この前の日曜のNHK杯の記事で、私はこう書きました
「渡辺(30歳)以降の世代、強いのがゴロゴロいる、と言っても、実際にここ10年で渡辺より年下でタイトル戦にからんだのは、広瀬(27歳)と中村太地(26歳)と糸谷(25歳)と豊島(24歳)、この4人だけ」
これを書いて、この10年、タイトル戦に出た棋士って、いったいどういう顔ぶれなんだろう?と知りたくなりました そこで、自分で調べてまとめました この記事1つに相当な時間がかかってます(笑)

2005年度から2014年度の10年間の7つのタイトル戦に出場した回数、獲得数(タイトル戦で防衛または奪取した数)、そして棋戦優勝者を集計してみました

参考にしたHPはこちら↓ 棋譜まで見れて、すばらしいページですね 大変感謝しております(^^)
http://shogititle.nobody.jp/index.html 
(色分けされた図でひと目で見たい人は、このページの右上の「変遷」を押すのがお勧め ただし、「変遷」の図からは挑戦者まではわかりません)

10年前の2004年度というのはプロ棋界にとって歴史的な転換点で、渡辺が初の竜王を獲得し、そして谷川が二冠を失い無冠になった年度でした そこから現在までの10年間、プロ棋界はどういう人が活躍してきたのでしょうか?

・7つのタイトル×10年で、タイトル戦の合計回数は70期
・現在進行中の竜王戦、森内vs糸谷の結果が含まれていないため、下記の実際の合計は69期になっています
・王将戦と棋王戦は、年初めにタイトル戦が行われることから、まだ2014年度の挑戦者が決まっていません そのため、この2つのタイトル戦は、1年分繰り下げて2004年度から2013年度までの10年間の結果を集計しました
・NHK杯、朝日杯、日本シリーズもまだ2014年度の結果が出ていないので、同様に1年分繰り下げて集計しました
・大和証券ネット将棋最強戦は創設の2007年度から終了の2012年度までの記録を参照しています
・達人戦は非公式戦で、出場人数も非常に少ないことから集計していません 
・タイトルの後ろの(カッコ)の中の数字は、最後にそのタイトル戦を戦った年度です(たとえ防衛失敗、あるいは奪取失敗でも)
・年齢は将棋世界11月号に準拠
・タイトルホルダー以下は、年齢順に並べました
・あくまで、ここ最近10年間を調査するのが目的の記事です (例えば、渡辺のここ10年の竜王戦は登場が9回、獲得8期となっていますが、渡辺の通算での竜王戦は登場10回、獲得9期です)


羽生善治 名人・王位・王座・棋聖 44歳
名人 8回 4期 (2014)
竜王 2回 0期 (2010)
王将 7回 5期 (2013)
棋聖 8回 7期 (2014)
王座 10回 9期 (2014)
王位 8回 6期 (2014)
棋王 3回 1期 (2007)
ここ10年で登場46回 獲得32期 棋戦優勝はNHK杯4回、朝日杯6回(防衛戦の3回を含む)、銀河戦2回、日本シリーズ2回の14回 (年度省略)
タイトル戦の通算登場119回 通算獲得90期 通算棋戦優勝は42回
永世名人・永世王位・名誉王座・永世棋王・永世棋聖・永世王将・名誉NHK杯選手権者 A級以上は連続22期目

10年間でタイトル戦全70回の内、登場46回ということは、タイトル戦を3回やったら、ほぼ2回は羽生が出ている計算! 10年間のタイトル全70期の内、獲得32期ということは、半分近くを羽生が取っている計算! どんだけタイトル取ったら気が済むねん!!(笑) 王座戦なんて、10年間で10回全部出てる! 名人、棋聖、王位も8回ずつ出てる・・・
棋戦優勝でも、NHK杯の4年連続優勝は強烈なインパクトだった あらためて、すごすぎる人


森内俊之 竜王 43歳
名人 8回 6期 (2014)
竜王 3回 1期 (2014)
王将 1回 0期 (2004)
棋聖 1回 0期 (2014)
棋王 2回 1期 (2006)
ここ10年で登場15回 獲得8期 棋戦優勝はなし
タイトル戦の通算登場24回 通算獲得12期 通算棋戦優勝は12回 
18世永世名人の資格保持者 A級以上は連続20期目

ここ10年での名人戦は登場回数8回、獲得6期と半端ない ただ、それ以外のタイトル戦はそれほどでもない 羽生と比べてしまうからか(^^; 竜王位は現在、糸谷との防衛戦の最中 虎の子の竜王、防衛なるか ここ10年で棋戦優勝が一度もないのは、かなり意外


渡辺明 棋王・王将 30歳
竜王 9回 8期 (2013)
王将 2回 2期 (2013)
棋聖 2回 0期 (2013)
王座 2回 1期 (2012)
棋王 3回 2期 (2013)    
ここ10年で登場18回 獲得13期 棋戦優勝はNHK杯1回、朝日杯1回、銀河戦4回、最強戦1回、新人王1回の8回 (年度省略) 
タイトル戦の通算登場20回 通算獲得14期 通算棋戦優勝8回
棋界ただ一人の永世竜王の資格保持者 A級は連続5期目

2004年度から続いていた竜王位は連続9期で途絶えたものの、棋王と王将を獲得してスターの座は揺るぎない 棋戦優勝も銀河戦の4回など、実に立派 ここ10年の森内のタイトル獲得が8期なのに対し、渡辺は13期 羽生に次いでナンバー2であることが明白に分かる 
最近の自著「渡辺明の思考」では「(将来)会長はやらないで済むならやりたくありません。理由はそのほうが楽だからです。」と書いているが、やはり将来の会長は渡辺しかいない気がする(^^;


