第2回電王戦のすべて 
日本将棋連盟発行 1480円+税 2013年7月31日初版
著者の記述はなし 評価 A
コンセプト<あの世紀の一戦を出場者本人が語る> (帯の文をそのまま引用)

ひさびさの棋書レビューです(^^; 7月に発売された本で、私は読むのが遅れてしまいました なぜ遅れたかというと、第2回電王戦はプロ側が1勝3敗1分けで負けてしまったため、今まで私は、あんまり思い出したくなかったのです やっぱり、正式にプロ棋士が負けたというのはショックなんですよね でも来月の11月2日から、電王トーナメントが開催されるので、それまでに読んでおこうと思いました

本の構成は、対局したプロ棋士5人の自戦記がメイン、それと対局後のインタビュー、(プロ棋士、開発者の両方に) Ponanzaと激指の途中局面での形勢判断、開発者への50の質問(Puella αの伊藤さんにはなし)、関係者の観戦記などからなっています

全体に良く出来た本だと思います 夢枕獏さんの観戦記には、唖然としますが(笑) メインであるプロ棋士5人の方の自戦記が面白いです 私は棋譜は並べませんでしたが、楽しめました 特に船江五段の文章は大変に面白く、引きこまれました 大熱戦の様子が伝わってきます 文才がありますね! 以下、プロ棋士の自戦記で印象深かったところを抜き出してみました

阿部光瑠四段
「他にも立候補者はいるだろうから、私が選ばれることはまずないという軽い気持ちもあった。」 「私は今のコンピュータ将棋がどれほど指すものなのか、その実力を全く知らなかった。」 「(12月中旬にソフトの貸し出しを受けてから、実戦練習を)1日8時間、あるいは10時間」 「(練習対局で)私は最初8連敗を喫した。強い。持ち時間1時間、切れたら1分という設定だった。」
「こちらが振り飛車にすると、習甦は居飛車穴熊にしてくるのだが、これが異常なほどに強い。」 「私から攻める展開になると、ほとんどの場合切らされてしまい、負けた。」 
終局後は「自分自身、驚いていた。習甦相手にここまで大差で勝ったことは数えるほどしかない。」 「実は私は、今回私が負けたらプロ棋士が初めてコンピュータに負けたことになる、と いうことを知らなかった。」

佐藤慎一四段
「今回の電王戦出場を打診されたとき、棋士の代表として出るということが許されるなら、自分が出て出場したいと思う気持ちがあった。」 「一局を振り返ってみて、自分もコンピュータも良いところ悪いところがたくさん出た将棋だったと思う。」

船江五段
「(ツツカナの)4手目はなんと△7四歩。 楽しいことになってきたため、少し二ヤリとしてしまった気がする。」
「(ソフトは)隙があれば仕掛ける。奇襲も大好きだ。 今回の電王戦でも、5局全てでソフトが先攻している。 もし第3回があるならば、私は受けが得意な人が出場するべきだと思う。」
中盤で「どうやっても少し優勢に見える。しかしどうやっても少し優勢にしかならない。なぜなんだ。」 「人間が逃げ、ソフトが追い込むという展開になりやすい。本局もそうなった。 そして本局の直線は長かった。府中の直線よりもはるかに長く。それは信じられないほどに長かった。」
長い終盤で「手番が回り▲1六歩。待ちに待った▲1六歩。そして私は思ってしまった。 勝ちになったんじゃないか。いや間違いなく勝てる。」 「着手と同時に私は事の重大さに気付き愕然とした。こんな大悪手はない。」 「早く勝って楽になりたい。その誘惑に私は負けてしまったのだ。」

塚田九段
「(第1回電王戦で米長会長が負け)当時コンピュータ将棋の知識がほとんどなかった私だが、米長先生が完敗してしまったことはショックであり、同時に大変悔しかったのを覚えている。」 「応募締め切り当日に立候補した。」
当日の作戦、「4手目△4四歩と指したのは、実に11年ぶりのことだった。完全にソフト相手の作戦だ。」
事前の練習中、「4月7日(対局6日前) 何故かボンクラーズと指せなくなった。マニュアルがあるので、再設定を試みるも、全然できない。もう時間はない。『ツツカナ』と指すことにする。」 その練習中にツツカナ相手に、入玉して勝利したことで、「思えば私は、対局直前のこの一局で、大いなる勘違いをしてしまったのかもしれない。」
塚田によれば、ツツカナは入玉せずに玉が8八のまま動かなかったから、当日のPuella αもそうだと勘違いしていたというのだ 
終盤の、Puella αも入玉を目指す手の「▲7七玉を見て、私はそうとうショックを受けた。 その手だけはないと思っていたからだ。」 「私の指差し確認、楽しんでいただけましたか?(私は必死)」

三浦八段
「正直に書く。私は出場したくなかった。負けたときのリスクがあまりに大きすぎる。」 「出場を迷った理由として、私がコンピュータ将棋に関して全く知識がないことも大きかった。」 「電王戦第4局の日に、コンピュータ将棋協会の方から意外なことを聞いた。 最新のGPSと練習できるというのだ。私が(それまで練習で)使っていたのは1年前のバージョン。」
対局後「本譜の順が悪いとは思えないのだ。(GPSは)こちらの厚い部分を攻めている。 それ(GPSの攻め)がつながるとは・・・・」 「本局のGPSには疑問手がひとつも見当たらない。」

さて、当日の対局はともかくとして、塚田九段と三浦八段には、連盟から事前のバックアップがきちんとなされていなかったのが、非常に腑(ふ)に落ちないです 塚田九段は対局の6日前にPCの不具合で、ボンクラーズと練習対局ができなくなった、とあります 代わりにツツカナと指して練習したが、それが本番で大きな意味を持ってしまったのです
三浦八段は対局の1週間前まで、GPSの1年前のバージョンと練習していて、最新バージョンとあまり練習できなかった、と告白しています これではダメでしょう もっと、連盟全体で対局者をバックアップしてあげなければいけないでしょう なぜ、ちゃんとやらなかったのか? 第3回では、こういうことが絶対ないようにしてもらいたいものです 

