは。
というわけで、今回の第24回で、この企画も最終回。BGMには尾崎豊が流れている。
今回は2つ取り上げる。まずは端角中飛車。初手から▲9六歩△3四歩▲5六歩△8四歩▲5八飛△6二銀▲5五歩△5二金右。
これはタイトル戦で指されている。1996-07-11 王位戦 ▲深浦康市 vs. △羽生善治の一局だ。
図1 端角中飛車 △5二金右まで

図1から▲9七角と出たのが深浦の作戦だった。これは成立しているのか。
例によって、「イメージと読みの将棋観2」に、図1に対するプロの意見があるので、それを紹介する。
羽生「▲9七角と出ちゃうと若干不利」
佐藤康光「▲9七角と上がると先手は苦しくなる」
森内「やったらやったで面白いのでは?でも自分が敢えてやるかといわれれば、やりませんけど」
谷川「(▲9七角と上がらずに)△8五歩に▲7六歩と突けば一局」
渡辺明「厳密には、△8五歩に▲9七角と上がるのはちょっと無理なんでしょう」
藤井猛「▲9七角から▲5六飛で持久戦になる。一局だけならうまくいくかもしれないが、先手がよくなるのは限られたパターンしかない。▲9七角と上がってしまうと、先手勝率のイメージは30%」
▲9七角を否定する棋士がほとんど。ではソフトの見解はどうか。
まず、図1を水匠3改に10分、考えさせた。すると、-152という数値を出した。ソフトは振り飛車を不利飛車と見るし、▲9六歩も何だか一手パスのような手なので、こんな数値で妥当だろう。
そこで次に、図1から▲9七角と上がった局面を3つのソフトに考えさせた。
各10分、考えさせた。候補手は3つで調べたが、載せたのは2つ。
<激指15>
-215 △8五歩 (▲9七角とした場合の後手の最善手)
-215 △9四歩 (▲9七角とした場合の後手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<やねうら王>
-435 △4二銀
-430 △8五歩
<水匠3改>
-295 △9四歩
-281 △4二銀
プロ棋士6人が言うとおり、▲9七角と上がると、のきなみけっこうなマイナスになってしまった。相変わらず、やねうら王は差をつけるね(^^;
5筋がすぐに突破できるわけではないので、形を決めすぎなのだと思う。
なお、▲深浦vs△羽生では、羽生が5筋を金銀4枚でガッチリ守って勝っている。
さて、次。次もプロの実戦から。
2001-07-01 将棋日本シリーズ ▲佐藤康光 vs. △先崎学
九間飛車って何だと思われるだろうが、後手が△9四歩~△9五歩~△9二飛~△9四飛と浮く作戦だ。
上記の実戦では初手から▲7六歩△9四歩▲2六歩△9五歩▲2五歩△3二金▲4八銀△7二銀▲7八金△9二飛と進んだ。
それが図2。
図2 九間飛車 △9二飛まで

△9二飛で、後手は作戦の正体を現した。この図2をソフトはどう見るか。
<激指15>
+122 ▲2四歩
+76 ▲3八銀
<やねうら王>
+342 ▲3六歩
+338 ▲6八玉
<水匠3改>
+232 ▲3六歩
+196 ▲6九玉
この▲佐藤康光vs△先崎の戦いは、後手が3筋の位を取り、△9四飛~△3四飛と形良く駒組みすることに成功した。
序盤を互角にすることに後手が成功している。しかし結果は康光の勝ち。
~今回のまとめ~
端角中飛車も、九間飛車も、なかなかうまくいかないようだ。まあそれが奇襲たるゆえんだが。
でも、こういう将棋を試してくれるプロたちには敬意を表したい。昔はソフトがなかったから、自力で考えてたんだろうし。
♪シェリー いつになれば 俺は這い上がれるだろう シェリー どこへ行けば 俺はたどりつけるだろう シェリー 俺は歌う 愛すべきものすべてに
明日、目次のページを作って、この企画の終わりとしたい。ではでは。
2021.06.20
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~パックマン~
♪君の肩に悲しみが 雪のように積もる夜には~
第23回。BGMには浜田省吾が流れている。
今回はパックマンを取り上げる。後手の奇襲で、そこそこ有名だ。
手順はシンプルで、初手から▲7六歩△4四歩で図1。これを▲同角と取れば、パックマンの発動だ。
なお、▲4四同角と取ってくれなければ、乱戦にはならない。
今回は、参考になるブログがある。「人生0手の読み」というサイト。そこのURLを貼っておく。
http://blog.livedoor.jp/nifu_senkin-daily/archives/84163738.html
図1 △4四歩まで

図1の局面を、ソフトはどう見ているか。いつものように各10分、考えさせた。 候補手は3つで調べたが、載せたのは2つ。
<激指15>
+191 ▲4四同角 (3手目の先手の最善手)
+64 ▲2六歩 (3手目の先手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<やねうら王>
+212 ▲4四同角
+212 ▲4八銀
<水匠3改>
+170 ▲4四同角
+164 ▲4八銀
やねうら王と水匠は、▲4四同角と取らずに▲4八銀でも先手不満なしと出ている。
では次に、図1から2手進めて、▲4四同角△4二飛と進んだ局面を調べる。それが図2。
図2 △4二飛まで

<激指15>
+203 ▲5三角成
+109 ▲6六角
<やねうら王>
+235 ▲5三角成
+222 ▲6六角
<水匠3改>
+165 ▲5三角成
+164 ▲6六角
▲5三角成以下は、△3四歩として、大乱戦になる。しかし、それを避ける手があるのだ。それが図2から▲6六角と引く手。
上記の「人生0手の読み」のサイトで書かれている手だ。そしてソフトは▲6六角を有力と出した。
特に、一番信頼がおける水匠が、▲5三角成と比べて、たった1点差しかつけなかった。
▲4四同角とパクッと食いついておいて、後手に「しめた」と思わせておいての▲6六角。これは面白い(笑)
なお、▲6六角以下には続きがある。それが図2以下、▲6六角△4七飛成▲4八飛。それが図3。
図3 ▲4八飛まで

図3でもし後手が△4六歩と打ってくれば、ハマり。先手の術中に落ちる。△4六歩以下▲8八飛と遠くに逃げておき、後手の龍が助からない。▲8八飛に△3四歩としても、▲2二角成△同銀▲4八銀で、後手の龍は詰んでいる。(水匠で+490)
戻って、図3からは飛車交換が必然だったのだ。図3は互角(水匠で+126)でこれからの将棋だ。
さて、次に、山崎プロがNHK杯で採用したパックマンを調べてみる。
2020-03-16 第70回NHK杯 1回戦第2局 ▲西川和宏 六段 vs. △山崎隆之 八段
図4 山崎流パックマン 後手山崎△4四歩まで

図4から▲同角△4二飛▲5三角成△4七飛成と進み、乱戦になった。それを山崎が勝ち切った。
さすが山崎将棋の面目躍如、魅せて勝つ!
なお図4の局面は、水匠3改で調べると+75でほぼ互角ということだ。
~今回のまとめ~
△4四歩パックマンには、▲同角でもいいし、他の手を指してもいい。しかし個人的には▲同角と取りたい。その後▲6六角と引いて、局面を収めるのも一局だし、▲5三角成から乱戦を受けて立っても面白いだろう。
今回はここまで。
♪誰もが Wow Wow 泣いてる 涙を 人には見せずに~
次回はいよいよ最終回。ではまた会いましょう~。
第23回。BGMには浜田省吾が流れている。
今回はパックマンを取り上げる。後手の奇襲で、そこそこ有名だ。
手順はシンプルで、初手から▲7六歩△4四歩で図1。これを▲同角と取れば、パックマンの発動だ。
なお、▲4四同角と取ってくれなければ、乱戦にはならない。
今回は、参考になるブログがある。「人生0手の読み」というサイト。そこのURLを貼っておく。
http://blog.livedoor.jp/nifu_senkin-daily/archives/84163738.html
図1 △4四歩まで

図1の局面を、ソフトはどう見ているか。いつものように各10分、考えさせた。 候補手は3つで調べたが、載せたのは2つ。
<激指15>
+191 ▲4四同角 (3手目の先手の最善手)
+64 ▲2六歩 (3手目の先手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<やねうら王>
+212 ▲4四同角
+212 ▲4八銀
<水匠3改>
+170 ▲4四同角
+164 ▲4八銀
やねうら王と水匠は、▲4四同角と取らずに▲4八銀でも先手不満なしと出ている。
では次に、図1から2手進めて、▲4四同角△4二飛と進んだ局面を調べる。それが図2。
図2 △4二飛まで

<激指15>
+203 ▲5三角成
+109 ▲6六角
<やねうら王>
+235 ▲5三角成
+222 ▲6六角
<水匠3改>
+165 ▲5三角成
+164 ▲6六角
▲5三角成以下は、△3四歩として、大乱戦になる。しかし、それを避ける手があるのだ。それが図2から▲6六角と引く手。
上記の「人生0手の読み」のサイトで書かれている手だ。そしてソフトは▲6六角を有力と出した。
特に、一番信頼がおける水匠が、▲5三角成と比べて、たった1点差しかつけなかった。
▲4四同角とパクッと食いついておいて、後手に「しめた」と思わせておいての▲6六角。これは面白い(笑)
なお、▲6六角以下には続きがある。それが図2以下、▲6六角△4七飛成▲4八飛。それが図3。
図3 ▲4八飛まで

図3でもし後手が△4六歩と打ってくれば、ハマり。先手の術中に落ちる。△4六歩以下▲8八飛と遠くに逃げておき、後手の龍が助からない。▲8八飛に△3四歩としても、▲2二角成△同銀▲4八銀で、後手の龍は詰んでいる。(水匠で+490)
戻って、図3からは飛車交換が必然だったのだ。図3は互角(水匠で+126)でこれからの将棋だ。
さて、次に、山崎プロがNHK杯で採用したパックマンを調べてみる。
2020-03-16 第70回NHK杯 1回戦第2局 ▲西川和宏 六段 vs. △山崎隆之 八段
図4 山崎流パックマン 後手山崎△4四歩まで

図4から▲同角△4二飛▲5三角成△4七飛成と進み、乱戦になった。それを山崎が勝ち切った。
さすが山崎将棋の面目躍如、魅せて勝つ!
なお図4の局面は、水匠3改で調べると+75でほぼ互角ということだ。
~今回のまとめ~
△4四歩パックマンには、▲同角でもいいし、他の手を指してもいい。しかし個人的には▲同角と取りたい。その後▲6六角と引いて、局面を収めるのも一局だし、▲5三角成から乱戦を受けて立っても面白いだろう。
今回はここまで。
♪誰もが Wow Wow 泣いてる 涙を 人には見せずに~
次回はいよいよ最終回。ではまた会いましょう~。
2021.06.19
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~右四間飛車~
♪あとどれくらい 切なくなれば あなたの声が 聴こえるかしら~
というわけで、この企画も第22回を迎えた。BGMには酒井法子が流れている。
今回は右四間飛車を取り上げる。
ここでひとつ、私からお詫びがあります。このブログに「2021.02.19 最も優秀な戦法は?それは右四間飛車!」という記事があります。
そこで私は、「24の常駐ソフト、JKishi18gouが対振り飛車の右四間飛車を時折指している」と書いてしまいました。
しかし、JKishi18gouの棋譜では、私が調べた限り、対振りの右四間が見当たらないです。確認できないです。
私の曖昧な記憶だけで書いてしまい、間違っていた可能性が高いです。申し訳ない。すいませんでした。
その後、JKishi18gouが対振りで右四間を指している棋譜を発見しました。(2023.04.25) さらにその後、JKishi18gouは相居飛車でも右四間を指していました。(2023.04.27)
さて今回はせっかくなので対振りと、対矢倉、2種類の右四間を調べてみた。
まずは対振りから。対振りの右四間と言っても、とても手が広いので、限定して一局面だけ調べた。
「イメージと読みの将棋観1」でテーマになっている図があるのだ。そこから引用。またこの本だ(^^;
質問・図1から▲2五桂の仕掛けは成立するか?先手勝率はどのくらい?
図1 対振りの右四間 △5四銀まで

