四間飛車上達法 
藤井猛著 浅川書房 2017年12月25日初版発行 1400円+税
評価 A  難度★★~★★★★ コンセプト<最速有段者への道!藤井理論で四間飛車の真髄を体感せよ>

本書は、みなさんがすでにAmazonや棋書ミシュランで大抵のレビューはしてある。私はそれらとかぶらないようにしたい。

この本のカバーの後ろのページによると、本書は中級向けということだ。
そして、初心者~四段向け、とも書いてある。わざと棋力対象を広くした内容となっている。
私が知りたいのだが、実験で、初心者にこれを読ませたらどうなるかということ。
駒の動きを覚えた、一手詰みを覚えた、対戦もそこそこやった、じゃあ次は戦法か?と普通はなるだろう。
そこで早々にこの本を読ませちゃう。
すると何人かに一人くらいは、四間飛車の真髄をあっさり悟り、ぐんぐん棋力を伸ばすのではないかということ。
本書はそういう期待をさせてしまう内容だ。
本書は他の四間飛車関連本を読むときの助けにもなる。

もちろん私自身、面白く読ませてもらった。第2章の急戦編は最高に楽しかった。
持久戦編は、実戦編が「もっと典型的な棋譜はなかったのか」と思えてしまった。

評価がSでなくAにとどまった最大の理由として、やはりボリューム不足はいなめない。
藤井先生が何度も言う「四間飛車の幹(みき)」or「四間飛車の軸(じく)」が作られるにはこの分量では足りない。
まあそこは他の本で補えということなのだろう。

対抗形の四間飛車側というのは、軸を作りやすい戦法なのだと思う。
この軸というのが作られてないと、いつも行き当たりばったりになってしまう。
実戦が事前の研究(軸)どおり行かないのは当然なのだ。しかし軸を作っておくことで、応用が利く。
野球のバッティングで言えば、まずど真ん中のストレートを打つ練習をする。
あるいはティーバッティングやトスバッティングで打撃のフォームを固める。
それができてのち、変化球を打つ練習や実戦をする。上達を考えれば、これが当然だ。
将棋もそうあるべきだというのが藤井理論の真髄だと思う。

S評価にしたいのだけど、ボリューム不足と、「相振りはどうすんねん問題」があるんで、Aになってます。

以下、初版本で私が確認した誤記
↓ P92 D図 ▲6六飛までの図面。後手番。
「△6四歩には▲7四歩」と本文にはありますが、▲7四歩以下△同銀▲6四飛△6三銀▲6六飛と普通は進みますが、それは元のままの局面で千日手コースです。振り飛車が有利なので千日手は損です。△6四歩には▲7四歩以外にすべし、との激指14とtanuki-2018の検討結果です。

四間飛車上達法P92

P151 第10図 後手の持ち駒に歩があるはず。(図面は省略)
先崎学&中村太地 この名局を見よ!21世紀編 
先崎学・中村太地著 
マイナビ将棋BOOKS 1540円+税 2018年11月30日 初版第1刷発行
評価 A  難度★★☆~  コンセプト<2人が名局を14局選んでポイントを解説>

まず、前作の「20世紀編」を私は買っていない。
この本を読むにあたり、私は盤と駒を用意し、「さあ、久々に棋譜並べをするぞ」と気合を入れていた。
しかし、読み進めるにしたがって、「別に盤駒は必要ないわ」となっていった。

この本の一局ずつの取り上げ方は、一番見せたいテーマ図を冒頭に持ってきていて、なぜその一局が選ばれたのか、読者にわかりやすくなっている。
符号に対して図面の割合も多い。普段「将棋世界」を読んでいる人なら、「図が多いのでありがたい本だな」と思えるだろう。
そのため私は、わざわざリアル盤駒を出して並べようという気が全然起きなかった。
ありがたいといえばありがたいが、拍子抜けといえば拍子抜け。
この本は棋譜並べ用の棋譜集ではなく、読み物だ。(総譜も章末には載ってるが)

冒頭に、次の一手を考えさせる問題図(そこがテーマ)がある。このやり方はとてもいい。読者が自分の頭で考える機会も必要だ。
先崎と中村太地のコンビネーションは安定している。感情を出しボヤく先ちゃんに太地が理詰めでフォロー。グッド。