それにしても、阿部光瑠四段も、塚田九段も、三浦八段も、この第2回電王戦の前までは、コンピュータ将棋のことをほとんど何も知らなかった、というのが実情なんですね
ネットの将棋倶楽部24では、bonkrasとponanzaが圧倒的な強さを見せ付けていたので、私はプロももっとコンピュータ将棋に関心を持っているものなのかと思っていました
コンピュータ将棋の強さを知っていたプロ棋士は、立候補しなかったというのがホントのところ?(^^;

今度の第3回、私は興味がわかない、と前に書いたのですが、この本を読んで、私の中で次の電王戦が盛り上がってきました どういう内容、結果になるのか、ドキドキしています
第2回電王戦を取り上げたもう一冊の本、「ドキュメント電王戦」のほうでまた感想を書く予定です
羽生善治 三冠vs木村一基 八段 NHK杯 2回戦
解説 佐藤康光 九段

矢内、スカーフがかわいい 今日は羽生の登場! ワクワクするな~
先日の王座戦では、中村太地を相手に王座を防衛して、また若者いじめをした羽生(笑)
相手は木村か 2回戦としては手ごろな相手か 羽生、コケるなよ~
私はこのブログを書き始めた当初は、アンチ羽生で常に羽生の相手側に肩入れしてNHK杯を
見ていたのだけど、羽生のあまりの強さに惚れて、今では逆に、羽生を完全に応援している(^^;
タイトル戦と違って、1回負けたら終わりのNHK杯で羽生がすぐ負けるのはイヤだと思うようになった

羽生は1985年四段、竜王戦1組、A級 王位、王座、棋聖を保持 28回目の本戦出場
木村は1997年四段、竜王戦2組、B1 1回戦で北浜に勝ち 15回目の本戦出場

解説の康光「羽生はNHK杯を4連覇達成し、前期は惜しくも決勝で破れて、
 新しい気持ちで臨まれていると思う 
 棋風に関しては私が今さら説明するまでもなく、みなさんのほうがご存知じゃないかと思う

 木村も第一線でずっと活躍している棋士 最先端の将棋を探求されているところもある人ですが、
 受けが強い 千駄ヶ谷の受け師という異名もある 積極的な受けが大きな魅力」

事前のインタビュー
羽生「木村は粘り強い受けの将棋というイメージがあります
 最後まで気力を振り絞ってがんばりたいと思っています」

木村「羽生は研究会などでも、ずいぶんお世話になっていますが、探究心というか研究する姿勢と
 いうのにいつも心を打たれる 大変強い相手ですが、自分のある力を出し切れるようにがんばりたい」

先手羽生で、対局開始 羽生はいつも深々とおじぎをするなあ
羽生の戦型選択が注目されたが、普通の指し方での居飛車だった 
これを見て、「羽生の勝つ確率が高くなった」と思ったのは私だけではないだろう
去年の決勝の渡辺戦、角道を止めた消極的な指し方、あんな作戦でなければ、まず大丈夫だ!

ノーマル角換わりの相腰掛け銀にスイスイと進んだ  
康光「後手の木村としては、先手の羽生の攻めを受けて立つ展開」
羽生の攻めvs木村の受けか 双方の棋風が出る、真っ向勝負だな

木村は香をひとつ上がり、穴熊に潜る気配を見せた
康光「最近はどんな戦型でも、穴熊に組み替えるのが流行っている 
 戦いの場から玉が遠ざかっているのが大きい」

ここで両者の対戦成績が出た 羽生23勝、木村9勝とのこと
おお、木村、案外、善戦しているではないか 羽生に対して9勝もしていたのか 見直した(^^;

矢内「羽生はNHK杯の優勝が10回で、名誉NHK杯の称号がある 
 NHK杯ではここまで108局で91勝17敗 勝率が8割4分3厘」
こういう数字での情報はいいね どんどん出して欲しい
今、連盟のHPで調べたら、羽生の通算勝率が7割2分3厘だった 
NHK杯は羽生にとっては、相性が抜群ということになる 

木村の香上がりを見た羽生は、4八に振った飛車を再び2八に戻し、4筋から仕掛けて行った!
もう行ったか 「穴熊には潜らせない」という手だ いつもながら、羽生の将棋は積極的だ 
康光「あ 行きましたね この形は後手陣にスキがない、先手が攻めきるのは難しいというのが定説
 羽生が定説に挑戦している」 

羽生が4、3、1、2筋の歩を突いて攻めていく 木村は受けれるか
康光「木村は専守防衛に徹底している」 角を中段に打ち、受けきりを狙う木村 
それに対し羽生は自陣に銀を投入して、いったんガッチリ受けた 
康光「羽生の決断は早かったですね」 一見、もったいない感じの銀だけど、どうか  

羽生の桂跳ねが木村の金に当たったが、木村は金を逃げない!
バシッとすごい手つきで、攻め合いを選んだ木村 
康光は、先手は金を取るのではなく、端から攻めるのをおススメしている
康光「これで先手の攻めが決まっちゃうと、一番ひどいことになるんですけどね 
 非常に危ないんですけど、大丈夫ですかね?(笑)」

木村はギリギリでがんばるつもりのようだ うおー、木村らしい玉さばきだ 耐えてるのか?
康光「第一感は、生きた心地がしないですが、木村の持ち味が出ている」
矢内「1回戦の北浜戦でも、生命力の強い玉でしたからね」

木村は金を寄せ、角をじっと引き、銀を自陣に投入、耐えまくっている 実にガマン強い
羽生も、香が死に、駒損だ そして、いったん局面が落ち着いてしまったではないか
あらら、羽生、一気の攻めはあきらめたか 仕方ないのか 羽生の桂損なんだけど、大丈夫か?
康光「木村は駒得が主張、羽生は玉の堅さが主張 
 木村はさすがですね 潰されそうなところから、主張点ができた」

考慮時間の残り、▲4回vs△4回で互角 うわ、羽生、まさか苦戦なのか・・・
しかし、ここで康光が、羽生には十字飛車の狙いがある、という筋を解説 
あれ??? そんな筋がある!? 矢内もこの狙いには、心底感心していた
事前に▲1三歩と打って△同玉とさせた利かしが、ここに来て、抜群に効いてきたのか!!
この2手の交換、指されたときは、「なんだこれは、どういう意味があるんだ」としか私は思えなかった
こ、この十字飛車の狙いは厳しい! う、受からないではないか? 
これは木村、すでに困ってるのでは? 羽生はいったい、いつからこの攻めを視野に入れていたのか?

