うつ病九段(マンガ) (文春e-book) 原作・先崎 学、 漫画・河井 克夫
2020年4月24日発行  Kindle版950円  単行本1100円  
評価 A コンセプト<原作を読みやすくマンガにしたもの>

ネット上で連載されていたマンガ。タダで読めたので、私は毎週、楽しみに読んでいた。
原作のほうは軽くレビューしたのだが、「棋書ミシュラン」のレビューがとても素晴らしく、もう一回、原作とマンガを読んだ。
マンガの評価のほうは、一度すでにネットで読んでいたのでSでなくAとした。

・・・若かりし頃の先ちゃんは、パンダみたいな風貌、歯にきぬ着せぬ解説、軽妙なトーク、アマチュアみたいなテキトーな気まぐれ作戦でバンバン勝っていく棋風、将棋パトロール、そして圧倒的な文章力。なんて楽しい人なんだ。こんな面白い人がいるのか。当時、小学生の私はたちまち惚れた。

小・中学生のころ、私は毎月、「将棋世界」を本屋に立ち読みに行っていた。
私は将棋は友達とたまに遊びの1つとして指す程度。NHK杯は毎週観ていたが、それほどプロの将棋界に興味はなかったのだ。
そんな私がチェックしていたのは、ただ一つ、先ちゃんの順位戦。C2から上がれるかどうか、だった。
「将棋世界」の後ろのほうの順位戦の表の星を、ドキドキしながら見る。先ちゃんに〇がついていれば、よしやった、と思う。
●がついていれば、ぐああー、となる。
9勝1敗で上がれないときなんて、なんて無茶苦茶なクソ制度なんだ、と順位戦に怒り爆発である(笑)
結局、先ちゃんは8年をC2で過ごすことになる。

しかし、先ちゃんはC2を抜ける。そしてA級まで駆け上がる。先ちゃんの本を大量に読んでいた私の喜びもひとしおであった。その後も先ちゃんは精力的に、マルチに活躍し続ける。先ちゃんの処女作「一葉の写真」はずっと私の宝物であった。

電王戦の観戦記も、プロの苦悩が正直に書かれていて、とても好感を持った。

そんな先ちゃんが休場するという。私は、まあ気分転換かな?ぐらいに軽く思っていた。
理由が明かされなかったから、それほど心配することもなかった。女流棋士はときどき休場することがある。たぶん、先ちゃんも大丈夫なんだろう、と。

先ちゃんは1年弱で戻ってきてくれた。病名は「うつ病」だったという。私は「うつ病」に関する知識はなかった。
それを書いてくれたのが本書だった。
実に詳細に描写してあり、うつ病のつらさと恐ろしさが伝わってくる。アマ初段に勝つのに苦戦し、7手詰が解けずに5手詰からやりなおすなんて・・・。

本当に、よくカムバックしてくれた。私の感想はそれに尽きる。
ただし、成績は落ちている。連盟のページで調べると、
2014年度 13勝15敗 0.464
2015年度 11勝18敗 0.379
2016年度 15勝18敗 0.454
2017年度 3勝16敗 0.157 (休場した年度) 
2018年度 5勝17敗 0.227
2019年度 9勝20敗 0.310

うつ病を境に、明らかに勝率が落ちているが、もうしょうがないだろう。それでも昨年度は9勝している。
先ちゃんなら対局以外でまだまだ活躍できる。

先ちゃんの真骨頂、それは「転んでもタダでは起きない」ということ。
今回、病気にかかっても、本書の執筆で見事にそれを成し遂げた。本当に、よく戻ってきてくれた。
先ちゃんのいない将棋界なんて考えられないんだ。みんな、待ってたよ!!
時空棋士 
新井政彦著 マイナビ出版 2020年1月31日初版第1刷発行
Amazonで紙版1628円 Kindle版1465円
評価 A
コンセプト<奨励会三段の少年が幕末にタイムスリップ>

面白い。実にワクワクさせられた。読みやすく、紙版で全328ページであるが、どんどん読み進められる。(改行による空白がかなり多いのという事情もあるが) 私は読んでいて、えっ、もうこんなに読んじゃったの? あとちょっとしかページが残ってないじゃん!ぐあー、読み終わりたくない!という事態になった。