この本の欠点としては、図面と次の図面が符号ではつながっていない箇所がある。(つまり読者は、突き放される)
そして解説がどの図面からの話をしているのかが、わかりづらい箇所も少々あった。

本の難度だが、5手詰ハンドブックをがんばれば解けるくらいでないと、この本を理解できるかが不安だ。
ただいつも思うが、私は24の初段付近であり、私にはこの本は楽しく読めた、という他ない。
低級者が理解できるかは、実際に低級の人が読んでレビューするしかないと思う。

14局の中で私が1番面白かったのが、▲松尾vs△藤井猛の一局。(2014年7月17日・順位戦B1)
これは藤井猛の「居飛車版・藤井システム」と呼びたくなるような指し回しが炸裂。
先崎と太地、よくぞこれを取り上げてくれたと、拍手ものだ。パチパチ。
2番目は中田功の三間飛車。▲elmo対△Ponanzaも良かった。

先崎さんは「21世紀編というタイトルをつけるということは、もう先はないようである。俺たちの旅はまだはじまったばかりだ!といわせてもらって、シリーズ化を秘かに画策したい」と書いておられる。
棋譜というのは、料理で言えば「食材」だと思う。食材をどう料理するかは、先崎さんのような語り手たる「シェフ」にかかっている。
良質な棋譜はもう山のようにあり、今も毎日量産されている状態だ。
先崎さん、これは美味しい宝の山を見つけたかもしれん。          
出版社・連盟・対局者・著者・読者、全員がWin-Winの関係でシリーズ化なるか?
ひと目の角換わり 
長岡裕也著 マイナビ将棋文庫 2015年2月初版発行 1100円+税
難度 ★☆~★★★★(初級から有段向け)
評価 A
コンセプト<角換わりを次の一手形式で学ぶ>

次の一手が180題。角換わりの基本、棒銀、早繰り銀、腰掛け銀の4章からなります。
最初のほうは、簡単な問題が続いており、「24の有段者をナメんなよ」と私は感じて解いていました。
しかし、腰掛け銀に進んでから、どんどん難しくなりました。
最後のほうは「すいません、私は角換わりをナメてました、もう難しい問題はかんべんしてください」となってしまいました。
本当にムズイ、途中から手に負えない・・・。ただ、長岡先生も第166問では「ここからは定跡化されている非常に難しい終盤戦となります。一手一手正解するつもりではなく、盤にならべながら雰囲気を感じ取ってください」と書いておられます。
24の高段者でも全問正解は到底無理でしょう。
相腰掛け銀は盤全体に戦いが及び、考えることが非常に多い。ちょっとの駒組みの手順前後で攻め方が変わってきます。
そしてギリギリの攻めをつなげる技術も要求されます。
本のタイトルが「ひと目の」ということなのに、この難しさはどうなってんの(^^;

この本では定跡はあまり扱っていません。たとえば棒銀で△5四角と打つ変化などは全く触れられていないです。
角換わりの定跡を学ぶにはまた別の定跡本が必要。この本は次の一手本と割り切るべきです。
角換わりでの次の一手本はこの本ぐらいしかないので評価が高くAとしました。

角換わりのエッセンスが詰まっていると感じました。
今私は一周しただけですが、何週もして身につけるべき本だと思います。
コンピュータは将棋をどう変えたか? 
西尾明著 マイナビ出版 2018年10月31日初版第1刷発行 1800円+税
難度 ★★★★~ コンセプト<コンピュータの新しい指し方をまとめた本> 
評価 A

コンピュータは(主にプロの)将棋をどう変えたか。ワクワクして読みました。
内容は期待どおり。勝又教授の新手年鑑に似ています。
本書はプロの最先端の研究と言ってもいいので、凡人が理解するのに苦労します。それはもう仕方ないですね。
中でも激ムズのところは、相矢倉。ここは難度最高で、私の脳レベルではどうにもならず、もう投げ出しました。
そもそも相矢倉の従来の定跡がわからないわけだから、それをコンピュータがどう変えたか、なんて・・・。

ただ、たくさんコンピュータの新手を見れるので、必ずしも理解できずとも私はそれなりに楽しみました。

振り飛車についてのところはかなりボリューム的に寂しく、21ページ分しかありません。(全310ページ)
あとは全部相居飛車についてです。

もうね、コンピュータがプロに影響を与えまくり。新手、新戦法、新構想が、たっぷりです。
コンピュータが全部の戦型に影響を与えてるのがわかります。

電王戦の棋譜をはじめとして、私が知っている棋譜がかなり紹介されています。
知っている棋譜が出てくるとうれしいのはなぜ(^^;
西尾はフラッドゲートからも大量に取材しており、西尾さんはよくがんばるな~と尊敬してしまいます。