谷川浩司 九段 52歳
名人 1回 0期 (2006)
棋王 1回 0期 (2004)
ここ10年で登場2回 獲得なし 棋戦優勝は2009年度の日本シリーズの1回(達人戦は非公式戦)
タイトル戦の通算登場57期 通算獲得27期 通算棋戦優勝22回 
17世永世名人の資格保持者 A級以上は通算32期

タニーは2004年度に王位と棋王を羽生に奪われて失冠して以来、タイトルを取っていない (王位は2014年度のタイトル戦がもう終わったため、2005年度から集計開始するので、上記に2004年度が入らなかった 棋王は2014年度のタイトル戦がまだ始まっていないため、2004年度のタニーの成績がギリギリ10年前の出来事として上記に食い込んだ(^^; )
タイトル戦に出たのも2006年度の名人戦が最後 2012年12月に、会長に就任した 2013年度のA級順位戦で陥落、連続32期守り続けたA級在籍記録が途絶えた 現在はB1で1勝4敗と苦戦中 
まだ見かけは全然老け込んでいないし、まだまだプレーヤーとして活躍して欲しいけど、いかんせん、ここ10年の実績の落ちようはいかんともしがたい・・・ がんばれ、タニー!


佐藤康光 九段 45歳
竜王 2回 0期 (2007)
王将 4回 1期 (2012)
棋聖 4回 3期 (2008)
王座 2回 0期 (2006)
王位 2回 0期 (2006)
棋王 4回 2期 (2009)
ここ10年で登場18回 獲得6期 棋戦優勝はNHK杯2回、銀河戦2回、日本シリーズ2回、最強戦1回の7回 (年度省略)
タイトル戦の通算登場37回 通算獲得13期 通算棋戦優勝11回
永世棋聖の資格保持者 A級以上は通算18期目

2007年度には棋聖と棋王の二冠だった 翌年度、両方を失冠 再びタイトルを取ったのは2011年度の王将 2010年度以降で見ると、タイトル戦出場は王将戦の2回のみ、獲得1期という寂しい成績だ 康光本来の実力からすれば、パッとしないのではないか 順位戦では2009年度にA級からまさかの降級を経験したが、1期ですぐA級に復帰している 康光の序盤は観ていてとにかく楽しいので、活躍を期待したい 


丸山忠久 九段 44歳
竜王 2回 0期 (2012)
ここ10年で登場2回 獲得なし 棋戦優勝は2005年度のNHK杯の1回
タイトル戦の通算登場9回 通算獲得3期 通算棋戦優勝は12回 A級以上は通算12期

2011年度と2012年度、連続して渡辺竜王に挑戦したが、跳ね返された 丸山が名人を持っていたのは相当前、2000年度と2001年度 他に2002年度に棋王を取っている ここ10年で棋戦優勝も1回のみで、それもかなり前になってしまっている 2011年度の順位戦でB1に落ちたので、A級に戻りたいところだろう


藤井猛 九段 44歳
王座 1回 0期 (2010)
王位 1回 0期 (2012)
ここ10年で登場2回 獲得なし 棋戦優勝は2005年度の日本シリーズの1回
タイトル戦の通算登場7回 通算獲得3期 通算棋戦優勝は7回 A級は通算10期

藤井が竜王を持っていたのは、1998~2000年度の3期 2010年度の王座戦は羽生に3連敗、2012年度の王位戦ではやはり羽生に1勝4敗で敗退している 
この人にはタイトル挑戦というより、新戦法の開発を期待(^^; 2010年度までは10期連続でA級だったものの、2年連続降級してB2にまで落ちてしまった しかし1期でB1に戻り、ファンを一安心させた この人が活躍すれば棋界は沸くが、羽生の壁が・・・  


郷田真隆 九段 43歳
名人 2回 0期 (2009)
棋王 2回 1期 (2012)
ここ10年で登場4回 獲得1期 棋戦優勝は2013年度のNHK杯、2007年度の最強戦の2回
タイトル戦の通算登場15回 通算獲得4期 通算棋戦優勝7回 A級は通算12期目

郷田の実力からしてみれば、ここ10年でタイトル獲得が2011年度の棋王1期だけというのはかなり不出来だろう 郷田がその前にタイトルを取ったのは、2001年度の棋聖にまでさかのぼる 翌年康光にその棋聖を奪われ、10年後にようやく久保から棋王のタイトルを取った 一つ取るのもホントに大変だな~(^^; 順位戦は安定しており、現在10期連続でA級だ ただ、昨年度は3勝6敗で屋敷と同星ながら順位の差で郷田はセーフ、ちょっと危なかった


深浦康市 九段 42歳
王将 1回 0期 (2008)
棋聖 2回 0期 (2011)
王位 4回 3期 (2010)
ここ10年で登場7回 獲得3期 棋戦優勝はなし
タイトル戦の通算登場8回 通算獲得3期 通算棋戦優勝8回 A級は通算6期目

深浦は2007年度と2008年度の王位戦の7番勝負、羽生を相手に2年連続のフルセットでタイトルを奪取、防衛に成功している さらに翌年、木村を相手に3連敗後の4連勝で防衛した  
また、深浦と言えば、A級への執念だ A級に昇るも、1期で落ちること3度、そのうち2度は4勝5敗の成績だった 2011年度の順位戦で4度目のA級昇級を決め、現在もA級 これは実に見事だ まさに根性の人と言える