羽生「結構有力だと思います。もちろん▲2五桂と仕掛けます。勝率50%はいくでしょう」
佐藤康光「▲2五桂の仕掛けが成立するとは全く思えない。限りなくゼロに近いですね。2五に跳んだ桂をあとでぽろっと取られちゃうんでしょ。ありえないですよ」
森内「仕掛けは成立すると思う。先手勝率55%~57%」
谷川「先手勝率50%いくかどうか」
渡辺明「仕掛けは成立すると思う。先手勝率52%」
藤井猛「実戦なら先手は40%勝てないでしょう。自分なら▲3七桂のところで▲8六歩△6四歩▲8七玉と固める」
では、ソフトはどう評価値を出したか。いつものように各10分計測した。候補手は3つで調べて、3つ載せた。
<激指15>
-47 ▲7七角 (図1からの先手の最善手)
-51 ▲1六歩 (図1からの先手の次善手)
-67 ▲8六歩 (図1からの先手の3番手の手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
+165 ▲3八飛
+145 ▲6八銀
+142 ▲2五歩
<水匠3改>
+137 ▲1六歩
+132 ▲4九飛
+117 ▲8六歩
激指はちょっと後手に振れている。しかしやねうら王と水匠は先手持ち。(もちろん互角なのだが)
やねうら王の▲3八飛って、何なんだ(^^;
で、ここで思ったのだが、▲2五桂が候補手に現れない。どういうことなのか。
そこで、激指の候補手を最大の10手、やねうら王の候補手を最大の15手、水匠の候補手を最大の10手にして調べてみたのだが(各10分)、なんと▲2五桂が1回も候補手に現れなかった。
そこで、図1から▲2五桂と跳んだ場合の評価値を調べてみた。もちろん各10分。候補手は3つで調べて、3つ載せた。
<激指15>
-334 △2二角
-33 △1五角
+252 △2四角
<やねうら王>
-455 △2二角
+31 △1五角
+376 △2四角
<水匠3改>
-280 △2二角
+98 △1五角
+401 △2四角
なんと、図1から▲2五桂は、△2二角と引かれて、のきなみマイナス評価だ。マイルドな評価値で知られる激指が-334も出すとは。これじゃ、候補手を10手表示にしようが、▲2五桂が候補に上がって来ないはずだ。
「イメージと読みの将棋観1」では、佐藤康光と藤井猛が▲2五桂に否定的で、康光は全否定していたが、それが裏付けられる結果となった。(もちろんソフトが正しければだが) この本によると、昭和52年度以降で図1になった対局は数局あるが、▲2五桂とした将棋は▲羽生vs△河口の一局だけだそうだ。(羽生の勝ち)
さて次に、対矢倉の右四間について調べる。これは「イメージと読みの将棋観2」にテーマ図が載っている。それが図2。
初手から▲7六歩△3四歩▲6六歩△6二銀▲6八銀△6四歩までが図2。
図2 先手の矢倉模様に後手の右四間 △6四歩まで

6人の棋士の意見を聞いてみよう。
羽生「先手は▲7八金か▲6七銀か▲5六歩の三択。一番指したいのは▲5六歩~▲5七銀~▲6八飛。▲7八金でも悪くはない」
佐藤康光「自分なら▲7八金と上がって受けに回る。それなりに自信はあります」
森内「△6四歩の直前の▲6八銀がどうかと思う。△8四歩の一手を省略されているので、すでに先手の得がなくなっている気がする」
谷川「▲7八金と指します。△8四歩の一手を省略されているのがちょっと損な気がするけど、後手も形を決めてしまっているわけだし」
渡辺明「先手がすでにちょっと損な感じ。仕方ないので▲7八金から矢倉にします。四間飛車もあるけど棋風じゃないので。それに腰掛銀で先手が潰されるとは思えないから」
藤井猛「この局面になってしまった以上、▲5七銀型四間飛車で対抗するのが自然でしょう。右四間飛車をやられて困っている人にはこの作戦がお勧めです」
「イメージと読みの将棋観2」では、この局面は平成以降101局現れ、先手が49勝52敗だそうだ。
ではソフトの意見を調べてみよう。各10分。候補手は3つで調べて、3つ載せた。
<激指15> 定跡なし
-1 ▲6七銀
-1 ▲1六歩
-17 ▲4六歩 (意味不明な手だけど、こう出たんだから、しょうがない(^^;)
<やねうら王>
-2 ▲7八金
-56 ▲6七銀
-78 ▲4八銀
<水匠3改>
-1 ▲6七銀
-1 ▲7八金
-36 ▲5六歩
~今回のまとめ~
まず図1だが、▲2五桂は成立しないようだ。康光会長、あんたが正しかった!(笑)
ただし、その仕掛けをしなければ、局面自体は先手は充分に戦える数値だ。個人的には藤井猛の言うように、天守閣美濃に囲って、仕掛けはその後にしたい。図1で互角である以上、対振りでも右四間は有力な戦法と言えると思う。(後手の△5四銀型がどうなのか、気になるところだが)
そして図2は、多くの棋士が言うように、すでに先手がちょっと損をしていることが分かる結果となった。もう先手の得は消えている。後手は△8四歩を指さないまま右四間に組めるので、不満なしだろう。
右四間は駒組みも易しいし、主導権を握っているしで、やはり優秀な戦法である。右四間は奇襲じゃない!・・・じゃあなんでこの企画で取り上げたんだと言われそう(笑)
今回はここまで。
♪碧いうさぎ ずっと待ってる 独りきりで 震えながら~
あと2回でこの企画も終わる。ではまた次回~。
というわけで、この企画も第22回を迎えた。BGMには酒井法子が流れている。
今回は右四間飛車を取り上げる。
ここでひとつ、私からお詫びがあります。このブログに「2021.02.19 最も優秀な戦法は?それは右四間飛車!」という記事があります。
そこで私は、「24の常駐ソフト、JKishi18gouが対振り飛車の右四間飛車を時折指している」と書いてしまいました。
しかし、JKishi18gouの棋譜では、私が調べた限り、対振りの右四間が見当たらないです。確認できないです。
私の曖昧な記憶だけで書いてしまい、間違っていた可能性が高いです。申し訳ない。すいませんでした。
その後、JKishi18gouが対振りで右四間を指している棋譜を発見しました。(2023.04.25) さらにその後、JKishi18gouは相居飛車でも右四間を指していました。(2023.04.27)
さて今回はせっかくなので対振りと、対矢倉、2種類の右四間を調べてみた。
まずは対振りから。対振りの右四間と言っても、とても手が広いので、限定して一局面だけ調べた。
「イメージと読みの将棋観1」でテーマになっている図があるのだ。そこから引用。またこの本だ(^^;
質問・図1から▲2五桂の仕掛けは成立するか?先手勝率はどのくらい?
図1 対振りの右四間 △5四銀まで

羽生「結構有力だと思います。もちろん▲2五桂と仕掛けます。勝率50%はいくでしょう」
佐藤康光「▲2五桂の仕掛けが成立するとは全く思えない。限りなくゼロに近いですね。2五に跳んだ桂をあとでぽろっと取られちゃうんでしょ。ありえないですよ」
森内「仕掛けは成立すると思う。先手勝率55%~57%」
谷川「先手勝率50%いくかどうか」
渡辺明「仕掛けは成立すると思う。先手勝率52%」
藤井猛「実戦なら先手は40%勝てないでしょう。自分なら▲3七桂のところで▲8六歩△6四歩▲8七玉と固める」
では、ソフトはどう評価値を出したか。いつものように各10分計測した。候補手は3つで調べて、3つ載せた。
<激指15>
-47 ▲7七角 (図1からの先手の最善手)
-51 ▲1六歩 (図1からの先手の次善手)
-67 ▲8六歩 (図1からの先手の3番手の手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
+165 ▲3八飛
+145 ▲6八銀
+142 ▲2五歩
<水匠3改>
+137 ▲1六歩
+132 ▲4九飛
+117 ▲8六歩
激指はちょっと後手に振れている。しかしやねうら王と水匠は先手持ち。(もちろん互角なのだが)
やねうら王の▲3八飛って、何なんだ(^^;
で、ここで思ったのだが、▲2五桂が候補手に現れない。どういうことなのか。
そこで、激指の候補手を最大の10手、やねうら王の候補手を最大の15手、水匠の候補手を最大の10手にして調べてみたのだが(各10分)、なんと▲2五桂が1回も候補手に現れなかった。
そこで、図1から▲2五桂と跳んだ場合の評価値を調べてみた。もちろん各10分。候補手は3つで調べて、3つ載せた。
<激指15>
-334 △2二角
-33 △1五角
+252 △2四角
<やねうら王>
-455 △2二角
+31 △1五角
+376 △2四角
<水匠3改>
-280 △2二角
+98 △1五角
+401 △2四角
なんと、図1から▲2五桂は、△2二角と引かれて、のきなみマイナス評価だ。マイルドな評価値で知られる激指が-334も出すとは。これじゃ、候補手を10手表示にしようが、▲2五桂が候補に上がって来ないはずだ。
「イメージと読みの将棋観1」では、佐藤康光と藤井猛が▲2五桂に否定的で、康光は全否定していたが、それが裏付けられる結果となった。(もちろんソフトが正しければだが) この本によると、昭和52年度以降で図1になった対局は数局あるが、▲2五桂とした将棋は▲羽生vs△河口の一局だけだそうだ。(羽生の勝ち)
さて次に、対矢倉の右四間について調べる。これは「イメージと読みの将棋観2」にテーマ図が載っている。それが図2。
初手から▲7六歩△3四歩▲6六歩△6二銀▲6八銀△6四歩までが図2。
図2 先手の矢倉模様に後手の右四間 △6四歩まで

6人の棋士の意見を聞いてみよう。
羽生「先手は▲7八金か▲6七銀か▲5六歩の三択。一番指したいのは▲5六歩~▲5七銀~▲6八飛。▲7八金でも悪くはない」
佐藤康光「自分なら▲7八金と上がって受けに回る。それなりに自信はあります」
森内「△6四歩の直前の▲6八銀がどうかと思う。△8四歩の一手を省略されているので、すでに先手の得がなくなっている気がする」
谷川「▲7八金と指します。△8四歩の一手を省略されているのがちょっと損な気がするけど、後手も形を決めてしまっているわけだし」
渡辺明「先手がすでにちょっと損な感じ。仕方ないので▲7八金から矢倉にします。四間飛車もあるけど棋風じゃないので。それに腰掛銀で先手が潰されるとは思えないから」
藤井猛「この局面になってしまった以上、▲5七銀型四間飛車で対抗するのが自然でしょう。右四間飛車をやられて困っている人にはこの作戦がお勧めです」
「イメージと読みの将棋観2」では、この局面は平成以降101局現れ、先手が49勝52敗だそうだ。
ではソフトの意見を調べてみよう。各10分。候補手は3つで調べて、3つ載せた。
<激指15> 定跡なし
-1 ▲6七銀
-1 ▲1六歩
-17 ▲4六歩 (意味不明な手だけど、こう出たんだから、しょうがない(^^;)
<やねうら王>
-2 ▲7八金
-56 ▲6七銀
-78 ▲4八銀
<水匠3改>
-1 ▲6七銀
-1 ▲7八金
-36 ▲5六歩
~今回のまとめ~
まず図1だが、▲2五桂は成立しないようだ。康光会長、あんたが正しかった!(笑)
ただし、その仕掛けをしなければ、局面自体は先手は充分に戦える数値だ。個人的には藤井猛の言うように、天守閣美濃に囲って、仕掛けはその後にしたい。図1で互角である以上、対振りでも右四間は有力な戦法と言えると思う。(後手の△5四銀型がどうなのか、気になるところだが)
そして図2は、多くの棋士が言うように、すでに先手がちょっと損をしていることが分かる結果となった。もう先手の得は消えている。後手は△8四歩を指さないまま右四間に組めるので、不満なしだろう。
右四間は駒組みも易しいし、主導権を握っているしで、やはり優秀な戦法である。右四間は奇襲じゃない!・・・じゃあなんでこの企画で取り上げたんだと言われそう(笑)
今回はここまで。
♪碧いうさぎ ずっと待ってる 独りきりで 震えながら~
あと2回でこの企画も終わる。ではまた次回~。
2021.06.18
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~先手早石田・後手早石田~
♪淋しいなんて 口に出したら 誰もみんな うとましくて 逃げ出してゆく~
というわけで、第21回を迎えたこの企画。私の体力もそろそろ限界(^^; BGMには中島みゆきが流れている。
今回は、早石田について調べてみた。まずは先手早石田から。
初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩で図1。
図1 先手早石田 ▲7五歩まで