これだけコンピュータが新しい指し方を示すと、ため息が出ます。
人間が自分たちの考えだけで指していたら、あと100年かそれ以上、気づかなかっただろうと思える指し方をコンピュータがバンバン見つけてくる。人間はそれをありがたく拝借する。
今後の将棋は、人間はコンピュータの下請け作業をやっているようなものになってしまいませんかね?
これからどうなるのか、心配してるんですけど。

ただ、まだしも救い、なのが、コンピュータによって作戦の幅が狭まるのではなく、あれも有力これも有力、となってきていることです。将棋の可能性はまだまだ広い。それをこの本から感じたのは良かったです。
リボーンの棋士(1) 小学館 2018年10月3日初版第1刷発行 591円+税
鍋倉夫著  棋譜監修 鈴木肇
評価 A

毎週月曜にスピリッツで連載されています。しかし休載される週も多いです。
そしてスピリッツ自体が合併号のときもあるので、毎週は読めません。
私はコンビニで立ち読みするのを楽しみにしているのです(^^;
で、コミックスが出たので買って読んだら、やっぱりとても面白い!買って良かった。
ちなみに私の母にも無理やり読ませたところ、かなり好評でした。

(いまのところ)このマンガは、挫折を経験した人たちの人間模様を描いてます。深い心理描写が持ち味。
元奨で暗い性格のほうのキャラがツボに入りました。いかにも居そうな性格で。
そして、東大出のエリート商社マンも、ナイスなキャラ設定。奨励会に挑戦することを許されなかったという経歴。このキャラの少年時代のエピソードは心に沁みました。

私のレビューよりも「棋書ミシュラン」のレビューが素晴らしいので、そちらを読んでください。
このマンガ、これからもこの調子で頼みます。
ここから安易なサクセスストーリーにならないようにしてほしいです。
サブキャラでのスピンオフ作品を今から期待してます。
増田康宏の新・将棋観 堅さからバランスへ
増田康宏著 マイナビ将棋BOOKS 2018年10月31日初版第1刷発行
難度★★☆~ コンセプト<増田の工夫を自戦記で12局紹介> 1540円+税
評価 A 

「矢倉は終わった」「詰将棋、意味ない」で知られる若手棋士、増田康宏六段の著作。
私は増田のファンなのです。ビッグマウスは素晴らしい。若手はそれでこそ面白い。
「将棋世界」の「イメージと読みの将棋観」でも、増田は矢倉は終わったと言い続けて郷田と張り合っているのが頼もしい(笑)

雁木、角換わり、相掛かり、対振り飛車の4章に分け、それぞれ3局ずつで計12局の自戦記となっています。
この本の特徴としてあるのが、「聞き手役」が存在し、進行役を務め、かつ的確に質問していることです。聞き手の棋力設定はアマ中級~上級程度でしょうかね。
この聞き手の存在のおかげでそうとう分かりやすくなっています。本にはこの聞き手が誰なのかは書かれていません。
(ただ、構成・内田晶と書かれているので、観戦記者の内田晶氏が聞き手なのかもしれません)
対話形式のおかげで私には楽しく最後まで一気に読めました。読了の所要時間は3時間強~4時間弱くらいでしょうか。

取り扱っているテーマも、個人的に興味深いものが多かったです。新感覚の雁木、角換わりの速攻、相掛かりの棒銀の受け方、対振り飛車での角交換で居飛車の駒組み。これらはどれも私好み。まるで横歩を取れない居飛車党である私のためのチョイスのよう(^^;
しかも増田の先手番が3局のみであとは増田は後手番。(それも先手番3局の内、2局は対角交換振り飛車)
相居飛車の後手番を増田はどう工夫して戦っているか、が分かる内容となっており、とてもうれしいです。
(本の中では後手番のときは便宜上、先後逆で解説されているので読みやすい)