木村一基 八段 41歳
竜王 1回 0期 (2005)
棋聖 1回 0期 (2009)
王座 1回 0期 (2008)
王位 2回 0期 (2014)
ここ10年で登場5回 獲得なし (通算でも同じ) 
棋戦優勝は2010年度の朝日杯の1回 通算棋戦優勝は2回 A級は通算4期

23歳でプロ四段、34歳でA級まで昇った晩成型と言える人 2010年度にA級から落ち、今はB1 解説が非常にうまいが、終盤の読みで精度が落ちてくる タイトルに挑戦するけど、どうも取れる感じが・・・(^^; 


行方尚史 八段 40歳
王位 1回 0期 (2013)
ここ10年で登場1回 獲得なし (通算も同じ)
棋戦優勝は2007年度の朝日杯の1回 通算棋戦優勝は2回 A級は通算3期目

去年、念願のタイトル戦初登場するも、羽生に1勝4敗で敗れた しかし、最近結婚したせいか調子が良く、2012年度はB1で11勝1敗で昇級、昨年度はA級で6勝3敗、今やA級2位の地位まで登りつめた


三浦弘行 九段 40歳
名人 1回 0期 (2010)
棋王 1回 0期 (2013)
ここ10年で登場2回 獲得なし 棋戦優勝はなし
タイトル戦の通算登場5回 通算獲得1期 通算棋戦優勝は2回 A級は連続14期目

2013年度の棋王戦では、渡辺に挑むも3連敗で跳ね返された 三浦は意外や意外、通算獲得が1996年度の棋聖1期のみ あの例の羽生の七冠を崩した棋聖の1期だけ・・・ A級在位は連続14期の実績を持つ安定棋士なんだけどなあ


鈴木大介 八段 40歳
棋聖 1回 0期 (2006)
ここ10年で登場1回 獲得なし 棋戦優勝はなし
タイトル戦の通算登場2回 通算獲得なし 通算棋戦優勝は2回 A級は通算4期

2006年度の棋聖戦では康光に3連敗している 2008年度にはA級に復帰して戦うが、1期で降級
昨年度はB1で2勝10敗という成績で降級してしまった しかし現在B2で4勝1敗、順位1位なので今期は昇級のチャンスだ 久保、藤井と並んで振り飛車御三家と呼ばれるが、ここから踏ん張れるか


久保利明 九段 39歳
王将 4回 2期 (2011)
王座 1回 0期 (2007)
棋王 4回 3期 (2011)
ここ10年で登場9回 獲得5期 棋戦優勝は2012年度と2013年度の日本シリーズ、2010年度の最強戦の3回
タイトル戦の通算登場11回 通算獲得5期 通算棋戦優勝5回 A級は通算9期目

ここ10年でタイトル獲得5期は立派だ タイトル戦で久保が勝った相手は、羽生、渡辺、康光が2度、豊島という顔ぶれ 純粋振り飛車党で一時は二冠、これは世の振り飛車党のファンは喜んだだろう 振り飛車党は今プロ間では少数派で貴重な存在、ぜひ久保にはがんばって欲しいと思う 順位戦では、2007年度にA級から陥落したが2期で復帰、2011年度にまたA級から陥落したが、1期でまたA級に復帰した A級の座はしっかり堅持してもらいたい 今や振り飛車ファンの頼みの綱という存在だ


山崎隆之 八段 33歳
王座 1回 0期 (2009)
ここ10年で登場1回 獲得なし (通算も同じ) 棋戦優勝は2004年度のNHK杯、2009年度の最強戦の2回 通算棋戦優勝は5回

2009年度の王座戦では、羽生に3連敗している 
昔は渡辺と比較され、東の魔王、西の王子とか呼ばれていたっけ この10年でメチャクチャ差が開いたなー(^^; NHK杯で優勝したのも、もう10年前か・・・ 
順位戦はB1で今年で7年目、今期は現在6勝1敗の好成績、初のA級昇級の大チャンス! ぜひモノにしてもらいたい


広瀬章人 八段 27歳
王位 2回 1期 (2011)
ここ10年で登場2回 獲得1期 (通算も同じ) 棋戦優勝は2009年度の新人王の1回 通算棋戦優勝もその1回のみ A級は通算1期目

2010年度、深浦から4勝2敗で王位を奪取した 渡辺より下の年齢で、タイトルを取った唯一の事例だ しかし、その翌年は羽生にフルセットの末、タイトルを取られ防衛はならなかった 順位戦ではここ4年間で3度昇級、今年度からA級棋士になった 現在3勝1敗となかなかの成績だ これからも活躍が期待される 今は色々な戦法に挑戦しているようだが、振り飛車穴熊をまた採用するようになって欲しい  


中村太地 六段 26歳
棋聖 1回 0期 (2012)
王座 1回 0期 (2013)
ここ10年で登場2回 獲得なし (通算も同じ) 棋戦優勝はなし 通算棋戦優勝もなし

2012年度の棋聖戦では、羽生に3連敗で敗退 2013年度の王座戦では羽生を2勝1敗まで追い詰め、初タイトルまであと1勝としたが、羽生に底力を出されて2勝3敗のフルセットで敗退している この王座戦シリーズは名勝負として知られていて、第4局の千日手指し直し局は2013年度の名局賞を受賞している
現在C1に在籍だが、昨年度の順位戦の最終局、菅井に負けて8勝2敗となり、頭ハネで昇級を逃してしまった 確かな実力を持つ大器であることは誰もが認めるところ これからの活躍に期待だ


糸谷哲郎 七段 25歳  
竜王 1回 0期 (2014)
竜王戦でタイトル戦初登場 今戦っている最中 棋戦優勝は2006年度の新人王の1回 通算棋戦優勝もその1回のみ