木村の判断は攻め合いだった 
康光「ここで攻め合いました? これは意表を突きましたね ホントはやりたくなかった手と思います」
木村、苦しくなったか さらに木村、銀を丸々タダ取られする位置にわざと逃げるという一手! 
矢内「タダのところに」 康光「驚きの一手ですね 普通にやっていては悪いと見て」
うわ~ マジですか(^^; そしてあっさり羽生にその銀を取られ、追いつめられていく木村 

康光「羽生はここまでうまく手をつないでいる 実に巧みに最後の一歩(いっぷ)を使っていますね」
木村は何か勝負になる手を探すが、見当たらなかった 羽生に完全に一手違いを見切られている 
康光「さすがの受けの達人の木村をもってしても、ここまできてはやむを得ない」

康光「早指しですと、ハプニングも起きやすいんですけど、羽生は悪いほうで起こすことがないですよね」
羽生は色々勝ち方があったところだが、長手数の詰みで仕留めた 131手で羽生の勝ち

矢内「30手を越える詰みでした」 
手数は長かったけど、プロにとってはそんなに難しい手順ではなかった 
もともと、詰まさなくても羽生の勝ちの終盤だった
康光「(中盤でいったん羽生は銀を投入して受けたものの)羽生の攻めが想像以上に厳しかったと
 いうことでしょうか 細かい攻めをつないだ羽生の攻めは見事だった、鮮やかだった」 

羽生、磐石の勝ちっぷりだった 本局で一番感心したのは、やはり▲1三歩と叩いたタイミングだ
あの瞬間、康光は「悩ましいところで叩きますね 羽生は自然にそういうところに手が行く」と
解説していたのだ しかし、私には▲1三歩の意味がわからなかった 
それが、後になって十字飛車の強烈な狙いとなって、抜群に威力を発揮して、勝因になった
はぁ~、羽生、つ、強い・・・ ため息が出る 感想戦の時間はなかったが、木村としては、
悪い手をやった覚えはないのに完敗、いったいどこが悪かったの?という一局だろう

プロ棋士の強さの一つの指標として、「羽生に対して何勝しているか」というのが上げられると感じた
木村は羽生に対し9勝している あと1勝で10勝だ 
羽生に対して10勝以上を上げている棋士は何人いるのだろうか?
ここまで羽生が強いと、羽生に対して通算10勝した時点で、「対羽生戦、殿堂入り」という
栄誉称号が与えられてもいいと思う(笑) そんなことを感じた今回の羽生の強さだった

羽生、まずは3回戦進出、次は行方と大石の勝者と、これも今から楽しみだ
今年のNHK杯も「誰が羽生を止めるのか」が焦点だね 羽生には本局のように、常に強くあってほしい! 
私は、囲碁将棋チャンネルを、かなり長い間、観ています 
(囲碁には興味がないので将棋だけ)
途中で観ていなかった時期もあるが、10年以上観ています 
そもそも、囲碁将棋チャンネルというのは、衛星放送の「スカパー」でやっている番組で、
月額1470円で視聴できるというものです (スカパーの基本契約料の月額410円が別途必要)
スカパーにはどうやって契約できるかというのは、色々な形態があるので、各自調べてほしい(^^;
私は業者に専用のアンテナを立ててもらいました そして、録画できる専用チューナーを設置しています

さて、本題 囲碁将棋チャンネルの中の将棋番組での目玉は、なんと言っても、銀河戦です
9月で第21期銀河戦が終わり、10月から第22期銀河戦が始まりました 
しかし、また1回戦からやるので、登場する棋士のレベルが、グッと下がってしまうので、
盛り上がりに欠けるのはどうしようもないところです

どのような放送をしてくれたら、もっと囲碁将棋チャンネルの将棋番組が観たくなるのか、
以下、私の希望を書いておきます ヘビーな視聴者の意見として受け取ってほしいです

<新しい棋戦の創設> 
・若手棋戦 ・女流棋戦 ・コンピュータソフト棋戦
この3つの棋戦が新たに創設されたら、どんなに面白いかと思います
それぞれ20~30名くらいのトーナメントで、持ち時間は早指しがいいですね

10年くらい前は「早指し新鋭戦」や「鹿島杯女流トーナメント」というものがありました
それを、今また復活させてもらいたいと切に思います

今、女流棋戦では、女流王将戦が囲碁将棋チャンネルで対局の実際の模様が収録されて放送されて
いるのですが、これが誰が優勝したのか、放送前にネタバレしてしまっているのです 
つい先日、香川さんが里見さんを破って、新女流王将になったのは将棋界のニュースとして
話題になりました 結果がわかっていては、私は観戦する気になれないです 

コンピュータソフト同士の棋戦というのも、ぜひ観てみたいものです 
(もうすぐニコニコ動画で電王トーナメントがあります、それがどうなるか見ものですね) 

<お好み将棋道場の充実>
これは、なんとかして欲しい 放送の力の入れようによっては、すごく面白い番組になるはずです
現在は、月1程度しか、新規に収録がされていないです
毎週土曜にやっている(約1時間40分)のですが、週3回は、いつ放送されたかわからないような
再放送が流れています せめて、隔週で新しく撮った番組を放送してくれないでしょうか

そして、何より、対局者(ゲスト)の人選
これが、どこぞ普通の会社の社長だとか、そういった人ばかりが目立ちます
一般人には全く知られていない人が対局者として登場しても、観ている側は盛り上がらないです
囲碁将棋チャンネルの番組紹介のHPの文章には、以下のようにあります↓
>芸能界やプロスポーツ界など各界で活躍している将棋愛好者がプロに駒落ちで挑戦する。