対戦相手は12人中8人が若手です。これもいいと思います。

第1章の雁木は、私には目新しいことが多く、とても楽しかった。指し手の難度も低め。私は後手番で困っているので雁木を採用しようかと。
しかし第2章の角換わりの2局は、指し手の意味が異様に難しいです。
角換わり相腰掛け銀の総力戦、そしてやはり角換わり相腰掛け銀で相手の陣形が乱れるのを待つ手待ち。これは難しかった・・・(^^; 
残る1局は右桂跳ねで一気の速攻、これは痛快。
第3章相掛かりは先手棒銀に対し後手はどう対応するかが2局。もう1局は出だしでの超ありがちな十字飛車対策。
第4章は角交換振り飛車対策が2局。角道止め振り飛車穴熊対策が1局。

1局を通して解説したあと、どこがポイントだったか3~5ページの振り返り解説がありますが、そのおかげで分かりやすさが増しています。

本書で一番重要な肝として、序盤の駒組み~中盤での戦い方、があげられ、それぞれの対局で目新しいところがあるのが素晴らしい。

対話形式でNHKの講座を見ているみたいな感じで読むことができます。
従来の定跡本よりもテレビ番組に近い雰囲気。

しかし問題もあります。「将棋情報局」のホームページに「初級~中級向け」と書かれてあります。
プロの実戦譜が初級者にどれだけ理解できるのでしょうね。いくら対話形式と言っても、限界がありますよ。
この本は最大11手、符号で次の局面(図)に進めていました。
11手を頭の中で動かす必要があるわけで、初級者にそんなことができるとは思えません・・・。
終盤での増田の切れ味は鋭く、すんなり理解できればそれだけでアマ上級以上はあるかと。

読み物としてコラムが5つ、そして巻末には棋譜並べ用に12局の総譜付き。(1局につき2ページ使い、ここにも解説があります)
増田はソフトにも敬意を払っているところがいいです。
私はビッグマウス増田のファンでしたが、この本で増田将棋のファンにもなりました。

こういう対話形式の実戦解説本、新たな流行になるといいですね。構成の内田晶氏のまさに「新・将棋本観」と言えましょう。とても良かったです。私にとっては積読の将棋本にならなかったので、それだけで試みが成功してますよ(笑)  パチパチパチ。

藤井聡太もいいけど、増田康宏にも注目ですね(^^) 
うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間
先崎学著 文芸春秋 2018年7月15日第1刷発行 1250円+税
評価 A

面白いです。うつ病の恐ろしさが存分に伝わってきます。
うつ病だったというのに、よくこんなに鮮明に発症時からの記憶があるものだと感心しきり。
なんでこんなうまい文章を書けるのか。
「うつ病は心の病気ではなく、脳の病気」というのを聞いて、なるほどなと思いました。
一年ほどで治るメドがついて、まだしも運が良かった。
簡単な詰将棋からやり直す姿に、思わず応援したくなります。
症例を克明に記録したものであり、医学にも貢献したのではないでしょうか。
本書は先ちゃんの会心作と思います。
奨励会 ~将棋プロ棋士への細い道~ 
橋本長道著 マイナビ新書 850円+税 2018年6月30日初版第1刷発行
評価 B コンセプト<元奨励会員の著者が、丸々一冊、奨励会の内部に迫った、めずらしい本>

「サラの柔らかな香車」という著作がある著者です。(橋本長道で検索すればネットにもいくつか記事がありますね。)
今回出されたこの奨励会の本は全体的には面白く、私は一気に最後まで読みました。

記録係の不毛さについて語ったところや、奨励会員がアルバイトをすることに「連盟が口出しすることではない」、と言い切っているところなどはとても賛成できます。
貴重な丸一日をついやして弱いベテランどうしの記録係、そりゃやりたくないでしょう・・・。
ネット中継などで棋譜は手に入るし、ソフトに聞けばたいがいの疑問は解けるということで、時代の変化を感じます。

「香落ちついては奨励会員はみな一家言あり、香落ちは奨励会員を哲学者にさせるようだ」 ここのところは非常に興味深かったです。「現役奨励会員による香落ち座談会」てな感じで将棋世界で取り上げてほしいですね。

取材のために現役奨励会員にアンケートをしたとのことですが、もうそのアンケート結果を全部載せてくれると私なんかはうれしかったですが(^^;