「怪物糸谷」がようやくタイトル戦に登場した 竜王戦の挑戦者決定戦で羽生を2勝1敗で破っての森内竜王への挑戦だ 現在行われていて、初戦は糸谷の勝ち 糸谷が初タイトル奪取なるか、大注目だ
順位戦では過去4年間に2度昇級、今期は現在B2で5勝1敗と好位置をキープ 連続昇級を狙っているだろう 
全棋士参加棋戦での優勝はないが、NHK杯での2009年度と2010年度の準優勝連続2回は記憶に新しいところだ


豊島将之 七段 24歳
王将 1回 0期 (2010)
王座 1回 0期 (2014)
ここ10年で登場2回 獲得なし (通算も同じ) 棋戦優勝はなし 通算棋戦優勝もなし

2010年度の王将戦は、久保に2勝4敗で敗退した 先日まで行われていた2014年度の王座戦は、羽生を相手に2連敗からフルセットまでもつれ込んだが、2勝3敗で敗退した ああー、惜しかった・・・ 
順位戦では、ここ5年間で3度の昇級をしていて、現在B1の2年目 昨年度はB1で9勝3敗の好成績ながら、惜しくも順位の差の頭ハネでA級昇級を逃した 今期は現在3勝3敗と昇級はやや苦しい成績
意外なことに、豊島は棋戦優勝がない 新人王すら取っていない 
将来のタイトルは確実、名人候補なので、強くあって欲しい 羽生世代と渡辺に互角に戦えるのは、やはり豊島だろう!


上記以外の、ここ10年の棋戦優勝者 日本シリーズと最強戦と全棋士参加の棋戦
(カッコ)の数字は年度です
森下卓 九段 48歳 日本シリーズ(2007、2008)
阿久津主税 七段 32歳 朝日杯(2008) 銀河戦(2009)
稲葉陽 七段 26歳 銀河戦(2013)
菅井竜也 五段 22歳 最強戦(2011)

上記以外の、ここ10年の棋戦優勝者 若手だけの棋戦
(カッコ)の数字は年度です 加古川青流戦は2011年度から創設 まだ2014年度は優勝が決まっていません
村山慈明 七段 30歳 新人王戦(2007)
船江恒平 五段 27歳 加古川青流戦(2011)
佐藤天彦 七段 26歳 新人王(2008、2011)
阿部健治郎 五段 25歳 新人王(2010)
都成竜馬 奨励会三段 24歳 新人王(2013)
永瀬拓矢 六段 22歳 新人王(2012) 加古川青流戦(2012)
佐々木勇気 五段 20歳 加古川青流戦(2013)
阿部光瑠 四段 19歳 新人王(2014)
 
<総評>
3回タイトル戦をやったら2回は羽生が出ている、という衝撃 そしてタイトル70期の約半分の32期を羽生が取っているという事実 羽生だらけで、もう口がポカーンとなる(^^;
この10年間でタイトル戦に出場したのは合計19人、その7つのタイトル戦の140個の席の内、羽生が46回、森内が15回、渡辺が18回、康光が18回、この4人で合計97席を占めている・・・ この4人の占有率69パーセント・・・ おおおーーい! この4人ばっかりやんけ!
その後には久保9回、深浦7回、木村5回、郷田4回と続く 他の11人は全員出場2回以下
あとは、屋敷の名前が全く出てこないのが意外だった

この10年で20代以下でタイトルを取ったのは、渡辺と広瀬のみ 広瀬は王位1期だけだし、これではかなり寂しい・・・ 
それと、2006年度の谷川の名人挑戦以降、羽生世代より年上のベテランがタイトル戦に全く登場しないというのも、また違う意味で寂しい・・・ 羽生世代より年上のベテランのタイトルホルダーを望むのは、もう絶望的か(^^;

とにかく、羽生世代と渡辺以外、もう少しがんばって活躍してくれ!というのが私の叫びですね
羽生はもちろん強くていいんだけど、もっと色んな人にもスポットライトが当たって欲しいのですよ 今月の将棋世界11月号の糸谷のインタビュー記事なんか、面白かったですからね 同じ人ばっかり出ると、やはり似たようなインタビュー記事にならざるを得ないでしょうからね 
とにかく、羽生の圧倒的な強さがデータで出ていたと思います もっと他の人もがんばれ~ 以上です!
香川女流王将への挑戦者を決めるトーナメント、準決勝まで来た 上田vs甲斐、清水vs矢内の顔ぶれだ
今回は上田さんと甲斐さん、実力者どうしの一戦だ 解説は田村七段、聞き手は井道女流初段

上田は通算183勝114敗 0.616 1回戦で渡部女流初段、2回戦で室田女流初段に勝っている
1回戦のvs渡部は相穴熊の151手の大熱戦、2回戦のvs室田も手に汗握る139手の大激戦のギリギリの勝負だった
解説の田村「上田は振り飛車穴熊を得意としているイメージですけど、相手が振り飛車党だと居飛車を指すことがある 終盤の受けがすごい独特」

甲斐は通算209勝117敗 0.641 1回戦で岩根女流二段、2回戦で松尾女流初段にどちらも相振りで勝っている
1回戦のvs岩根は圧勝、2回戦のvs松尾は終始丁寧な指し回しで快勝している
田村「甲斐は基本は振り飛車党ですけど、居飛車も指す とにかく終盤が強い 手が見える」