だとするならば、もっと、芸能人を出すべきです 出たい人はいるはずです
つるの剛士、柴田ヨクサルといった、情熱あふれる人は、毎年出してもらいたいです 
勝手に名前を出して悪いですが、将棋倶楽部24の久米宏席主、「寄せの構造with棋書ミシュラン」で
千冊以上の将棋本をレビューしているRocky-and-Hopperさんにも、出てもらいたいですね

さらに言うならば、アマ低級者の人というのが出ているのを観た記憶がないです
6枚落ち、8枚落ちという手合いもあるのです 
アマなんだから、どんなに弱くても「将棋が好き」であれば、参加資格はあるでしょう
その場合、現行の持ち時間50分は使い切れずに持て余すでしょうから、25分にして、
2局放送すればいいでしょう 1回の放送で1局だけ、という固定概念に捕らわれることはないはずです

そして、必ず、アマの希望した手合いをプロが受けてもらいたいです 
この手合いならアマ側が勝てるはず、そういう手合いでやってもらいたいです
将棋の駒落ちというのは、見かけ以上に差がないことが多いのです
私はもしプロと本気で指すなら、2枚落ちでやりたいです 飛香落ちでは、全く自信がないです
アマの人に気持ちよく勝たせる、それもプロの芸の内と思います
番組を観ていると、勝率はプロの5割5分~6割くらいでしょうか
アマが7割以上勝つくらいにしてもらいたいと思います 

さらに言うならば、別にアマvsプロでなくともいいはずです
アマvsアマ、それもアマ10級くらいどうしの対決をプロが解説し、それを見守る、というのも
面白い企画になると思います 本当は芸能人トーナメントをやってくれたら、最高なんですけどね

<週刊将棋ステーションの復活>
去年の3月で、棋界の情報番組を流していた「週刊将棋ステーション」が終わってしまいました
これは、今から考えると、すごく贅沢な番組でした
毎回プロ棋士が1人ゲストに来て、インタビューに答えて、棋譜解説をしてくれていました

これを復活させてほしいです と言っても、プロのゲストはいなくていいです
(もちろん、いるに越したことはないのですが)
ただ単に、週刊将棋の記者などの将棋関係者が2~3人で、その週にあった棋戦結果を振り返り、
ダラダラと20~30分、雑談をしてくれるだけでいいです 
これなら、ほとんどお金をかけずに可能だと思います
私は、将棋界の情報を聞いていると、すごく気分が落ち着くんですよね

この「将棋記者が将棋界の情報を週一で雑談する番組」は、
実現可能と思いますので、ぜひなんとかやってほしいところです

話を変えて、いいところも書きますね 
銀河戦の対局時に、現在の手番のほうに「手番」と文字が画面に表示されるようになったのは、
とてもいい改革だったと思います 今、どっちが考えてるのか、すぐわかり、グッドです
対局開始前と、終局後に対局者にインタビューがあるともっといいですが(^^;
それから、7月に始まった、3分で女流棋士の素顔に迫る「駒桜通信」、とてもいいです
女流の方に親しみがグッと増します 毎回楽しみです
ただ、居飛車党なのか振り飛車党なのか、攻め将棋なのか受け将棋なのか、
それすらわからない女流の方も多いですので、棋風の紹介は入れてほしいですね 

以上です 色々書きましたが、関係者の方、がんばってください!
谷川浩司 九段vs西川和宏 四段 NHK杯 2回戦
解説 久保利明 九段

今日はタニーの登場か 正直、ここ何年も、NHK杯でタニーが勝ってるところを見たことがない(^^;
相手は若手四段の西川だ ぜひ、今日はタニーに快勝してもらいたい!

タニーは1976年四段、竜王戦2組、A級 1回戦シード NHK杯は34回目の本戦出場
西川は2008年四段、竜王戦5組、C2 1回戦で上田女流に勝ち NHK杯は2回目の本戦出場

解説の久保「タニーは連盟の会長ということで、色々と大変なところだが、
 対局者としてもがんばってよく勝っている印象 
 西川は若手だが自分の対局だけでなく、普及のほうも力を入れてがんばっている」

事前のインタビュー
タニー「西川慶二七段とは小学生の頃から40年近く付き合いがある、その息子さんの西川四段と
 対局をするのは感慨深い 西川は振り飛車党なので、対抗形になると思う
 ここのところ、NHK杯戦はずっと初戦負けが続いているので、何とか一局一局、上へ進んで行きたい」

西川「谷川先生と言えば、鋭い攻めで光速の寄せがあるので、それを出させないように
 じっくり優勢を築いていきたい ずっとあこがれていた先生との対局なので、
 緊張しないで全力を出し切って、悔いの残らないようにしたい」

先手タニーで対局開始 さあ~、タニー、頼むで~ 若手をいてこませ、タニー!
タニーは居飛車で、西川は中飛車だった
久保「昔からある、角道を止めた中飛車ですね」

タニーは持久戦を選び、穴熊に潜り、万全を期す構え 西川は美濃だ 
久保「西川は居飛穴は、そこまで苦にしてるタイプじゃない よく組ませて戦っているのを見る」

長い駒組み合戦が続く タニーは4枚の銀冠穴熊に組むことに成功した
ここまで組ませてくれる振り飛車党はめずらしい 西川は長考し、時間を減らしていく 
西川、まだ序盤でこんなに時間を使ってしまって、時間の面でも大丈夫なのか 

矢内「お互いに不満のない進行ですね」
久保「そうですね タニーのほうがどう仕掛けるか 居飛車側から攻めるとしたら飛、角だけってことに
 なりますけど、それでも充分、釣り合いは取れるということですね」