ストーリーに関してはここでは触れないとして、欠点が2つ。
私は紙版を買ったのだが、漢字に「ふりがな」がない。これがけっこう痛い。江戸時代で文化が現代と違うので、なじみのない難しい単語が随所に出て来るのだが、ことごとくふりがながない。「月代」とか「行燈」とか普通、読めるか?(さかやき、あんどん)
とくに「簪」という小物が重要になってくるのだが、これが私には読めなくて困った。(正解は「かんざし」)

もうひとつの欠点、それは図面と符号がふんだんに出て来て、それで対局の場面の話が進んでいく、という形式なのだ。
なんでこんなふうにしちゃったのか。局面は難解で、手数にして一気に20手ぐらいどんどん進められていく。
まるで将棋世界の観戦記のような状態。いちおう24の有段者の私ですら、理解するのをあきらめる。
こんなの、将棋ファンで高段者じゃない人は突き放されてしまう。なんでこの方式を採用してしまったのか。
図面と符号を無視して、文章で表現しているところを追っていけば、どうにかド素人でもストーリーを理解はできるとは思うが。
この作者の文章力をもってすれば、文章だけで対局シーンを書くことは充分に出来たはずなのに。
万人向けにしておかないなんて、じつにもったいない。残念なことをしたと私は思う。

でも、読んでいるときのワクワク感は、他では得難いものがあった。面白かった。「現実には不可能な夢を、本の中で実現させてみせる」というフィクションの醍醐味が味わえる。作者の才能には敬意を表したい。
将棋指しの腹のうち
先崎学著 2020年1月22日初版 
紙版1320円(文芸春秋発行) Kindle版1200円(文春e-book) 
評価 B 
コンセプト<将棋界を書いたエッセイ。図面はいっさいなし> 

この本、私は買うかどうか迷いました。私はいわゆる「将棋メシ」には興味がないから。
でも買って読んで、良かったです。「メシ」の話よりも将棋界の人間模様について書かれた本でした。
笑えるところもありました。プロ棋士の名前がどんどん出てきますので、知っていることも必要かと。(注釈で人物の解説はあります)
いつもの先崎節が顕在で、「自分を羽生世代の代表者のように書く」、「とにかく自分と羽生のエピソードを書く」。
そして酒を飲む話が多数。もうどんだけ飲むのよ(笑)

でもちょっと残念なのが、先ちゃんも、年相応に、偉くなってしまったなあ、と思いました。
権力に歯向かって、盾ついている先ちゃんが私は好きだった(^^;

なんにしろ、うつ病がなおってよかった。先崎ファンなら買いの一手です。
攻めて楽しい 痛快!先手中飛車 (2018年2月号将棋世界付録)
西田拓也四段著 Kindle版 110円
評価 A 難度 ★★~ (わかりやすい解説なので低級者でもチャレンジしよう)

次の一手39問。
先手中飛車に対して、居飛車側に持久戦で来られたときの指し方を書いている。
居飛穴or左美濃or角道突かずで対抗されたときに、どう指すか。
居飛車側が急戦で来られた場合は何も触れられてないので注意。

他の中飛車本で定跡を学んで、この本で理解しているかどうかチェックするといい。
この本のとおりに攻めが決まれば痛快だ。

難度を低めに評価したが、一手の形の違いを見抜くことが要求される。
私は半分くらいしか正解できなかった。でも解説を読んで納得。安いので中飛車党は読み得。
あぴまる流将棋奇襲シリーズ①~今日から使える台パン戦法~①アヒル戦法②▲7七飛戦法
アヒル戦法の章 いはてん著  ▲7七飛戦法の章 しめりけ著 Kindle版 500円  
2018年11月出版 全171ページ 評価 A 
難度 アヒル戦法の章 ★☆~(とてもわかりやすい)  ▲7七飛戦法の章 ★★★★~(そうとう深くまで研究が及んでいる)

