第20期 銀河戦
本戦Dブロック 9回戦
阿久津主税七段 vs 杉本昌隆七段
対局日: 2012年3月22日
解説:畠山成幸七段
聞き手:貞升 南女流1級
記録:伊藤明日香女流初段

土曜に放送された銀河戦 
杉本は前局で佐藤秀司に勝ち 阿久津は予選で村中に勝ち
平成23年度の成績は、杉本17勝13敗 阿久津24勝13敗 2人はなんと初手合い、とのこと

解説のナルゴン「杉本の研究家の振り飛車党 手厚く粘り強い 攻めより受けを重視する
 阿久津はオールラウンダー 嗅覚がきく、スキあらば突く、鋭い棋風 寄せもダーッという感じ」
 正反対の2人の対局」

ところで、畠山の双子の兄弟、成幸(なるゆき)と、鎮(まもる)
兄はナルゴン、弟はハタチンというニックネームで呼ばれているが、
最近、私にもようやく外見だけで、パッと見分けられるようになった
ハタチンのほうが、普通に髪の毛が生えてる、そしてハンサム
ナルゴンは、髪の毛が薄い、そして、どことなく怪獣に似ている
要するに、ナルゴンという名前どおり、怪獣っぽいのがナルゴンだ 
今回は怪獣ナルゴンの解説だ

雑談で、ナルゴン「将棋界の不思議なことに、特定の人と会いだすと、不思議と対局でも当たる、
 ということがある 連盟やイベントなどで会うと、その人と対局でも当たるようになる
 会わないと、1年くらい、ずーっと会わない そんな法則がある」
へー、そんなことがあるのか まあ、好調な人は対局数が多いので、連盟にもよく来るだろうし、
イベントでも呼ばれやすいから、あまり不思議ではないと思う(^^;

先手杉本で、▲石田流+美濃vs△居飛車+船囲い
そこから、杉本がなんと、棒金の作戦に出た 7八に飛車、7六に金という格好だ
攻め合いになった中盤、杉本の陣形は金銀がバラバラ、これだけバラバラなのはめずらしい
金を前線に出す作戦は、こういうことが多い だからあまり採用されないのだろう

しかし、形勢はまだまだ難しい 
阿久津は自玉の玉頭の歩を伸ばしていき、ナルゴンは「自玉の玉頭の歩を突く攻めは『地獄突き』と
呼ばれる」と解説していた へー、そんな名前があったのか

もう中盤もたけなわ、というところで、杉本に好手と思える、垂らしの歩が出た
▲7二歩、という、後手の飛車の真横に歩を垂らす手だ
取ると、先手の飛車に大活躍されてしまう かといって、放置だと、▲7一歩成~▲8一と、で駒損だ
この手は、振り飛車vs居飛車の対抗形で、振り飛車側の方に、かなりよく出る手筋だ
よく出現する手筋の歩なので、何か名前が欲しいと思った
少し考えて「脇歩」(わきふ)というネーミングを思いついた
居飛車側の飛車の脇に打つ歩だから、脇歩 うん、いいんじゃないかな このネーミングはぜひ広めたい

杉本に脇歩を打たれた阿久津、このまま何もしないと、
▲7一歩成~▲8一と、で脇歩が大成功してしまう しかし脇歩を取るわけにもいかないぞ
どうするんだ、と思ったら、阿久津は攻め合いに出た 
そうかあ さっきの「地獄突き」が、ここで効いて来るのだね

阿久津の踏み込んだ攻めの結果、なんとお互いの玉頭に歩が2枚ずつ垂れている、
という状態になったではないか これは非常にめずらしい 面白い
感想戦で阿久津いわく、「常識じゃありえない形(笑)」

阿久津の攻めは、脇歩を打たれたから攻めを急がされているように見え、
無理攻めじゃないかと私には思えたのだが、それは外れた 
阿久津の鋭さがモロに発揮され、角切りの強手から、最後までダーッと一気に寄せ切ってしまった
92手で阿久津の勝ち

さすが、阿久津、寄せが速い! 杉本に粘る順を与えなかった
ナルゴンの言っていた「鋭い攻めでダーッと寄せる」という言葉がドンピシャリと当たったね
中盤も、ナルゴンの「阿久津は嗅覚が鋭い」との言葉どおりに、
ここの歩を突いて攻めがあるのか!、とハッとさせられた場面が3回もあった   

今回は、自玉の頭の歩を突いていく「地獄突き」、を知ったこと
そして振り飛車側の手筋、▲7二歩の垂らし「脇歩」、この2つが収穫だった 
「脇歩」、我ながらいいネーミングと思います 
関係者の方、このブログを見ておられら、ぜひ使ってください 
中田宏樹 八段vs瀬川晶司 四段
解説 豊川孝弘

今日は瀬川さんの登場か、久しぶりに見る 相手はデビル中田、安定感のある実力者だ
中田さんのことを、いつもはデビル、と書いていたけど、今回は中田と書くことにする(^^;
瀬川さん、グレーのスーツがよく似合ってると思った 
中田さんはデビルなので、やはり黒が似合っている

中田宏樹は1985年四段、竜王戦4組、順位戦B1 NHK杯は12回目の本戦出場 予選はシード
瀬川は2005年、編入試験により四段 竜王戦6組、順位戦C2 NHK杯は3回目の本戦出場
予選では、なんと広瀬、高野、先崎というメンバーに勝った、とのこと 広瀬に勝ったのか!

解説の豊川「中田は居飛車の正攻法、攻めの棋風で、相手の得意を受ける、王道を行く居飛車党
 無口な人が多いプロ棋士の中でも、群を抜いて寡黙(かもく)
 いるんだかいないんだかわからない、っていうのは冗談ですけどね
 
 瀬川は寡黙ではあるが、ギャグを飛ばすこともある、意外とひょうきんな人
 瀬川は居飛車党だが、軽いさばき、振り飛車に近い感じ、大局観と感覚で指す棋風
 中田の一本筋の通った縦の読みに対して、瀬川の軽い感じの横の読みの勝負」

事前のインタビュー
中田「瀬川は人あたりのやわらかい、いやし系の存在、踏み込みのいい棋風
 中終盤でいい将棋を指して、できれば勝ちたい 一回戦を突破したい」

瀬川「中田は普段はやさしい先輩、将棋は厳しく、居飛車本格派で、一本筋の通った将棋
 とにかく思い切ってぶつかりたい NHK杯本戦は3回目の出場だが、過去2回は一回戦負けなので、
 なんとか一回戦を突破するのが目標、がんばります」
これを聞いていた豊川「NHK杯で3回負けると、ツライものがありますからね
 今回は勝利を狙っているでしょう NHK杯は、影響のカタマリですので(笑)」
・・・豊川さんはNHK杯で二歩を打ってしまい、ニフティ豊川、とあだ名がついたことがあったからね

豊川の事前予想「矢倉が得意な中田、横歩取りが得意な瀬川
 短期決戦になったら瀬川、長期になったら中田に分がある」

先手中田で、横歩取りなった △8五飛の最新バージョン、瀬川の得意を中田が受けてたった格好だ
豊川「後手が攻めていく、現代将棋の最新型 瀬川はすごく研究している
 中田も、手が早いから研究してますね 中田は将棋は地味だが、色々な新手を出している」

今回は豊川の雑談が多く、それが面白かった
豊川「瀬川は編入試験を受けたとき、アマからもプロからも応援されたが、それは彼の人柄によるもの
 私と瀬川は奨励会時代、家が近かったので、1000局どころじゃない、もっと指した
 その頃から、彼は横歩取り△3三角を得意としている
 
 僕が奨励会の二段くらいのとき、三段の中田に『こんど将棋を教えてください』と言ったら、
 『豊川君、君は楽して強くなろうと思ってるでしょ』と言われた 
 中田さんはすごい努力していたんでしょうね 僕は自分が恥ずかしくなった
 こう言われたことは、僕は一生忘れないですよ
   
 僕達プロは、局面を見れば、第一感がパッとひらめく あとは読みの裏づけで指している
 将棋を見れば、その人が将棋にどれだけ打ち込んでいるか、だいたいわかる
 いいかげんなことをしていれば、すぐ見破られる

 中田は普段からポーカーフェイス ご飯を食べるときもこの顔 味もそっけもない
 『中田食べ』というモノマネが一時、流行したくらい
 中田は『クール中田』、『デビル中田』というニックネームがある
 ニックネームをつくといのは、実力を評価されているということ
 僕には何にもつけてもらえない」
雑談を笑いながら聞いていた矢内「ファイター豊川、っていう感じです」 
豊川「まいったー豊川、という感じですけど」
矢内「ふはははは」 矢内、ここはかなり爆笑していた(^^;

最初のキーポイントになったところ、△6五桂の跳ね出しは、私は予想的中だった
読みの裏づけは何にもないのに、桂の単騎跳ねを当てられる、というのは、
普段の将棋観戦のたまものだろう むふふ(笑)
しかし、それに対する中田の▲6八銀というのも、実に指しにくい手だなあ

ここで、のんびりと、先ほど書いた雑談をし始めた豊川 
豊川さん、飛車で金がタダ取りになる手を、完全に見落としたまま雑談してますけど・・・(^^;
長い雑談が一段落したあと、矢内がついに、それを指摘した
豊川「あ、アイタ!! すいません、今マイクが壊れちゃったかもしれません 
 ひどい解説でしたね~ 矢内さん(もっと早く)言ってくださいよ~!  
 二度とこのスタジオにこれなくなっちゃう」
ここは面白かったなあ 矢内さん、指摘のタイミング、絶妙だったよ(笑)

さて、盤上、一手一手、すごく神経を使う将棋だ こ、これは見ているだけでもしんどい 
これが横歩取りのハイレベル同士の戦いなんだね さすがプロ同士!
矢内「難解な中盤ですね」
豊川「(間違えたら)一手で終わっちゃいますね」

局面、瀬川が優勢、との解説 中田が考え込んでいる 瀬川は前のめりの姿勢
豊川「瀬川は『(この将棋は)逃さん』という姿勢、優勢なしるしと思う」
瀬川の的確な手の連発に、豊川「瀬川は横歩取りを指しなれてますね~
 本人に聞いたら『才能です』と答えるでしょうけど、これは日頃の研鑽のたまものですよ」

そして、この一局のハイライトという場面がきた 
豊川「中田が苦しそうだが、こういうところから勝負手繰り出してくる 腕の見せ所」
そしたら、直後に中田に▲6四歩という、わけのわからない手が出た なんだ、これは?
大した手でもないだろう アヤを求めただけだろう? ▲6四歩、特になんでもないだろう 

そんなことより、後手は先手の飛車をどう押さえ込むかだ
私は、ここはベタ桂、ベタっと△2七桂打ちでどうだ!と強く思った
ここはわざと筋悪く、△2七桂が最善だ! 瀬川、桂を打て!
瀬川の着手は、△2七桂! やったあー これには矢内も豊川もびっくりだ
矢内「わあー」 豊川「いや~! これは筋が悪いですよ~」
ふふふ、そう見えるけど、この桂が勝因になるんだよ 矢内と豊川、見てなさい!

