中学生棋士 (角川新書)
谷川浩司著 800円+税 2017年9月8日発売
評価 C コンセプト<ソフト指し冤罪事件をなかったことにして藤井四段を語る本>

この本、タニーが書きたいことを書いています。中身があり、薄っぺらい便乗本ではありません。
なので、買ってもいいと思います。

でも・・・ 三浦九段への冤罪事件については、まっっったく、カケラも、これっぽっちも触れられていません。
まるで「そんな事件は無かった」といわんばかり。
連盟の当時の会長として、知り得た情報、出した決断、色々あったはずなのに・・・。
タニーが藤井四段や羽生二冠について軽快に語るのはいいのですが、冤罪事件について一言もないのは、いくらなんでも、不自然すぎるんですよね。本当に、タニーは事件についてどう思っているのでしょう?
冤罪事件では、タニーをはじめとする連盟は様々な教訓を得たはずなので、それを後世に伝えて欲しいとマジに願います。

先月から藤井四段関係の本は5冊ほど出てますが、ソフト指し冤罪事件の本は今年に入ってもずーっと1冊も出ないまま。
「失敗の後、きちんと謝罪と説明と反省をしない」それこそが「本当の、しくじり」なのではないでしょうか。
藤井聡太 名人をこす少年
津江章二著 日本文芸社 1300円+税 2017年8月23日発売
評価 A コンセプト<一人の観戦記者から見た藤井聡太フィーバー>

棋書レビュー。昨日に続いて、また藤井聡太四段。
この本は66歳の観戦記者からの視点で、藤井フィーバーが振り返られている。
別冊宝島のほうは10人以上の書き手だったのに対し、この本は一人の視点で書かれている。全く対照的だ。

で、その「一人だけの視点から」がいいほうに出ていると感じられた。読んでいてわかりやすかった。
難しい言葉がなく、読みやすい。取材もなかなかしっかりしておられる印象。
この本は図面を一つも出していない。それは私にはありがたかった。図面は飛ばしがちなもので(^^;

著者の津江さんはだいぶん興奮しておられ、「天才」「ありえない」「信じられない」「嘘のような話」という用語が次々と出てくる。
まあ多少、鼻につくのだけど、デビュー戦から29連勝したら、そういう反応になるのもわかる。
しかも勝ち方がすごいもんね。私は炎の7番勝負の佐藤康光戦が一番印象に残っている。

今やAIに侵略された将棋界。名人がスマホに負ける世界。
しかしそんな中でも存在価値を見せ輝きを放つ、藤井四段の活躍には私も注目している。
藤井聡太 新たなる伝説 (別冊宝島 2613)
2017年8月21日発売 830円+税 ムック形式の大型本
評価 B コンセプト<14個のテーマ別に藤井四段の魅力に迫る>

棋書レビュー。
藤井ブームが伝わってくる本。色々なライターがテーマ別に書いているが、みなさん、それなりに力を入れている。
私が一番面白かったのが、神谷プロの28連勝について取材したところ。
田丸プロが書いているのだが、私のようなマニアにはこれが興味深かった。

図面は控えめだが、ちょくちょく出てくる。私はそこは飛ばして読んでしまったが。

評価をAでなくBにした理由は、分量が111ページと少な目なのと、「おお~」というところが特になかったかな、という点。
肝心の本人インタビューがない。
ただ、写真も藤井四段以外のものもよく撮れてるし、まずまずの内容になっている。

この本の最後は「将棋めし」のテーマで締めくくられているのだが、やはり私には「なんでプロ棋士が飯を食ってるだけでそこまで盛り上がるんだ」という疑問が消えないんだけど・・・(笑)  
人工知能はどのように「名人」を超えたのか?
山本一成著 ダイヤモンド社 1500円+税 2017年5月10日第1刷
評価 A  コンセプト<文系の一般人向けに人工知能を説明>

https://cakes.mu/series/3827
この本は、ここの記事をまとめたものなんですね。

棋書レビューです。私には面白く、一気に読みました。
山本さんは将棋ソフト業界ではヒール扱いされてますが、山本さんはこういうメディア関係の仕事もしてくれるので、私は好きなんですよ(^^;