「イメージと読みの将棋観2」(2010年初版)と、「イメージと読みの将棋観3」(2014年初版)にこの局面がテーマ図として載っている。
「イメージと読みの将棋観2」(2010年初版)の6棋士の意見をまとめてみた。
羽生「△6二銀でも△4二玉でも△5四歩でも△8四歩でも後手勝率50%。△8四歩が一番強い手」
佐藤康光「△8四歩は私が一番よく指すんだけど、一番危険な手でもあり、悪くなる可能性がある」
森内「どれも一局というしかありません。気分でいろいろやります」
谷川「優劣の順番はないです。△8四歩は一番強い指し方だが、急戦に対する準備がないと指せない」
渡辺明「流行と相手を見て決めることになりますね」
藤井猛「僕は振り飛車党だから△5四歩で行きます」
なお、図1は平成19年度で61局指されており先手38勝28敗。
平成20年度は93局指されており先手57勝36敗。
平成21年度は123局指されており先手70勝50敗3千日手。という統計が書かれている。
次に、「イメージと読みの将棋観3」(2014年初版)にも、このテーマが取り上げられている。なんと2回連続、テーマ図として選ばれているのだ。そこでの6棋士の見解やいかに。
渡辺明「△8四歩~△8五歩は現状では後手の明確な対策が発見されていない」
佐藤康光「今は△8四歩の可能性は一番下かもしれない。△8四歩と突くのはかなりリスクが高いことが分かってきた」
森内「一番普通だと思っていた△8四歩が実は危ない手になっているとは驚きです」
谷川「△8四歩は後手をもって収めるのが大変なんですよ。(図1で)後手を持ってどうするかちょっと悩んでいるところです」
久保「△8四歩で決着をつけに行ったらどうなるか。まだ結論は出ていない」
広瀬「△8四歩は覚悟が必要」
なお、図1は平成23年度は192局、平成24年度は158局指されているということだ。(勝敗は書かれてない)
激指15(2019年発売)では▲7五歩はプロ間で1832局前例があり、最近10年で1527局指されていると出る。
多くの棋士が△8四歩の危険性を指摘している。特に2010年から4年経過した2014年には、△8四歩は危ない、と言う棋士が多い。興味深い内容だ。
さて、ソフトはの評価値はどうか。いつものように各ソフトに10分、考えさせた。候補手は3つで、今回は3つ載せた。
<激指15> 定跡なし
-64 △7二銀 (4手目の後手の最善手)
-62 △4二玉 (4手目の後手の次善手)
-45 △1四歩 (4手目の後手の3番手の手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
-150 △5四歩
-145 △6二銀
-114 △1四歩
<水匠3改> 定跡の利用なし
-126 △8四歩
-94 △6二銀
-101 △7二銀 (3番手のほうが2番手より後手にとって数値が高いが、よくある現象)
さて、次は後手の早石田を見てみよう。初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3五歩となって、図2。
この局面は「イメージと読みの将棋観1」(2008年初版)のテーマ図として採用されている。
図2 後手早石田 △3五歩まで

6棋士の意見をまとめてみた。
羽生「(図2から)▲6八玉△4四歩▲2五歩△3三角として先手十分。後手の石田流はあまりいい作戦じゃないと思う」
佐藤康光「▲2五歩△3二飛▲4八銀と指します」
森内「実戦なら▲6八玉を選びます」
谷川「無難な指し方なら▲4八銀とか▲5六歩。強く指すなら▲2五歩」
渡辺明「平凡に▲2五歩△3二飛▲4八銀とします」
藤井猛「▲5六歩の一手さえ知っていれば先手は困らない。他に▲6八玉もある」
「イメージと読みの将棋観1」(2008年初版)によれば、平成以降の公式戦で50局指され、先手の30勝20敗、だそうだ。
激指15ではちょっと調べにくかったが、図2は123局前例があり、最近10年で49局指されているようだ。
ソフトはどう考えているか。
<激指15> 定跡なし
+150 ▲2五歩
+150 ▲7八金
+129 ▲6八玉
<やねうら王>
+298 ▲5六歩
+260 ▲7八金
+244 ▲2五歩
<水匠3改> 定跡の利用なし
+180 ▲6八玉
+141 ▲2五歩
+134 ▲3八銀
やねうら王の数値が+298と、かなり先手側に振れた。たった4手でこんなに差がついては、ソフト同士では先手が有利だろう。
~今回のまとめ~
先手と後手、いずれも早石田を受ける側に有利という結果だった。
でもソフトは振り飛車を不利としているので、数値はあまり参考にならないかもしれない。
先手早石田に対する後手の対策の手は膨大にあり、やねうら王の候補手を最大の15にすると、15とおり、どれを選んでも互角の候補手が出て来る。個人的には、4手目△8四歩はとても危険な手で、△8四歩を突いたからには△8五歩としないと意味がないので、もう一回飛車先を突くことになる。すると、その間に久保流やら鈴木大介流やらの攻めをモロに受け止めなければならない。4手目△8四歩はおススメできない。
後手早石田は、先手はすでに▲2六歩と一回飛車先を突いている。これが先手にマイナスに作用するときもあるのだ。後手が3筋から強襲してきた場合、角交換から▲1五角が3七に利いて「王手なんとか取り」になる筋がよく出てくる。しかしそれが▲2六歩と突いていると、3七に利いていないので、▲1五角が打てなくなってしまっているのだ。先手だからって、メリットばかりではない。
囲碁将棋チャンネルの講座で、門倉プロが、後手早石田の講座を詳しくやっており、「後手早石田をとがめるのは、容易なことではない」と思い知らされる。とがめきれたらプロ級だろう。
♪歌姫 スカートの裾を 歌姫 潮風になげて 夢も哀しみも欲望も 歌い流してくれ~
今回はここまで。この企画も、あと3回で終わる予定だ。ではまた次回~。
というわけで、第21回を迎えたこの企画。私の体力もそろそろ限界(^^; BGMには中島みゆきが流れている。
今回は、早石田について調べてみた。まずは先手早石田から。
初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩で図1。
図1 先手早石田 ▲7五歩まで

「イメージと読みの将棋観2」(2010年初版)と、「イメージと読みの将棋観3」(2014年初版)にこの局面がテーマ図として載っている。
「イメージと読みの将棋観2」(2010年初版)の6棋士の意見をまとめてみた。
羽生「△6二銀でも△4二玉でも△5四歩でも△8四歩でも後手勝率50%。△8四歩が一番強い手」
佐藤康光「△8四歩は私が一番よく指すんだけど、一番危険な手でもあり、悪くなる可能性がある」
森内「どれも一局というしかありません。気分でいろいろやります」
谷川「優劣の順番はないです。△8四歩は一番強い指し方だが、急戦に対する準備がないと指せない」
渡辺明「流行と相手を見て決めることになりますね」
藤井猛「僕は振り飛車党だから△5四歩で行きます」
なお、図1は平成19年度で61局指されており先手38勝28敗。
平成20年度は93局指されており先手57勝36敗。
平成21年度は123局指されており先手70勝50敗3千日手。という統計が書かれている。
次に、「イメージと読みの将棋観3」(2014年初版)にも、このテーマが取り上げられている。なんと2回連続、テーマ図として選ばれているのだ。そこでの6棋士の見解やいかに。
渡辺明「△8四歩~△8五歩は現状では後手の明確な対策が発見されていない」
佐藤康光「今は△8四歩の可能性は一番下かもしれない。△8四歩と突くのはかなりリスクが高いことが分かってきた」
森内「一番普通だと思っていた△8四歩が実は危ない手になっているとは驚きです」
谷川「△8四歩は後手をもって収めるのが大変なんですよ。(図1で)後手を持ってどうするかちょっと悩んでいるところです」
久保「△8四歩で決着をつけに行ったらどうなるか。まだ結論は出ていない」
広瀬「△8四歩は覚悟が必要」
なお、図1は平成23年度は192局、平成24年度は158局指されているということだ。(勝敗は書かれてない)
激指15(2019年発売)では▲7五歩はプロ間で1832局前例があり、最近10年で1527局指されていると出る。
多くの棋士が△8四歩の危険性を指摘している。特に2010年から4年経過した2014年には、△8四歩は危ない、と言う棋士が多い。興味深い内容だ。
さて、ソフトはの評価値はどうか。いつものように各ソフトに10分、考えさせた。候補手は3つで、今回は3つ載せた。
<激指15> 定跡なし
-64 △7二銀 (4手目の後手の最善手)
-62 △4二玉 (4手目の後手の次善手)
-45 △1四歩 (4手目の後手の3番手の手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
-150 △5四歩
-145 △6二銀
-114 △1四歩
<水匠3改> 定跡の利用なし
-126 △8四歩
-94 △6二銀
-101 △7二銀 (3番手のほうが2番手より後手にとって数値が高いが、よくある現象)
さて、次は後手の早石田を見てみよう。初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3五歩となって、図2。
この局面は「イメージと読みの将棋観1」(2008年初版)のテーマ図として採用されている。
図2 後手早石田 △3五歩まで

6棋士の意見をまとめてみた。
羽生「(図2から)▲6八玉△4四歩▲2五歩△3三角として先手十分。後手の石田流はあまりいい作戦じゃないと思う」
佐藤康光「▲2五歩△3二飛▲4八銀と指します」
森内「実戦なら▲6八玉を選びます」
谷川「無難な指し方なら▲4八銀とか▲5六歩。強く指すなら▲2五歩」
渡辺明「平凡に▲2五歩△3二飛▲4八銀とします」
藤井猛「▲5六歩の一手さえ知っていれば先手は困らない。他に▲6八玉もある」
「イメージと読みの将棋観1」(2008年初版)によれば、平成以降の公式戦で50局指され、先手の30勝20敗、だそうだ。
激指15ではちょっと調べにくかったが、図2は123局前例があり、最近10年で49局指されているようだ。
ソフトはどう考えているか。
<激指15> 定跡なし
+150 ▲2五歩
+150 ▲7八金
+129 ▲6八玉
<やねうら王>
+298 ▲5六歩
+260 ▲7八金
+244 ▲2五歩
<水匠3改> 定跡の利用なし
+180 ▲6八玉
+141 ▲2五歩
+134 ▲3八銀
やねうら王の数値が+298と、かなり先手側に振れた。たった4手でこんなに差がついては、ソフト同士では先手が有利だろう。
~今回のまとめ~
先手と後手、いずれも早石田を受ける側に有利という結果だった。
でもソフトは振り飛車を不利としているので、数値はあまり参考にならないかもしれない。
先手早石田に対する後手の対策の手は膨大にあり、やねうら王の候補手を最大の15にすると、15とおり、どれを選んでも互角の候補手が出て来る。個人的には、4手目△8四歩はとても危険な手で、△8四歩を突いたからには△8五歩としないと意味がないので、もう一回飛車先を突くことになる。すると、その間に久保流やら鈴木大介流やらの攻めをモロに受け止めなければならない。4手目△8四歩はおススメできない。
後手早石田は、先手はすでに▲2六歩と一回飛車先を突いている。これが先手にマイナスに作用するときもあるのだ。後手が3筋から強襲してきた場合、角交換から▲1五角が3七に利いて「王手なんとか取り」になる筋がよく出てくる。しかしそれが▲2六歩と突いていると、3七に利いていないので、▲1五角が打てなくなってしまっているのだ。先手だからって、メリットばかりではない。
囲碁将棋チャンネルの講座で、門倉プロが、後手早石田の講座を詳しくやっており、「後手早石田をとがめるのは、容易なことではない」と思い知らされる。とがめきれたらプロ級だろう。
♪歌姫 スカートの裾を 歌姫 潮風になげて 夢も哀しみも欲望も 歌い流してくれ~
今回はここまで。この企画も、あと3回で終わる予定だ。ではまた次回~。
2021.06.17
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~横歩取り・△4五角戦法と相横歩取り~
♪七回目のベルで 受話器を取った君~ 名前を言わなくても声ですぐ 分かってくれる~
というわけで、めでたく第20回を迎えたこの企画。BGMには宇多田ヒカルが流れている。
今回は横歩取りを調べてみる。△4五角戦法と相横歩取り戦法だ。この2つの戦法を、ソフトはどう考えるのか。
特に△4五角戦法の評価の悪さはどれほどか、知りたかった。では行ってみよう。
各10分ずつ。候補手は3つで調べたが、ここに載せたのは2つ。
図1 基本図 ▲3四飛まで

図1のように、相居飛車で角道を開け合い、先手が3四の横歩を取る形を横歩取りと言う。
ここから色々な戦い方がある。その中で奇襲とされている代表格が△4五角戦法というもの。
図1から△8八角成▲同銀△2八歩▲同銀△4五角と進んだのが図2。
図2 △4五角まで