アマチュア2人が書いた電子書籍。
台パンとは、台をパンチするの略。ゲームをやっていて、相手のクソなやり方に負けて、ブチ切れ、思わず台をぶっ叩いてしまう、というときに使う(笑) 将棋で言えば、盤をひっくり返す、というところ。

次の一手形式で進んでいく。
アヒル戦法の章は、実にわかりやすく解説されている。初級者でも使えると思う。
アヒルをまじめに解説した本なんて、この本以外、見たことがない。よくぞ取り上げてくれたものだ。
この戦法でしか味わえない独特の世界観に、私は読んでいて、実に楽しかった。ワクワクした。
将棋ウォーズの短い時間の切れ負けに向いているだろう。

さて、問題は▲7七飛戦法の章。5手目に▲7七飛として、ムリヤリ早石田に組もうとしてくる。これがどうも成立しているようなのだ。
本書は深くまで手を進めて解説している。難度もそうとうなもので、私は次の一手に正解するどころか、ついていくのがやっとだった。
深くまで詳しく解説しすぎてるような・・・。

居飛車党の私の個人的な感想だが、早石田は居飛車の天敵だ。▲7六飛型に組まれたら、もう居飛車は苦戦必至。先手は一手損しているが、早石田で手損はほとんど響かないと思う。▲8六飛とぶつけてくる筋がある。△8五歩は▲8五桂ポンで狙われる。そして乱戦になると居飛車側の△8四歩~△8五歩の2手が無意味に終わることが多い。

以下は▲7七飛戦法vs▲7六飛型にさせまいとがんばる△居飛車、の図式の手順だ。
本書を参考に、私が激指15で研究した結果をまとめたので、参考にしてほしい。
Kifu for Windowsに張り付けてどうぞ。

先手:ムリヤリ早石田
後手:居飛車

▲7六歩
*初手は▲7六歩と▲7八飛の2通りある。▲7八飛は、▲7六歩を突く前に▲6八銀とする可能性を含みにしている。
△8四歩
*後手は飛車先を突いてくる。それが石田流封じになっている、というのが後手の主張。
▲7八飛
*しかし先手は石田流を目指すのだ。
△8五歩
*こう突かれたら、▲7七角しかないというのが従来の考えだった。
▲7七飛
*しかし、こんな手がある!? 最初に指した人、すげええー!
*後手はここで△8六歩も考えられるが、うまくいかない。一歩交換しても大したことがない。一手損するのが大きい。△8六歩はおススメできない。
△3四歩
*後手としては、こちらのほうがおススメ。
▲7八金
*先に▲7五歩も考えられる。しかし金上がりが手堅い。
*ここで後手がすぐに△7七角成は▲同桂と取られる。次になんでも▲6五桂があり、後手が早くも困る。
*▲7八金△7七角成▲同桂△2二銀▲6五桂で5三の地点と2二の銀は同時には受からない。
△4二玉
*いったん待って玉上がりが本手。
▲7五歩
*これで、次に▲7六飛と安定されると、実戦的にはすでに先手が作戦勝ちと思う。それは私の感覚的なもので、ソフトにはわからないだろう。▲7六飛型を作られては、居飛車が苦戦必至なのだ。
△7七角成
*▲7六飛型を防ぐには、もうこのタイミングしかない。△8六歩からの歩交換は効果なしと覚えておこう。あとから▲7六飛~▲8六飛のぶつけを狙われるだけだ。
▲同 桂
*これを▲同角と取ってくれたら△3三桂で受かる。難敵は▲同桂のほう。次に何でも▲6五桂と跳ねてくるのだ。△4四歩と軽く受けようとすると、▲8五桂△同飛▲7六角であっという間に先手有利。恐ろしい。
△3三桂
*ここでは後手に候補手が多い。以下は一例。先手はガンガン攻めてくる。なんてやっかいなんだ!!
▲7四歩
*こんな攻めをしてくる。以下△6二銀▲7三歩成△同銀▲6五桂△6四銀▲5三桂成△同銀▲5五角打の猛攻がある。
△同 歩
*もう少しだけ進めてみる。
▲6五桂
*次に▲5三桂成で、後手の3三の桂を狙っている。激指15は-131(Pro+7の深さ)とほんのわずか後手に振れてるが、実戦的に完全に互角。居飛車側はどうすりゃいいんだ・・・。
△3二銀
*普通の受け。
▲4六角
*狙い筋の角打ち。
△7二金
*普通の受け。まだ手数は18手なのに、盤上は大変なことになってる。すごい濃密な18手。
▲5五角左
*ここでは-194(Pro+7)でまだ互角だが、こんな先手の攻め、後手の居飛車側を持って、受けきる自信があるだろうか。たしかに▲7六飛型は防いだ。しかしこの展開では後手まったく自信がない・・・。すくなくとも、後手は激指15の検討モードのおススメどおりに指してきたのに、この結果。▲7七飛戦法、なんて恐ろしいんだ!
まで19手で中断
将棋戦法事典100+
マイナビムック 将棋世界Special 1600円+税 2019年10月1日初版第1刷発行
将棋世界編集部編 全223ページ
評価 A 難度 ★★~ (符号で指し手がどんどん進み、理解が難しいときもある) 
コンセプト<戦法を、その戦法の狙いとともに100個以上紹介>