機械学習やディープラーニングなどについて、わかりやすく書いてくれてるので、中学~高校生くらいから読めるんじゃないでしょうか。簡易な図が豊富で、わかった気にさせてくれますね。
ただ、具体的なPonanzaのコードも、ちょっとぐらい見せて欲しかった。雰囲気だけでいいので。

印象に残った部分をいくつか抜き出してみます。
・(初めて電王戦で現役プロ棋士に勝ったときのムードは)正直、ゾッとするようなものでした。まさにお葬式と同じ空気でした。

・私たち人間以外の知能が存在するのです。

・もしかしたら「知の本質」は、「普通の人」と「昆虫」のあいだよりも、アインシュタインと人工知能のあいだにある、と考えるべきなのかもしれません。

この3番目の言葉のページは図入りで、普通の人とアインシュタインがほぼ同じ位置、はるか上に人工知能、そういう図が描いてあります。
要するに将棋に直すと、「羽生三冠もアマチュア10級も、Ponanzaから見れば大差ないよ」という宣言に他ならないでしょう。まあー、そうかもしれませんが・・・(^^;

それと、2045年くらいにシンギュラリティが起こるが、私たちはどうすれば良いのか?という問いがありますよね。
この話題があるたびに、いろんな本やネットに「どうすれば良いのか、考えて議論していかねばならない」と、書いてあるんですよね。それらを見て、「全然答えになってないやん!」と私は腹が立ってたんですけど・・・。
山本さんはとりあえずですが、漠然とですが、答えを書いています。偉いと思いました。

巻末のアルファ碁の話も、大橋プロの本音が聞けてなかなか面白いです。こういうやりとりは後世への遺産にすべきですよね。

チェス、将棋、囲碁、このどれかと人工知能に興味があれば、おススメできます。
この本のタイトルから考えればBonanzaをもっと称えるべきとは思いましたが。
私はもう一回読んだら、より深く理解できそうだなと思ってます。 高評価です。

ただし一言・・・ プログラマさんたちは、どこまでコンピュータ将棋・囲碁を強くしたら気が済むんでしょうか?
この本を読むと、まだまだ際限がなさそうで、もうダメだこりゃと思ってしまいます・・・(笑)
棋士とAIはどう戦ってきたか 人間vs人工知能の激闘の歴史
松本博文著 洋泉社 900円+税 2017年5月初版
評価 B コンセプト<電王戦を中心に、今までを振り返る>

棋書レビューです。
うーん、期待していましたが、読んでいて、それほど盛り上がらなかったですね。
何しろ、私の知っている話が8割方でしたから。将棋のBonanza対渡辺~現在の電王戦が話の大部分を占めてます。

もともとが、今まであったことを書いているという、そういうコンセプトの本ですから、文句はないんですけどね。
ただ、私にとっては物足りなさを感じてしまいました。目新しさがないのでね。

電王戦のボンクラーズ対米長のプレマッチや、ソフトの貸し出しについては、ページを割いて触れています。
AWAKEの△2八角問題とか、ソフト指し疑惑とかで、著者の意見が出てきますが、常識的な発言だと感じました。
もう今や、プロとAIに圧倒的な差がついたことも、正直に語っています。
AIに対しての態度で、将棋界と囲碁界を比べて、囲碁界を「潔い」と言っているのが、ちょっと笑えました(^^;

難しい言葉遣いはほとんど出てきません。読みやすいです。
私のように、ずっと将棋界を観てる人でなく、今までを知らない人が読んだら、「へえ~、そうだったのか」となるんでしょう。
棋書レビューのカテゴリに入れましたが、映画です。

4月1日からレンタル解禁ということで、TUTAYAでレンタルしてきて、観ました。
面白かったです。高評価です。
冒頭で関西将棋会館が映りますが、自分の知っているところが映画で出てくるって、とてもうれしいものですね(^^;

ただ、私のように小説版を読んでいたり、将棋界を知っていたりするために起こる違和感もあります。
例えば実在の棋士がちょい役で出演してますが、「これは実在の棋士が違う人物役で出てるんだな」と、頭の中で整理しないといけません。「この名前は実在の人物をどう文字ってるのか」とか、「今戦ってるこれはタイトル戦?棋戦はいったい何?」とか。