西川が銀冠に組み上げる瞬間にタニーが動き、西川はまた長考だ
なんと考慮時間、残りが▲7回vs△0回! 西川、もうここで使い果たした!
そしてタニーの▲8五歩を、西川は△同桂と取る手を余儀なくされ、西川の桂が死んだではないか
久保「桂損、大きそうですけどね」
矢内「西川としては踏ん張りどころですね」

タニーはその桂を使って歩切れを解消、これはどう見てもタニー良し! 
ここから居飛穴が負けるってことはないだろう 堅い、攻めれる、切れない、駒得だもんね 
西川の敗因は、相穴熊にしなかったことか・・・
が、西川、銀損の特攻で、十字飛車の筋で攻めてきた あら、この攻めをタニーはどう受けるか?
久保「うまい切り返しのような気がします けっこう厳しいですよ 受けづらいですよ」

手が進み、タニーは金を見捨て、攻め合いに持っていった あら、駒の損得がなくなっちゃった
でも、これでまだタニーがいいか? なにせ穴熊だもん、まだタニーがいいよね?
久保「ここ十数手で西川もかなり盛り返してきてますので」
そして、残り時間が▲0回vs△0回に! うわ、タニーも30秒将棋になっちゃった 
こりゃ、まだ何が起きるか、わからんか?

激しい終盤になっている お互いに術を駆使しての一進一退のやりとりだ
久保「ギリギリの、かなりすごい勝負になりましたね」
ええー、タニーが良かったんではないのか 桂の丸得で手を選ぶ権利があったあの局面から、
難しくなっちゃったってか でも、こういう展開は、最後は穴熊が勝ちやすいはずだ!

久保の予想手が、度々はずれる複雑な終盤戦だ  
久保「そうとう難しいですね これは」
こういう展開のとき、美濃のほうが手が広くて間違えやすいかと思うのだが、西川は食らいついてくる
もうずいぶん前から30秒将棋の西川、実によくがんばってる タニーも負けるな!
これはもう実力の出し合い、底力が強いほうが勝つ、ねじり合いの展開!

久保「ちょっとタニーが残していそう 詰めろ詰めろといけば穴熊の勝ち 
 こういう局面を作れるのが穴熊の強み」
おお、タニー、やったのか 最後は穴熊がやはり勝つ・・・?

西川玉に迫るタニー 先手の銀3枚で後手の玉を囲む、というめずらしい図が発生した 大熱戦の証だ  
久保が「西川としては何か詰めろを受けるところ」と言っていると、西川は角を打って受けた
久保「銀で受けるかと思いましたが」 が、これが局面が進んで見ると、先を見越した見事な受けだった
これには久保も矢内も「なるほど」と感心、うわ、西川、つ、強い
ま、まさか、タニーの攻めが切れてしまった!?

久保「一瞬の逆転劇でしたね また形勢が入れ替わってる気がします」
う、うそー もうここでの形勢の悪化は致命傷 
まさか、タニー、銀冠穴熊まで組んで、桂得した将棋で負けるのか? 
そして、タニーが指した手は形作りだった・・・
タニー「あ 負けました」 

124手で西川の勝ち 大熱戦だった た、タニー、負けた・・・orz
局後すぐ、タニーは「ちょっと良くなりすぎたか」とつぶやいていた
矢内「2転3転した感じでしたね~」
久保「序盤はタニーのほうがかなりポイントを上げていたと思ったんですけど、
 それから西川の追い上げがすさまじくて、終盤は調べてみないとわからない、すごい熱戦でした」

はぁ~、西川、つえーーー!! ほんと、なんと強いことか これで竜王戦5組、C2の棋士?
中盤以降、延々30秒将棋で、これといった悪手なく、4枚銀冠穴熊を攻略してしまう、つ、強い・・・
タニーというオーラを放つ大棋士を相手に、臆することなく力を出した西川、精神力は並みではない!

いやー、将棋の内容としてはすごく面白かったし、西川の強いところが見れて、普通なら満足だけど、
負けたのがよりによってタニー あああー なんで負けちゃうかなー ガクッ
ガチガチの4枚の銀冠穴熊が負けるところなんて、めったに見れないものなんだけど、よりによって(^^; 
力の入った大熱戦だった ランクは低くても、若手、恐るべしということか  あー、タニー・・・

連盟のページで、タニーの近年のNHK杯の成績について調べてみた
(資料があったのは1999年以降 タニーは全て2回戦からの登場)
1999 ベスト8 2000 3回戦負け 2001 ベスト8 2002 ベスト4 2003 ベスト4
2004 ベスト8 2005 ベスト8 2006 3回戦で佐藤康光に負け 2007 2回戦で松尾に負け
2008 3回戦で渡辺に負け 2009 2回戦で糸谷に負け 2010 2回戦で豊島に負け
2011 2回戦で畠山鎮に負け 2012 2回戦で鈴木大介に負け 2013 2回戦で西川和宏に負け
5年連続で初戦敗退となってしまったタニー、来期こそ勝利してほしい!
中田宏樹 八段vs橋本崇載 八段 NHK杯 2回戦
解説 松尾歩 七段

おお、今日はハッシーの登場ではないか 私はハッシーのファンだ
私が選んだ前期の銀河戦のベスト1は、ハッシーが渡辺に角換わりで勝った一局だ
銀河戦では、稲葉に負けて準優勝だったが、NHK杯ではどこまで活躍できるか ワクワクだ

ただ、ハッシーは第3回の電王戦の事前のPVで、出場するんじゃないかと思わせるような発言を
していながら、棋士5人の中のメンバーに選ばれなかったのは残念だ 
今回の相手はデビルこと中田宏樹、なかなかの実力派だが、ハッシーならきっと勝ってくれるだろう

中田は1985年四段、竜王戦4組、B2 1回戦で佐々木勇気に勝ち 14回目の本戦出場
ハッシーは2001年四段、竜王戦1組、B1 1回戦シード 9回目の本戦出場

解説の松尾は、髪の毛にパーマがかかっていて、風貌が芸術家のようだ 
松尾「中田は本格的で、攻守のバランスが取れている どちらかと言えば攻めの棋風
 居飛車党で、飛車を振っているところは見た事がない