面白かった一方、肝心なところで情報が足りない面があり、残念な感がありました。
奨励会の基本情報が足りないです。
対局日は約2週間に一度のペースで、持ち時間は級位者は各60分で切れたら1分、そして一日3局。
有段者は各90分で切れたら1分。一日2局。これぐらいは書いておいてくれてもいいのでは。
(持ち時間、連盟のページにもどこに載っているのか、今私がちょっと探しただけでは見つけられない)
そして、当時の奨励会員の人数。そのうち何人が退会したか。一番遠い地方の人は、どこから通って来てたか。

一番大事な情報として、著者がいったい、4年間の奨励会員の間に、どういう勉強方法を、どれだけしていたのか、が、まるで書かれていない。
井上師匠のお父さんが、「慶太は一日10時間勉強しとったで」というセリフに、著者が「そこまではしてなかったです」と返すシーンがあります。
そこぐらいしか著者の勉強量の情報がない。なんでかな? そこは読み手がぜひ知りたいはずだし、隠すようなもんでもないと思いますが。著者は自身のプライベートまで踏み込んで昔を振り返ってるけど、一番肝心なそこの情報がない・・・。

「おわりに」で、「私には将棋界に関しては常に在野の一アマチュアプレイヤーとして物申したいという気概がある」と書いておられます。その意気や良し!これからもご活躍を!とは思いますが、元奨だわ、プロ棋界を題材にした小説で受賞するわ、奨励会の本を出すわ、もうすでに在野の一アマチュアプレイヤーの領分を超えてしまっている人生なんで、やはり連盟に対して真っ向から敵対することは言えないだろうな、と感じました(^^;
「おわりに」での「もし今のまま12歳の頃に戻れるとしたら、棋士を目指すだろうか?」の答えは正直で、笑ってしまいました(笑)  

いろいろと書きましたが、レアな奨励会本で、内容もいいですので、気になる方は買いましょう。
図面は香落ちを解説した1枚しかありませんので、将棋を知らなくても読める本です。
奨励会という組織を全く知らなかった人には特におススメしたいです。

7月2日 追記・評価Bの理由は、物足りなかったことです。分量が199ページと少な目。「奨励会・奇人変人列伝」なんてのを期待したのですが、なかったので。
紅井さんは今日も詰んでる。1巻と2巻(完結) 各562円+税
ヤングガンガンコミックス 1巻は2016年9月24日初版発行 2巻は2017年12月25日初版発行
原作 尾高純一 作画 野田大輔
評価 B

主人公の紅井(あかい)さんは、将棋以外は徹底的にだらしない生活を送る高校生の美人奨励会員。
その姿に「お前はどうなっとんねーん」とツッコむ男性教師との「詰んデレコメディー」だ。

1巻の冒頭で、紅井さんがいきなり爆弾発言をする。
なぜ過酷な奨励会を戦うのかについて、「一生やりたくないことはせず、やりたいことだけやっていく為にね」と答える。
作者の方、かなり攻めている。プロ棋士になりたいというのは、ぶっちゃけ、そういうことだもんね。ふはは(笑)

しかし1巻を読み終えた時点では、さほど面白さを感じなかったが、2巻が良かった。
面白いフレーズとして、「この隠れ居飛車タンめ」というセリフが出てくる。
(江戸時代の「隠れキリシタン」から来ている。)
私は居飛車党だが、実は「隠れ振り飛車タン」なのだ。振り飛車の華麗なさばきをやってみたいが、才能がないのでできないのだった。
2巻で紅井さんを見守る教師との仲が接近し、ドキドキする恋愛要素が楽しい。
気が付けば、「詰んデレワールド」にハマっていた。
ゆるーい雰囲気が、ぬるめのお風呂みたいで気持ちいい。ずっと入っていたい感じ。
登場人物が4人しか出てこないのもいい。2巻で完結したのも、潔い。
難をいえば、表現が理屈っぽいこと。あと、セリフの数が多い。
(現在、ヤングガンガンのホームページで1話の立ち読みが可能)

評価Aにするとこれから読む方のための期待値(ハードル)が高くなるので、Bにしておく。私には面白かった。もう一回は読もうと思う。
中学生棋士 (角川新書)
谷川浩司著 800円+税 2017年9月8日発売
評価 C コンセプト<ソフト指し冤罪事件をなかったことにして藤井四段を語る本>