でも観ていて2時間がすぐ過ぎました。優れた映画の証です。
原作者の大崎さんをあらためて尊敬しますね。

村山聖が羽生と話すシーンがありました。「なぜ将棋をするのか」という問いです。
私は、そりゃ、村山や羽生が将棋を選んだというより、将棋が村山や羽生を選んでくれたのだと思います。
世界にたった10人しかいないA級棋士と、たった1人の七冠王。その才能があれば、将棋をやるしかないでしょう。

「今更、昔の話を観てもどうかな~」との思いがありましたが、いやいやどうして、面白かったです。おススメです。
人工知能の核心 羽生善治・NHKスペシャル取材班 著 
780円+税 2017年3月10日 第1刷発行
評価 C コンセプト<羽生3冠が人工知能について解説してくれる>

棋書レビューです。
本の内容は、羽生さんが池上彰さんのごとく人工知能について解説してくれています。
本についている帯に、「人間にしかできないことは何か」 「羽生善治が、人工知能に向き合った!」とでっかく書いてあります。

タイトルが「人工知能の核心」だし、帯がそういうことを書いているから、私は「羽生さんが、やっと将棋ソフトと戦うことを決心したのか!?」と思ってしまいました。
しかし本文に、そんな記述は見当たりませんでした。
羽生さんの解説で「人工知能のこういう技術は、例えば、将棋ソフトにはこういう具合で使われている」という記述が多くでてきます。
だけど、なんで羽生さんは将棋ソフトと対戦してくれないのか。せっかく人工知能の話をしていても、説得力に欠けます。

「プロ棋士が人工知能に向き合った」と言うなら、どう考えても対戦は避けられないでしょう。
それを避けているから、どうにも恰好がつかないんです。
この本を読んで、正直、がっかりしました。
「羽生さんという人間にしかできないこと」、それは人類代表として人工知能と将棋を指すことではないでしょうか。
なんで羽生さんは人工知能の評論家になってしまったのか。将棋を通じて人工知能と対決するプレイヤーではないのか。

いつまでも羽生さんがタイトルホルダーで第一人者とは限りません。10年後、20年後を振り返ったとき、「羽生さんは結局、対戦しなかったな」と言われるより、「羽生さんはボロ負けしたけど逃げなかったね」と言われるほうが大事だと、私は思います。
チェスのカスパロフも逃げなかったから、今、尊敬されています。

将棋の最善の一手に今や一番近い存在である人工知能と、プロ棋士がどう関わっていくのか、それに私は注目しています。
この本の内容というよりは羽生さんの話になってしまいましたが、それもまた将棋ファンの一つの感想です(^^;
棋士の一分 将棋界が変わるには
橋本崇載著 角川新書 800円+税  2016年12月10日初版
評価 B 
コンセプト<ソフトとの関わり合いと中心に、プロ棋界が抱える様々な問題を提議>

棋書レビューです。ハッシーがプロ棋界の現状を憂えていることを書いた本。
「まえがき」に、「憧れの職業から食えない職業、どころか蔑(さげす)みの対象にさえなりつつある」と書かれております。
私はこれには、笑ってしまいましたが(^^; ハッシーは正直でいいですね。

この本、私は序盤はメモしながら読んでいたんですけど、中終盤、なんだかメモを取るのがめんどくさくなって、取るのをやめました。
それというのも、ハッシーがどういう対象に向けて書いたのか、それがよくわからないんです。
この本は、ファン向けというより、むしろプロ棋士向けという感じを受けました。
連盟を改革しなきゃいかん、という話が、後半ずーっと続いているので、私は「そんなことを私に言われても、どうしようもない」と感じてしまいました。
なにかビジネスをしていて、組織を改革したい人向けの内容・・・とも言えるんですけどね。

ハッシーの活動でいうと、あのタッグマッチを中止に追い込んだのは、本当に大手柄でした。そのことについても、書いてあります。
もし連盟がタッグマッチを本格開催していたら、私はもうプロを見限ったでしょうから。

ただ、それ以外で具体的にハッシーが何か連盟を改革したという話はありません。
理事選に出たけど、落選してもう今後は出馬しないと書いてありますし。

将棋ソフトとの関係についてですが、ハッシーは「関わるな」というスタンスです。
でも、それは無理です。多くのアマチュアがもうガンガン活用してますから。
色んなプロ棋士がもう研究にバンバン取り入れてますから。
それで「プロとソフトは勝負は全くしない」って、それは不自然すぎるんですよね。