なお、激指15で検討モードを定跡有りにすると、前例が出る。△4五角の局面はプロ間で15局。最近10年で2局と出た。
<激指15> 定跡の利用なし
+84 ▲2四飛 (図2での先手の最善手)
+5 ▲7七角 (図2での先手の次善手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
+605 ▲2四飛
+222 ▲7七角
<水匠3改> 定跡の利用なし
+590 ▲2四飛
+81 ▲3五飛
では、次に相横歩取り。図1の基本図から、△8八角成▲同銀△7六飛と進む戦い方を相横歩取りと言う。
図3 相横歩取り △7六飛まで

激指15によると、図3の局面はプロ間で161局前例があり、最近10年で34局指されていると出る。
<激指15> 定跡の利用なし
+202 ▲7七桂 (図3での先手の最善手)
+193 ▲7七銀 (図3での先手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<やねうら王>
+416 ▲7七銀
+330 ▲7七桂
<水匠3改>
+318 ▲7七銀
+252 ▲7七桂
さて、おまけとして、もう1つ調べてみた。それは青野流という、近年、幅を利かせている戦法だ。(青野流は2018年に升田幸三賞を受賞している)
これが優秀なため、横歩取りの後手を持ちたがらない人が増えたという話をよく聞く。
その結果、相掛かりや雁木が増えたらしい。青野流の評価値はいかほどか。調べてみた。
図1の基本図から、△3三角▲5八玉△2二銀▲3六歩△8二飛▲3七桂と進んだのが図4。
先手は飛車を引かず、右桂を跳ねていく。これが青野流という指し方だ。
図4 青野流 ▲3七桂まで

激指15は図4はプロ間で17局前例があり、最近10年で13局ありと出る。
少ないように思うが、激指15が発売されたのが2019年。うーん、17局しか前例がない?よく分からない。
<激指15>
+78 △4二玉
+154 △8八角成
<やねうら王>
+311 △4二玉
+355 △8八角成
<水匠3改>
+204 △4二玉
+242 △8八角成
~今回のまとめ~
まず△4五角戦法の評価だが、激指はたった+84と出した。しかし、やねうら王がなんと+605。序盤の作戦選びの時点で、もう600を超えるとは・・・。そして水匠も、なんと+590という評価。冷静な水匠先生がこんな数字を出すとは。
やはり△4五角戦法は奇襲なのだ。ちなみにこの戦法は、後手が攻め切るか先手が受け切るかという戦いになる。
次に相横歩取りだが、これも後手にとって厳しい評価が出された。やねうら王が+416。水匠が+318。
詰みまで研究されているが、まだ結論が出されてない無茶苦茶に難解な戦いなのだ。しかしソフトは作戦選びの時点で差があるとしている。
最後に青野流。やねうら王が+311。水匠が+204。先手に不満なしの数値だ。
なお、私に横歩取りのことを訊かれても、何も分からない(^^; 空中戦がとにかく苦手で、指していても観ていても、ちんぷんかんぷん。私は横歩の取れない居飛車党なのだ。もう、しょうがないよね。
♪It's Automatic 抱きしめられると 君とparadiseにいるみたい~
というわけで、今回はこれで終わり。また次のテーマで会いましょう~。
というわけで、めでたく第20回を迎えたこの企画。BGMには宇多田ヒカルが流れている。
今回は横歩取りを調べてみる。△4五角戦法と相横歩取り戦法だ。この2つの戦法を、ソフトはどう考えるのか。
特に△4五角戦法の評価の悪さはどれほどか、知りたかった。では行ってみよう。
各10分ずつ。候補手は3つで調べたが、ここに載せたのは2つ。
図1 基本図 ▲3四飛まで

図1のように、相居飛車で角道を開け合い、先手が3四の横歩を取る形を横歩取りと言う。
ここから色々な戦い方がある。その中で奇襲とされている代表格が△4五角戦法というもの。
図1から△8八角成▲同銀△2八歩▲同銀△4五角と進んだのが図2。
図2 △4五角まで

なお、激指15で検討モードを定跡有りにすると、前例が出る。△4五角の局面はプロ間で15局。最近10年で2局と出た。
<激指15> 定跡の利用なし
+84 ▲2四飛 (図2での先手の最善手)
+5 ▲7七角 (図2での先手の次善手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
+605 ▲2四飛
+222 ▲7七角
<水匠3改> 定跡の利用なし
+590 ▲2四飛
+81 ▲3五飛
では、次に相横歩取り。図1の基本図から、△8八角成▲同銀△7六飛と進む戦い方を相横歩取りと言う。
図3 相横歩取り △7六飛まで

激指15によると、図3の局面はプロ間で161局前例があり、最近10年で34局指されていると出る。
<激指15> 定跡の利用なし
+202 ▲7七桂 (図3での先手の最善手)
+193 ▲7七銀 (図3での先手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<やねうら王>
+416 ▲7七銀
+330 ▲7七桂
<水匠3改>
+318 ▲7七銀
+252 ▲7七桂
さて、おまけとして、もう1つ調べてみた。それは青野流という、近年、幅を利かせている戦法だ。(青野流は2018年に升田幸三賞を受賞している)
これが優秀なため、横歩取りの後手を持ちたがらない人が増えたという話をよく聞く。
その結果、相掛かりや雁木が増えたらしい。青野流の評価値はいかほどか。調べてみた。
図1の基本図から、△3三角▲5八玉△2二銀▲3六歩△8二飛▲3七桂と進んだのが図4。
先手は飛車を引かず、右桂を跳ねていく。これが青野流という指し方だ。
図4 青野流 ▲3七桂まで

激指15は図4はプロ間で17局前例があり、最近10年で13局ありと出る。
少ないように思うが、激指15が発売されたのが2019年。うーん、17局しか前例がない?よく分からない。
<激指15>
+78 △4二玉
+154 △8八角成
<やねうら王>
+311 △4二玉
+355 △8八角成
<水匠3改>
+204 △4二玉
+242 △8八角成
~今回のまとめ~
まず△4五角戦法の評価だが、激指はたった+84と出した。しかし、やねうら王がなんと+605。序盤の作戦選びの時点で、もう600を超えるとは・・・。そして水匠も、なんと+590という評価。冷静な水匠先生がこんな数字を出すとは。
やはり△4五角戦法は奇襲なのだ。ちなみにこの戦法は、後手が攻め切るか先手が受け切るかという戦いになる。
次に相横歩取りだが、これも後手にとって厳しい評価が出された。やねうら王が+416。水匠が+318。
詰みまで研究されているが、まだ結論が出されてない無茶苦茶に難解な戦いなのだ。しかしソフトは作戦選びの時点で差があるとしている。
最後に青野流。やねうら王が+311。水匠が+204。先手に不満なしの数値だ。
なお、私に横歩取りのことを訊かれても、何も分からない(^^; 空中戦がとにかく苦手で、指していても観ていても、ちんぷんかんぷん。私は横歩の取れない居飛車党なのだ。もう、しょうがないよね。
♪It's Automatic 抱きしめられると 君とparadiseにいるみたい~
というわけで、今回はこれで終わり。また次のテーマで会いましょう~。
2021.06.16
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~相掛かり・源内流と△8四飛を狙い撃ち作戦~
♪懐かしい匂いがした スミレの花時計~ 恋愛中ってもっと 楽しいと思ってた~
というわけで、第19回。BGMには大黒摩季が流れている。
今回は、前回の続き。5手爆弾から派生した奇襲を2つ紹介。先手番の奇襲。
まずは源内(げんない)流から。この奇襲は軽いハメ手。「新版奇襲大全」(1999年初版)という本に載っている。
「天理市の源内光範さん愛用のもの」とのこと。
初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲2四歩△同歩で図1。
図1 △2四同歩まで

この図1から、▲7八金と上がるのが源内流。そして後手がすぐ△8六歩と突いて来れば、ハマり。図1以下、▲7八金△8六歩▲同歩△同飛▲2三歩で図2へ。
図2 ▲2三歩まで

図2以降は、△8七歩▲2二歩成△同銀▲7五角△8二飛▲5三角成(図3)と進むのが一例。
図3 ▲5三角成まで

新版奇襲大全には、こう書かれている。「役者なみの演技が必要」「この戦法を実行するには、少々口三味線を弾く必要がある。」「図1の局面で定跡に気づいたふりをして、『あっ、いけない。これ(△2四歩)を取ったらイカンのや』とつぶやく。」「そして2四歩に掛けていた手をひっこめ、残念そうに▲7八金と上がる。」「この演技力いかんで成否が決まるので要注意だ。」
要するに、7手目▲7八金のあと、後手に8手目△8六歩と突いてもらわなければ、全く成立しない奇襲なのだ(^^;
図2になってしまえば、先手が+450ほどリードと水匠の見解。・・・でも、こううまく行くとは思えない(^^;
それにしても奇襲大全の書き方は面白い(笑)
さて、次も5手爆弾から派生した奇襲だが、今度は本格的。
図1から、▲7八金と上がる。それが図4。ここまでは源内流と同じ。
図4 ▲7八金まで

図4から、後手のある一手を待つ。もし図4から△3二金と上がられたら、もう奇襲はあきらめて、普通に▲2四飛と歩を取って通常の相掛かりになる。
図4から△8四飛と浮き飛車にするのが、2四の歩を守って考えられる手だ。
そして、この手を先手は待っていたのだ。それが図5。
図5 △8四飛まで

「イメージと読みの将棋観1」(2008年初版)で、5手爆弾のテーマで、羽生がこう語っている。
羽生「もし自分の実戦でうっかり(5手目)▲2四歩と突いちゃったら、▲7八金(図4)と上がりますよ。そのあと△8四飛から△3二金~△2三金という調子で一歩得を主張されて悪いとは思うけど、▲2四歩△同歩▲同飛といくよりはいいでしょう。▲2四歩△同歩▲7八金の反省手順も30%くらいの勝率かなあ。やっぱり一歩損は大きすぎる。」
羽生がこう語るくらいなので、△8四飛は人間には魅力的に映るのだ。なにせ、一歩タダ取りだから。
ところが、ソフトたちはそう思っていないのだ。前回調べたが、5手目▲2四歩に6手目△同歩の局面では、先手はほぼ初期配置のリードを保ったままである。これはどういうことなのか。
つまり、△8四飛をソフトはあまり良い手と考えていないのだ。△8四飛でなく△3二金をススメている。
△8四飛以下、どういう風になるのか、先手の狙いは何か。一例を示す。変化は色々あるので、あくまで一例。
図6 △8四飛からの一例

KI2形式でも初手から貼っておく。
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲2四歩 △同 歩
▲7八金 △8四飛 ▲7六歩 △3二銀 ▲6六角 △7四飛
▲6八銀 △7六飛 ▲7七銀 △7四飛 ▲4八銀 △2三銀
▲5六歩 △3二金 ▲5七銀 △4二玉 ▲4六銀 △3四歩
▲5七角 △7二銀 ▲6九玉
まで27手で中断
まず、先手は▲7六歩~▲6六角で、後手の△8四飛に当たりをかけていく。後手は2筋を△3二銀~△2三銀と守るくらいだろう。(羽生は△3二金~△2三金を推していたが、銀が普通の感覚と思う)
後手は△7四飛~△7六飛と、もう一歩を取りに来るだろうが、先手はもう一歩もあげてしまう。
先手が持ち歩ゼロ歩vs後手の2歩得だから、後手が形勢いいだろうと一見、思われるが、実は互角。(図6は、水匠3改で10分計測で+127) むしろ先手のほうが方針が分かりやすい。先手は▲5七角と引き、右銀と飛車で協力して2四の地点を狙っていく。そして玉も囲いやすい。
後手は飛車が中途半端で、玉が囲いにくい。△2三銀の形がいまいちなのだ。そして歩が伸びていないので、持ち歩の使い道がない。先手は3筋でいずれ歩は手に入る恰好だ。
水匠によれば、図6の局面は互角だが、先手も面白く戦えると思う。(棋譜の途中、先手は▲2二角成~▲8三角の筋があるが、▲5七角を実現したいために、あえて見送っている)
この5手爆弾のスタートからの7手目▲7八金は、プロも採用している。2018年11月19日の▲千田vs△船江で、千田プロが採用している。
その時は船江は誘いに乗らず、8手目△3二金と自重し、通常の相掛かりに戻った。
この5手爆弾から△8四飛を誘って、それを先手がとがめに行くという作戦を、私は勝手に「△8四飛を狙い撃ち作戦」と名付けた。
この奇襲は、破壊力はない。しかし、ノーリスクで指せるところに、すごさがある。
5手爆弾からの7手目▲7八金を、後手はとがめることはできないのだ。後手が△8四飛にしてくれればこの作戦が発動できるし、△3二金なら通常の相掛かりに戻るだけ。ノーリスクで奇襲が指せる。こんな奇襲は他にめったにないだろう。
ネットの「将棋Wikibooks」というページに、少しだけ紹介されているこの作戦。あまり知られてないし、面白いと思ったので今回、取り上げた。
♪ら・ら・ら~ 今日も明日もあなたに 逢いたい~
ではまた次回、お会いしましょう。
というわけで、第19回。BGMには大黒摩季が流れている。
今回は、前回の続き。5手爆弾から派生した奇襲を2つ紹介。先手番の奇襲。
まずは源内(げんない)流から。この奇襲は軽いハメ手。「新版奇襲大全」(1999年初版)という本に載っている。
「天理市の源内光範さん愛用のもの」とのこと。
初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲2四歩△同歩で図1。
図1 △2四同歩まで