この本、タニーが書きたいことを書いています。中身があり、薄っぺらい便乗本ではありません。
なので、買ってもいいと思います。

でも・・・ 三浦九段への冤罪事件については、まっっったく、カケラも、これっぽっちも触れられていません。
まるで「そんな事件は無かった」といわんばかり。
連盟の当時の会長として、知り得た情報、出した決断、色々あったはずなのに・・・。
タニーが藤井四段や羽生二冠について軽快に語るのはいいのですが、冤罪事件について一言もないのは、いくらなんでも、不自然すぎるんですよね。本当に、タニーは事件についてどう思っているのでしょう?
冤罪事件では、タニーをはじめとする連盟は様々な教訓を得たはずなので、それを後世に伝えて欲しいとマジに願います。

先月から藤井四段関係の本は5冊ほど出てますが、ソフト指し冤罪事件の本は今年に入ってもずーっと1冊も出ないまま。
「失敗の後、きちんと謝罪と説明と反省をしない」それこそが「本当の、しくじり」なのではないでしょうか。
藤井聡太 名人をこす少年
津江章二著 日本文芸社 1300円+税 2017年8月23日発売
評価 A コンセプト<一人の観戦記者から見た藤井聡太フィーバー>

棋書レビュー。昨日に続いて、また藤井聡太四段。
この本は66歳の観戦記者からの視点で、藤井フィーバーが振り返られている。
別冊宝島のほうは10人以上の書き手だったのに対し、この本は一人の視点で書かれている。全く対照的だ。

で、その「一人だけの視点から」がいいほうに出ていると感じられた。読んでいてわかりやすかった。
難しい言葉がなく、読みやすい。取材もなかなかしっかりしておられる印象。
この本は図面を一つも出していない。それは私にはありがたかった。図面は飛ばしがちなもので(^^;

著者の津江さんはだいぶん興奮しておられ、「天才」「ありえない」「信じられない」「嘘のような話」という用語が次々と出てくる。
まあ多少、鼻につくのだけど、デビュー戦から29連勝したら、そういう反応になるのもわかる。
しかも勝ち方がすごいもんね。私は炎の7番勝負の佐藤康光戦が一番印象に残っている。

今やAIに侵略された将棋界。名人がスマホに負ける世界。
しかしそんな中でも存在価値を見せ輝きを放つ、藤井四段の活躍には私も注目している。
藤井聡太 新たなる伝説 (別冊宝島 2613)
2017年8月21日発売 830円+税 ムック形式の大型本
評価 B コンセプト<14個のテーマ別に藤井四段の魅力に迫る>

棋書レビュー。
藤井ブームが伝わってくる本。色々なライターがテーマ別に書いているが、みなさん、それなりに力を入れている。
私が一番面白かったのが、神谷プロの28連勝について取材したところ。
田丸プロが書いているのだが、私のようなマニアにはこれが興味深かった。

図面は控えめだが、ちょくちょく出てくる。私はそこは飛ばして読んでしまったが。

評価をAでなくBにした理由は、分量が111ページと少な目なのと、「おお~」というところが特になかったかな、という点。
肝心の本人インタビューがない。
ただ、写真も藤井四段以外のものもよく撮れてるし、まずまずの内容になっている。

この本の最後は「将棋めし」のテーマで締めくくられているのだが、やはり私には「なんでプロ棋士が飯を食ってるだけでそこまで盛り上がるんだ」という疑問が消えないんだけど・・・(笑)  
人工知能はどのように「名人」を超えたのか?
山本一成著 ダイヤモンド社 1500円+税 2017年5月10日第1刷
評価 A  コンセプト<文系の一般人向けに人工知能を説明>

https://cakes.mu/series/3827
この本は、ここの記事をまとめたものなんですね。

棋書レビューです。私には面白く、一気に読みました。
山本さんは将棋ソフト業界ではヒール扱いされてますが、山本さんはこういうメディア関係の仕事もしてくれるので、私は好きなんですよ(^^;

機械学習やディープラーニングなどについて、わかりやすく書いてくれてるので、中学~高校生くらいから読めるんじゃないでしょうか。簡易な図が豊富で、わかった気にさせてくれますね。
ただ、具体的なPonanzaのコードも、ちょっとぐらい見せて欲しかった。雰囲気だけでいいので。

印象に残った部分をいくつか抜き出してみます。
・(初めて電王戦で現役プロ棋士に勝ったときのムードは)正直、ゾッとするようなものでした。まさにお葬式と同じ空気でした。