したらば、手が進むうち、後手玉に火がついて、なんだか、完全に△2七桂が取り残された展開?
もうゆっくり飛車を取ってる将棋じゃなくなってる・・・! ええー△2七桂、好手じゃなかった?
豊川「差が縮まった △2七桂、どうでしたかね~ 事件ですね」

その後の中田の攻めは、正確無比と思えるほど的確だった 攻めがツボに入った、という感じだ
瀬川もがんばって受けていたのだが、中田の流れるような寄せの前に、ついに屈した 
103手で中田の勝ち え、103手? 130手くらいに思えたよ
すごい神経戦だった ううー、見ていて、疲れたけど、いい将棋だった 瀬川、惜しかったなー

しかし、私が自信を持って予想した△2七桂が、まさか敗着になろうとはorz
豊川「瀬川の必勝に近かったが、中田の▲6四歩の勝負手が効した」
矢内「▲6四歩は、完全に急所を突いてましたね」

デビル中田、強い! 伊達にB1を張ってないなあ でも瀬川もそれに負けてなかった
難しい将棋だったけど、対局者2人の力がよく出ていたと思うし、豊川の解説も楽しかった 良かった
豊川さん、見落としする姿も楽しいんで、また解説にきてください!
第20期 銀河戦
本戦Cブロック 9回戦
畠山 鎮七段 vs 長沼 洋七段
対局日: 2012年2月15日
解説:藤原直哉六段
聞き手:鈴木環那女流初段
記録:井道千尋女流初段

昨日放送された銀河戦 収録があったのが、2月ですか・・・(^^;
カンナちゃん、相変わらず、カツゼツが抜群にいい うわ、解説者、藤原さんかあ マニアックだ

平成23年度の成績は、長沼16勝13敗 ハタチン19勝13敗
長沼は、本戦でアベケン、田中寅彦、田村、島に勝ち4連勝で、
すでに決勝トーナメント進出を決めている
ハタチンは、予選で村田顕弘に勝ち

解説の藤原「長沼は『関西将棋』という言葉がピッタリ似合う、力戦派 自由自在でオールラウンダー
 のらりくらりと指す 銀河戦では存分に力を発揮している 時間配分がうまい
 ハタチンは居飛車党で、激しい攻め将棋 研究熱心で、定跡に詳しい
 序盤から、納得がいくまで長考するタイプ」

雑談で、藤原「ハタチンは9年間、関西で奨励会の幹事を務めた 
今は私と阿部隆さんで幹事をしている」
竜王戦1組に通算5期は立派(今は2組)
ハタチンは豊島と家がすごく近い、豊島がジョギングしている姿をよく見るそうだ」

週刊将棋によれば、関西の若手達が登山に行ったとき、
一番最初に山頂にたどり着いたのが豊島とのこと ジョギングしてるから体力があるんだね

さて、先手長沼で、角交換の相居飛車の力戦形になった
長沼が中飛車と見せかけて居飛車にしたので、互いに5筋の歩が突いてあるのが変わっているね
藤原「長沼がたまにやる作戦 ノーマーク、と思うときにこの作戦をやる」

この一局なかなか駒がぶつからず、本格的な戦いになったのは、
番組開始から50分くらいしてからだった な、長い序盤だった

聞き手のカンナ「見ている分には、早く駒がぶつかれ、と思いますよね」
藤原「指しているるほうは、大変なんですけどね」

ハタチンは藤原の言ったとおり時間を使っており、もうまだ中盤が始まったばかりなのに、
考慮時間が2回しか残っていない 長沼はまだ9回残している

長沼の作戦勝ちから、ハタチンの逆転模様になったが、また長沼が盛り返した
長沼は最後は見事な即詰みを決め、99手で長沼の勝ち 

最後の詰みは、後手の合駒が悪いために生じた、見つけにくい13手詰みだった 
こ、これは長沼さん、強い・・・
藤原「長沼さん、どうしたんでしょうねえ 銀河戦では鬼のように強いですねえ」

これで長沼さんは5連勝だ なかなかできることではない 
次は佐藤康光との対戦だ この分だと、期待できる

さて、この対局、非常に気になることがあった
それは、聞き手のカンナちゃんが、しゃべりすぎることだ
もはや聞き手を通り越して、アナウンサーのようにしゃべりまくってる
例えば先手が▲5五歩と指したら、カンナ「今、▲5五歩と指しました」といちいち言うのだ
これはさすがにやめて欲しい TV将棋なんだから、見てればわかるからね
あくまで聞き手なのだから、解説者の3分の1くらいの量をしゃべれば充分なのだが、
解説者の倍はしゃべっている カンナちゃん、聞き手に徹してほしい 頼みます
最近、このブログを書いているときは、8割方、浜田省吾が流れている (残りの2割は宇多田ヒカル)
以前にベスト版を作って聴いている、と書いたけど、前の17曲から、またさらに曲数が増えたので、
書きとめておくことにする (以下は、曲を並べた順番 そして歌い出しの歌詞)
(★のしるしは、新たに追加した曲)

1 終わりなき疾走 ♪15のとき 通りのウィンドウに 飾ってあった ギターを見たとき~
2 MONEY ♪この街のメインストリート わずか数百メートル~
3 ラストショー ♪さよなら バックミラーの中に あの頃の日々を探して走る~
4 陽のあたる場所 ♪さみしさに たやすく恋に落ちた~
5 愛の世代の前に ♪愛の世代の前の 暴風雨の中~
6 愛という名のもとに ♪ごらん 街の灯りが 消えていくよ~
7★明日なき世代 ♪泣かないで 俺たちの愛は 誰にも 触れさせない~
8★土曜の夜と日曜の朝 ♪地下鉄の階段を お気に入りのスーツ着て~
9 勝利への道 ♪俺には車とギター お前には火のような情熱~
10★モノクロームの虹 ♪ワイパーも ゆがむほどの雨 青ざめた 光の闇に迷い込んで~
11 防波堤の上 ♪防波堤に 打ち寄せて 砕ける波を見てた~

12 路地裏の少年(アルバム べスト盤より) ♪真夜中の校舎の白い壁に 別れの歌刻み込んだ~
13 AMERICA ♪ロスからサンフランシスコへ 続くフリーウェイを 俺たちヒッチハイクした~
14 もうひとつの土曜日 ♪ゆうべ眠れずに 泣いていたんだろ~
15 星の指輪 ♪髪をとかし 化粧して 一番好きな 服を着て~
16 J.BOY ♪仕事 終わりのベルに とらわれの 心と体 取り返す 夕暮れどき~
17 ★詩人の鐘 ♪銀行と 土地ブローカーに 生涯を捧げるような~
18 君の名を呼ぶ ♪火の中に 飛び込むような恋~
19 ON THE ROAD ♪この道のかなた 約束されたはずの 場所があると 信じて ゆきたい~

20 悲しみは雪のように ♪君の肩に 悲しみが 雪のように 積もる夜には~
21 演奏旅行 ♪眠れぬ夜が 続くよ ホテルの 固いベッドの上で~

22★晩夏の鐘 (INSTRUMENTAL)
23★夏の終わり ♪サンディエゴ フリーウェイを 南に走ってる~
24★路地裏の少年(アルバム J.BOYより)♪(テンポと歌詞の一部が違う)赤茶けた工場の高い壁に~


曲順にも非常にこだわりがあり、この曲順を考え出すまでに、3~4日もかかったりしてる(^^;
1~11で前半終了、12~20で後半終了、
21と22がアンコール、23と24がボーナストラック そこまで考えた配置
でも、結局「ランダム」にして聴いていたりする・・・

「ON THE ROAD」(ライブ版ではない)は「ON THE ROAD」というライブアルバムに収録されている、
という、ややこしいことになっている 
「演奏旅行」(ライブ版ではない)はアルバムには収録されておらず、シングル「君の名を呼ぶ」から
第20期 銀河戦
本戦Bブロック 9回戦
橋本崇載八段 vs 北浜健介七段
対局日: 2012年4月4日
解説:佐藤紳哉六段
聞き手:早水千紗女流二段
記録:井道千尋女流初段

土曜に放送された銀河戦 ハッシーの登場だ A級棋士ハッシー、どんな将棋を指すか
ハッシー、普通の黒のスーツに、金髪で、タテガミのように盛り上げた髪型だ

平成23年度の成績は、ハッシー29勝10敗 北浜20勝10敗
ハッシーは予選で武市に勝ち 北浜は前局で土佐に勝ち

解説の紳哉「ハッシーは見た目は奇抜だが、将棋は本格的 跳んだりはねたりという将棋ではない
 受けに回るのも苦にしない じっくり駒組みする将棋が好き

 北浜は物腰は柔らかいが、将棋は強気 スキあらば攻める、スキがなくても攻める棋風
 詰将棋作家で、解くのも強い 終盤が強い 奨励会の幹事をやっている」

先手ハッシーで、▲7六歩△3四歩▲6六歩△6二銀という出だし
紳哉「ハッシーは先手なら、この指し方を得意としている 今回は△6二銀だったので、
 石田流の浮き飛車にするだろう もし4手目△8四歩なら、▲6八銀から矢倉にする」
へ~、そんな指し方があったんだね なるほど~

駒組みが長く続き、▲石田流+ダイヤモンド4枚美濃vs△居飛車+銀冠穴熊になった
ただし、後手の北浜は△3二金+△4二金型の銀冠穴熊だ

紳哉の解説、すごくわかりやすい そして、この一局通してずっと、
予想が高い確率でビシビシ当たって、聞いていて気持ちよかった さすが、竜王戦2組だけあるなあ

バシバシと早指しするハッシー、小考を重ねる北浜
紳哉「今、ハッシーは好調なので、形勢は先手が良いように見える 
 たとえ同じ局面でも、好調な人が指していると、良く見える(笑)」
よし、行け、ハッシー!