本書の正式名称は、「将棋戦法事典100+(プラス) 王道 流行 珍戦法 完全網羅!」となっている。
大きさは将棋世界と同じ。将棋世界と比べて30ページ分くらい少ないが、ムック形式ということで厚さも同じくらい。

中身はしっかりした作りの本で、さすが専門誌の将棋世界の編集部が書いただけある。
変な紹介のされかたではないので、安心して読める。
決してその戦法のいいところだけをピックアップした本ではない。
なぜなら、例えば「居飛車穴熊」と「藤井システム」の両方の成功例を紹介しているので、両方の立場の観点で戦法を知ることができる。

私が一番驚いたのは、75位の「ムリヤリ早石田」。初手から▲7六歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲7七飛!
これを考えた人、すげーー(^^;
金沢五段が何度か使ったという、初手から▲7六歩△3四歩▲6六角! これも、ド素人のような手。

紹介のされかたでは、トマホークのところで紹介されていた、▲1七桂を「裏跳ね」という表現。これは定着させたらいいんじゃないか。
▲9七桂も含めて、端桂を「裏跳ね」と呼ぶことにするのはどうか。

出版されて間もない、今が旬の本。何年か経ったら、新しい指し方が生まれているだろう。
そうなるとこの本も時代遅れになる可能性が高い。鮮度がある本。
でもよくまとめてくれて、こういう本があると、私にとっては知識が増えてブログが書きやすいので助かる。
私は先手中飛車とゴキゲン中飛車の区別がいまいちついてなかった。
本書を出してくれてありがたかった。税込みで1760円するのが難点だけど、内容はしっかりしている。
巻末に索引があって戦法を調べやすいのは、好ポイント。

「結局のところ、将棋の戦法ってどれだけあるのよ?」という人は、本書で解決だ。
そういう意味では本書はS評価。
さすがに、私には知ってることが多かったのでAに留めた。
将棋を覚えて間もない人がこの本を読むとどうなのか、感想を聞きたい。きっと戦法の多様性に驚くと思う。
それだけ将棋は広く深い。それを再認識できる本。

誤字など
P75 第14図 歩の位置が2五歩じゃなくて2六歩の形のはず。
P188下段 後手が飛車香を持っているが、正しくは持ち駒なし。飛車香落ちの図である。
P193 ×B図は~ A図は~の間違いと思われる。
今すぐ指そう ダイレクト向かい飛車 (将棋世界2015年02月号付録)
大石直嗣六段著 Kindle版 110円
難度 ★★★~ (中級以上向け) 評価 A

角交換四間飛車と比べて、一手得をするために知っておくべきこと、を解説した本。
ダイレクト向かい飛車は、居飛車側から▲6五角(△4五角)で乱戦になる可能性があるのだ。
本書は全39問だが、そのうち30問はその乱戦でどう戦うかを解説している。