この図1から、▲7八金と上がるのが源内流。そして後手がすぐ△8六歩と突いて来れば、ハマり。図1以下、▲7八金△8六歩▲同歩△同飛▲2三歩で図2へ。
図2 ▲2三歩まで

図2以降は、△8七歩▲2二歩成△同銀▲7五角△8二飛▲5三角成(図3)と進むのが一例。
図3 ▲5三角成まで

新版奇襲大全には、こう書かれている。「役者なみの演技が必要」「この戦法を実行するには、少々口三味線を弾く必要がある。」「図1の局面で定跡に気づいたふりをして、『あっ、いけない。これ(△2四歩)を取ったらイカンのや』とつぶやく。」「そして2四歩に掛けていた手をひっこめ、残念そうに▲7八金と上がる。」「この演技力いかんで成否が決まるので要注意だ。」
要するに、7手目▲7八金のあと、後手に8手目△8六歩と突いてもらわなければ、全く成立しない奇襲なのだ(^^;
図2になってしまえば、先手が+450ほどリードと水匠の見解。・・・でも、こううまく行くとは思えない(^^;
それにしても奇襲大全の書き方は面白い(笑)
さて、次も5手爆弾から派生した奇襲だが、今度は本格的。
図1から、▲7八金と上がる。それが図4。ここまでは源内流と同じ。
図4 ▲7八金まで

図4から、後手のある一手を待つ。もし図4から△3二金と上がられたら、もう奇襲はあきらめて、普通に▲2四飛と歩を取って通常の相掛かりになる。
図4から△8四飛と浮き飛車にするのが、2四の歩を守って考えられる手だ。
そして、この手を先手は待っていたのだ。それが図5。
図5 △8四飛まで

「イメージと読みの将棋観1」(2008年初版)で、5手爆弾のテーマで、羽生がこう語っている。
羽生「もし自分の実戦でうっかり(5手目)▲2四歩と突いちゃったら、▲7八金(図4)と上がりますよ。そのあと△8四飛から△3二金~△2三金という調子で一歩得を主張されて悪いとは思うけど、▲2四歩△同歩▲同飛といくよりはいいでしょう。▲2四歩△同歩▲7八金の反省手順も30%くらいの勝率かなあ。やっぱり一歩損は大きすぎる。」
羽生がこう語るくらいなので、△8四飛は人間には魅力的に映るのだ。なにせ、一歩タダ取りだから。
ところが、ソフトたちはそう思っていないのだ。前回調べたが、5手目▲2四歩に6手目△同歩の局面では、先手はほぼ初期配置のリードを保ったままである。これはどういうことなのか。
つまり、△8四飛をソフトはあまり良い手と考えていないのだ。△8四飛でなく△3二金をススメている。
△8四飛以下、どういう風になるのか、先手の狙いは何か。一例を示す。変化は色々あるので、あくまで一例。
図6 △8四飛からの一例

KI2形式でも初手から貼っておく。
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲2四歩 △同 歩
▲7八金 △8四飛 ▲7六歩 △3二銀 ▲6六角 △7四飛
▲6八銀 △7六飛 ▲7七銀 △7四飛 ▲4八銀 △2三銀
▲5六歩 △3二金 ▲5七銀 △4二玉 ▲4六銀 △3四歩
▲5七角 △7二銀 ▲6九玉
まで27手で中断
まず、先手は▲7六歩~▲6六角で、後手の△8四飛に当たりをかけていく。後手は2筋を△3二銀~△2三銀と守るくらいだろう。(羽生は△3二金~△2三金を推していたが、銀が普通の感覚と思う)
後手は△7四飛~△7六飛と、もう一歩を取りに来るだろうが、先手はもう一歩もあげてしまう。
先手が持ち歩ゼロ歩vs後手の2歩得だから、後手が形勢いいだろうと一見、思われるが、実は互角。(図6は、水匠3改で10分計測で+127) むしろ先手のほうが方針が分かりやすい。先手は▲5七角と引き、右銀と飛車で協力して2四の地点を狙っていく。そして玉も囲いやすい。
後手は飛車が中途半端で、玉が囲いにくい。△2三銀の形がいまいちなのだ。そして歩が伸びていないので、持ち歩の使い道がない。先手は3筋でいずれ歩は手に入る恰好だ。
水匠によれば、図6の局面は互角だが、先手も面白く戦えると思う。(棋譜の途中、先手は▲2二角成~▲8三角の筋があるが、▲5七角を実現したいために、あえて見送っている)
この5手爆弾のスタートからの7手目▲7八金は、プロも採用している。2018年11月19日の▲千田vs△船江で、千田プロが採用している。
その時は船江は誘いに乗らず、8手目△3二金と自重し、通常の相掛かりに戻った。
この5手爆弾から△8四飛を誘って、それを先手がとがめに行くという作戦を、私は勝手に「△8四飛を狙い撃ち作戦」と名付けた。
この奇襲は、破壊力はない。しかし、ノーリスクで指せるところに、すごさがある。
5手爆弾からの7手目▲7八金を、後手はとがめることはできないのだ。後手が△8四飛にしてくれればこの作戦が発動できるし、△3二金なら通常の相掛かりに戻るだけ。ノーリスクで奇襲が指せる。こんな奇襲は他にめったにないだろう。
ネットの「将棋Wikibooks」というページに、少しだけ紹介されているこの作戦。あまり知られてないし、面白いと思ったので今回、取り上げた。
♪ら・ら・ら~ 今日も明日もあなたに 逢いたい~
ではまた次回、お会いしましょう。
2021.06.15
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~相掛かり・5手爆弾~
♪感じてみろ! 叫んでみろ! 全て脱ぎ捨てろ~!
というわけで、第18回。BGMにはX JAPANが流れている。
今回は、相掛かりの5手爆弾をソフトで調べてみる。
初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲2四歩と、一直線に進む変化だ。(図1)
例によって、「イメージと読みの将棋観1」(2008年)にも5手爆弾に対する6棋士による見解が載っている。
羽生「定跡通りの手順で馬を作られたら、先手勝率30%いかないでしょう」
佐藤康光「先手が35%くらい勝ってもおかしくない。それなりに難しいところもありそう」
森内「基本定跡で先手不利。先手勝率は30%くらい」
谷川「先手勝率のイメージは40%くらい」
渡辺明「先手勝率30%」
藤井猛「先手勝率のイメージは30%以下」
実はこのテーマは2013年にも、私は調べている。
それが以下。詳しく知りたい人は参考にしてほしい。
相掛かり5手目▲2四歩、通称「5手爆弾」を激指定跡道場3で研究
http://mune1232007.blog121.fc2.com/blog-date-201305.html
さらに、最新のプロの見解(2020年)として、村中プロのYouTubeの講座もチェック。
【5手目▲2四歩はNG⁈】素朴な疑問を解明します!で検索。この村中講座は、たぶんソフトを使って研究したと思われ、安心で、分かりやすい。さすがプロの仕事だ。
https://www.youtube.com/watch?v=lg3qCtFvVNo
図1 5手爆弾 ▲2四歩まで

各10分ずつ、3つのソフトで調べてみた。候補手は3つで調べたが、ここに載せたのは2つ。
なお、激指にこの▲2四歩は定跡に登録されてなかった。
<激指15>
+28 △2四同歩 (ソフトが示した6手目の最善手)
+252 △8六歩 (ソフトが示した6手目の次善手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
+44 △2四同歩
+421 △8六歩
<水匠3改>
+50 △2四同歩
+386 △8六歩
上記で分かるとうり、5手目▲2四歩では、まだ先手が悪くなっていない。次の手は当然の△2四同歩。問題はその次7手目▲2四同飛にある。(▲2四同飛でなく▲7八金としていれば、ソフト的にはまだ差がつかず互角ということだ。)
さて、図1から△2四同歩▲同飛△8六歩▲同歩△8七歩▲2三歩△8八歩成▲同銀△3五角▲2八飛△5七角成▲2二歩成と進んだのが図2。
長いのでKI2形式で初手から貼っておく。
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △8六歩 ▲同 歩 △8七歩 ▲2三歩 △8八歩成
▲同 銀 △3五角 ▲2八飛 △5七角成 ▲2二歩成
まで17手で中断
図2 ▲2二歩成まで

ここはいつも問題になるところ。△2二同銀か、△2二同飛か?
ソフトに考えさせてみた。各10分ずつ。候補手3つで調べて、今回は3つ載せることにした。
<激指15>
-321 △2二同飛
-145 △2七歩
-62 △2二同銀
<やねうら王>
-525 △2二同飛
-228 △2二同銀
-2 △2七歩
<水匠3改>
-324 △2二同飛
-132 △2二同銀
-60 △2七歩
3つのソフトは△2二同飛が良いと言っている。△2二同銀だと、▲8五角などと6三の地点を狙う角打ちが受けづらく、紛れるもとであるのだ。▲8五角に△6二飛の受けは▲5二歩(妙手)で、もう先手優勢になってしまう。
さて、△2二同飛に、先手が飛車交換すると、後手が馬を作っている分だけ後手が良くなる。
▲2二同飛成△同銀▲5五飛の筋には△6七馬が桂取りで後手が良い。このあたりは村中講座を見て欲しい。
飛車交換がダメとすると、先手は▲2三歩と打つことになる。
図2から△2二同飛▲2三歩△1二飛と進んだのが図3。従来、ずっとこの5手爆弾の定跡は、この△1二飛というのが信じられてきた。でも、実は△1二飛じゃなくて△8二飛のほうが良いんじゃないか、というのが私が2013年に研究したこと。(と言っても、ソフトが示しただけだが)
次の図3では、△1二飛の局面について調べてみよう。従来の定跡手で、長くこれで後手良しと言われてきたが、これだとどれだけの差があるのか。各10分ずつ。
図3 従来の定跡手△1二飛まで