 ハッシーも本格的で、攻守のバランスが取れている 受けに特徴がある棋風
 器用なタイプで色んな戦型を指す サービス精神旺盛だが、将棋に関してはまじめ」

うわー、ハッシー、和服姿で強いパーマをあてているという、今回も個性的ないでたちだ
そして太っているのが顔についた肉でわかる(^^;
 
事前のインタビュー
中田「橋本さんは、中終盤は鋭い手とか、大胆な受けがよく見えるタイプで、
 バランスが取れていると思う 今日の戦型は橋本さんの作戦しだいです 私は居飛車で行く 
 とにかくいい将棋を見せれるように、がんばりたいと思います」

ハッシー「中田さん? じぇじぇ? 序盤、中盤、終盤、スキがないと思うじぇじぇ?
 だけど、オイラ負けないじぇ 駒たちが躍動するハシちゃんの将棋をみなさんに見せたいじぇ
 じぇじぇ」


聞いていた矢内「・・・ということなんですが(笑)」
松尾「困るんですよね なんかうまく拾えないんで(^^; (うまくフォローできない、の意)
 何か言ってくれるんじゃなかと思っていたら、やっぱりやってくれましたね(笑)」
矢内「大人気だった、あまちゃんに引っ掛けて」
松尾「ハシちゃんって自分で言うかっちゅう感じですけど(笑)」

さすがハッシー、サービス満点! それでこそ有言実行の男! 行け行けハッシー、がんばれ~! 
2人の対戦成績は、中田2勝、ハッシー3勝とのこと

先手中田で居飛車、後手ハッシーの4手目△3五歩から、角交換の三間飛車になった
松尾「最近ではめずらしい、升田式石田流三間飛車です
 この作戦は、先手番でやる人は多いけど、後手番だとちょっと最近では少なくなってるかな」
このハッシーの作戦はやや危険な意味がありそうだけど、どうなのか?

しかし中田は4手目△3五歩に対して、無理せず、慎重に駒組みする作戦を取った
ハッシーのほうも、中田の棋風を見越しての後手升田式石田流だったのかもしれない
松尾「中田は先手の利を活かして、積極的な指し方もあったところだが、穏やかな順を選んだ
 中田らしい、じっくりした指し方です」

さて、序盤、お互いに角打ちに気遣いながらの駒組みだが、ハッシーは左銀をぐるっと一周させて、
また元の位置に戻したではないか これはものすごい手損、丸々の4手損だ こんな作戦があるのか?
その間に中田に6筋の歩を伸ばされて位を取られ、手順に6筋を攻められてしまった!
あららら、これは▲3一角からの馬作りが受からないではないか 
ハッシーの左金が3二から2二へ、そっぽに追われて、もうこれはいきなりの大ピンチなのでは?
松尾「パッと見には、中田のほうが楽な展開 ハッシーは2二の金が負担」

考慮時間を使ってる八ッシー、あわわわ どうなっちゃうんだ 
こういう展開になって、振り飛車側の左金が馬に追われて端(香の上)まで行かされてしまったのを、
以前に男子棋士(居飛車)vs女流(振り飛車)の対戦で見たが、それは案の定、
振り飛車側がボロ負けしていた それの再現か? ハシちゃんピンチ!

だが、そう簡単に負けるハッシーではなかった 角を打ち込んで、さらに歩をからめての勝負手!
解説していた松尾も、「駒が入り組んでわけがわからない」と発言
おお、苦しそうな場面から、勝負形に持ち込んだか 
そして、勇躍、△4五桂と跳ね、いわゆる「天使の跳躍」を見せたハッシー
松尾「ここはこうやるもんだ、という感性ですね」
そして、残りの考慮時間も▲0回vs△5回に、時間的にはハッシー有利 よ~し、いけるか・・・!?

しかし、中田もここでベテランの感性を魅せた それは9筋の端攻め うわ、これが厳しいか?
松尾「いい感じのタイミングで」
指されてみると、「本筋」と言うにふさわしい一手に見える
形勢は? どっちがいいんだ? うう、面白い、これは面白い勝負!
矢内「少し中田のペースですか?」
松尾「そういう感じですね」

中田は攻めたが、ハッシーの飛車も手順にさばけた こりゃ、また難しくなったか
秒読みの中田、飛車先を破るべく、手を渡す▲2四歩! ここでか もう手抜かれるのを覚悟の上だな 
松尾「はあー じっとですか これは堂々とした手ですね~」 

ハッシーに手番が渡り、角打ちかと思いきや、先に△5五銀と盤上の遊び銀を活用
おおお、これはかなりの好手の予感! ハッシーの本領発揮の一手に見える ハシちゃんの駒が躍動!
松尾「これは そうか なるほど ハッシーらしい、筋のいい駒の使い方が出てますね
 テンポ良く指しているので、ペースが出てきたと感じますね」

だが、この将棋は一筋縄ではいかなかった
中田陣は馬が利いていて堅い、ハッシーのほうも金を取らせないで引く、力の入った応酬が続く
まだこの先がどうなるのか、見ていて全くわからない、長い熱戦になってきた

ところが!? そんなとき、中田が飛車を横に一つ成るだけ、という、
一手パスのような手を指したではないか ええ? こんな手が、将棋の終盤であるのか?
松尾「あれ? 予想と違いましたね あれ あ そうなんですか? へ~? ちょっと意外でしたね?」
手が少し進んだが、松尾は中田の飛車成りを「いまだにピンと来ないんですけど」と言っている

この終盤にきて、明らかに中田に一手パスの疑問手! その間にハッシーは桂を入手、
待望の王手馬取りをかけることに成功した こ、これは、ハッシーにとって夢のような展開だ
いける・・・! ハシちゃん、勝てるぞ!!