ハッシーから仕掛け、▲4五桂、▲6五桂と左右の桂をポンポン跳ねた
これはどうなんだろう、形勢は?
紳哉「これは、ハッシーが無理攻めした可能性が・・・」
ええ、そうなのか やばい? 
紳哉「桂を渡すと、先手陣は端攻めに弱いので危ない」

北浜のほうに、金損になるが、と金を取ってしまう、という好手も出て、
ハッシー、ホントにピンチっぽい 考慮時間も差がつまっていく 
ハッシー「う~ん、×××」(聞き取れず)
聞き手の早水「ハッシーのうなり声が聞こえますね」

ところが! ここからハッシーの本領発揮がキター
タダで取られるところに、桂の成り捨て! 5三を攻めていたはずの6五の桂を、
▲7三桂成、とタダ捨てする、実に気がつきにくい妙手!
さらに、後手の馬を一時的にだが、歩で封じ込める妙手! これまた並みの発想ではない
紳哉「この辺が、A級棋士ですね 逆転しました」
おおー、えーぞえーぞ、ハッシー!

しかし、北浜も悪い手は指していないようで、
紳哉「流れが変わったので、逆転したと言ってしまったのですけど、形勢はわからない 熱戦の様相」

ジリジリとハッシーが良くしていっているように見える ハッシーがこのままゴールか、と思われたが、
今度は北浜が魅せた
なんと、飛車をタダのところに回る、という奇手! これには紳哉も早水もびっくりだ
ええ~、そんな手があるのか、そうか、取ったら王手竜取りがかかるのか! すごいー
さらに、香をタダ捨ての成りこみ! これも取れないのか? そうか、取ったら一気の寄せがあるのか
北浜、駒一枚、丸得した勘定だ 北浜もすごいー
紳哉「いやあ、終盤、魅せますね~!」

どっちが勝つんだ、ドキドキだ 見てて思ったことは、1勝するのって、こんなに大変なんだね
お互い、神経をすり減らしているのがよくわかる 
そして、このハラハラの熱戦を制したのは、持ち駒をフル活用した、ハッシーだった!
109手で、ハッシーの勝ち やったー、ハッシー、快勝だ
いや、けっこう危なかったんで、辛勝、かな(^^;
駒全部を使った、合理的な勝ち方だ 一連の駒運びにムダがないね
北浜の勝負手連発にも、間違えずに的確に応じていたね

紳哉「ハッシーが無理気味の攻めをつないで、勢いのあるところを見せた さすがA級棋士」
うんうん、ハッシーの堂々たる指しっぷりだったね ハッシー、強い! 北浜も良かったよ

感想戦で、紳哉「色々派手な手が出て、ちょっとついていけなかったですけど」
ハッシー「僕もついていけなかったです」
ギャグも出て、ハッシー、これはこの後のお酒が美味しかったんじゃないだろうか

タダ捨ての妙手が3回も出た本局、見ごたえがあった 面白かった 紳哉の解説も良かった
ハッシー、振り飛車でも強さが出ていた 振り飛車でもこれだけ指せれば、強力な武器になるね
ますますハッシーに期待だ 先日の大和証券杯の豊島戦では後手ゴキゲンを採用して
負けたようだけど、まあ、豊島は別格だから(^^;
永瀬拓矢 五段vs神谷広志 七段 NHK杯 1回戦
解説 島朗

矢内、髪を後ろでグリングリンにしていて、ゴージャスだ 
解説の島さんも、髪型、いつもどおり、バシッと決まってるね! この髪型以外見たことがな(以下略)

永瀬19才、神谷51才の、年の差対決か 永瀬と言えば、前回のNHK杯で、2局連続千日手の末、
佐藤康光に勝ったのが印象的だったけどけど、今回はどうなるかな

永瀬は、安恵照剛八段門下 2009年 竜王戦5組、順位戦C2 総合成績優秀で予選免除
NHK杯は2回目の本戦出場
神谷は、(故)廣津久雄九段門下 1981年四段 竜王戦4組、順位戦B2
予選で横山、川上に勝ち 14回目の本戦出場

解説の島「永瀬は、長手数をいとわず、将棋の基礎体力がある 
 最先端の研究で振り飛車をひっぱっている、若手の代表格 最先端こそ最善と信じている

 神谷は、私と同期で30年前に四段になった 個性的なところが昔から変わっていなくて、
 定跡には背を向けて、自分の道を行っている 力強い受けが特徴
 永瀬の最先端のレールに神谷は乗らないだろうから、力戦必至、長手数必至」

事前のインタビュー
永瀬「私も神谷も、受け将棋なので、受けあう展開になると思う
 前期は2回戦で負けてしまったので、今期は2回戦以上を目標にがんばりたい」
このコメントを聞いていた島「永瀬は優等生の発言だが、実際はもっと快活で自信にあふれている」

神谷「永瀬とは公式戦で何回か戦っているが、若くて鋭いんでしょうけど、このトシになると、
 どんな将棋だったのか、どんな人だったのか、もう覚えていない
 2日後の5月22日は、私がかわいがっていたトラニャンが亡くなって2年、3回忌になるので、
 天国で見ているトラニャンのために、みっともない将棋は指せない」
このコメントを聞いていた島「神谷は個性的、常に本音でしゃべる」

先手永瀬で、相振りになった 両者ともに、三間飛車で美濃囲いだ
今回は、解説がわりと早く始まったと思う 毎回これくらいでお願いしたい
島「神谷は相振りはときどき指している もう前例がない、急所が難しい将棋になった」

雑談で、島「永瀬は将棋漬けの、若手の模範になる生活をしている
 加藤桃子が女流王座のタイトルを取れたのは、兄弟子の永瀬の功績が大きい
 永瀬は将棋には厳しい兄弟子、瀬川は優しい兄弟子 
 永瀬は努力していない後輩には厳しいと思う 私は永瀬の後輩でなくてよかったです」
矢内「ふふふ」

島「神谷は昔から正義感が強い 若い頃は、顔は今と同じで、軍服を着ていて、こわいんですよー」
矢内「ふふふ」
軍服を着た神谷さんが近づいてきたら、怖いだろうなー(^^;

さて、永瀬が▲6五ポンといくのかどうか、という話になっている もういくの?
いくとどうなる? ・・・と思ってたら、永瀬、▲6五ポン、いったーー

角交換から、いきなり角を打ち合って、香を取り合う、激しい将棋に!
もうお互い、敵陣に馬ができちゃった こんな展開がプロどうしであるのか 
島「こんな戦いになるとは、思いもしませんでした もう終盤ですね(笑)」

島「永瀬は、大山名人の将棋が好きで、よく並べているらしい」
永瀬が扇子を持っているが、そこに書かれてあった揮毫(きごう)は、「堅忍」だった 納得だ
島「神谷は、戦型分類しにくい力戦で、若手を受け潰すのが得意」
受け棋風の2人の対決だけど、今のところ一直線に攻め合ってるが、どうなるか

神谷は長考して△3三桂、形勢は永瀬がやや良しか、というとき、さらに▲7三歩の叩きがでた
また考慮時間を使う神谷
島「永瀬の▲7三歩を、いい手だったと認めている考慮時間の使い方
 神谷は永瀬のスピードを感じているのでは」

ぐっ、神谷、苦戦か・・・ もういいところなしで、負けるのかな、と思っていたら・・・
神谷に、△5一金寄、という気づきにくい手が出た!
島「これはいい手では?」
検討してみると、この金寄り、かなりの妙手と判明! 永瀬の手がピタッと止まった
島「神谷流が出ましたね~ 形勢、にわかに大変になった気がする
 神谷も『まんざらでもない』という手つきだった これは秀逸な受けだったと思いますね~!」
矢内「玉から遠のく、という発想は、なかなかできないですもんね~!」
えーぞ、えーぞ、神谷さん! 私はなぜか、神谷さんの応援をしていた なぜだろう(^^;

この△5一金寄という手を境に、局面の流れは神谷に向いていった
3三の桂が△2五桂と使えて、後手の神谷、好調か!
島「永瀬も、神谷将棋を堪能(たんのう)してるんじゃないか」
一手一手難しいが、指されてみれば、そうか、と思う手がずっと続く
神谷、金銀3枚の壁で受けて、先手の竜を無力化することに成功している
永瀬のほうは、玉頭を攻められる手が残っていて、ピンチだ
これは、神谷がいけるのか? まだ難しいけど・・・

考慮時間は、先に永瀬が使い切った
永瀬、攻めのカナメの飛車が、詰まされてしまったではないか 
これはもう▲6三銀の攻め合いしかないだろう
矢内も「▲6三銀?」と言っている そうだろう、▲6三銀で勝負をかけるだろう、と思ってたら!
永瀬の手は、▲2八銀の受け! え~、ここで受けに回る手を考えていたの? これが永瀬の棋風か!
島「▲2八銀もいい手でしたね 一手指したほうがよく見える将棋」
うおお、面白い!