<激指15>
-75 ▲7八金 (図3からの先手の最善手)
-98 ▲6八金 (図3からの先手の次善手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
-110 ▲7八金
-113 ▲6八金
<水匠3改>
-1 ▲7八金
-1 ▲6八金
なお、△1二飛というのは、次の▲2二角の打ち込みに備えた手で、1一の香をあらかじめ守っているという意味なのだ。
△1二飛に強引に▲2二角なら、△2四歩で受けきってハッキリ後手が良い。
しかし、3つのソフトが示したように、△1二飛に▲7八金などと待たれてみると、先手の無理攻めだったはずが、もうすっかり互角になってしまっている。水匠は-1で、全く互角と判断している。図2で得ていた後手のリードはどこへやら。これじゃ、奇襲退治としては失敗だ。
「イメージと読みの将棋観1」でのプロたちの「先手勝率30%発言」は何だったのか。(森内と佐藤康光と藤井猛が△1二飛までで後手良しと言っている)
なお、村中プロの講座では、△1二飛でなく△8二飛で進められている。ソフトのおススメも△8二飛と戻る一手なのだ。以下、変化は多岐に渡るが、△8二飛なら後手の飛車は活躍が見込めるのだ。
~今回のまとめ~
従来の定跡、△1二飛は間違いだ。ソフトが正しければ、そういうことだ。そして、私はソフトが正しいと思う(笑)
ともあれ、この5手爆弾は定跡として長ったらしく、難解で、初心者には全くおススメできない。
村中講座にあるように、相掛かりを初心者に教えるときは、初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△3二金、この手順を教えるのがいいと思う。
将棋は「5手爆弾をとがめきれたらアマ三段」。そう言っていいくらい、この定跡は難しい。
今回は、あえて色々な変化には触れなかった。興味ある人は自分で調べて欲しい。強いフリーソフトもあるのだから。
♪感じてみろ! 叫んでみろ! 心燃やせ~!
というわけで、今回はこれで終わり。また次のテーマで会いましょう~。
というわけで、第18回。BGMにはX JAPANが流れている。
今回は、相掛かりの5手爆弾をソフトで調べてみる。
初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲2四歩と、一直線に進む変化だ。(図1)
例によって、「イメージと読みの将棋観1」(2008年)にも5手爆弾に対する6棋士による見解が載っている。
羽生「定跡通りの手順で馬を作られたら、先手勝率30%いかないでしょう」
佐藤康光「先手が35%くらい勝ってもおかしくない。それなりに難しいところもありそう」
森内「基本定跡で先手不利。先手勝率は30%くらい」
谷川「先手勝率のイメージは40%くらい」
渡辺明「先手勝率30%」
藤井猛「先手勝率のイメージは30%以下」
実はこのテーマは2013年にも、私は調べている。
それが以下。詳しく知りたい人は参考にしてほしい。
相掛かり5手目▲2四歩、通称「5手爆弾」を激指定跡道場3で研究
http://mune1232007.blog121.fc2.com/blog-date-201305.html
さらに、最新のプロの見解(2020年)として、村中プロのYouTubeの講座もチェック。
【5手目▲2四歩はNG⁈】素朴な疑問を解明します!で検索。この村中講座は、たぶんソフトを使って研究したと思われ、安心で、分かりやすい。さすがプロの仕事だ。
https://www.youtube.com/watch?v=lg3qCtFvVNo
図1 5手爆弾 ▲2四歩まで

各10分ずつ、3つのソフトで調べてみた。候補手は3つで調べたが、ここに載せたのは2つ。
なお、激指にこの▲2四歩は定跡に登録されてなかった。
<激指15>
+28 △2四同歩 (ソフトが示した6手目の最善手)
+252 △8六歩 (ソフトが示した6手目の次善手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
+44 △2四同歩
+421 △8六歩
<水匠3改>
+50 △2四同歩
+386 △8六歩
上記で分かるとうり、5手目▲2四歩では、まだ先手が悪くなっていない。次の手は当然の△2四同歩。問題はその次7手目▲2四同飛にある。(▲2四同飛でなく▲7八金としていれば、ソフト的にはまだ差がつかず互角ということだ。)
さて、図1から△2四同歩▲同飛△8六歩▲同歩△8七歩▲2三歩△8八歩成▲同銀△3五角▲2八飛△5七角成▲2二歩成と進んだのが図2。
長いのでKI2形式で初手から貼っておく。
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲2四歩 △同 歩
▲同 飛 △8六歩 ▲同 歩 △8七歩 ▲2三歩 △8八歩成
▲同 銀 △3五角 ▲2八飛 △5七角成 ▲2二歩成
まで17手で中断
図2 ▲2二歩成まで

ここはいつも問題になるところ。△2二同銀か、△2二同飛か?
ソフトに考えさせてみた。各10分ずつ。候補手3つで調べて、今回は3つ載せることにした。
<激指15>
-321 △2二同飛
-145 △2七歩
-62 △2二同銀
<やねうら王>
-525 △2二同飛
-228 △2二同銀
-2 △2七歩
<水匠3改>
-324 △2二同飛
-132 △2二同銀
-60 △2七歩
3つのソフトは△2二同飛が良いと言っている。△2二同銀だと、▲8五角などと6三の地点を狙う角打ちが受けづらく、紛れるもとであるのだ。▲8五角に△6二飛の受けは▲5二歩(妙手)で、もう先手優勢になってしまう。
さて、△2二同飛に、先手が飛車交換すると、後手が馬を作っている分だけ後手が良くなる。
▲2二同飛成△同銀▲5五飛の筋には△6七馬が桂取りで後手が良い。このあたりは村中講座を見て欲しい。
飛車交換がダメとすると、先手は▲2三歩と打つことになる。
図2から△2二同飛▲2三歩△1二飛と進んだのが図3。従来、ずっとこの5手爆弾の定跡は、この△1二飛というのが信じられてきた。でも、実は△1二飛じゃなくて△8二飛のほうが良いんじゃないか、というのが私が2013年に研究したこと。(と言っても、ソフトが示しただけだが)
次の図3では、△1二飛の局面について調べてみよう。従来の定跡手で、長くこれで後手良しと言われてきたが、これだとどれだけの差があるのか。各10分ずつ。
図3 従来の定跡手△1二飛まで

<激指15>
-75 ▲7八金 (図3からの先手の最善手)
-98 ▲6八金 (図3からの先手の次善手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
-110 ▲7八金
-113 ▲6八金
<水匠3改>
-1 ▲7八金
-1 ▲6八金
なお、△1二飛というのは、次の▲2二角の打ち込みに備えた手で、1一の香をあらかじめ守っているという意味なのだ。
△1二飛に強引に▲2二角なら、△2四歩で受けきってハッキリ後手が良い。
しかし、3つのソフトが示したように、△1二飛に▲7八金などと待たれてみると、先手の無理攻めだったはずが、もうすっかり互角になってしまっている。水匠は-1で、全く互角と判断している。図2で得ていた後手のリードはどこへやら。これじゃ、奇襲退治としては失敗だ。
「イメージと読みの将棋観1」でのプロたちの「先手勝率30%発言」は何だったのか。(森内と佐藤康光と藤井猛が△1二飛までで後手良しと言っている)
なお、村中プロの講座では、△1二飛でなく△8二飛で進められている。ソフトのおススメも△8二飛と戻る一手なのだ。以下、変化は多岐に渡るが、△8二飛なら後手の飛車は活躍が見込めるのだ。
~今回のまとめ~
従来の定跡、△1二飛は間違いだ。ソフトが正しければ、そういうことだ。そして、私はソフトが正しいと思う(笑)
ともあれ、この5手爆弾は定跡として長ったらしく、難解で、初心者には全くおススメできない。
村中講座にあるように、相掛かりを初心者に教えるときは、初手から▲2六歩△8四歩▲2五歩△3二金、この手順を教えるのがいいと思う。
将棋は「5手爆弾をとがめきれたらアマ三段」。そう言っていいくらい、この定跡は難しい。
今回は、あえて色々な変化には触れなかった。興味ある人は自分で調べて欲しい。強いフリーソフトもあるのだから。
♪感じてみろ! 叫んでみろ! 心燃やせ~!
というわけで、今回はこれで終わり。また次のテーマで会いましょう~。
2021.06.14
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~鬼殺し・新鬼殺し~
♪この雨にやられて エンジンいかれちまった オイラのポンコツ とうとう つぶれちまった
というわけで、第17回。BGMにRCサクセションが流れている。
今回は、鬼殺しと新鬼殺しを取り上げる。
鬼殺しは、初手から▲7六歩△3四歩▲7七桂。図1。
図1 鬼殺し ▲7七桂まで

例によって、3つのソフトに各10分、考えさせた。候補手は3つで調べたが、ここに載せたのは2つ。
<激指15> 定跡の利用なし (▲7七桂は定跡には登録されていない)
-290 △6二銀 (4手目の最善手)
-227 △7二飛 (4手目の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<やねうら王>
-641 △6二銀
-533 △7二飛
<水匠3改>
-385 △4二玉
-375 △7二飛
次は新鬼殺し。初手から▲7六歩△8四歩▲7五歩△8五歩▲7七角△3四歩▲7八飛△7七角成▲同桂と進んだのが図2。
この図2に進めるのが新鬼殺しの狙い。
長いのでKI2形式でも貼っておく。
▲7六歩 △8四歩 ▲7五歩 △8五歩 ▲7七角 △3四歩
▲7八飛 △7七角成 ▲同 桂
まで9手で中断
図2 新鬼殺し ▲7七同桂まで

図2の評価値はどうなのか。新鬼殺しは成立してるのか。
<激指15>
-271 △4二玉
-223 △3三角
<やねうら王>
-543 △4二玉
-497 △6二銀
<水匠3改>
-313 △4二玉
-294 △6二銀
~今回のまとめ~
鬼殺しの3ソフトの4手目の最善手の平均値は、-428だった。やはり、だいぶ悪いようだ。
対策としては、飛車先を伸ばさずじっくり指すのがいいとソフト達は言っている。
なお、「イメージと読みの将棋観1」にも鬼殺しが取り上げられている。ただし、鬼殺し側が後手。
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3三桂がテーマ図。
そこでは6棋士とも、痛烈に鬼殺しを否定している。楽勝できるという棋士も多い。羽生は笑い出してしまっている。
だが!2015年のニコ動「電王戦FINALへの道♯52と♯53」で、▲Selene対△永瀬で、Seleneの鬼殺しが永瀬に炸裂している。プロも鬼殺しに負けるのだ。
新鬼殺しのほうだが、▲7七同桂の局面での最善手の平均値は、-375。こちらも苦しい。
ちなみに、後手の対策として6手目に△3四歩と突かずに、△3一角からの引き角にして△4二銀~△5三銀~△6四銀で、伸びた▲7五歩を取りに行くというのも、有力な対策だ。
♪こんな夜にお前に乗れないなんて こんな夜に発車できないなんて
また次のテーマで会いましょう。
というわけで、第17回。BGMにRCサクセションが流れている。
今回は、鬼殺しと新鬼殺しを取り上げる。
鬼殺しは、初手から▲7六歩△3四歩▲7七桂。図1。
図1 鬼殺し ▲7七桂まで

例によって、3つのソフトに各10分、考えさせた。候補手は3つで調べたが、ここに載せたのは2つ。
<激指15> 定跡の利用なし (▲7七桂は定跡には登録されていない)
-290 △6二銀 (4手目の最善手)
-227 △7二飛 (4手目の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<やねうら王>
-641 △6二銀
-533 △7二飛
<水匠3改>
-385 △4二玉
-375 △7二飛
次は新鬼殺し。初手から▲7六歩△8四歩▲7五歩△8五歩▲7七角△3四歩▲7八飛△7七角成▲同桂と進んだのが図2。
この図2に進めるのが新鬼殺しの狙い。
長いのでKI2形式でも貼っておく。
▲7六歩 △8四歩 ▲7五歩 △8五歩 ▲7七角 △3四歩
▲7八飛 △7七角成 ▲同 桂
まで9手で中断
図2 新鬼殺し ▲7七同桂まで

図2の評価値はどうなのか。新鬼殺しは成立してるのか。
<激指15>
-271 △4二玉
-223 △3三角
<やねうら王>
-543 △4二玉
-497 △6二銀
<水匠3改>
-313 △4二玉
-294 △6二銀
~今回のまとめ~
鬼殺しの3ソフトの4手目の最善手の平均値は、-428だった。やはり、だいぶ悪いようだ。
対策としては、飛車先を伸ばさずじっくり指すのがいいとソフト達は言っている。
なお、「イメージと読みの将棋観1」にも鬼殺しが取り上げられている。ただし、鬼殺し側が後手。
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3三桂がテーマ図。
そこでは6棋士とも、痛烈に鬼殺しを否定している。楽勝できるという棋士も多い。羽生は笑い出してしまっている。
だが!2015年のニコ動「電王戦FINALへの道♯52と♯53」で、▲Selene対△永瀬で、Seleneの鬼殺しが永瀬に炸裂している。プロも鬼殺しに負けるのだ。
新鬼殺しのほうだが、▲7七同桂の局面での最善手の平均値は、-375。こちらも苦しい。
ちなみに、後手の対策として6手目に△3四歩と突かずに、△3一角からの引き角にして△4二銀~△5三銀~△6四銀で、伸びた▲7五歩を取りに行くというのも、有力な対策だ。
♪こんな夜にお前に乗れないなんて こんな夜に発車できないなんて
また次のテーマで会いましょう。
2021.06.13
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~阪田流向かい飛車~
日が昇った~!霊峰富士の天辺に日が昇った~!富士の国に日が昇った~!歌え~!(長渕剛・10万人オールナイト・ライヴ 2015 in 富士山麓)
というわけで、第16回。今回は、阪田流向かい飛車を取り上げる。(今、BGMで長渕が流れている)
阪田流向かい飛車とは、主に後手番で指される戦法である。初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲2五歩△3三角▲同角成△同金▲6八玉△2二飛と進む。それが図1。
長いので、KI2形式形式でも貼っておく。
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲2五歩 △3三角
▲同角成 △同 金 ▲6八玉 △2二飛
まで10手で中断
図1 阪田流向かい飛車 △2二飛まで