この本のタイトルにある「棋士の一分」という言葉。
「一分(いちぶん)」とは、面目、名誉のことです。
これは「武士の一分」という映画から来ているんですよね。
私は映画を観ました。主人公のキムタクがとてもかっこよかったです。それはなぜか? 主人公の妻を手籠めにした敵と決闘したからでしょう。
あれを、決闘せずに避けていたら、もう全然話になりません。
ハッシーは「ソフトと戦うな」、と言っている。でも今回の本のタイトルは「棋士の一分」。おかしいですね。
敵であるソフトと戦って見せてくれと言いたいです。

でもこういう本を書けるだけの知識や文章力があることは、素直に尊敬します。
ハッシーは10年後には将棋界に見切りをつけて、異業種で活躍していそうですね。ハッシーならそれができそうだと思いました。
将棋「名勝負」伝説
別冊宝島 1200円+税 2016年10月21日発売 分量は約130ページ 
評価 A  コンセプト<将棋界の話題を、記者が好きなようにピックアップして記事にしたもの>

棋書レビューです
この本はムック形式というやつで、雑誌と書籍の中間ですね
宝島社のお家芸と言えるスタイルです
この本、読んでおいて損なしです、面白かったです
テーマがバラバラなんですけど、取材した記者が、それぞれ自分の知りたいこと、書きたいことを書いている感じで、それが成功しています

全13個ほどの記事の中で、私が気に入った、面白かったものが5つ
・渡辺竜王へのインタビュー
・バッグギャモンの「ソフトと人間の共存」の話
・「不屈の棋士」の著者の大川さんが書いた「ソフトが与える将棋界への影響」
・「オール・イン」の編集者による天野貴元さんの思い出話
・千田五段へのインタビュー

「ソフトの襲来によってプロ棋士・将棋界はどこへ向かうか」というテーマで渡辺竜王も大川さんも突っ込んだことをしゃべってくれてます 「危機感」が伝わってきますよ  
三浦の疑惑騒動は、話が新しすぎて出てきませんが、不正防止の話があります

そして、なにより突出して面白いのが、大川さんが、千田五段にインタビューしてるんですが、これがすごい内容(笑)
もう、笑えるというか、あきれるというか、尊敬するというか・・・
千田のソフトへの情熱はどこまで行くねん! そこまで言う?   
これ、「不屈の棋士」を読んで面白いと思った人は、千田へのインタビュー記事はぜひとも読むべき内容となっています
「不屈の棋士」の続編というべき内容ですからね 
この千田の記事はたっぷり14ページ分(内2枚は写真ページ)も分量ありますしね

唯一気になるのが、本のタイトルですね  
いったい何が「名勝負」で伝説なのか、よくわかりませんが、どうでもいいでしょう
この本、図面が少ないんで「観る将」に、おススメです 
そして特にソフトの話に興味ある人にも、です

上記以外の他の記事もまずまずですし、何より千田はやってくれたなー(笑)
連盟発行の「将棋世界」だと、ここまでは書けないんじゃないか、と思う内容が読めて満足です
お弁当に例えると、この本は色んなおかずが詰まった、幕の内弁当みたいなもんです
美味しかったです、高評価! 宝島社さん、記者のみなさん、Good Job! 
2016.07.23 不屈の棋士
不屈の棋士 大川慎太郎著 講談社現代新書 840円+税 2016年7月20日初版発行
評価 S  コンセプト<プロ棋士たち11人へ将棋ソフトに関するインタビュー>

ひさしぶりの棋書レビューです
私は今まで、この「ソフトの件」については、イライラしていました
その原因が、「プロ棋士がソフトに関して、あまりしゃべらない」ということに起因していたのだということがこの本を読んでわかりました
本書、かなり突っ込んでインタビューをしてくれています
例えば羽生さんへの質問を一部抜粋してみます

大川「第1期叡王戦にエントリーしなかった理由を教えてください」
大川「羽生さんがいま、もしソフトと戦うとしたら、アンチコンピュータ戦略というか、たくさん対戦して弱点を見つける、というような準備になるのでしょうか」
大川「将棋指しは『強い相手と戦いたい』という欲求をお持ちだと想像しますが、大舞台でソフトと指してみたいという思いはあるのでしょうか?」
大川「『いまいちばん強いソフトと対局したら勝つ自信はありますか?』という質問にはどう答えますか?」