この▲2八銀で、また流れがガラッと変わった 神谷はこの受けが見えていなかったのは明らかだ
永瀬、取った角を▲6三角と打ち込んだ ▲6三銀じゃなくて▲6三角!
この手順を読んでいたのか、この終盤で銀と角が、かわることを見越していたんだね すごい!

神谷、攻め合いに活路を見いだそうとしたが、永瀬は今度は即詰みを見切っていた
詰めろから一気に後手玉を詰ました 後手は持ち駒に歩がなく、合駒が悪いというちょっと難しい詰みだ
67手で永瀬の勝ち おお~、永瀬、強かった これはかなり強くないとできない勝ち方!
▲2八銀という受けの好手を指したあと、すぐに攻めに転じて、相手を即詰みに討ち取るという、
頭の切り替えの速さ! 盤面全体が見えていないとできない勝ち方だ 強い・・・!

この一局、面白かった 両者の良いところが出て、見ごたえがあった!
神谷の△5一金寄、そして永瀬の▲2八銀、どっちもすばらしかった 
でも、どちらかというと永瀬の▲2八銀のほうがすごかったか・・・

矢内「すごく濃い感じがしたんですけど」
島「短手数ですけど、激しい将棋でした 形勢は2転3転してると思う」
矢内が「濃い」というとき、手でジェスチャーも入っていた(笑)

感想戦では、序盤は一番激しい変化に2人が飛び込んでいってくれた、ということだった
神谷「トシ取ると、気が短くなるんだ」
・・・「トシを取ると、気が長くなる」という人もいそうだが(^^;
島「△5一金寄はすばらしい手だったなあ」
神谷「それほどじゃねぇだろ(笑)」
でも、ここ、神谷さん、うれしそうに笑ってた うんうん、ここは魅せたもんね
トラニャンも、この負けなら仕方ニャい、ときっと言ってくれるだろう

そして永瀬は、感想戦で、終盤での自陣飛車(△7二飛)を指摘、またもすばらしいところを見せていた
神谷「この飛車打ちは気づかないね」
相手の角の利きに自陣飛車、並みの才能、並みの努力では見えない手だね
さすが、大山将棋を並べているだけある!

永瀬は2回戦では「千駄ヶ谷の受け師」こと、木村一基八段とだ これは楽しみな一戦になった
神谷と永瀬、受け将棋の2人のいいところが見れて、満足だった 面白かった!
第20期 銀河戦
本戦Aブロック 9回戦
山崎隆之七段 vs 戸辺 誠六段
対局日: 2012年4月13日
解説:阿久津主税七段
聞き手:室谷由紀女流初段
記録:野田澤彩乃女流1級

聞き手の室谷さん、最初の棋士紹介、すっごく大きな声で、元気いいなー 
TVの音量を下げたくらいだ(^^;

平成23年度の成績は、山崎24勝17敗 戸辺27勝16敗
山崎は、予選で村田智弘六段に勝ち 戸辺は佐々木慎六段に勝ち

解説の阿久津「山崎は居飛車党、自分から将棋を作っていく独創的な棋風
 戸辺は見た目はおだやかだが、激しい攻め将棋 後手番ならゴキゲンを指す」

先手山崎で、超速▲3七銀vs△ゴキゲンだ ホントに流行ってるね
戸辺が△4六銀型で受け、盤面右側、こう着状態 ちょっといやな予感がしたが・・・
予感、的中! 両者、穴熊に囲い、相穴熊に~orz

阿久津「山崎の▲3七銀は意外 あまり流行の戦法を指さないイメージがあるので」
そうだよね、山崎の穴熊っていうのも初めて見た

私はここ2~3日、色々と忙しかったことがあり(庭の草引き、網戸の張替えなど)、
疲れていたので、寝てしまった 相穴・・・ NHK杯で相穴だった場合は、たぶん見る
でも銀河戦で相穴は・・・ 相穴でも見たいと思う棋士は、羽生、康光、渡辺、広瀬くらいだなあ

結果は93手で山崎の勝ち
阿久津「相穴熊にしては短手数、両者ともに引かず、きびきびした攻め合いだった」

明日も予定があるので、もう今日はこれで終わります なむあみだぶつ
「名人戦血風録」出版記念 
加藤一二三の名解説 「NHK杯史上に残る大逆転です ヒャー」
(以前、このブログに書いたものを再掲)

2007年10月14日放送 第57回NHK杯 2回戦 ▲羽生善治二冠vs△中川大輔七段
中川優勢で迎えた終盤、中川は勝利を確信していたのであろう 絶対負けない、と
駒音高くバシッ!と指していた
解説の、ひふみんも「羽生二冠は持ち駒が1枚足りないんですね 本譜は 
 羽生二冠は、やっぱり序盤作戦で矢倉にしなかったのが、いけなかったですね
 先手番の得がない作戦を、どうして選んだのかという感じなんで」と言っていたのだが・・・!

羽生の▲2二銀の王手に、
ひふみん「あれ、あれ、あれ、あれ、待てよ、あれ、あれ、おかしいですね あれ? もしかしてトン死?
 えーとこういって、あれれ? おかしいですよ、あれ? あれ、あ、歩が3歩あるからトン死なのかな?
 えー? これトン死なんじゃないですかね? んーと、あれ? いや これトン死かもしれません
 なんと・・・ いやーこれ、銀桂と歩が3つありますからね えっと待てよ 歩が3歩ありますからね
 歩の数が計算が・・・ えーとこういってこういって取って取って・・・
 いやちょうどピッタリ間に合いますからね これは大逆転ですね これ詰んでますよ ヒャー
 なんていう大逆転 NHK杯史上に残る大逆転じゃないかな たぶん 詰んでますもんねこれ ヒャー 
 なんとすごいことになりました・・・ んーいやー 歩の数がピッタリだから」
聞き手の中倉宏美「羽生マジックが出ましたね」
ひふみん「これは羽生さんの逆転勝ちの中でも、もうあれですね、あの、大変な大逆転ですね
 んー ヒャー 驚きました ヒャー こんなことがあるんですねっていう大逆転ですね ヒャー」

結果、163手で先手羽生の逆転勝ち

羽生はこのときを振り返って、「加藤先生が私の気持ちを代弁してくれた、
 ヒャーとまではいかないですけど(笑)」
将棋名人戦血風録 ──奇人・変人・超人
加藤一二三著 角川書店 2012年5月10日初版 743円+税

なかなか面白かったです 値段分の価値は充分あると思いました
実力制名人になってからの、歴代名人12人についての、加藤先生から見た人物像が描かれています
木村、塚田、大山、升田、中原、加藤、谷川、米長、羽生、佐藤康光、丸山、森内の12人です

加藤先生は「さん」をつけて呼んでいて、「大山さんは~」「中原さんは~」といった具合で
次々エピソードが紹介されていますから、歴代名人が身近に感じられます

話が年代別に順番に並んでいますけど、冒頭に「永世名人三人の現代」(谷川、森内、羽生)と
いうメンバーの話を持ってきた構成がうまいと思います
いきなり木村義雄、塚田正夫といった昔の話をされても、今の人はあまり興味を
持てないでしょうから(^^;
現役の棋士たちよりも、大山、升田、中原といった昔の人たちにページ数が割かれていますが、
それは当然でしょう、書いているのがなにしろ72歳の加藤先生なのですからね

私も将棋マニアなので「ゴミハエ問答」や、谷川が初めて名人になったときの、
「一年間、名人を預からせていただきます」といった、知っているエピソードがかなり多かったです
しかし、加藤先生がなぜキリスト教に入信されたのか、といった知らないことも書かれてあり、
興味深かったですね 

全体を通して思ったのですが、この本を読む限り(あくまで、この本を読む限り)、
加藤先生、実はとても常識人では、ということです
歴代名人の特徴を、非常に客観的に、冷静に観察しておられます 
サブタイトルが、奇人・変人・超人ということなんですけど、それとは逆で、
歴代名人たちといえど、むしろ、みんなやはり同じ人間なんだ、と読んでいて感じました
「なぜその人がそういった行動を取ったのか」ということが、
加藤先生の推測から、ひとつひとつ分かりやすく伝わってくるのです 
加藤先生、名解説で知られていますけど、名観戦記者でもあったのですね 
 
そして、ときどき、加藤先生ならではの「棒銀に対する深い信念と愛情」が出てきますが、
それにはやはり笑えてしまいます プロの世界で、対戦相手にバレバレの棒銀戦法を
20歳の頃から延々指し続けているなんて、加藤先生以外にできることではないでしょう
(この本には出てきませんが、先日の順位戦最終局、棒銀の天敵・三間飛車、
そのスペシャリストのコーヤンに対して、加藤先生の棒銀が炸裂しましたね すごいです)

巻末には、38冊もの参考文献が並んでいます
こんなにたくさん読んで、一冊の本を書き上げるというのは、並大抵の労力ではないですよね
加藤先生のエネルギーには脱帽するばかりです
ただ一点、やはり将棋ファン向けと思いました 将棋を知らない万人が対象、ではないと思います

あと、私がどうしても笑えてしかたなかったことは、「あとがき」に、
「羽生善治二冠に素晴らしい推薦文を書いていただいたことを、心より感謝している。」と
あるのですが、羽生さんの文章、本文中のどこを探しても見つからないのです
あるのは、帯に書いてある『加藤先生の偉大さを再認識しました』の一言だけ、
これにはさすがに笑いました  でも、この一言にすべてが集約されてますよね(笑) 
(書いてあるのがなにしろ帯なので、帯がない中古本などを読んでしまった人は、
全くわからないでしょうね) ヒフミンのファンは、絶対に帯付きをゲットしましょう! 
第20期 銀河戦
本戦Hブロック 8回戦
畠山成幸七段 vs 高崎一生五段
対局日: 2012年3月21日
解説:片上大輔六段
聞き手:本田小百合女流二段
記録:渡辺弥生女流1級