この戦法の評価値は、どのくらいなのか。調べてみた。いつものように、3つのソフトで10分ずつ。候補手は3つで考えさせたが、ここに載せたのは2つ。
<激指15> 定跡の利用なし
+146 ▲9六歩 (△2二飛に対する先手の最善手)
+133 ▲8八銀 (△2二飛に対する先手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<やねうら王>
+222 ▲3八銀
+211 ▲7八玉
<水匠3改>
+195 ▲4八銀
+175 ▲3八銀
激指15(2019年発売)によると、図1の△2二飛までの局面は最近10年で11局あると出る。
さて、次に、マンガ「リボーンの棋士」で、主人公の安住が、この戦法で新手を開発するシーンがある。
局面も分かっている。2巻の第15回の最終ページに局面が出ている。△4四角という手だ。
それが以下の図2。
図2 阪田流向かい飛車・安住の新手△4四角まで

今、後手が△4四角とした局面。
この局面まで、手数が合うか、一応、私が調べたが、ちゃんと合っている。
この図2の△4四角を採用した後手のロートル棋士が、若手有望の棋士に勝つ、という設定になっている。
負けた若手棋士が「こんな工夫があるなんて、これで阪田流が復活するかもしれませんね」と感心する。
将棋界のちょっとした話題にもなる、というストーリーで、重要な局面なのだ。
果たして、この△4四角に、ソフトはどう評価を下すのか。完全に個人的興味で調べた。
もし阪田流が互角以上に戦えるなら、それこそすごい発見なのだが・・・?
<激指15>
+139 ▲7七銀 (△4四角に対する先手の最善手)
+121 ▲7七桂 (△4四角に対する先手の次善手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
+403 ▲7七桂
+415 ▲7七銀 (次善手のほうが点が高いが、こういうことはよくある現象)
<水匠3改>
+340 ▲7七桂
+278 ▲7七角
なお、△4四角を打つ前の局面を検討させてみたことろ、水匠3改は+238と出した。(10分計測)
~今回のまとめ~
まず図1。3つのソフトの最善手の平均値は+187。うーん、やはりちょっと先手側に振れた。でもまあ互角で勝敗的にはまったくこれからなんだけどもね。私の想定内の結果だった。
そして図2。3つのソフトの最善手の平均値は+294。結論として、△4四角は大した手ではない、と3つのソフトは言っている。
やねうら王は辛口で、400以上先手が良いと言っている。水匠も+340という数字をつけた。
水匠先生は△4四角以降は、先手は▲7七桂と跳ね、△2四歩▲同歩△同金に、▲3七桂~▲3八金と、がっちり受けて先手不満なし、と言っている。
安住流、不発でした(^^;
でもリボーンの棋士は名作だし、もう完結してるから続きを待たなくていいし、ぜひおススメのマンガだ。
ちなみに水匠先生は、図2で△4四角を打たない後手の駒組みとして、△4四歩~△4三銀~△5四銀~△4三金と出していた。ふーむ、金より銀を前線に出す筋を読んでいる。
あと一週間くらいで、このシリーズは終わると思う。ではまた次のテーマで会おう。
♪明日へ向かって~ ずっとこのまま 突っ走って行けばいい~
というわけで、第16回。今回は、阪田流向かい飛車を取り上げる。(今、BGMで長渕が流れている)
阪田流向かい飛車とは、主に後手番で指される戦法である。初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲2五歩△3三角▲同角成△同金▲6八玉△2二飛と進む。それが図1。
長いので、KI2形式形式でも貼っておく。
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △3二金 ▲2五歩 △3三角
▲同角成 △同 金 ▲6八玉 △2二飛
まで10手で中断
図1 阪田流向かい飛車 △2二飛まで

この戦法の評価値は、どのくらいなのか。調べてみた。いつものように、3つのソフトで10分ずつ。候補手は3つで考えさせたが、ここに載せたのは2つ。
<激指15> 定跡の利用なし
+146 ▲9六歩 (△2二飛に対する先手の最善手)
+133 ▲8八銀 (△2二飛に対する先手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<やねうら王>
+222 ▲3八銀
+211 ▲7八玉
<水匠3改>
+195 ▲4八銀
+175 ▲3八銀
激指15(2019年発売)によると、図1の△2二飛までの局面は最近10年で11局あると出る。
さて、次に、マンガ「リボーンの棋士」で、主人公の安住が、この戦法で新手を開発するシーンがある。
局面も分かっている。2巻の第15回の最終ページに局面が出ている。△4四角という手だ。
それが以下の図2。
図2 阪田流向かい飛車・安住の新手△4四角まで

今、後手が△4四角とした局面。
この局面まで、手数が合うか、一応、私が調べたが、ちゃんと合っている。
この図2の△4四角を採用した後手のロートル棋士が、若手有望の棋士に勝つ、という設定になっている。
負けた若手棋士が「こんな工夫があるなんて、これで阪田流が復活するかもしれませんね」と感心する。
将棋界のちょっとした話題にもなる、というストーリーで、重要な局面なのだ。
果たして、この△4四角に、ソフトはどう評価を下すのか。完全に個人的興味で調べた。
もし阪田流が互角以上に戦えるなら、それこそすごい発見なのだが・・・?
<激指15>
+139 ▲7七銀 (△4四角に対する先手の最善手)
+121 ▲7七桂 (△4四角に対する先手の次善手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
+403 ▲7七桂
+415 ▲7七銀 (次善手のほうが点が高いが、こういうことはよくある現象)
<水匠3改>
+340 ▲7七桂
+278 ▲7七角
なお、△4四角を打つ前の局面を検討させてみたことろ、水匠3改は+238と出した。(10分計測)
~今回のまとめ~
まず図1。3つのソフトの最善手の平均値は+187。うーん、やはりちょっと先手側に振れた。でもまあ互角で勝敗的にはまったくこれからなんだけどもね。私の想定内の結果だった。
そして図2。3つのソフトの最善手の平均値は+294。結論として、△4四角は大した手ではない、と3つのソフトは言っている。
やねうら王は辛口で、400以上先手が良いと言っている。水匠も+340という数字をつけた。
水匠先生は△4四角以降は、先手は▲7七桂と跳ね、△2四歩▲同歩△同金に、▲3七桂~▲3八金と、がっちり受けて先手不満なし、と言っている。
安住流、不発でした(^^;
でもリボーンの棋士は名作だし、もう完結してるから続きを待たなくていいし、ぜひおススメのマンガだ。
ちなみに水匠先生は、図2で△4四角を打たない後手の駒組みとして、△4四歩~△4三銀~△5四銀~△4三金と出していた。ふーむ、金より銀を前線に出す筋を読んでいる。
あと一週間くらいで、このシリーズは終わると思う。ではまた次のテーマで会おう。
♪明日へ向かって~ ずっとこのまま 突っ走って行けばいい~
2021.06.12
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~4手目△3三角~
第15回。♪ド・ド・ドリフの大爆笑~ 5人はますます元気です 今日のテーマは何だろな?力いっぱいぶつかるぞ!
てなわけで、今回のテーマは4手目△3三角戦法を紹介。
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3三角となり、図へ。
例によって、この戦法は「イメージと読みの将棋観1」のテーマ図ともなっている。
「その本ばっかりじゃねーか」という声も聞こえてくるが、たまたま私の興味と重なるのでしょうがない(^^;
図 4手目△3三角まで

6人の棋士たちの意見を聞いてみよう。
羽生「▲3三同角成△同桂▲6八玉とします。△3三桂が好形ではない」
佐藤康光「後手も5割近く戦える」
森内「先手勝率53%。初期値と同じです」
谷川「一局の将棋。有力な作戦」
渡辺明「これは一局。先手勝率53%。後手は四間飛車にして結構指せる」
藤井猛「この局面はプロの実戦である程度調べがついている。後手は作戦の幅が狭くあまり自由度がない」
では、ソフトの見解はどうか。
各10分ずつ考えさせた。候補手は3つで調べたが、ここに載せたのは2つ。
<激指15> 定跡有り
±0 定跡手 ▲4八銀 最近10年で45局前例あり
±0 定跡手 ▲同角成 最近10年で316局前例あり
<激指15> 定跡なし
+161 ▲同角成 (5手目の先手の最善手)
+52 ▲4八銀 (5手目の先手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<やねうら王>
+185 ▲同角成
+52 ▲4八銀
<水匠3改> 定跡の利用にチェックあり
+171 ▲同角成
+31 ▲7八金
<水匠3改> 定跡の利用なし
+161 ▲同角成
+46 ▲4六歩 (この手は意味不明(^^;)
~今回のまとめ~
定跡なしで最善手の平均値を出すと、+169だった。初期配置の平均値が+52ということを考えれば、後手があまり面白くない作戦と言える。ただ、人間どうしでは力戦になり一局だろう。
6人のプロ棋士も羽生と藤井猛以外の4人は「これも一局」と言っている。
4手目△3三角は、「平成12年(2000年)ごろ現れた新手」と、「イメージと読みの将棋観1」に書いてある。
この戦法で一番有名な棋譜は、清水vsあから2010だろう。あからが後手でこれを採用し、清水は角交換から居飛穴へ。あからが清水をボコボコにした一局だ。
この戦法は、後手は結局、振り飛車になるので、振り飛車党向けなんだろう。有力な戦法だと私は思う。
てなわけで、今回のテーマは4手目△3三角戦法を紹介。
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3三角となり、図へ。
例によって、この戦法は「イメージと読みの将棋観1」のテーマ図ともなっている。
「その本ばっかりじゃねーか」という声も聞こえてくるが、たまたま私の興味と重なるのでしょうがない(^^;
図 4手目△3三角まで

6人の棋士たちの意見を聞いてみよう。
羽生「▲3三同角成△同桂▲6八玉とします。△3三桂が好形ではない」
佐藤康光「後手も5割近く戦える」
森内「先手勝率53%。初期値と同じです」
谷川「一局の将棋。有力な作戦」
渡辺明「これは一局。先手勝率53%。後手は四間飛車にして結構指せる」
藤井猛「この局面はプロの実戦である程度調べがついている。後手は作戦の幅が狭くあまり自由度がない」
では、ソフトの見解はどうか。
各10分ずつ考えさせた。候補手は3つで調べたが、ここに載せたのは2つ。
<激指15> 定跡有り
±0 定跡手 ▲4八銀 最近10年で45局前例あり
±0 定跡手 ▲同角成 最近10年で316局前例あり
<激指15> 定跡なし
+161 ▲同角成 (5手目の先手の最善手)
+52 ▲4八銀 (5手目の先手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<やねうら王>
+185 ▲同角成
+52 ▲4八銀
<水匠3改> 定跡の利用にチェックあり
+171 ▲同角成
+31 ▲7八金
<水匠3改> 定跡の利用なし
+161 ▲同角成
+46 ▲4六歩 (この手は意味不明(^^;)
~今回のまとめ~
定跡なしで最善手の平均値を出すと、+169だった。初期配置の平均値が+52ということを考えれば、後手があまり面白くない作戦と言える。ただ、人間どうしでは力戦になり一局だろう。
6人のプロ棋士も羽生と藤井猛以外の4人は「これも一局」と言っている。
4手目△3三角は、「平成12年(2000年)ごろ現れた新手」と、「イメージと読みの将棋観1」に書いてある。
この戦法で一番有名な棋譜は、清水vsあから2010だろう。あからが後手でこれを採用し、清水は角交換から居飛穴へ。あからが清水をボコボコにした一局だ。
この戦法は、後手は結局、振り飛車になるので、振り飛車党向けなんだろう。有力な戦法だと私は思う。
2021.06.11
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~角頭歩~
第14回。一日くらい休もうかと考えたが、また書く(笑)
豆腐の角(かど)に、頭をぶつけて死んでしまえ!とよく言うが、今回は角頭歩(かくとうふ)を取り上げる。
後手番の奇襲である。指し手は単純で、初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△2四歩。(図1)
この局面をどう見るか。「イメージと読みの将棋観1」でテーマとして取り上げられている。
図1 角頭歩 △2四歩まで