・・・まだまだどんどん延々続く質問の嵐(笑)  こういう刺激的なインタビューとその回答が、延々318ページ
つまらないわけがないです  
ただ、延々ソフトに関する質問集なので、私は「またソフトの話題か!」と、途中で思ってしまいましたけど(笑)  それは、そういうテーマの本ですから(笑)  ちょっとずつ読むのがいいんでしょうかね  

千田さんがやっぱり面白い存在で、研究にソフトを取り入れまくっています
そしてその対極の存在として、ソフトに背を向ける行方さんのような人もいる
私は行方さんに共感してしまいます
千田さんは棋力向上と言ってますが、完全にソフトに依存する勉強の仕方で、100%ソフトの指示どおり指せるようになったとして、じゃあ人間の存在意義って、どこにあるのか? それはもう人間というよりソフトそのものではないか、そう思ってしまいますね

「プロ棋士の存在価値はこれからどうなるのか」、「ファンが離れていくのではないか」という過激な質問もバンバンしてくれていて、プロ棋士もそれに対して何らかの答えをしてくれています
「電王戦の貸し出しルール」に賛成か反対か、そして「評価値」が視聴者向けに出ることにどう思うかも質問してくれていますね

普段のプロの研究において、私が思っていたより、もうプロ棋界にはソフトが浸透していることがわかり、私はショックで、「あー、もうプロの将棋は割り引いてしか楽しめなくなっちゃったな」という思いが沸きましたが、しょうがありません

とにもかくにも、丸々本一冊分、こういう機会を設けてくれたことにより、私の「イライラ」はかなり解消されました
貴重な証言集に仕上がりましたね
大川さん、そして答えてくれたプロ棋士のみなさん、ありがとう

私のような一ファンが、これからもプロ棋士の将棋を観続けるのか、それは自分で決めていかないといけません
私はまだ葛藤の日々を送ると思います・・・(^^;
青野照市の基本の詰将棋5手 (将棋パワーアップシリーズ)
青野照市著 創元社 1000円+税 難易度★★★  2015年12月10日第1刷発行
評価 A
コンセプト<そこそこの難易度の詰将棋202題>

レイアウトは、創元社のいつもの2問2答形式のパターンです 
持ち駒の表示がちょっと小さいと感じる以外は、問題ありません
裏透けもなく、いい感じです
ヒントがいっさいないのも、私の好みです
12問、わからなくて答えを見ました 
まあ、もっと考えれば答えがわかったかもしれないのですけど、もう我慢できなくて見てしまうことがあるんですよね・・・
難易度は、5手詰ハンドブック(赤)と同じくらい、と感じました
(赤は一番最初に出た5手詰ハンドブックです)
難易度が最初から最後まで変わらないので、安心して解くことができます
解説は詳しいと言えば詳しいんですけど、まだ説明が足りないかなと思う問題もありました
分岐がけっこう多い問題がありましたからね・・・ でも、これ以上はスペースの都合上、解説は増やせないし・・・

私は詰将棋がとりわけ苦手なんで、もうヒーヒーとなりながら解きました
3日がかりで、もしかしたら10時間くらいかかっちゃってるかも?
数題、解けるたびに休憩とかになっちゃってるから、もう何時間かかったかわかりませんわ(笑)

肝心の、問題のセンスはどうか? これはまずまず及第点と思います
以前レビューした「加藤一二三の5手詰め」の問題のように、「一題に使っている駒が17枚とかって多すぎる」とか、「意味のない駒が配置してある」ということがありません 
解後感も、詰め上げたときは「おっ、やった」という問題が多いです

さて、この本の悪いところは何か? それはタイトルに「基本の詰将棋」と題してあるところです
基本って何でしょう? 頭金とか腹金でしょうか? そんなレベルを期待した人にとっては、もうめっちゃ難しい本ですよ、これは・・・
この本は、作品性を重視しています
詰将棋の作品にとって、「基本」なんて、無きに等しいものでしょう
「基本」をわざと超えて「あっ、そうか、もしかして、その手があるか」と思わせる解き方だから、「作品」として仕上がっているわけで・・・