なので、ベースは角交換四間飛車なのだ。一手違うだけ。そもそも角交換四間飛車を指す気がないのならば、本書は不要。
まずは角交換四間飛車を指してみて、自分に合うとわかったら、次は本書で一手得する手順を知っておこう。
▲6五角(△4五角)の乱戦を嫌うなら、無難に四間に振ってから、向かい飛車にすればいい。
居飛車側も、別に▲6五角(△4五角)を打たずにスルーしても問題はない。乱戦か収めるか、好みの問題だ。

本書ではダイレクトに向かい飛車に振るわけだが、向かい飛車ばかりがいいとも限らない。
四間に飛車を置いたまま、攻める形もあるのだから。
個人的には、わざわざダイレクト向かい飛車にして、乱戦になるのを好まなくてもいいと思う。
乱戦になるのを繰り返しているより、無難に角交換四間飛車を何回も指したほうが、経験値が溜まりやすいのではないか。

ともあれ、▲6五角(△4五角)問題を詳しく解説した書として、貴重な本となっている。とにかく110円は安い。
こういう、「話が限定的で専門的なんだけど、知っておきたい」という変化を解説するには、この付録形式がピッタリマッチしている。マニアとしてはとてもうれしい。ニッチ(隙間)な需要に応えてくれる、ありがたい本だ。
すぐに指せる!角交換四間飛車 (将棋世界2017年12月号付録)
杉本和陽四段著 Kindle版 110円
難度 ★☆~(初級者の得意戦法としても使える) 評価 S

毎度おなじみ、付録シリーズ(^^; 次の一手が39問。
この本は、振り飛車で、何か手っ取り早く得意戦法を身につけたい人にピッタリ。
居飛車党の有段者で、後手番に悩まされている人にも、思い切ってこの戦法を採用するといいかも。
何しろ、藤井猛九段をはじめとするプロも採用しているのだから。

この戦法の特徴として、自分から攻めて行ける可能性が高い。
そして、何より、居飛穴が怖くない。これはものすごく大きい。
藤井システムを身につけるのは大変な労力がかかる。
その点、この角交換四間飛車なら、あっと言う間に居飛穴封じができちゃう。
角を交換して、ハイ、居飛穴封じ。こりゃー、アホみたいに簡単だ。
この発想を、まさにコロンブスの卵というのだろう。

逆棒銀などがこの戦法の主な狙いだが、それもわかりやすい。囲いはとにかく美濃。
一番簡単な振り飛車は何?と訊かれたら、この角交換四間飛車、と私は答えるだろう。
角道を止めるノーマル振り飛車は、定跡を覚えるのが大変だ。
ノーマル振り飛車は、中盤の戦い方で、知識(定跡)がすごい問われる。そして居飛穴対策と右四間対策が必要。
この角交換四間飛車は、いいことずくめ。特に欠点も見当たらない。
狙いが単純すぎる、と言われるかもしれないが、アマにはこれくらい単純なほうがいい。
対局で間違えて負けても、ソフトで調べて「ここが悪かったのか」という反省がやりやすそう。

欠点を上げるならば、千日手模様になってしまう可能性が高いこと。
しかし後手番で採用すれば、千日手はむしろ歓迎ではないか。

この戦法を激指15で検討させてみた。
(ちなみに初期配置では定跡なしでPro+7の深さで+37)
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4二飛の局面。
検討モードで+78という数値だった。(考慮の深さはPro+7)
そこから進めて、▲6八玉△8八角成▲同銀の局面は、+77.(深さはPro+7)
居飛車側に100も振れてない。ソフトの判断としても、充分、行ける!

居飛車党としても、相手の狙いを知って、何か対策を考えておくべき。
個人的には、居飛車側はボナンザ囲いにすれば、だいぶ隙がないように思うが・・・。

とにかく、千日手さえOKと思えば、この戦法は最高の友となるだろう。
もちろん、指す人と戦法の相性もあるのだけど。
この付録本の評価はSとしたが、戦法の評価はS以上である。
まずはこの付録本を読んで、自分に合いそうかどうか、面白いと思うかどうか、試してみよう。
110円は安い!
二枚落ち新定跡 居玉突貫棒銀 (将棋世界2017年4月号の付録)
泉正樹八段著 Kindle版 108円
難度 ★★★~ 評価 A