2人の対戦成績は、上田7勝、甲斐9勝とのことで、拮抗している

雑談で、田村「私は女流の研究会に一度参加させてもらって甲斐と指したら、序盤が全然手ごたえがないから、おかしいなと思っていたら、終盤にすごい足で追い込まれて、いきなり負けてしまいました(笑)」
うむ、甲斐はあの深浦にも公式戦で勝ったのだからね(去年の第55期王位戦予選2回戦 持ち時間各4時間 切れたら1分)

さて、先手上田で居飛車、後手甲斐のゴキゲン中飛車だ 
上田はさっそく▲5八金右から、超急戦を挑んだ! 2回戦のvs室田のときも、この指し方をしていた 上田、この研究に自信があるのだろう すごいことだ 甲斐はどうする・・・と観ていると、やはり超急戦は避け、穏やかな順を選択した まあそうだろう 怖いもんね~(^^;

上田の▲居飛穴vs甲斐の△本美濃 お互いに囲い合い、持久戦だ さすがに準決勝、なんか独特の緊張感がある 駒組みだけなんだけど、両者強いのが画面の空気の重さから伝わってくるのだ
田村「駒組みとしては、上田が一本取りました」

上田から仕掛け、細かい戦いが続く まだまだ中盤に入ってすぐのところで、両者25分を使いきり、この後は40秒将棋だ
田村「これ一手一手、難しいなあ 局面は気持ち上田がリードだが、甲斐のほうは指す手が簡単 実戦的にはいい勝負」

ホント、かなりの緊張感がある お互い、ほぼミスなく指している 田村の指摘どおりの手が続く やっぱ2人とも強いな~ 中盤、上田に好着想の手が出た 一手前に動かした角を引いて、相手の角に当てるという、柔軟な発想! これには田村も手放しで勝算した
田村「なかなか見えない手ですね 浮かばないですよ もしかしたら、ものすごい良い手」
上田、すげーな そして甲斐もそれに対応している 見ごたえある!

上田に手が広いところだったが、上田は持ち駒の歩を使って、執拗に攻め立てた それを甲斐が若干の受け間違い・・・ 攻め込む上田の手つきがしなった
田村「上田の手つきに力強さがありましたね」
しかし、甲斐もまだがんばっている 
田村「甲斐もさすがだなー」

そして、本局一番のクライマックスを迎えた 双方の大駒2枚ずつが向かい合っての、アクロバティックな攻防! 大駒4枚が交錯、ここは魅せた! なかなか作ったってこういう局面にはならないぞ 上田が飛車をぶつけたところで、田村も興奮、
田村「おー やったー!」
ここはホントに観戦者冥利に尽きる面白い局面だった ここが、甲斐の最大のチャンスだったと思う 甲斐は飛車交換に応じたが、これが痛恨の選択ミス! ここは居飛穴を薄くする勝負手を指さなければいけなかった

その後は徐々に上田がリードを広げた 上田は秒読みの中、全くミスする気配がないのはすごい! 甲斐もがんばったが、上田に居飛穴を再構築する手を指されて、困った
田村「いや~ 堅いですね~ また金銀4枚の穴熊」
これ、終盤になって、また穴熊を作り直す金銀の埋めなおし、こういうの、反則じゃない?(^^; そう思えてしまった(笑)

上田はさらに鬼と化し、遠く角を敵陣に打ち込んで、それを馬にして穴熊に引っ張ってこようとする、激辛流! ぐわーこれは友達をなくす手だー(^^; 
田村「これは甲斐はシビレました 指しようがない」

上田はキッチリと手数計算で一手勝ちを読みきり、確実に甲斐玉を仕留めた 127手で上田の勝ち
ふう~、長かった・・・ もっとやってる感じがした 150手くらいに感じた 両者力を出した好勝負だったなあ

田村「ずっと上田が良さそうだったが、甲斐がうまく受けた しかし上田はまたうまく手を作って、大熱戦だった 上田はこの内容を見る限り、早指しも得意そう」

これは好局だった なんか、盤上に緊張感が張り詰めていて、空気が今期の今までの女流王将戦とは違っていた お互いに強い者どうしだと、こういうピリピリした空気になる、いいねいいねー!
 
上田は最初の作戦の▲5八金右の超急戦を挑んだこと、柔軟な角の使い方で賞賛されていたこと、特に大きなミスがなかったこと、最後の激辛流、どれを取っても実に強い! 40秒の秒読みで、これだけの内容、お見事だった
甲斐としては、あの大駒4枚が交錯した局面での判断ミス、あれが痛かったなー あの瞬間は穴熊を一気に崩すチャンスだったはずなのだけど、逃してしまったね ただ、随所に力を見せていて、強かったけどね   
 
上田としては今持っている力を全て発揮でき、満足な一局ではなかったか 上田が本領を発揮して、実力者の甲斐二冠に力勝ち、という一局だった 
昨日のTV番組、ETV特集の電王戦の感想から
よくまとまっていて、1時間があっという間だった でも、私は知っていることが9割くらい(^^; あまり知らない父は非常に面白かったようだ まともにニコニコ動画で観たら50時間以上かかるわけだからね 
棋士たちの控え室の様子が映ったのが、ああいうのが私の興味を引いた あと、森下九段とかがPCで練習将棋を指すときに、モニターの画面の将棋盤が小さいんだけど、もう少し大きく設定してあげたらどうなんだろう、と思った(^^;
【再放送】2014年11月1日(土)午前0時00分※金曜日深夜