本当の基本の詰まし方を書いた本もあるでしょうに、こんな作品性を重視した本に「基本」と書かれていては、まぎらわしい、迷惑な話だと思いますね
初心者さんたちが、遠ざかってしまうと思います

まあそれはそれとして、内容は良いと感じましたので、A評価にしています
B評価にするかどうか、そうとう迷いましたけど、問題の質は一定レベルにあり、私にちょうど良かったですからね
2題、例として載せておきます 
コピペしてKifu for Windowsに張り付けて見て下さい

第50問↓

後手の持駒:飛二 角 金三 銀三 桂二 香三 歩十四 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・|二
| ・ ・ ・ ・ ・ とv歩 ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v銀|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 金 桂 

-----------------------------------------------------------------------------------------------
第90問↓

後手の持駒:飛 角 金四 銀三 桂四 香四 歩十六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・v玉 ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
| 角 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手の持駒:飛 銀 
手数=0 まで
才能とは続けられること 強さの原点
羽生善治著、というかインタビューの書き起こし
2012年2月初版だが、実は2008年10月のTV放送から取り上げたもの 
PHP社 定価 1100円(税別)  評価 A 

また古い本のレビューです
この本、私は図書館で借りました 将棋本のコーナーに置いてあったのです
文字は大きいし、120ページ強で終わるし、中身の少ない本かな?と思いましたが、そうではありませんでした
でも買うほどではないしで、結論として、図書館で借りるにピッタリの本でした(^^;

印象に残った羽生さんの発言を抜き出しておきます
P33より 「人間には二通りの考えがあると思うのです。不利な状況を喜べる人間と、喜べない人間。(中略)たとえ不利な局面でも、あまり落ち込まずに淡々と指していく。ここが勝負のツボを見出すポイント」

そりゃ、それができれば将棋では圧倒的に有利になりますねえ 羽生さんは不利を喜べる第一人者、さすがです

P44 「対局前には必ず頭を休ませます。人によっては、将棋の研究をして将棋漬けになっている人もいますが、私は頭の中を空っぽにし、ボーッとできる空白の時間をつくるように心がけています。」

これは私も、休ませる派です 
単に体力の問題も大きいですが、アマの大会の対局直前は将棋の駒すら見ないようにしていました
一度、「5手詰ハンドブック」を解いた直後に対局して、戦ってる最中にバテてしまったので(笑)

P52 「常に手堅くやり続けるのは、長い目で見たら一番駄目なやり方だと、私は思っています。将棋はどんどん変化していきますから、勝率の高いやり方をずっと続けていると、もたなくなるのです。目の前の勝利は、とても大事なことではあるけれど、私はあえてリスクをとる。」

だから羽生さんの将棋は元気があって面白いんですね
でも、もっと振り飛車を採用するというリスクはとってくれないんでしょうか(^^;
羽生さんが振れば、私を含め、もっとアマチュアは喜ぶと思います 

P75 「なんでも合理的に割り切って無駄を省き、徹底してやるやり方が必ずしも一番いい方法ではない、と私は思っています。」

これは、渡辺竜王の「高い勝率のやり方を採用」、「指し手は合理的に」という発想と、完璧に反しますね
羽生vs渡辺の対決は、これからも興味深いです

コンピュータと人間について
P121 「私の予想では、今は考える方向性はまったく違うけれど、最終的に選ぶ一手、決断は同じになるのではないかと思っています。」

この羽生さんの予想は、はずれそうです・・・ 
これまでの電王戦で、散々、コンピュータはプロ棋士の想像できない手を指して、プロ棋士を破ってきましたからね
(GPSの△8四銀、習甦の古い囲い方、ponanzaの屋敷戦の△1六香と△7九銀、村山戦の▲7七歩から飛車交換拒否)

P121 「私としてはコンピュータがどんな手を指すのかに非常に興味があり、機会があれば対戦してみたい気持ちはあります。そのときは勝ち負けではなく、面白く、楽しい将棋を指したいと思います。」

うわ、羽生さんはこんなことを言っていたのか、でも2008年時点での話ですけど・・・

この本は、多くの漢字にふり仮名をつけてあって、それはいいと思うのですが、ふり仮名がついてない漢字も半分くらいあります
それが残念といえば残念ですね もう全部につければいいと思いました