ハッシーは、駒台から、むんずと銀を持ち、盤上に置いた 
これは勝ちを意識した手つきだろう、きっとそうに違いない 
中田は桂を引っ掛けてきたけど、ハッシーの美濃囲いはまだ大丈夫だよな 
え、ハッシーは攻防に角打ちか そこに打つのが正解? それは最善? 
あら、中田は中央に飛車を転回してきた ええ? あれあれ、いったい何が起こっているのか
この最後の最後の場面にきて、大立ち回りだ 一瞬のうちに盤上が目まぐるしく変化した
松尾「ハッシーの角打ちは、いい手の雰囲気がありますね 中田の飛車回りは、受けただけの
 ような感じがありまして、ちょっとつらい感じの手です」

ハッシー、詰めろをかけたが、これでハッシーの勝ち・・・ ハッシーの勝ちなんだよね?
矢内「▲7一角は」
松尾「あ いちおう、そうか 見えてなかったです あれ? 危ない? 
 いや ちょっと全然うっかりしてましたね ▲7一角の筋があるか 狙ってたんですね そうかあ
 今思い出したんですけど、中田は、終盤、切れ味が鋭い」
矢内「もうちょっと早く思い出してください(笑)」

・・・って、おーーーいいいい どうなってんの? ハッシー、マジやべえ? 詰まされるって? 
▲7一角捨てて、と金捨てて? あああ そうか 金のタダ捨て打ちか!! 
そして竜捨て、捨て駒連発で、最後は一間竜の筋!!
ああああああああああああ つ、つ、詰んでしまったーーーーーーーーーーーーーー   
な、なんということだ まさかまさかの長手数詰みいいいい

ハッシー「負けました」 あああああああああああああ ハッシーが負けちゃったあああああああ
117手の大熱戦だった うわああ ハシちゃんが負けた・・・orz でも面白かった・・・(笑)

矢内「一気の即詰みでしたね」
松尾「そうですね 狙っていたんですね びっくりしました」

2分ほどの感想戦で、ハッシー「そっか 詰めろ、気がつかなかった でもちょっと負けてるかなあ
 あの流れでよく飛車回りを いやー そうかー こんな詰みがあるんじゃあ・・・ 参りましたね」
  
ハッシーも脱帽、中田の最後の飛車回り、あれで詰めろを仕掛けていたのは、見事の一言に尽きる、
ベテラン健在、まさにプロ中のプロの芸! 
30秒の中であれが指せた中田、あの瞬間の中田は、将棋の神に並んだ! すごかった!   
大拍手! スタンディングオベーションだ パチパチパチパチ 
ハッシーも負けたけど、もう仕方ないわ 力は出していた 
ただ、序盤での、銀がぐるっと一回りしたのはどうだったか 誰もマネしないような(^^;

NHK杯、ひさしぶりの熱戦で、大満足だった 中田の飛車回りからの長手数詰め、素晴らしかった!!
人間どうしの勝負として充実していた 楽しかったじぇ、面白かったじぇ!
先日の7日、第3回電王戦の出場者の発表がありました 
(カッコの中は順位戦と竜王戦の組、連盟のHPの棋士紹介を参照)
佐藤紳哉六段(C2 2組)、菅井竜也五段(C1 5組)、森下卓九段(B2 2組)、
豊島将之七段(B1 2組)、屋敷伸之九段(A 2組)
この5人とのことです 超期待のホープ、将来の名人候補の豊島が出るのは意外でした
それと、ソフト側の出場では、激指が出ないんですってね なぜでしょうね

さて、残念ながら、私としては今度の電王戦、実は興味が持てないんです 
対局後に棋譜を見るだけになると思います

11月にコンピュータの代表5つが決まって、対局があるのが来年の3月~4月、
それまでの間、ソフトの貸与があり、当日と同じ仕様のソフトと棋士側はいくらでも練習できる、
ということで、私はめっきり興味がなくなりました 
これでは、対局当日の内容は、単なる「棋士による、ソフトのデバッグ作業の成果発表」に
なってしまうのでは、と思ってます 
PCのスペックも限定され、当日と同じソフトとの練習期間が存分にある以上、
今度はプロ棋士側は言い訳がききません 絶対に負けれません
それゆえ、各ソフトの欠点を突いた作戦ばかりをプロ棋士がやってしまう予感がします

第1回電王戦と、第2回電王戦で負けたせいで、第3回ではプロ側は「勝って当たり前」という勝負を
やらなければならなくなってしまった、というのが正直なところだと思います
アルバイターがやるような「デバッグ作業」を、何ヶ月もの間、
せっかくの選ばれた人たちであるプロ棋士が、本番一局のためだけに、やり続けるわけです
一つのソフトと延々指して、変なクセがついて、プロ棋士がむしろ弱くなってしまわないかと心配です 

「完全情報公開の運なしゲーム」、それはコンピュータが人間を追い抜いていく、
これが将棋というゲームの性質上の宿命で、昔からわかっていたことです
もうすでに「あから2010」、24でのbonkrasとponanzaの最高レート更新、
第2回電王戦の三浦vsGPSなどで、現在のコンピュータはめちゃめちゃ強いのがわかっています
そしてこれからもまだコンピュータは強くなっていくのです 

今、私が妄想しているのは、スーパーコンピュータ同士の対戦です
例えば「京」で動かすBonanzaと「セコイア」で動かすGPSとの対戦が実現したら
どうなっちゃうんだろう、指し手の意味をプロ棋士でも理解できるのだろうか、と・・・
渡辺明 三冠vs広瀬章人 七段 NHK杯2回戦
解説 佐藤天彦 七段

おお、今日は渡辺の登場か 広瀬も強いし、好カードだ (ちなみに渡辺29歳、広瀬26歳)

渡辺は2000年四段、竜王9連覇中 A級 棋王、王将の三冠 1回戦シード 本戦は12回目の出場
広瀬は2005年四段、竜王戦2組、B1 1回戦で瀬川に勝ち 本戦は7回目の出場

解説の天彦「渡辺は非常に合理的、現代将棋の礎(いしずえ)を作っている
 穴熊の堅さとか、攻めの技術をどんどん進化させていっている 現代将棋を引っ張る存在
 広瀬は僕よりちょっと年上だが同世代で、この世代の中では唯一のタイトル経験者で若手トップクラス
 お互いに実戦的で勝ちやすい棋風」