・私たち人間以外の知能が存在するのです。

・もしかしたら「知の本質」は、「普通の人」と「昆虫」のあいだよりも、アインシュタインと人工知能のあいだにある、と考えるべきなのかもしれません。

この3番目の言葉のページは図入りで、普通の人とアインシュタインがほぼ同じ位置、はるか上に人工知能、そういう図が描いてあります。
要するに将棋に直すと、「羽生三冠もアマチュア10級も、Ponanzaから見れば大差ないよ」という宣言に他ならないでしょう。まあー、そうかもしれませんが・・・(^^;

それと、2045年くらいにシンギュラリティが起こるが、私たちはどうすれば良いのか?という問いがありますよね。
この話題があるたびに、いろんな本やネットに「どうすれば良いのか、考えて議論していかねばならない」と、書いてあるんですよね。それらを見て、「全然答えになってないやん!」と私は腹が立ってたんですけど・・・。
山本さんはとりあえずですが、漠然とですが、答えを書いています。偉いと思いました。

巻末のアルファ碁の話も、大橋プロの本音が聞けてなかなか面白いです。こういうやりとりは後世への遺産にすべきですよね。

チェス、将棋、囲碁、このどれかと人工知能に興味があれば、おススメできます。
この本のタイトルから考えればBonanzaをもっと称えるべきとは思いましたが。
私はもう一回読んだら、より深く理解できそうだなと思ってます。 高評価です。

ただし一言・・・ プログラマさんたちは、どこまでコンピュータ将棋・囲碁を強くしたら気が済むんでしょうか?
この本を読むと、まだまだ際限がなさそうで、もうダメだこりゃと思ってしまいます・・・(笑)
棋士とAIはどう戦ってきたか 人間vs人工知能の激闘の歴史
松本博文著 洋泉社 900円+税 2017年5月初版
評価 B コンセプト<電王戦を中心に、今までを振り返る>

棋書レビューです。
うーん、期待していましたが、読んでいて、それほど盛り上がらなかったですね。
何しろ、私の知っている話が8割方でしたから。将棋のBonanza対渡辺~現在の電王戦が話の大部分を占めてます。

もともとが、今まであったことを書いているという、そういうコンセプトの本ですから、文句はないんですけどね。
ただ、私にとっては物足りなさを感じてしまいました。目新しさがないのでね。

電王戦のボンクラーズ対米長のプレマッチや、ソフトの貸し出しについては、ページを割いて触れています。
AWAKEの△2八角問題とか、ソフト指し疑惑とかで、著者の意見が出てきますが、常識的な発言だと感じました。
もう今や、プロとAIに圧倒的な差がついたことも、正直に語っています。
AIに対しての態度で、将棋界と囲碁界を比べて、囲碁界を「潔い」と言っているのが、ちょっと笑えました(^^;

難しい言葉遣いはほとんど出てきません。読みやすいです。
私のように、ずっと将棋界を観てる人でなく、今までを知らない人が読んだら、「へえ~、そうだったのか」となるんでしょう。
棋書レビューのカテゴリに入れましたが、映画です。

4月1日からレンタル解禁ということで、TUTAYAでレンタルしてきて、観ました。
面白かったです。高評価です。
冒頭で関西将棋会館が映りますが、自分の知っているところが映画で出てくるって、とてもうれしいものですね(^^;

ただ、私のように小説版を読んでいたり、将棋界を知っていたりするために起こる違和感もあります。
例えば実在の棋士がちょい役で出演してますが、「これは実在の棋士が違う人物役で出てるんだな」と、頭の中で整理しないといけません。「この名前は実在の人物をどう文字ってるのか」とか、「今戦ってるこれはタイトル戦?棋戦はいったい何?」とか。

でも観ていて2時間がすぐ過ぎました。優れた映画の証です。
原作者の大崎さんをあらためて尊敬しますね。

村山聖が羽生と話すシーンがありました。「なぜ将棋をするのか」という問いです。
私は、そりゃ、村山や羽生が将棋を選んだというより、将棋が村山や羽生を選んでくれたのだと思います。
世界にたった10人しかいないA級棋士と、たった1人の七冠王。その才能があれば、将棋をやるしかないでしょう。

「今更、昔の話を観てもどうかな~」との思いがありましたが、いやいやどうして、面白かったです。おススメです。