三浦弘行 九段vs豊島将之 七段 NHK杯 2回戦
解説 木村一基 八段

清水さん、相変わらず、つけ毛をつけている 別に髪の毛の量に困っているわけじゃないと思うけど(^^;
解説は木村かあ この人は髪の毛の量に困っ(以下略)
今日は三浦vs豊島という好カード! 楽しみだなあ 
電王戦に出場した2人だ 三浦はGPSを相手に、約700台ものコンピュータ群と戦わされ、完敗だった ちょっとかわいそうな気もした 逆に豊島はYSSに完勝、対照的な結果だった 今日はどうなるかな 
あ、三浦、メガネをかけてる 近眼か? それとも老眼か? 三浦はまだ40歳、老眼は早いか 豊島は24歳、こっちは確実に近眼だ(^^;

三浦は1992年四段、竜王戦2組、A級 1回戦はシード 19回目の本戦出場
豊島は2007年四段、竜王戦1組、B1 1回戦で北浜に勝ち 6回目の本戦出場 1回戦の北浜戦では、北浜のゴキゲン中飛車に、▲5八金右の超急戦で挑み、終盤見事な玉さばきを見せてキッチリ勝ちきった一局だった

解説の木村「三浦は序盤、中盤、終盤、スキがない 終盤で特に力強い指し手が多い
豊島も序盤、中盤、終盤、スキがない 序盤の作戦が先後に関わらず意欲的」

事前のインタビュー
三浦「豊島七段は大器で、スキのない将棋で非常に手ごわい相手だと思っています 豊島七段にはだいぶひどい目に合っているので、そろそろがんばりたいと思っています」

豊島「三浦九段は序盤がとても詳しくて、中終盤は読みが深いという印象があります リラックスしていい将棋が指せるようにがんばりたいと思います」

聞いていた木村「三浦は、にこやかでしたけど気合いが入っていると感じました 豊島は受け応えもスキがないですね イジるところがありません(笑) お互いに居飛車党ですから、横歩取りになるか角換わりになるか、最新流行形が見れるんじゃないか」

先手三浦で対局開始 横歩取りの出だしに進んだが、双方ムチャクチャ手が早い ネット将棋かと思える(^^;
三浦は横歩を取らず、▲1六歩と変化した 豊島が横歩を取り、先後の立場が普通と逆の、後手が横歩を取る将棋になった 
木村「横歩は取っても取られてもいい勝負なので、取る一手を端に使ったらどうかというのが三浦の主張」

2人の対戦成績が出た 三浦0勝、豊島5勝とのこと 
木村「大変意外な成績 三浦のほうは気にしているはず」
そうだね、さっきのインタビューで三浦は「豊島七段には、だいぶひどい目に合っている」と言っていたもんね(^^;
なお、直近の2戦は銀河戦だ 去年の銀河戦は先手三浦の横歩取りで持久戦になり、終盤ギリギリの戦いを豊島が制している これは白熱の名勝負だった 今年の銀河戦は先手三浦の矢倉に豊島が急戦矢倉で、三浦の猛攻を豊島が完全に見切って受けきり勝ち、これは豊島が圧巻の強さで完勝という内容だった 三浦としてはどちらの負け方も悔しかっただろう 

駒組みの最中の雑談で、清水「三浦と豊島は普段はどのような人ですか」
木村「三浦は将棋一本という感じがします 他に趣味があるのかって言っても、あんまりなさそう 昔から純粋、素朴な人柄は変わらないです 豊島は受け応えもしっかりしている 寡黙(かもく)だけど笑うときは笑う 話しかけたときに彼は視線をそらしませんね 誰しもが、将来必ずタイトルを取るであろう、と言ってます そう言われる人はなかなかいないです」

うーん、先日までやっていた王座戦は惜しかったなあ・・・ まあ、豊島ならまた挑戦すると思うけどね それと、A級にも上がって欲しい 今、B1で3勝3敗と上がるにはちょっと苦しい星だ ちなみに三浦は今、A級で1勝3敗だ

さて、お互いに中住まいに組み、仕掛けをうかがっている 1筋と9筋、両端のやりとりがどうなるか
木村「非常に難しい応酬です ちょっとしたことで満足していると、あっという間にだまされてしまう、それが横歩取りの特徴です」

三浦が9筋からいよいよ仕掛けた ん、これは端が破られてしまうのではないか? 単純に豊島がちょっと困ってるか?
木村「豊島は反撃したいところだが、すぐには手段がない」
清水「少し三浦がポイントを上げたんでしょうか」
木村「そのような感じですね」
んー、豊島、反撃なるか! がんばれ豊島~  

そのときだった 豊島が放った一着、△9六歩という手が盤上の空気を変える手となった
木村「いい勝負手ですね こういう手は読みにくいです 三浦は『何だこれは』っていう顔をしてるように見えません?」
ちょうど画面に三浦の顔がアップで映し出された 口を開いたまま、ポカーンとしている(^^; モロに「何コレ?」っていう表情だ そして三浦は小さく「いや~」とつぶやいた こりゃ、△9六歩が意表を突いたのは確実だ

三浦、△9六歩の狙いを消すべく角をバチッと音を立てて打ったが、豊島にノータイムで角を合わされて、それを取らざるを得ず、豊島にゼロ手で歩を伸ばされてしまった 明らかな手損だ そしてまた考慮時間を使った三浦 
木村「この取り引きは三浦が損をしましたね △9六歩は手裏剣の歩でしたね 読み筋にない手を指されると動揺しちゃいますよね」

局面、進んだが、豊島の△9六歩が、と金になって三浦陣を荒らしている 豊島がだいぶ良さそうだ
三浦、A級棋士の力はこんなもんじゃないはず、まだがんばれ、と思って観ていると、三浦は取られる寸前の桂を跳ねて勝負!
木村「なるほど、この桂跳ねは好手じゃないですか」
しかし、直後に豊島もお返し、とばかりに桂跳ね! これがなんと、詰めろ! うわー これは厳しそう・・・

三浦は仕方なく詰めろを受けたが、なんと豊島に馬で金取り桂取りの両取りをモロにかけられてしまった あああーー これは技ありどころか、一本級・・・ 
木村「三浦は辛抱の時間です 豊島がリードしている」
考慮時間の残りは、三浦▲0回vs豊島△3回 辛抱と言っても、局面は駒割りが豊島の銀香の丸得だ おまけに、駒の働きも豊島のほうがだいぶいい 三浦としては主張点が何もない これは、もう三浦は指す手がないのでは? 投了か・・・ と思ったら、ホントに投了した!