二枚落ちで、素人が考えた「居玉棒銀で上手に立ち向かったら、どうなるのか」をプロがシミュレーションしたもの。
これで簡単に上手を崩せるなら、画期的な大発見、となる。

・・・しかし現実はそう甘くなかった(笑) この本を読めば、「けっこう難しい、下手に力が必要」と思えた。
次の一手形式で38問があるが、「とてもじゃないがアマ初段付近では正解は無理」なものがかなりある。求められる解答の手数が長い。この本は何周も解くという前提で書かれている。

「棒銀で攻めを見せておき、場合によってはカニカニ銀で中央突破。そして玉は囲わず、居玉」の戦法となっている。

この戦法でいいところは、上手もマンネリを打破できて、序盤から思考することを要求され、面白く戦えるということ。
上手の悩みとしても、「二枚落ちは下手の戦法が二歩突っ切りと銀多伝ばっかりでつまらない」ということがあるはず。
まだ定跡が完備されていないこの戦法なら、上手と下手、双方が楽しく戦えるだろう。

私が激指15に試してみたところ、戦法としては充分、いけてる。負けるのは私の力不足のせい、という棋譜が数局できあがった。
この戦法は、平手の攻め感覚に近い。そこはいいところ。しかし序盤から失敗が許されない気もする・・・。
下手が居玉でどこまでがんばりきれるのか、未知数。

新定跡を創ろうとする泉八段の心意気は高く評価したい。
駒落ちでの新定跡は、まだまだ眠っていると思う。ソフトを使ってでもいいので、どんどん新しいものを見つけてもらいたい。
ひらけ駒! 
南Q太著 モーニングKC
全8巻 1巻は2011年3月発行、8巻は2013年1月発行
評価 A

将棋を通して、家族愛を描こうとしているマンガ。将棋もメインなんだけど、少女漫画に近いものがある。
派手さが全くない。大冒険でもない。でも面白いのだ。
「なるべく小さな幸せと、なるべく小さな不幸せ、なるべくいっぱい集めよう」がコンセプト。

主人公の小学生、宝くんはかわいい。ママも美人。母一人子一人。ママがどんな仕事をしているのか、最後まで謎(笑)
小さなエピソードの数々が静かに読者の心に触れる、名作。

でもこのマンガ、問題がある。以下、ネタバレ。(知りたくない人は読まないで)







それは、最後が唐突に終わってしまっているのだ。
事情は知らないが、内容から見て、連載が打ち切りにされた可能性が高い。
ドラゴンボールで例えると、悟空がナメック星に旅立った、ところで終わっている。
そんなアホな~、フリーザとの戦いは? ここからどうなんの~、と誰もが思うはずだ。
途中で終わるなら、それなりに終わり方というものがあるはずなのだけど・・・。
・・・人気が出なかったのかなあ。アンケート主義の週刊少年ジャンプだったら、まずありえない類のマンガだった。
モーニングで連載はされたが、最後はジャンプなみの打ち切りか(^^;

去年に、「ひらけ駒!return」というのが新たに始まって、今月2巻目が発売されるそうだ。
しかし「return」はなんと、宝くんが将棋を始めたばかりの頃に時間は巻き戻り、という設定。
続きを描いてくれるんじゃないのか。ええええーー。
パラレルワールドを描くって、なんでそんなややこしいことをするのか、と思ってしまっていて、私はまだreturnは読んでません。
将棋ゲームブック 棒銀大作戦 
青野照市著 Kindle価格440円 創元社 1987年第1刷発行 全190ページ
難度★★★~ (歯ごたえある問題が多い)
評価 S  コンセプト<指しこなす形式で、自分がどれだけ相居飛車の棒銀を理解しているか試してみよう>

この本は掘り出し物。
「将棋ゲームブック」とあるが、要するに「指しこなす本」の原型。
原始棒銀、角換わり棒銀、早繰り銀、この3つは30年前の形でも、ほぼ古くなってない。
30年前の知識が今でもそのまま通用すると思う。これは個人的にはうれしいことだ。
だって、今から30年後もまだこの本の内容が通用する可能性が高いよ。