土曜に放送された銀河戦

成幸(なるゆき)、以下「ナルゴン」とニックネームで書かせてもらいます
ナルゴンと高崎かあ あんまり目立たない2人だけど、どうかな

平成23年度の成績は、ナルゴン15勝10敗 予選シード 
高崎一生(たかざき いっせい)19勝10敗 福崎、泉に勝ち
ナルゴンは竜王戦4組、順位戦はB2の8位 高崎は竜王戦は4組、順位戦はC1の3位だ

解説の片上「ナルゴンは双子の兄、居飛車、振り飛車、時期によって使い分けてる 
 今は居飛車が多い でも相振りは指す 攻め将棋
 高崎は攻める振り飛車党 藤井システム、石田流、ゴキゲンを使う 向かい飛車の使い手として有名」

先手ナルゴンで、超速▲3七銀vs△ゴキゲンだ またこれか~(^^;
でも、初めて見る変化だ 序盤から角交換で、相手陣に角を打ち合い、激しくなったね

片上の解説は、いつもながら安定感がある とてもわかりやすい
対局者のことをよく調べていると感心する

片上「ナルゴンは序盤から前傾姿勢ですね 高崎は眠そうな顔してますね~」
ここは笑った 高崎、目を仏様みたいに、半眼(はんがん)で指している 
高崎、起きたばっかりみたい(^^;

え~っと、将棋のほうは、高崎やや良し?の形勢だったのだが、
感想戦によるとはっきり良しにするにはかなり手が難しい将棋だったとのこと
実戦は逆転でナルゴンの勝ち ナルゴンの寄せは鋭かった 馬切りで、ズバッと決まったね

え~っと、感想、これくらいなんですけど・・・
できれば、高崎の向かい飛車を見たかった 
棋書ミシュランによれば、「高崎一生の最強向かい飛車」と「よくわかる石田流」の著者だ
そうか、角道を開けたままの向かい飛車が得意なのか
せっかくのTV将棋なんだから、向かい飛車を見たかった 石田流でも良かった
あ、でも両方とも、先手じゃないと使えない戦法なのか 
せっかく著書があるので、どうにかして後手番でも、このどちらかで指してもらいたい(^^;
ゴキゲンを指す人はいっぱいいるのでね
ナルゴンは、どうしても弟のハタチン(鎮)と比較してしまうため、目立たない うーむ(^^;
南芳一 九段vs行方尚史 八段 NHK杯 1回戦
解説 福崎文吾

さー、今日のNHK杯は、と え~っと、南vs行方・・・ え~っと、地味・・・かな・・・
でも解説が福崎文吾さんだ ちなみに「ふくざき」、ではなく「ふくさき」だ 

南は木下晃門下 1981年四段、竜王戦4組 順位戦B2
予選で、澤田、コバケンに勝ち本戦進出 25回目の出場

行方は大山康晴門下 1993年四段 竜王戦2組 順位戦B1
予選はシード 15回目の出場

解説の福崎「南は普段から非常に温厚、ずっと正座しかできないそうです
 あぐらができないそうです(笑) NHK杯は準優勝の実績がある
 早指しが強くて手が見える、独特の強さ 大局観がすばらしい
 
 行方はファイター、居飛車一刀流、攻め主体でエネルギッシュ
 剣道で言えば、上段の構えから振り下ろして、一気に攻め切る棋風」

事前のインタビュー
南「NHK杯はひさびさの出場で、非常に楽しみにしています
 行方は強敵、行方とはひさしぶりに指す、一局一局、自分の力を出せるようにがんばりたい」

行方「南先生は私が修行時代に二冠を持っていた第一人者 当たるのが楽しみ
 南は若かった頃を比べて、今は独自の戦法で戦っている
 それにとまどうことのないように、特に時間の配分に気をつけたい
 NHK杯はここ数年、私は全く勝っていないので、何はともあれ1勝、
 そして年明けくらいまでトーナメント表に残っていたい」

先手南で、▲7六歩△3四歩▲1六歩! いきなり小考する行方
へ~、これは何だろう まさか藤井システムではないだろう
後手番になりたい、ということか? この予想は的中した 南は右玉の作戦だった
先手でも右玉かあ でも、1筋の位を取ったから、主張はあるね

番組開始から20分経ってようやく解説開始 
NHKさんにお願いしたいが、もっと早くに大盤にカメラを移して解説を始めてほしい 頼みます

▲南の右玉vs△行方のミレニアムという戦型になった
右玉に対してミレニアムはセオリーだね 
(それから、右玉に対しては、居飛車側から角交換はしないほうがいいというのもセオリー
右玉側は打ち込みのスキがないからね これは覚えておいて損はない 
角換わりで右玉が多いのは、角交換になったからこそ、右玉が有力という意味がある)

福崎「『南の右玉』という本が出てますので、この対局は大事ですよー
 右玉は、禅問答のような、謎かけのような戦法」
そうだね 右玉、今、何がどうなっているのか、私はわからないときが多い
これだけたくさん将棋を観戦してるのになあ(^^;

雑談で、福崎「南さんは、見た感じと違って、冗談がうまくて、私はよく笑わせてもらってる」
福崎「私は矢内さんのファンなんですよ~」
福崎「僕は以前、NHK杯に出たときは、すごく緊張して心臓の音がドキドキとうるさくて、
 秒読みが聞こえなかったことがありました」
矢内「ふふふふ」

そういえば、私がまだ大阪に住んでいたとき、市の将棋大会があったのだが、
そこで南さんが開会の挨拶をする場面があった 南さんの前に挨拶した囲碁のプロが世間話をして、
話が長かったのに対し、南さんは、「今日はみなさん、楽しくがんばりましょう」の一言だった
すばらしい挨拶だった あれには笑わせてもらった

さて、雑談はいいとして、これ、いつになったら戦いが始まるの?
もう50分以上経つけど・・・ あの~、正直、眠たいんですけど・・・
本格的に戦いが始まったのは、番組開始から55分ほど経ったときだった 
福崎「ここからですね」 おーい、今までの時間は何だったんだ 序盤、長い~

南が4筋を狙った手、行方はどう受けるか、というところ 8四の角を△6二角! なるほどな~
対して南は▲1四歩で端攻めか ほほ~ そうやるものか 
ミレニアム、横からの攻めにはめっぽう強そうだからね 端で勝負か
福崎「形勢は微妙 一手指したほうがよく見える」
そういう形勢か 自分ではわかんない 解説が頼みだな、これは(^^;

南の左側の攻めを手厚く受けた行方、行方ペースか?
南、▲7九飛として、▲1九飛と大転回させたが、行方に香を打たれて、
歩切れのため合駒ができず、逃げざるを得ない また▲7九飛と帰ってくることになった
うわー、これはツライ 出戻り飛車とはこのことだ
南、3手ムダにしたかっこうだ ここが勝負の分かれ道だったのかもしれない

でも、まだ後手を持って、どうするかも私には全く見えない 漠然とした局面だ 
もうずっと前から30秒将棋の行方、慌てるんじゃないかな、と思っていると、
なんと1三の銀を△2二銀と悠然とバックして引き締めた!
おおお、こ、これはすごい手! この一局で一番感心した手だった
これは、明日の「将棋タウン」のホームページの「NHK杯に見る受けの手筋」に採用されそうな手だ!
(余談ですが、将棋タウン様の「NHK杯に見る受けの手筋」、私は毎週楽しみにしてます)

この△2二銀には福崎も感動したようで、
福崎「格調高いですね~! 経験を経た指し方」
そうだね、プロの中で揉まれてきました、という手だね すばらしい

だけど、まだ後手を持って、どうすればいいのか全然わかんない 
今打ったばかりの、△4六桂が取られそうだぞ どうするのか?
行方の答えは、角を取って、その角を△8八角!だった おお~、これが飛車金両取りかあ
さ・す・が! 福崎「非常にうまい指し方ですねえ」

結局、△4六桂は取られることなく、攻めに絶大に利き、行方が完璧に寄せきった
行方の快勝! これは行方、強かったね 南も、もう仕方ないだろう
福崎「行方の、お手本のような指し方だった 受けるべきところは受け、まとめ方がうまかった」

本局の、こういう行方のような指し方、どうやって身につけるものなんだろうなあ
右玉の将棋、今どこが局面の急所なのか、私はわからないケースが非常~に多い 
実は今回もそうで、結果的に行方の攻めが続いたから、行方が強いとわかったわけで、
対局を見てる最中は、何がどうなってるのか・・・(^^;
もう仕方がないかな 将棋にそういう不思議な戦法が、ひとつくらいあってもいいよね

今回の見所は、行方の△2二銀だったと思う これは見習いたい手だった
第20期 銀河戦
本戦Gブロック 8回戦
野月浩貴七段 vs 豊島将之六段
対局日: 2012年3月23日
解説:橋本崇載八段
聞き手:山田久美女流三段
記録:野田澤彩乃女流1級

世間では名人戦が盛り上がってるようだけど、私はいつもどおり銀河戦(^^;
楽しみなカードだ 将来の名人候補の豊島vs棋界屈指の攻め将棋の野月
って、解説者、これは誰だ、ハッシーだ、ふっとい~(^^; 体重がかなりありそう
なんでこんなに太っちゃったんだろう お酒の飲みすぎかな~

平成23年度の成績は、豊島42勝14敗 すごい勝ってる、勝率7割5分! 対局数もすごいね
 野月21勝12敗 うん、対局数、これくらいだろう、普通はね
 豊島は本戦で佐々木勇気、森下に勝ち 野月は予選で櫛田に勝ち

解説のハッシー「豊島は今一番脂(あぶら)がのっている若手のホープ
 トップクラスと言っていい実力の持ち主、戦型は何でも指す
 ソツのない指し手で、もし悪くなっても粘り強い 弱点が見当たらない、とにかく強い
 