三浦「負けました」 68手という短手数で豊島の勝ち ああー、大差がついちゃったか・・・

木村「投了の時間としてはだいぶ早い感じがするんですが、三浦の方から見て有効な攻めがないんです 投了は仕方ないという感じがします 序盤の三浦の作戦は、むしろ先手持ちかという感じがしました ただ△9六歩と豊島が手裏剣を放った、あれがけっこううるさかった それを打たせたのが三浦としてはどうだったか △9六歩から急に豊島がペースを握りました あの後、ごちょごちょしている間に三浦の攻め駒を取り切ってしまいましたね △9六歩が流れを変えた妙手でした 豊島の勢いのあるいい手が見れました」
 
早く終局したので、25分も感想戦の時間があった(^^;
豊島は、三浦の9筋の仕掛けに対してのところ「ちょっとこっちが困ってるかと思ったですね」
三浦は「△9六歩を打たせたのが悪かった バカだったな ちょっとコレ」と言っていた・・・

木村「△9六歩を打たさなければ、むしろ先手持ち」
三浦「しかし、それを言ってもしょうがないんで 相手は相手でまた違ったことをやったに決まってるんだから」
うむ、三浦は完敗を認めていた 潔い態度だったと思う

実は豊島はこの△9六歩の直前に△3六歩という、一見、意味のよくわからないパスのような手を指している それが三浦の疑問手を誘い、△9六歩の勝着につながったのだ △3六歩で三浦に手を渡した豊島の勝負術、まさに一流だな~

しかし、三浦はこれで対豊島戦、6戦全敗か・・・ A級棋士としてのプライドが・・・  
長い感想戦の最中、場の空気が、みんなが三浦を気遣う空気だったのが伝わってきた 68手、短手数で完敗で大差だったもんね 静まり返ってシーンとしてた(^^;

勝った豊島は、さすが将来の名人候補、それにふさわしい勝ちっぷりだった 良かったよ~ 期待どおりの強さを見せてくれた! この調子で、強くあり続けて欲しい!
渡辺(30歳)以降の世代、強いのがゴロゴロいる、と言っても、実際にここ10年で渡辺より年下でタイトル戦にからんだのは、広瀬(27歳)と中村太地(26歳)と糸谷(25歳)と豊島(24歳)、この4人だけだからね(年齢は現在のもの)
やっぱり少ない、さみしいと感じる 豊島、これからも若手代表として勝ちまくってくれ! 期待しているよ~!! 
最初に、再度告知です これは観る価値がありそうです
10月25日(土) ETV特集「棋士VS将棋ソフト 激闘5番勝負」(Eテレ23時~)
http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2014/1025.html
今年の春の第3回電王戦を振り返った1時間番組です 
これは面白そうです ぜひ今から録画しておきましょう!

王座戦最終戦第5局、豊島が羽生に負け、タイトル奪取ならず・・・ 終盤ずっと負けムードだったが、最後、一瞬盛り返すチャンスが来たようなのだが、それを活かせず、寄せられてしまった ああー 無念だ 羽生の四冠を崩せず ガクッ

あ、それから、熊坂五段が森内竜王に勝利、という衝撃的なニュースがありましたね うれしいですね!

そして女流王将戦も勝者が決まりましたね 私が毎週火曜に内容をお伝えしている棋戦です
まあ誰が勝ったか書きませんけどね 
色々なページを見てるうちに、私にも伝わってます 将棋関係の色んなブログなどをサーフィンしていては、結果バレは全然避けようがないです(^^; 

ところで女流王将戦に関して、阪田大吉さんのブログで、以下のような記述がありました↓
下記の記事に挑戦者と結果が書かれてありますが、銀河
将棋チャンネルで初めて結果を知りたい方は見ないで下さい。


あの~、「銀河将棋チャンネル」って何かな~ 「囲碁将棋チャンネル」の間違いかな~ これ、爆笑しました 囲碁将棋チャンネルの認知度って、この程度なのかと(爆) もう20年以上歴史があるチャンネルなんだけど、「銀河将棋チャンネル」って言われちゃうのか~ ふ~ん、そうなんだ~(爆) ・・・orz
(しかし、これが私の誤解であることが後に判明 記事の一番後ろに書いてます)

さて、気を取り直して(^^; 囲碁将棋チャンネルで放送されてる銀河戦、前期銀河戦は渡辺二冠の優勝で幕を閉じ、10月から第23期銀河戦が新たに始まっています
1回戦のアマチュア4名と女流2名の将棋の内容を書きたいと思います でも、全部を観たわけではありませんけどね

Aブロック1回戦 中島灯希アマvs村中秀史六段  これは全部観た
16歳の高校1年生、中島アマが村中に挑んだ ▲中島アマのノーマル三間+穴熊vs△村中の居飛穴
双方銀冠穴熊まで組んだガッチガチの持久戦となった 
この一局、村中は本気だった 中盤で村中は優位に立ってから、もう激辛の手を連発
何しろ終盤、自玉を金銀で埋めまくり、金銀6枚の銀冠穴熊を作り出していた もう、壮観だった(^^;
中島アマを圧倒して村中の完勝 118手で村中の勝ち
「これがプロの実力だ、力をつけて出直して来い!」という村中の声が聞こえてくる、そんな内容だった