図1を6人の棋士たちはどう考えたか。
羽生「そんな簡単じゃない。相当考えないと、どれを指すか決められない」
佐藤康光「長考します」
森内「先手勝率57~60%。▲6八玉が無難」
谷川「▲2五歩は先手が悪くなる可能性もある」
渡辺明「先手勝率75%」
藤井猛「▲2五歩と突いても先手必勝とまではいえないから、実戦では▲6八玉」
ではソフトはどう考えたか。いつものように各10分ずつ、考えさせた。候補手は3つで調べたが、ここに載せたのは2つ。
<激指15> 定跡有り
±0 定跡手 ▲6八玉 (5手目の先手の最善手)
±0 定跡手 ▲7八金 (5手目の先手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<激指15> 定跡なし
+180 ▲7八金
+179 ▲6八玉
<やねうら王>
+367 ▲3八銀
+363 ▲6八玉
<水匠3改> 定跡の利用にチェックあり
+320 ▲6八玉
+301 ▲3八銀
<水匠3改> 定跡の利用なし
+288 ▲3八銀
+236 ▲6八玉
さて、次は、先手が誘いに乗って、▲2五歩と突いた場合を調べてみた。
図1から▲2五歩△同歩▲同飛△8八角成▲同銀△3三桂。(図2)
KI2形式で書くと、以下のようになる。
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △2四歩 ▲2五歩 △同 歩
▲同 飛 △8八角成 ▲同 銀 △3三桂
まで10手で中断
図2 先手が誘いに乗って△3三桂まで

図2をソフトはどう見ているのか。
<激指15>
-17 ▲2三飛成
-82 ▲2一飛成
<やねうら王>
-1 ▲2三飛成
-118 ▲2四飛
<水匠3改>
-114 ▲2八飛
-125 ▲2三飛成
~今回のまとめ~
まず、図1。ソフト的には、おおむね、先手良しが確立している。激指の▲7八金って、意味が分からないが(^^;
いつも辛口のやねうら王が、今回も3ソフトの中で最大差の+367点をつけた。
定跡なしで最善手の場合の平均値を出すと+278。
問題は、図2だ。先手が誘いに乗って、▲2五歩とした変化。図2はけっこう驚きの評価値が出た。
なんと3つのソフトが全てマイナス評価。一番頼りになる水匠先生が-114。3つのソフトの最善手の場合の平均値は-44。
角頭歩においては、先手は▲2五歩と行くべきではないのだ。それがハッキリした結果となった。
「角頭歩の誘いに乗ったら、豆腐のカドで頭を打つ」 こんな格言ができた、今回の調査だった。
気になったのは、「イメージと読みの将棋観1」(2008年発行)では、図1は「平成(1989年)以降、一局も現れていない」と書かれている。
しかし激指15(2019年発売)では、最近10年でプロ間で15局前例がある、と検討モードに出る。2008年から2019年までに15局現れたということなのか。女流を含めたのか。私にはよく分からない。
豆腐の角(かど)に、頭をぶつけて死んでしまえ!とよく言うが、今回は角頭歩(かくとうふ)を取り上げる。
後手番の奇襲である。指し手は単純で、初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△2四歩。(図1)
この局面をどう見るか。「イメージと読みの将棋観1」でテーマとして取り上げられている。
図1 角頭歩 △2四歩まで

図1を6人の棋士たちはどう考えたか。
羽生「そんな簡単じゃない。相当考えないと、どれを指すか決められない」
佐藤康光「長考します」
森内「先手勝率57~60%。▲6八玉が無難」
谷川「▲2五歩は先手が悪くなる可能性もある」
渡辺明「先手勝率75%」
藤井猛「▲2五歩と突いても先手必勝とまではいえないから、実戦では▲6八玉」
ではソフトはどう考えたか。いつものように各10分ずつ、考えさせた。候補手は3つで調べたが、ここに載せたのは2つ。
<激指15> 定跡有り
±0 定跡手 ▲6八玉 (5手目の先手の最善手)
±0 定跡手 ▲7八金 (5手目の先手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。
<激指15> 定跡なし
+180 ▲7八金
+179 ▲6八玉
<やねうら王>
+367 ▲3八銀
+363 ▲6八玉
<水匠3改> 定跡の利用にチェックあり
+320 ▲6八玉
+301 ▲3八銀
<水匠3改> 定跡の利用なし
+288 ▲3八銀
+236 ▲6八玉
さて、次は、先手が誘いに乗って、▲2五歩と突いた場合を調べてみた。
図1から▲2五歩△同歩▲同飛△8八角成▲同銀△3三桂。(図2)
KI2形式で書くと、以下のようになる。
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △2四歩 ▲2五歩 △同 歩
▲同 飛 △8八角成 ▲同 銀 △3三桂
まで10手で中断
図2 先手が誘いに乗って△3三桂まで

図2をソフトはどう見ているのか。
<激指15>
-17 ▲2三飛成
-82 ▲2一飛成
<やねうら王>
-1 ▲2三飛成
-118 ▲2四飛
<水匠3改>
-114 ▲2八飛
-125 ▲2三飛成
~今回のまとめ~
まず、図1。ソフト的には、おおむね、先手良しが確立している。激指の▲7八金って、意味が分からないが(^^;
いつも辛口のやねうら王が、今回も3ソフトの中で最大差の+367点をつけた。
定跡なしで最善手の場合の平均値を出すと+278。
問題は、図2だ。先手が誘いに乗って、▲2五歩とした変化。図2はけっこう驚きの評価値が出た。
なんと3つのソフトが全てマイナス評価。一番頼りになる水匠先生が-114。3つのソフトの最善手の場合の平均値は-44。
角頭歩においては、先手は▲2五歩と行くべきではないのだ。それがハッキリした結果となった。
「角頭歩の誘いに乗ったら、豆腐のカドで頭を打つ」 こんな格言ができた、今回の調査だった。
気になったのは、「イメージと読みの将棋観1」(2008年発行)では、図1は「平成(1989年)以降、一局も現れていない」と書かれている。
しかし激指15(2019年発売)では、最近10年でプロ間で15局前例がある、と検討モードに出る。2008年から2019年までに15局現れたということなのか。女流を含めたのか。私にはよく分からない。
2021.06.10
奇襲戦法の評価値をソフトで調べてみる ~2パターンの一手損角換わり~
第13回。元気ですかー!元気があれば何でもできる!(アントニオ猪木)
私はお疲れモード(笑) でも元気がなくても、ソフトに考えさせることはできるぜ!
というわけで、今回は一手損角換わりがテーマ。2パターン、調べる。
いちおう、一手損角換わりは奇襲の範囲ってことで大目に見よう。
まずはノーマル型。初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲7八金△8四歩▲2五歩△8八角成▲同銀△2二銀。(図1)
ザーッと進めたが、難しくはない。この手順は西尾明プロの「よくわかる角換わり」に準拠している。
そして、次に調べるのが、丸山流という、丸山忠久プロがよくやる、4手目角交換。
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8八角成▲同銀。(図2)
一手損角換わりの評価値が、初期配置の評価値と、どれほど差があるのか。
そしてこのノーマル型と、丸山流の違いを知りたかったのだ。4手目角交換はダメなのか?
丸山流のメリットとして、のちに△3二玉という、いわゆる「ボナンザ囲い」という囲いに組む余地がある。
ノーマル型だと、△3二金ともう指してしまっているため、ボナンザ囲いにはしにくい。
なお、初期配置の評価値だが、以前調べたものを参考にした。5分間を2回ずつしか計ってないが、その平均値。
頼りないが、まあそれで今は勘弁してほしい。またいつか計るかもしれない。
激指15 +29.5
やねうら王 +66
水匠3改 +60.5
・・・以上から計算して、3ソフトでの平均値は+52という数字が出た。
いつものように、候補手は3つで調べたが、ここに載せたのは2つ。各10分ずつ考えさせた。
図1 ノーマル型 △2二銀まで

<激指15> 定跡の利用なし
+88 ▲9六歩 (ソフトが示した△2二銀の次の一手の最善手)
+38 ▲3八銀 (ソフトが示した△2二銀の次の一手の次善手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
+151 ▲4八銀
+118 ▲1六歩
<水匠3改> 定跡の利用なし
+138 ▲4八銀
+123 ▲3六歩
図2 丸山流4手目角交換 ▲8八同銀まで

<激指15> 定跡の利用なし
+54 △2二銀
+54 △4二銀
<やねうら王>
+135 △3二金
+125 △4二銀
<水匠3改> 定跡の利用なし
+125 △4二銀
+121 △3二金
~今回のまとめ~
激指15(2019年発売)によると、図1がプロ間で最近10年で696局。図2が最近10年で652局も指されているということだった。(検討モードで定跡有りにすると出る)。勝敗は残念ながら出ない。
3つのソフトの最善手の平均値は、ノーマル型が+125。丸山流が+104だった。ほとんど差はない、という結果だった。
でも、ほんのわずか21点差だが、丸山流が後手にとって優っている。(+が大きいほど先手有利なので)
もう10年以上前だが、私がまだ大阪に居たとき、街のリアル道場に行って指していた。そこで私が丸山流の4手目角交換をすると、相手の人が「そんな手は将棋にない」と言ってきたのだ。おいおい、丸山流を否定するんじゃないよ、と私は言いたかった。
今回、ソフトでも丸山流は否定されなかった。今回のテーマは、完全に私の個人的趣味だった(^^;
連日の投稿で、少々疲れてきたので、次の更新はいつか分からない。さすがに明日は休むかもしれん。
私はお疲れモード(笑) でも元気がなくても、ソフトに考えさせることはできるぜ!
というわけで、今回は一手損角換わりがテーマ。2パターン、調べる。
いちおう、一手損角換わりは奇襲の範囲ってことで大目に見よう。
まずはノーマル型。初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲7八金△8四歩▲2五歩△8八角成▲同銀△2二銀。(図1)
ザーッと進めたが、難しくはない。この手順は西尾明プロの「よくわかる角換わり」に準拠している。
そして、次に調べるのが、丸山流という、丸山忠久プロがよくやる、4手目角交換。
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8八角成▲同銀。(図2)
一手損角換わりの評価値が、初期配置の評価値と、どれほど差があるのか。
そしてこのノーマル型と、丸山流の違いを知りたかったのだ。4手目角交換はダメなのか?
丸山流のメリットとして、のちに△3二玉という、いわゆる「ボナンザ囲い」という囲いに組む余地がある。
ノーマル型だと、△3二金ともう指してしまっているため、ボナンザ囲いにはしにくい。
なお、初期配置の評価値だが、以前調べたものを参考にした。5分間を2回ずつしか計ってないが、その平均値。
頼りないが、まあそれで今は勘弁してほしい。またいつか計るかもしれない。
激指15 +29.5
やねうら王 +66
水匠3改 +60.5
・・・以上から計算して、3ソフトでの平均値は+52という数字が出た。
いつものように、候補手は3つで調べたが、ここに載せたのは2つ。各10分ずつ考えさせた。
図1 ノーマル型 △2二銀まで

<激指15> 定跡の利用なし
+88 ▲9六歩 (ソフトが示した△2二銀の次の一手の最善手)
+38 ▲3八銀 (ソフトが示した△2二銀の次の一手の次善手) 以下、他のソフトも同様。
<やねうら王>
+151 ▲4八銀
+118 ▲1六歩
<水匠3改> 定跡の利用なし
+138 ▲4八銀
+123 ▲3六歩
図2 丸山流4手目角交換 ▲8八同銀まで

<激指15> 定跡の利用なし
+54 △2二銀
+54 △4二銀
<やねうら王>
+135 △3二金
+125 △4二銀
<水匠3改> 定跡の利用なし
+125 △4二銀
+121 △3二金
~今回のまとめ~
激指15(2019年発売)によると、図1がプロ間で最近10年で696局。図2が最近10年で652局も指されているということだった。(検討モードで定跡有りにすると出る)。勝敗は残念ながら出ない。
3つのソフトの最善手の平均値は、ノーマル型が+125。丸山流が+104だった。ほとんど差はない、という結果だった。
でも、ほんのわずか21点差だが、丸山流が後手にとって優っている。(+が大きいほど先手有利なので)
もう10年以上前だが、私がまだ大阪に居たとき、街のリアル道場に行って指していた。そこで私が丸山流の4手目角交換をすると、相手の人が「そんな手は将棋にない」と言ってきたのだ。おいおい、丸山流を否定するんじゃないよ、と私は言いたかった。
今回、ソフトでも丸山流は否定されなかった。今回のテーマは、完全に私の個人的趣味だった(^^;
連日の投稿で、少々疲れてきたので、次の更新はいつか分からない。さすがに明日は休むかもしれん。