 野月は中堅だけど、若く見える 早見え早指し、決断よくビシビシ指してくる
 迷わないときのほうがリズムがよく調子よく指している 攻め将棋」

ハッシーは豊島をベタ褒めだ しかし、脂がのっているのは、ハッシーのほうだと思う
どう見てもハッシーのほうが、お腹に脂が(^^;
本人もそれを認めていて、ハッシー「豊島君は体が私の半分くらいですね(笑)」
豊島、ほっそいもんね 一方、野月はいつもの金髪と、赤いふちの目がねで、オシャレだね 

ハッシー「(戦型予想は)最先端の横歩取りになるんじゃないか」
予想がピタリと当たり、先手豊島の横歩取り▲中住まいvs後手野月の△8五飛になった
ハッシー「もともと、△8五飛を使って広めたのは野月」
そういえばそうだったね あと、大舞台で使ったのが丸山だったね
△8五飛のスペシャリスト野月に、豊島はどう戦うのか

ハッシー「解説するのに苦しい戦型になってしまいました 個人的に、あまり勉強していないので」
と言っていたが、この一局通して、ハッシーの解説はすごく良かったと思った 
一手一手、手の意味を言ってくれるし、形勢判断もビシビシしてくれるので、わかりやすかった

局面、いきなり大きく動き、野月が飛車を見捨てて、2枚換えの順に踏み込んだ
ハッシー「野月はそんなに研究家ではない、野月は最新形だからこの戦法をやっているわけではなく、
 自分の棋風に合っているからやっている」 

この将棋、発想と発想の勝負になった 私は見ていて、全く手が見えない 
私の将棋は、駒を前に出して、コツコツと駒得を重ねて・・・といった感じで進めるのだが、
それとは全っ然違う! こんな将棋があるのか、ふえ~ 横歩取りって色んな変化があるんだなあ
現状が序盤なのか、中盤なのか、終盤なのか、それすらわからない 
私は横歩取りは絶対やらないでおこう(^^;

野月は角も打ち込んで取らせ、大駒4枚が先手側にきた
ハッシー「常識もへったくれもない将棋ですね(笑)」
私が思うに、ハッシーの将棋は、小さな得を積み重ねる常識型だもんね

豊島、一度▲4八銀と上がった銀を、▲3九銀と引いて、野月に手を渡した局面、
それまでポンポンと早指ししていた野月の手が、ピタッと止まった
ハッシー「野月は、いい手が見えればすぐ指しますから」
と言っていたとおりになった 手が止まっている、ということは、困ってる、ということだ
ハッシー「正確に状況を把握する豊島将棋の強さが出た」
▲3九銀は、勝因となった妙手だった この手を境に、形勢は豊島に傾いた
銀を一段目に引くという手はめったにないし、自玉から離れるので盲点だったね

手数が進むが、豊島の指し手は正確を極め、どんどん先手のリードが広がっていく一方
野月は「う~ん」とうなってみたが、いい手は浮かばず 
ハッシー「正直、持ち時間の短い将棋という以外は、逆転の要素がない」 
豊島の手がず~っと完璧なもんだから、こう言っても全然大げさじゃない 盤上、そういう空気だ

このまま続けたら全駒になろうか、というところで、野月は投げた 
65手、1時間ちょうどで豊島の勝ち 豊島は考慮時間を4回余しての完勝だった
と、豊島、つええー ため息が出るくらいに強いわ 
野月、ショックだろうなあ この一局、何もさせてもらえずだ・・・

ハッシーも絶賛で「全くと言っていいほど、豊島はスキを見せなかった 完璧な内容」
野月、感想戦をよくやってくれたと思う 私がネットでこんな負け方したら、即去りだね(笑)
ハッシーは豊島に向かって「相変わらず強いねぇ」
いや~、今回のこの内容、豊島はその強さを見せ付けた一局だった
先日のNHK杯の佐藤紳哉戦でも、文句なしの内容だった もう将来のA級は間違いない!
さすがに野月も、がっくりしているように見えた 局後は背中が丸まっていた

豊島はこの4月から、七段になったのか もう七段か
並み居る若手強豪の中でも、ナンバーワンはやはりこの人だ
「豊島世代」という言葉すら生まれそうだ 今22才の豊島、どこまで強くなるのだろうか?   
第20期 銀河戦
本戦Fブロック 8回戦
飯島栄治七段 vs 宮田敦史六段
対局日: 2012年3月30日
解説:中田宏樹八段
聞き手:室田伊緒女流初段
記録:井道千尋女流初段

土曜に放送された銀河戦
エーちゃんこと、飯島の登場 先日のNHK杯、中村太地vs小林裕士の一局では、
解説が非常にうまかった飯島 

平成23年度の成績は、飯島18勝12敗 宮田敦史12勝13敗
飯島は予選で宮田利男に勝ち 宮田敦史は、本戦で大石、安用寺に勝ち

解説のデビル中田「飯島は、攻守のバランスが取れた堅実な棋風 最近調子がいいようだ
 宮田敦史は中終盤に鋭い手が出る」

先手飯島で、相掛かりになった やったー、相掛かりだ めずらしい
相掛かりを見るの、好きなんだよね 先手の攻めvs後手の受け、という図式がはっきりすることが
多いし、将棋で一番のクラシックな形と思う 

飯島の引き飛車▲3六銀vs△宮田の受けという展開
単純棒銀を狙った飯島の攻めを、宮田は△8一飛と注意深く受けた
デビル「こうなると、先手のほうも棒銀に行きにくい」
盤面、こう着状態、序盤が延々続くことになった うわ、長い・・・

結局、▲飯島の矢倉vs△宮田の右玉という将棋になった 相掛かりの跡形(あとかた)がない(^^;
相掛かりはこうなることもあるね もっと速攻の将棋を見たかったが、仕方がない
開始から一時間経って、ようやく本格的な戦闘開始だ

両者ほぼ考慮時間を使い果たし、もう30秒将棋だ
聞き手の室田女流「ここからが大事な局面なんですけどね(笑)」

飯島、▲2九角という、受け一方の角を打たされ、苦しいかと思えたのだが、
そこから飯島、勝負手を連発、宮田もがんばって受けてる
ちなみに、私は全然手が見えない どちらを持っても勝つ自信が全くない(^^; 
デビル「先手、さっき打った▲2九角が、完全に封じられてしまったのが痛いが、形勢は不明」

これは、宮田の受けきり勝ちか、と思えたのだが、飯島、飛車を全くのタダで見捨てるという
発想を見せ、細かった攻めをつなげてしまった 最後、▲2九角が見事、攻めに働いた
角が飛び出したときは、勝ちを確信しただろう 飯島の快勝! エーちゃん、してやったり!

いやー、飯島、これは強い勝ち方! 手を発見する能力がすごいわ 
対局中では、宮田が特に悪い手を指したとも思えなかった
飯島、さすが竜王戦1組だけある 今期の竜王戦1組では、森内と丸山に勝ってるんだね

ここのところ、「強い」と思える棋士をいっぱい見ている
NHK杯での牧野と阿部光瑠の熱戦、中村太地、豊島、佐藤紳哉もそんなに悪くなかった、
鈴木大介、粘りまくった千葉、そして飯島・・・ 強いのがゴロゴロいるね 
楽して勝てる相手がめったにいなくなった感じがある
プロ将棋界、レベルが上がっていると思える いいねいいね
千葉幸生 六段vs鈴木大介 八段 NHK杯 1回戦
解説 北島忠雄

千葉、ひさしぶりに見た 千葉涼子のだんなさんだね 鈴木大介は早指しが強いがどうなるか

千葉は関根茂門下、2000年四段、竜王戦は5組、順位戦はC1
 予選で金沢、窪田、勝又に勝ち NHK杯は4回目の本戦出場

鈴木大介は大内門下、1994年四段、竜王戦は1組、順位戦はB1
 予選はシード NHK杯は15回目の本戦出場

解説の北島さん、穏やかな顔つきで、しゃべりもゆったりしていて、皇室関係の人みたいだ
北島「千葉はとてもまじめな人柄、でも面白いことを言ったりもする
 最近力をつけてきて、これからが楽しみな若手
 大介は気さくで、先輩からもかわいがられ、後輩からは慕われる 将棋も強いすばらしい人」

雑談で、北島「千葉は序盤の研究に熱心だが、大介も序盤はうまい 大介は新手を多く指している
 千葉はここ数年で力をつけた 目先の勝利より、自分の将棋を強くするということで、
 一貫して努力している 将棋に対する姿勢がきれい」
・・・北島さん、褒めるのがうまいなあ 北島さんが他人を悪く言うことってあるんだろうか(^^;

事前のインタビュー
千葉「大介は、20年くらい前に将棋を教わって、ずいぶんお世話になっている先輩です
 大介は早指しのとても強い先生なので、大介のペースに巻き込まれないように、
 自分のペースを守って戦いたい (NHK杯の抱負は)7年ぶりの出場なので、
 大きなことは言えない、目の前の一局に集中したい」

大介「千葉は研究熱心で、序盤が強い あまり序盤、離されすぎないように気をつけて、
 終盤勝負になればいいと思う NHK杯はここ数年、あまり勝っていないので、ひとつでも
 多く勝てるようにいい将棋を指したい」

先手千葉で、▲居飛車穴熊vs△四間飛車+高美濃囲いだ オーソドックスな戦型になった
北島「アマチュアの方にはこういった戦型のほうが、参考になっていいかもしれません」
しかし・・・! この将棋、参考になるというよりは、別の意味で見ごたえのある将棋に(^^;

北島「大介流の居飛穴対策、大介は自信をもっているはず 
 千葉はもとは振り飛車党だったが、居飛車も指すようになった」

序盤、千葉が、おそらく研究手という手を見せた ▲4八角、という、一見、変な手だ
しかし、これが指されてみると、大介の△5四銀型に対する、妙手なのでは、と思える手!
さすが、序盤研究でその名が通った千葉! この手は魅せたね
その狙いを即座に解説した北島さんも強い いいねいいね
そこへ、大介が小考の後、返すカタナで、まさかの△1三角のぶっつけ! これにはびっくりだ
北島さんも「あ~ ああ うわ~」とびっくり 北島さんが驚くと、なんだか面白い(笑)
千葉の事前の研究vs大介のその場の思いつき、という構図 いいねえ!