1問につき、最善手が10点、次善手が8点。
たまにボーナス問題として20点くれる。原始棒銀29問、角換わり棒銀、28問、早繰り銀28問。
900点満点で、私は677点だった。
評価は「1~2級クラス。初段までもう一歩のところ。将棋の考え方をよく学ぼう」という結果が得られた。あー、初段に届かなかったか。

この本、レイアウトもいいし、構成がとてもうまい。指しこなす形式で、前問から続いている局面の出題なので、局面が把握しやすい。問題を出す箇所がGood。ヒントの具合も絶妙。
そして、そこ、もしこう指されたらどうするの?という私の疑問に、ほぼ完全に答えてくれていた。
原始棒銀の受け方が学べるのも、とてもいい。
正直、ここまでの質の解説を創元社の本で実現しているのはめずらしいのではないか。
青野先生は偉大である。

これが440円、安い! 3局、プロに指導を受けて、指した気分になる。
プロの指導対局が、3局で、たった440円! お財布に優しい!  

私は紙の中古本を買った。その時は送料込みで750円くらいだった。
しかし今、Amazonで紙の中古本は7000円くらいもしている。
ぜひKindle版をおすすめする。

「この本と同じ局面にはならないよ」と言う人もいるかもしれない。
でもこの本は骨格として役立ってくれるだろう。
その戦法の骨格(基礎の知識)を持ってる人というのは、悪い手を指しにくいものなのだ。

中・終盤で妥協を許さぬ問題が次々に出題される。プロと同じ手じゃないと正解がもらえない。
「将棋ゲームブック・棒銀大作戦」というタイトルからは想像がつかないような本格的な内容。
24の低級者にはちょっと厳しいかな?

でも、普通の定跡本を読んでも、定跡ってなかなか身に付きづらいので、もうこの本にいきなりチャレンジするのもいい。
まさに私が求めていた本。この本にもっと早く出会いたかった。

紙版 第1刷 誤字など
× P75 飛車が2八
× P96 参考図 後手の飛車が3二にいるはず
× P108 先手陣に攻めがなくなる 〇 後手陣に攻めがなくなる
× P118 △6八成桂 〇 △6八成銀
将棋・序盤完全ガイド 相振り飛車編  マイナビ将棋BOOKS 
上野裕和著 2017年6月30日初版第1刷発行 1540円+税
評価 S 難度 ★☆~ コンセプト<相振りの序盤をざっくりと理解しよう>

「振り飛車編」、そして「相居飛車編」に続く3巻目。
今回もまた、期待に違わぬ分かりやすさ。上野先生の文章力には、本当に感心しきりです。
私はガチガチの居飛車党で、相振りド素人だったのですが、とても楽しく読めました。

将棋の本=難しい、という既成概念を、見事に崩しています。
解説文と図が同じページにある。重要な駒の利きに矢印が書いてある。
そういうレイアウトも万全です。

このシリーズ本はガイドブックで、具体的に勝つための定跡本や手筋本とは、おもむきが違いますね。
普通の定跡本を町内の地図だとすると、本書は日本地図や世界地図みたいなものです。

6つあった、コラムも面白かった。特に最後の6つめ、「自分は収まるところに収まった」という話。

2年以上前に発売された本書、もっと早く読んでおけばよかった。私は今頃読んでいる。反省です。
相振りが何パーセント指されているかものグラフも貴重な資料ですね。
男子プロ間ではあまり指されない相振り編を出してくれたのは、上野先生のファンサービスと言ってもいいでしょう。(参考文献はなんと37冊) 感謝、感謝です。

振り飛車党どうしでは、初手から▲7六歩△3四歩に、▲9六歩が有力とは・・・。
人間どうしの駆け引き、まさに奥が深い。面白い。

上野先生、また何かの形の著作を期待してます。ガイドシリーズ全3巻、最高の仕事をしてくれてありがとうございました!
どんどん力がつく こども将棋 強くなる指し方入門 
1995年発行 池田書店  監修 中原誠 当時の定価は930円+税
評価 S 難度 ★~ コンセプト<駒の動かし方を覚えた次に読む本>