羽生さんがしゃべりたいことをしゃべった、中身のある本だと思いました 
でも今から買うなら中古で充分と思います
人間に勝つコンピュータ将棋の作り方
あから2010を生み出したアイデアと工夫の軌跡
監修・コンピュータ将棋協会 著者・瀧澤武信ら12人  定価 2030円(Amazon)
2012年11月初版  評価 A  コンセプト<主要ソフト関係者の解説を集めた書>

もうすでに3年以上前に発売された本、今頃レビューすることになってしまいました
専門書かと思っていたので、スルーしていましたが、図書館で見かけたので読むと、理系の知識がなくても読める箇所が多いです
とてもよくできた本で、評価Sでもいいのですが、専門用語が出てきて私には難しいところも多かったので、Aにしてあります

ソフトの開発者、Bonanzaの保木さんやYSSの山下さんらが自らのソフトについて語っています

激指の鶴岡さんの一言が印象深いので、抜き出しておきます
「強くなりすぎた将棋ソフトが引き起こす問題を耳にすることも増えてきた。もはや将棋ソフトが強くなることを誰もが喜んでくれた時代ではない。開発者としては、コンピュータ将棋に負の面があることを認めた上で、将棋ソフトがもたらすプラスの面を充実させていくことを目指すよりないのだが、悩ましい時代になったものである。」

本当にそうですねえ、まあでも私は、新作の強くなった激指が発売されたら、買いますけどね・・・
強いものを入手して、持っていたいという所有欲が働きますからね

ソフト同士が戦うネット上のFloodgateのことが書かれてあります
それぞれのソフトの棋風も書いてあるので、楽しめます

コンピュータ将棋の弱点を探る、という章も、面白いです
元奨励会三段の、古作登さんが書いています
「相矢倉で、人間側が右銀を動かさずに組んで、コンピュータが玉を矢倉に入城したところを見計らって棒銀に出るとうまくいく」
とか、「コンピュータが穴熊なら、相穴熊ではなく銀冠に」とかが書かれています
でも、これって、むなしい作業だなー、としか私には思えません
これらの弱点が発覚しているというのは、2012年の話であって、もう2016年になった今となっては、過去の参考文献でしかないですからね (古作さんはよく研究したと思いますよ)
山崎八段は今頃、こんな作業に追われているのかと思うと、げんなりしますね・・・
コンピュータ将棋の弱点を探る作業なんて、物好きなアマチュアにまかせておけばいいと思います

エピローグの、松原仁さん(はこだて未来大学)の言葉を抜き出しておきましょう
「少し前までは、コンピュータ将棋が世界チャンピオンである名人に勝つXデイはいつ来るかが話題になっていたが、筆者にとってもはや興味がなくなってしまった。いまでもコンピュータ側がちょっと頑張れば(並列化などを普通にやれば)、名人相手に4回戦えば1回以上は勝てる。コンピュータ側が最善を尽くせば数年のうちに勝ち越すことができる。名人がコンピュータ対策をすればXデイは1~2年先に延びるかもしれないが、いずれにしろ時間の問題である。実際のXデイがいつになるかはコンピュータ将棋の強さではなくいつ対戦が実現するかで決まる。」

すでに3年前に、ここまで書かれちゃってますねえ 
もう、名人がコンピュータに抜かれるのはどうしようもないですね・・・
私も名人とコンピュータ、どっちが強いかには興味がほぼないですが、今後に連盟や羽生名人がどのような動きを見せていくのか、何が起きて何が起きないのかに興味がありますね
将棋の渡辺くん 1
伊奈めぐみ著 講談社 2015年12月9日初版発行 別冊少年マガジンの連載をまとめたもの
評価 A  コンセプト<渡辺家の日常を、奥さん自身が描いたエッセイマンガ>

私は、渡辺明プロのことをかなり知っている
・・・と思ってました、この本を読むまでは(^^;

私の知っている渡辺明プロは、それはそれは頼もしい将棋を指して、解説ではキビキビしゃべってくれますからね
本書では、仕事中とは裏腹な、家での渡辺明プロの様子が主に描かれています
家での「渡辺くん」は、欠点がかなり多い人に描かれているので、楽しい(笑)
 
渡辺プロがドカンと稼いで、4つ年上の奥さんが旦那をリードしてあげてる
いやー、相性ピッタリの理想のカップルですねえ!