一気に中盤に突入、お互いに相手の手を逆用しようという応酬の連発、なかなか見ごたえがある
例によって、細い攻めをつなげようとする居飛穴側vs攻めを切らせようとする四間側、という展開
北島「大介は有利にできると思っているはず、しかし、一つでも穴があくと、
 一気に差をつけられてしまうという苦労が振り飛車側にはある」

中盤の大きな分岐点、大介が角を取って勝負に出るか、金を逃げて無難にガマンするかというところ
大介、勝負に出て、角を取った! うわ~、自陣の金がはがされて、怖い~ 居飛穴ペースでは?
北島「大介が選んだのは、受けに自信がないと踏み込めない順」

馬を作って、千葉の攻めを切らせたかに見えた大介だったが、6~7筋に嫌味をつけられ、
これがふりほどけなさそう、大介、ピンチか! 千葉の小駒だけの攻めだが、これがやっかいだ
ギリギリの細かい応酬で、千葉が食らいついて攻めが続くかに見えたのだが、
大介ががんばり、どうにかこうにか千葉の攻めを振りほどいた
 
いや~、これでようやく終わったか 穴熊の姿焼きが出来上がったね
今回は受けまくった大介の勝ちだったか さあ、千葉はいつ投了するだろうか・・・
と思ってみていると、まだ千葉は指し続けるではないか?

千葉、まだ、あきらめる気配がない!? なんとここから、第2の終盤に突入した 
「このくらいで千葉があきらめないことはわかっている」と言わんばかりに、入玉を目指す大介
入玉を決めようとする大介vs非常手段で穴熊の金銀を使って入玉を阻止せんとする千葉

延々続く、その応酬のすごいこと! こんな展開なのにバシバシと早指しで指せる大介もすごいが、
千葉も毎回もうダメか、投了かと思われるのに、秒を9まで読まれて、おそらく最善の食らいつき、
という手を指し続ける 一手一手、ちゃんと意味があるので、全く気が抜けない

将棋って、勝つまでどんだけ大変やねーん、とツッコミたくなるほど、どこまでも続く2人の激闘
うわーー すごい・・・ 形勢は大介がいいけど、疲れて手が見えなくなったら、たちまち逆転するぞ
北島「千葉が仕掛けるワナを、大介が1個づつ潰していく感じ」

私は見ていて、真剣師、という人達がいたのを思い出していた
大金を賭けた真剣勝負を指す真剣師たちの将棋が、きっと、こんな風だろうなあ
大介の受けまくる姿を見て、ハチワンダイバーの受け師さんを思い起こしたのは私だけではないだろう
最後の最後まで、絶対気が抜けない、延々続く、知力と気力と体力の総合力のぶつかりあい!
ふえーー、将棋って、すごい、すごすぎるゲーム・・・ 

矢内、難しい局面で3回ほどピタリと手を当てていた 北島さんも解説、的確だった
千葉、力を出し切っただろう それを上回った大介も見事だった 
大介が的確に、実に的確にずーっと対応し続け、千葉は本当に手がなくなるまで指し続けた
結果、なんとか大介、逃げ切り勝ちを決めた 総手数、184手! はあ~ これは激戦だった・・・

千葉が投了した瞬間、ため息をついた視聴者がどれほどいるだろうか(^^;
1勝を手にすることの大変さ、よく見させてもらいました 
はあ~・・・ 見ていたみなさまも、お疲れさまでした 
先日の木曜の銀河戦、▲金井vs△南は、▲ミレニアム囲いvs△右玉
108手で後手、南の勝ち 解説の行方いわく、「金井がいいかと思っていたら、南が勝った
 どこで南が良くなったのか、不思議な将棋だった」
「右玉に不思議の勝ちあり」という格言が当てはまる一局だった
というか、まあ、途中で寝ちゃったわけだが(^^;

今、私は「よくわかる角換わり」を読んでいて、盤に並べて、
きっちりマスターしようと思ってるところなので、銀河戦まで手がまわりません
・・・興味ある人がでてきたら、絶対見るんだけど(^^;

各ブロックごとに、これからのカードを見ていきたいと思います
(各ブロックは、11回戦まであります 現在、7~8回戦まで終了したところです)

Aブロック 最多連勝者は、佐々木慎で2連勝
 戸辺、山崎、丸山、広瀬という、豪華メンバーがこれから登場 
 次の戸辺vs山崎は、必見のカードと思います 期待大!

Bブロック 最多連勝者は、土佐で2連勝
 北浜、橋本、屋敷、高橋というメンバーがこれから登場
 当然ハッシーに注目! 他の3人は地味目の居飛車党ですね ハッシー、期待に応えてくれるか?

Cブロック 最多連勝者は、長沼で4連勝(継続中)
 長沼、畠山鎮、佐藤康光、森内というメンバーが登場
 実は、私は長沼さんの将棋が好きなんです 康光や森内と戦う長沼さんが見てみたい、
 オールラウンダー長沼さん、強敵相手の戦いぶりはいかに? 個人的に注目しているブロックです

Dブロック 最多連勝者は、佐藤秀司で2連勝
 杉本、阿久津、深浦、羽生というメンバーが登場
 杉本の将棋は長手数の美学で・・・(^^; 阿久津の切れ味するどい攻めに期待です 
 深浦の将棋は、難解極まる場合があり心配(^^; 羽生がどこまで気合いを入れてくるかに注目です
 
Eブロック 最多連勝者は、金井で3連勝
 南、豊川、松尾、郷田というメンバーが登場
 え~っと、このブロックは・・・ 郷田以外が地味で・・・ 次行こう、次!

Fブロック 最多連勝者は、大石で4連勝
 宮田敦史、飯島、中村修、木村、久保というメンバーが登場
 え~っと、このブロックも、久保以外はあんまし注目してない、かな・・・

Gブロック 最多連勝者は、佐々木勇気で5連勝
 豊島、野月、鈴木大介、谷川、三浦というメンバーが登場
 次の豊島vs野月には、期待してます! 天才・豊島と、棋界屈指の攻め将棋・野月の対戦は必見!
 鈴木大介、タニーという、やや不調ぎみ?な2人にも、どんな内容を見せてくれるか注目してます

Hブロック 最多連勝者は、高崎で2連勝(継続中)
 高崎、畠山成幸、中田宏樹、藤井、渡辺というメンバーが登場
 若干、地味なメンバーが続きますが(^^; 
 藤井にがぜん注目です 前期の藤井は緒戦負けしたものの、
 居玉のままの相矢倉という驚愕の発想をして見せてくれました
 (感想戦で、▲6九玉より居玉が良かったとの談)

今期は、連勝している人が異様に少ないのが特徴ですね
もう対局はとっくに半数以上消化されましたが、2連勝が最多のブロックが4つも!

個人的に注目の人をあげると、戸辺、山崎、ハッシー、長沼、康光、豊島ですね
優勝してほしいのは、長沼さんです
3年前、大阪での長沼さんの大盤解説会に行ったとき『羽生は強い』という話題になり、
私が「長沼先生は、羽生さんに勝つコツを知っているんですよね?』と言うと、
長沼さんは、即座に「あれは、ドッキリカメラでしたから」と言って、みんなを笑わせてくれたのが
とても印象に残ってます 長沼先生、がんばって! マジで、長沼先生が実力を出し切れば、
優勝も不可能ではないと思ってますよ! 中年の星となってほしいです!

(もう10年くらい前になりますが、TV東京の早指し戦で土佐さんが優勝したことがありました
決勝の相手は、たしか森内 あれは名局でした 
土佐さんが優勝して、見ているこっちまでうれしかった
その後、将棋世界にも、土佐さんは自戦記を書いて、それがまた名文でした)

「おお、この人がこんなすばらしい内容の将棋を指すのか」というのが銀河戦の醍醐味と思います
棋士のみなさま、がんばってください! 

桂馬の両アタリ ~先ちゃんの囲碁放浪記~
先崎学著 NHK出版 1200円+税  2012年4月初版

コンビニで、週刊文春を立ち読みしていた私、
いつものように、「先ちゃんの浮いたり沈んだり」のページを読んでいると、
この本が宣伝されてあった ふ~ん、先ちゃんのエッセイ本かあ
でもなー、本音を言うと、この文春のエッセイ、あんまり面白いと思って読んではいないんだよね
どうしても昔の若かったころの先ちゃんの文章と比べてしまう、あの頃は筆に勢いがあった・・・

囲碁に関することを書いた本らしい 今まで囲碁雑誌に連載されていたものをまとめた本か
へ~、ま、そのうち買うかもね・・・
と思っていたら、偶然にも、近所の本屋でこの本を発見!
まあ、偶然と言っても、将棋コーナーに目をやったらあったわけで、
将棋コーナーを覗くのはクセなわけで、まったく偶然というわけではない(^^;

おお、これが先ちゃんの言っていた本か 中身は・・・ うわ、大きな字だ
これで1200円は高いかな まあいいや、先ちゃんにお布施するつもりで買おうっと

で、読んでみたわけですよ したらば、これが面白いじゃないですか!
先ちゃんの筆が、元気です! これ書いてるとき、自分でも楽しく書いたんじゃないかな、と
思わせる内容です プロ将棋棋士の名前がポンポン出てきて、あ、この人が囲碁を打つんだ、
というのも、私みたいな将棋マニアには、うれしいです