ある将棋ブログでおススメされていた本。Amazonでの評価も、すごくよかった。
私は初心者に対しての教え方というのにも興味あるので、買ってみた。
この本を新品で入手することは難しい。Amazonのマーケットプレスで、中古を買うといいだろう。幸い、安く出回っている。

将棋の駒の動かし方を書いた本は多数あり、どの本を読んでもそれほど差はないだろう。
しかし、その次に読むべき本というのが、なかなかなかった。
本書はその役目を見事に果たしている。
次の一手形式で、読者に考えさせる手法がピッタリとハマっている。これなら、初心者が強くなれるだろう。

序、中、終盤に分け、取り上げられている問題のバランスがとてもいい。
長い詰み手順も紹介されているのだが、それもまた将棋というゲームの一面なので、それでいい。

子どもに将棋を教えたい親は、姉妹本である「どんどん強くなる やさしいこども将棋入門」、そしてこの本を買ってあげるといい。
本書は24年も前の本だが、内容は古くなってない。フリガナも振ってあるので安心だ。
加えて、初心者向けの詰将棋本をセットで買って学ぶといいだろう。
対矢倉 左美濃新型急戦(将棋世界2016年11月号付録)
斎藤慎太郎著 Amazonの電子書籍 Kindle版 将棋世界の付録 122円
評価 A 難度★★★★(けっこう難しい)

次の一手が39問。この本、けっこう難しいです。私はほとんど正解できませんでした。
2周以上、解く必要がありますね。ギリギリの攻め筋を見極める知識と発想が必要となります。
でもチャレンジする価値は十二分にあります。何しろ、うまく攻めれば、一方的に矢倉囲いをボロボロにつぶせるわけですから。そして、ほぼ攻めをつなぐことだけを考えればいい。

評価をAとしていますが、それはこの付録本に対しての評価であり、戦法に対してはSを2つつけたいくらいの評価です。
増田康宏プロをして「矢倉は終わった」といわしめたこの左美濃急戦。まさに革命でした。
元はソフトが指していたものだそうです。残念ながら人間はこの戦法を考え出さなかった。
今もこの戦法のせいで、プロ間で本格的な矢倉は激減しています。

矢倉側としては、何が悪いのか。これは私の見解ですが、それは▲7七銀と▲6六歩、この組み合わせが悪いのでしょう。
▲7七銀は後手の桂が跳ねて当たってくるし、▲6六歩は後手が6筋から攻めやすくなる。だからこの2つの条件が重なると、一気に攻めつぶされる。そういうことだと私は理解しています。
▲7七銀と▲6六歩、このどちらか片方だけなら、矢倉側も受けることができる。プロ間では今でも5手目に▲7七銀型は指される。でも▲7七銀と▲6六歩が2つ合わせて指されることはもうなくなったわけです。(ただし、後手の角道が完全に止まったときは、もう急戦がないので▲7七銀と▲6六歩が合わせて指されることもあるでしょう)

矢倉囲いに組む際は、一方的に攻められるリスクを覚悟し、そして細心の注意が必要になった。そういう時代になりましたね。
投了すっか! ~将棋奨励会物語~ 全3巻
作画 神田たけ志   原作 来賀友志  監修 先崎学六段  Kindle版 1巻につき389円 1996年の作品 
評価 B

マンガ。絵のタッチは月下の棋士に似ている。
前半は、エピソードが楽しい。ちゃらんぽらんな主人公なのか? 
と思いきや、後半になるにつれ、だんだん内面重視で葛藤が語られてくるので、それも面白い。
一番ワクワクしたのは、どこぞの真剣師が道場に現れ、パックマン戦法で「脂っこい将棋を指したくなってなあ」とセリフを吐くところ。現役奨励会員vs真剣師、これは熱かった。
3巻で富士山に登り、見開き2ページで登山の意味が語られるのは、私の胸に響いた。

1996年の作品で、少々古い。でもまだ面白く読める。Amazonの「なか見!検索」で興味を持ったらどうぞ。