渡辺プロは、やらないと決めたことはトコトンやらないんでしょうが、やらなければならないことは、実直にしっかりと、できるまでやることを、私はよく知っています
それは観ている将棋ファンなら、みんな気づいてるんじゃないかな 
だからこの本でどういう扱いを受けても(笑) 、将棋ファンは安心して読めますね

昨今は、プロ棋界はコンピュータの侵略をモロに受けて、「いったいプロ棋界はどうなるんだ」という空気が私のような観る将棋ファンには漂っています
今日も24では電王ponanzaが勝ち続けているのでしょう

そんな中、無条件に笑わせてくれる本書の存在は、貴重! 
著者の絵は独自路線を行き、文房具1個を描かせても、どこか味がある!
話のネタも、日常の小さなことに目をつける、その着眼点が光っています、楽しいです
著者の絵と文章のセンスで、他にライバルがいない、他に類書がない本になっている、素晴らしいです

このレビューを書くために一気に読んだのがもったいなかったくらいです
来年の夏ごろに出る予定という、続編の2巻も、早く買いたいですね
長考力 1000手先を読む技術
佐藤康光著 780円+税 幻冬舎新書 2015年11月30日初版発行
評価 B  コンセプト<康光流の将棋の考え方>

冒頭、この文で始まります
「棋士の特殊能力ともいうべき、深く、正確に『読み切る力』を、人生やビジネスで活かすことができるのか。どうすれば論理的に物事を考えられるのか。そういった期待を持ってこの本を手に取られた方も多いかと思う。」 (まえがきより)

しかし、この本は、どうも読むほどに、将棋を指すときの精神論になっています
将棋好きなファンで、ある程度プロ棋界に精通していないと、面白くないんじゃないかなあ、と思えますね

全6章から成りますが、序盤、退屈なところがあります 
「定跡」、「大局観」、「利かし」、「スペシャリストとジェネラリスト」といった言葉の定義は、別に康光にわざわざ教えてもらわなくとも、もう私は知っていますからね・・・
こういう言葉を知らない人向けなんでしょうけど、本の後半では一転して、森内とか郷田とか森下とか島とか室岡とかが出てきて、「どう考えても、今度はマニア向けの話だよな」と思えます

後半が面白かったです 康光本人による「康光新手」の解説とか、新手を作るときの苦労、このままの変則な棋風でいいのかという葛藤、私は興味深く読ませてもらいました
でも、矢倉の組み方の進化とかを図面で教えられても、将棋に興味ない人が読んだ場合、何を思うんでしょうね(^^;
(図面は全部で10個程度しか出てこないですけどね)

タイトルの「長考」に関しては、もっと深く取り上げて欲しかったです
「好きだから読み続けられる」という項目がありますが、結局まあ、そうなんだろうなあと感じました
康光といえば、今年の将棋年鑑のアンケート、「一生お金に困らないとしたら?」に、「将棋の研究」と答えていますから、もう将棋のことを考えるのは本能というレベルなのでしょう

ただ、「長考の中身」について、あまり触れられてません 「何をそんなに考えてるのか」がいまひとつ書かれてませんでした
堂々巡りはないのか?、と思ってしまいますね

あと、なぜ康光が居飛車本格派から、破天荒な棋風に変わったのか、それが書いてあるのはいいですね
原因は、あの人との戦いで12連敗を喫したから、だったんですね(笑)  

電王戦、叡王戦については、分量7ページで、ちょっと触れられているだけです
叡王戦について、「私も参加する以上、コンピュータと戦うときは全力を尽くすしかない。」と書かれてあるだけです
康光といえば、米長著の「われ敗れたり」で、コンピュータとの対戦をきっぱり断った話が有名ですが、なぜ今回は叡王戦に出たのか、私はいまだに不思議に思っております・・・

強いコンピュータが出てくる中、出された康光さんの「長考力」というタイトルの著書
康光は巻末で、「人間にしかできない将棋とは何か。その答えは持ち合わせていないが、深い読みに支えられた『読みだけではない驚き』を与えることにあるのではないだろうか。」と述べています
康光は観る人に驚きを与えてくれるよう、これからも、がんばってくれるようです 
創造派の第一人者は、これからどんな将棋を見せてくれるんでしょうかね 期待しております