囲碁はルールわかんないし、と思ってる人にも、全然OKです
囲碁はわかんないけど、「ヒカルの碁」は面白かった、という人ならOKです
将棋と比較して、囲碁ってこんな風なんだ、と感じることができますよ

分量が少ないか、と思っていたけど、そんなことはないです
1話が3枚の構成で、1話完結になっているため、話の数が多くなってます いいです

先崎ファンは、無条件に買いです もう買ってるでしょう
以下にあげる項目で、2つ以上当てはまれば「買い」です
・プロ将棋界のファン
・プロ囲碁界のファン
・ヒカルの碁が面白かった(囲碁のルールわかんなくてもOK) 
・軽いエッセイを読みたい

私も囲碁は打てないんですが、この「桂馬の両アタリ」、楽しく読んでいます
今、半分くらいまで読み終わりました 本来、全部読んでからレビューするのがマナーなんですけど、
今回は半分の時点で書きました だって、全部一気に読むの、もったいないんですもん(^^;
いや~、思わぬところで、ひさしぶりに面白い本に出会いました(^^)
実は、読む前までは期待してなかったです・・・(笑)

惜しむらくは、今の若い人は、先崎って誰?ってなるんじゃないでしょうか
今年のNHK杯、1回戦、誰と当たるの? 銀河戦ではどのブロック? 
・・・いないんです、先ちゃん、予選落ちしてるんですorz
先ちゃんのことを知ろうとしても、NHK杯にも銀河戦にも出れてないんです 
これでは、せっかく面白いエッセイを書いても、売り上げが・・・
先崎さん、B2で降級点を逃れてる場合じゃないです ぜひもう一旗、上げてください! 

5月13日追記 全部読み終わりました 前半はほとんどの話が面白かったのに対し、
後半は面白い話が少なくなってしまっていると感じました 残念です
前半は、プロ将棋指し達が囲碁を打つエピソードが秀逸でしたからね
しかし、この本、私にとっては、一度読んで終わり、ではなく、二度目も読みたくなる本ですね
第20期 銀河戦
本戦Dブロック 8回戦
杉本昌隆七段 vs 佐藤秀司七段
対局日: 2012年3月22日
解説:畠山成幸七段
聞き手:貞升 南女流1級
記録:伊藤明日香女流初段

土曜の銀河戦、今頃書くことになってしまった
先手秀司で、超速▲3七銀vsゴキゲン△4四銀型

秀司の▲4六銀と、杉本の△4四銀が拮抗して、盤上右側はこう着状態、身動きが取れない

秀司は銀冠、杉本は穴熊に囲った 
杉本にいいようにさばかれて、秀司の銀冠だけつぶれた 杉本の穴熊は無傷
杉本の完勝 以上、終わり

さー、「よくわかる角換わり」でも読もうっと
第37回 小学生将棋名人戦

<準決勝第一試合> ▲三間飛車vs△右四間
開始からまだ10手くらい、後手の子、お互い居玉なのに、いきなり仕掛けた!
銀を腰掛けもせず、もう最短の仕掛け(^^;
が、ここからすんごい長い展開に~ 私は途中で寝た(笑) 
すごかったのは、序盤、△7五飛と横歩を取ったところ 
この短い持ち時間(10分、切れ30秒)で、△6五飛~△7五飛と横歩を取るのか
うーんキモが座っているというか、怖いものしらずというか 私には絶対横歩を取るのは無理だ
153手で先手の勝ち 長かった・・・

<準決勝第二試合> ▲四間飛車vs△6五歩早仕掛け
3局の中で、一番の好試合だった 後手の子が定跡どうり仕掛けたが、「悪くなった」とのこと
ええー、どれが疑問で居飛車側が悪くなったのが、私には全然わからなかった
美濃はめっちゃ固いと思えた 実戦は、桂馬の押し売りあいになり、見ていて楽しかった
局後の戸辺の解説によれば、先手の子が角の活用をしなかったのが敗因とのこと
難しい将棋だった 先手の子、最後は二歩をうっちゃった 
でも、あそこではもう投了していてもおかしくなかったね 121手で後手の居飛車側の勝ち

<決勝> 相居飛車の矢倉模様力戦
中盤、お互いに攻めて、3ヶ所、歩がぶつかり合うという攻め合い
さあ、終盤、面白くなるぞ、と思ったところからの、後手の大トン死!
あー、まさか、トン死の筋、やるかなー、と思っていたら、やはりトン死したか(^^;
普通に角交換したら、いきなり詰み筋が生じていたんだもんね うっかりしやすいよね

こんな感じで、今年は内容的にあまり盛り上がらなかったと感じました
4人の子、全員が、これからプロを目指すそうです
歴代のベスト4をずらーっと見てみると、半数が色が変わっていて、
現在プロになっている人たちでした
ベスト4に入っても、半数しかプロになれないんですね プロになるのは、やはり厳しいですね
小林裕士 七段vs中村太地 六段 NHK杯 1回戦
解説 飯島栄治

日曜に放送されたNHK杯 矢内、首に大きなスカーフを巻いていて、似合ってるね
実力者デカコバと、若手バリバリの中村太地か なかなか好カードだ
(小林裕士は、同姓同名の小林宏と区別するため、このブログではあだ名でデカコバと呼んでいる
 体がデカイところからつけられたネーミング)

デカコバは田中魁秀門下 1997年四段、竜王戦は2組、順位戦はC1
予選で山本真也、島本、阿部隆に勝ち7回目の本戦出場

太地は米長門下、2006年四段、竜王戦5組、順位戦はC1
総合成績優秀により、予選は免除 本戦は2回目の出場
太地は4月26日に棋聖戦の挑戦者決定戦に勝ち、羽生棋聖への挑戦権を得て六段に昇段したとのこと

解説の飯島「デカコバは関西所属で、豪快な棋風 早指し、力戦が得意
 研究というよりも実戦主義、自分で将棋を作っていくタイプ
 太地は今一番勢いがある、前期すばらしい成績、タイトル獲得に向けて、今ががんばりどころ」

太地はなんと、前期、40勝7敗で、勝率8割5分1厘というすごい成績だったとのこと
C2でも全勝で昇級したしね 棋聖戦の挑戦者か まさに、今ノッってるね 
ボンクラーズvs米長会長のときに、ボンクラーズの指し手を盤上に指す役目も引き受けていたね
米長会長のお気に入り、愛弟子なんだね

事前のインタビュー
デカコバ「太地は本格正統派の居飛車党、戦型は横歩取りになると思う
 NHK杯の目標は、攻められて負けるパターンが多いので、得意の攻める将棋でいきたい」

太地「デカコバの印象は、攻めが鋭く、終盤が強い 攻め潰されないようにがんばりたい
 NHK杯は一局でも多く指せるようにがんばりたい」

先手デカコバで、本人が予想したとおりの横歩取りになった △8五飛戦法だ
太地はいつもの中原囲い、デカコバがどうするかだったが、▲7七角から、後手と似たような、
金銀4枚の堅陣に玉を囲った
飯島「デカコバは、固さ負けしない作戦」
解説の飯島、ポイントを的確に押さえて指し手の意味を詳しく解説してくれ、とてもわかりやすい

雑談で、矢内「みなさん、予選を抜けるのが大変だ、ってよくおっしゃいますね」
飯島「心の底からよくわかります(笑)」
予選は6~7人のトーナメントで1位にならないといけないんだから、大変なんだろう

飯島「お互い身動きが取りにくい」ということだったが、デカコバが動いた
▲5五角と打ち、9一の香取りだ 対して太地、なんと△5四飛、の催促!
局後、デカコバ「この飛車回りをうっかりした」
ここ、私も見ていて、△5四飛は全く予想していなかった 9一の香取りなんだから、
どう受けるのかと考えていたのに、どうぞ、早く取ってくれという手だ
なんと、これでもう後手が良くなっていた、との局後の感想戦だった

後手、銀を上に逃げるか下に逃げるか、という局面で、飯島の予想は上だったが、太地は下に逃げた
飯島「高勝率の太地が指したんだから、下が正解だと思いますよ(笑)」

飯島「形勢は、どちらかというと後手がやれそう」と言っているが、まだ決め手は見つからない
そこで太地、ズバッと馬切り一閃! 飯島は驚いていたが、私は見えてました ふふふ(^^;

飯島「太地が一本とったかも 後手の攻めが続きそう」
太地、好手と思える手の連発で、バンバン攻めてくる 
それまで当たり続けていた飯島の予想がはずれだし、太地が解説を上回る手の連発だ
飯島「予想手が当たらなくなってきました(^^;」

太地に、△6九金という、一段目に金を打つ、コンピュータが指しそうな手がでた!
これが寄せの決め手になったんだから、太地、すごい こんな手、よく見えるものだ
太地の手は、全く緩まず、流れるような手順でデカコバ玉を寄せた 80手で太地、デカコバに完勝!

うわー、これは強いわ 実力者のデカコバに何もさせなかった 太地の玉は全く手付かずだ
どうぞ香を取れの△5四飛の催促、一段目にベタ金の△6九金 
普通は見えるもんじゃない、これは実に強い勝ち方だ うーん、強い・・・!
飯島「太地の感性がすごかった一局」

デカコバ、今回も攻められて負けになってしまった(^^;
太地にはムダな手が何もなかったんじゃないだろうか 最短での勝ちだったと思う 
飯島が言っていたが「太地の指し方はムダをはぶいて勝っている」と
いうのが本局にもピッタリ当てはまったね

感想戦で、デカコバ「後手の攻めを余せているかと思ったが、全然余せてなかった
 ▲5五角に△5四飛をうっかりした」
太地は感想戦でもすべての変化にテキパキと答え、その強さを裏づけしていた 
これなら勝率8割5分も、うなづける・・・ 

中村太地、今までそんなに目立った存在でもなかったと思うが、一気に頭角を現したね
本局は見事だった 棋聖戦では羽生が相手、ぜひ力を存分に発揮してほしい!