事前のインタビュー
渡辺「広瀬はタイトルを獲ったこともあって、有望な若手なんで、初戦からイヤな相手を引いて
 しまったなと思ったんですけども 広瀬は居、振り、両方やるので戦型は相手まかせ
 昨年は優勝させてもらったので、まあまた今年も、と思ってます 大変な相手ですけどがんばります」

広瀬「渡辺はタイトルを長年保持していて、さらに2つ奪取、昨年はNHK杯優勝、充実期に入っている
 数年前にNHK杯の同じ2回戦で対戦して負けてしまったので、雪辱に燃えている
 内容にも結果にもこだわりたい」

2人の対戦成績は、渡辺5勝、広瀬3勝とのこと

渡辺のインタビューを聞いていた天彦が、気になる発言をした
天彦「渡辺は今日ちょっと、体調が悪いかなと見える いつもと比べると元気がないかな
 今日は正念場なんじゃないか」 天彦と渡辺はよく知った仲だ
その天彦が「渡辺の体調が悪いように見える」と言った 今日の渡辺は大丈夫だろうか?

先手渡辺で、広瀬が角道を止めて四間に振り、相穴熊に進んだ 相穴か この2人ならこうなるところか 
どちらかと言えば広瀬の土俵だが、渡辺も当然想定していただろう
天彦「この戦型を期待していた方も多いんじゃないでしょうか 
 相穴で、見たいカードのナンバーワンじゃないでしょうか」

渡辺の4枚穴熊が完成したが、広瀬は迷いなく仕掛けた 
広瀬の金2枚はまだ6筋に居るが、これが広瀬流か
天彦「囲いは渡辺のほうが堅いが、広瀬の側は5筋に、と金が作りやすい」
渡辺も応戦し、すぐさま中盤へ突入した 

天彦「広瀬の穴熊は、固めるだけじゃなくて、バランスを取りながら、さばきを優先したり、
 と金作りを優先したり、理論立ててシステム化している そして、フワっとした大駒の使い方がうまい」

天彦「僕も渡辺と同じ居飛車党で、居飛車党ならではの愚痴を言い合うんですけど、
 今はすごくどの戦型でも研究が進んでいて、矢倉、角換わり、横歩取りといった戦型は、
 詰みまで研究されていることまでありますけど、どうしてもそっちのほうに重点がいってしまう
 そこにいきなり振り穴がくると困る(笑)」

さて、局面、広瀬が香得して受けに回っている 馬を自陣に引いて、手厚そうだ
天彦「広瀬としては駒得なので、考えがいがある局面 ここを何とかすれば有利になる」
渡辺、やや苦しいか? しかし、じっと歩を垂らして相手のミスを待つ、という手を指した 
うん、さすがだ だが、広瀬も離れていた銀をじっと引き、渡辺に手を渡した 
うわ、こういうの、やられたら困るなー さすがプロ同士の応酬だ

天彦「渡辺は歩切れなので、ちょっと広瀬持ちかな」
ちょっと、と言うが、渡辺は歩が0枚、広瀬は5枚、これはかなり大きそうだ 

渡辺のほうに、具体的に指したい手が見当たらない これはピンチなのでは?
ついに渡辺の守りの銀が、桂でアタックをかけられた
天彦「ここは広瀬のほうがうまく指している 渡辺としては難しい局面」
考慮時間の残りも、▲渡辺0回vs△広瀬2回になってしまった 
渡辺、ここから30秒将棋、これは苦しい!

渡辺は攻め合いに賭けたが、広瀬に無視されてしまった
天彦が解説で、歩を使った、穴熊崩しの具体的な手順を示している
天彦「(こういう風に)要領良く攻められたら、一瞬で(崩壊する)ということになりかねないので」
矢内「今の歩の使い方はすごい、いいですね!」
天彦「ありがとうございます(笑)」

広瀬は天彦の指摘した筋で居飛穴を崩し、そして馬をドッカーンと切って、一気に決めにきた!!
天彦「厳しい情勢になってきましたね」
こ、これは強烈 もう全然ダメじゃん? もうこれ、粘りようがない
ええー どうしたの、今日の竜王は?? まだ何も「これが竜王の手だ」という手を指していない

広瀬の振り穴はほぼ手付かず、渡辺の居飛穴だけ完全に崩壊、大差がつき、渡辺が投了!
98手で広瀬の圧勝! えええーーー 渡辺が負けちゃったー しかも相当なボロ負け
番組開始から1時間9分、時間もずいぶん余った、早い終局・・・

天彦「広瀬の、リードを拡大する技術が際立った 最後は見ている方が『これだよ、これ』っていう
 気持ちよくなる決め方で、広瀬の会心譜だった」
矢内「渡辺としては不完全燃焼でしたね」
天彦「渡辺と言えど、こういうこともあるかな、と納得していただきたい(^^;」

15分ほどあった感想戦では、渡辺は10分間ほどやった時点で、早々に
渡辺「はぁー、いや ありがとうございましたー」と言って頭を下げた 
はい、もう感想戦終わり、と言いたげだった
完敗で全然ダメ、今日はもう切り上げて、早く帰りたいといった様子だった 

対局前に、天彦が「今日の渡辺は体調が悪そう」と言っていた心配が、ズバリ的中した
感想戦での渡辺は鼻声で、おそらく風邪を引いていたのだろう 広瀬も鼻声だが、これはいつものことだ
この日の渡辺は体調が悪かったのだろう、それがモロに内容と感想戦で表れていた 

こんなアッサリ負ける渡辺は私は初めて見た あー、これは見ている側としては残念・・・
たしかに広瀬は強かったが、渡辺の力はこんなものではないはずだ 
前回優勝、そして三冠の渡辺が、その実力を発揮することなく、2回戦で消えた 
将棋を指すにも、人間、まずは体調が大事だな、と思った一局だった 

<お知らせ> 明日の7日、ニコニコ動画で15時から第3回電王戦の棋士の出場者発表があります