Bブロック1回戦 三枚堂達也四段 vs 水谷 創アマ これは観なかった
対局開始前に、手数が長くなったので編集した云々、というテロップが出て、もういいや、と思った(^^;
▲三枚堂の居飛車vs△水谷アマの力戦振り飛車 三枚堂の攻めを受けきった水谷アマが入玉を確定させて176手で勝っていた

Cブロック1回戦 木下浩一六段 vs 香川愛生女流王将 これはちゃんと観た
相振り飛車になった 序盤、香川が相当模様が良くなったと思われたのだが、香川がなぜか攻めに行かない ずっと技をかけるのを躊躇(ちゅうちょ)している 
香川が攻めを見送っている間に、木下の攻めのほうが間に合ってきて、香川、攻められピンチ 香川、玉の早逃げをしたが、その後すぐに玉を戻して顔面受け、これでは、どう考えても変調・・・
あー、こりゃダメだ、と思われたのだが、木下もぬるい寄せ方をして、局面、またヨリが戻った 
しかし、最後は木下が一手勝ちを見切って、香川、無念の投了となった 131手で木下の勝ち
うーん、香川、作戦勝ちの後、何で決断して攻めなかったのか 悔やまれる敗戦となってしまった 観ていた私も残念だ

Eブロック1回戦 牧野光則四段 vs 甲斐智美女流王位倉敷藤花
▲牧野の居飛車の2枚銀押さえ込みvs△甲斐のゴキゲン中飛車
難解な中盤が繰り広げられ、甲斐は力を出していた 飛車交換のさばき合いになったところ、ちょっと牧野のほうが良さそうだが、まだ甲斐もやれるのでは、と思ったが、ここからの終盤で、牧野が力を見せ付けた 全く淀みない最短と思える見事な寄せ方で、甲斐の美濃囲いを一気に攻略した 91手で牧野の快勝 
これはホントに見事だった 牧野と言えば、全く目立たない存在と思うのだが、やはり若手、地力がある・・・ 甲斐としては、もう仕方のない負けだったと思う 男子プロの若手、恐るべしという一局だった

Fブロック1回戦 所司和晴七段 vs 今泉健司アマ これは途中までは観た
プロ編入試験を受けている今泉アマの登場 先手所司で、後手の今泉アマは2手目△3二飛戦法 それに所司も工夫をして、右四間飛車で立ち向かった これが成功し、所司がリードしたのだが、今泉アマが中盤で力を発揮して形勢混沌 そして長い戦いが延々続き、160手の長手数で今泉アマが押し切っていた

Gブロック1回戦 大島映二七段 vs 小林 悟アマ これはまだ放映されていない

16歳の中島アマに対する村中の本気、これは観ていて面白かった
女流2人が負けて残念だが、いつものことなので、まあ仕方ないか・・・
甲斐さんの負け方はしょうがなかったと思うが、踏み込みを欠いた香川さんは悔やまれるなあ
こんなところですね 「囲碁将棋チャンネル」がもっとメジャーになりますように(笑)

・・・と思いきや! 銀河将棋チャンネルっていうのがホントにある!? 
今年の初めくらいから、ニコニコ動画で配信されているサイト! 囲碁将棋チャンネルの内容がPCなどで観れるというものか・・・ 知らんかった! 阪田大吉さん、ごめん! だけど、囲碁将棋チャンネルのHPには銀河将棋チャンネルというサイトができたっていう告知は全く見当たらなかったが(^^; そうかー、そんなサイトが今年できていたのか 阪田大吉さん、すまんかった! 
2014.09.18 電王戦タッグマッチに関する意見表明
2014.10.03 電王戦タッグマッチを考える その1 プロ棋士のコンピュータに対する認識の現状をまとめてみる
2014.10.04 電王戦タッグマッチを考える その2 プロ棋士がコンピュータの強さを認めない理由とは?
2014.10.09 電王戦タッグマッチを考える その3 2つの事例から見る、話し合うことの大切さ
2014.10.11 電王戦タッグマッチを考える その4 この棋戦の成否を決めるのは何か?
2014.10.15 電王戦タッグマッチを考える その5 連盟を根底で支えているのは何なのか?
2014.10.17 電王戦タッグマッチを考える その6 アマチュアに及ぼす影響は?

(PC上では、この記事の右肩にある『電王戦タッグマッチを考える』をクリックすると、今までの連載記事が全部出ます)

最初に書いた「意見表明」の記事と、その1~その6までの記事のまとめをしたいと思います
一言で言って、2年後の高額賞金のタッグマッチという棋戦は巨大なリスクを抱えている、ということです
もし連盟がこの棋戦を行う場合、そのリスクを分かった上で覚悟を持って行うのでしょうね?ということです

・プロ棋士自身のアイデンティティー(存在理由)をなくすリスク
・ファンの間で反対が起こるリスク
・世間の人のプロ棋士への尊敬の念がなくなるリスク
・それにより、ドワンゴ以外の他のスポンサーが離れて行くリスク
・アマチュアのモラルが低下するリスク

ホントに、これだけのリスクを抱えてる棋戦を、やるんですか?
プロ棋士vsコンピュータの5vs5の電王戦は、たった2年やっただけで、もう次回でファイナルとなることが決定したじゃないですか このタッグマッチも短命に終わるかも、とは考えないんですか? 10年、20年と続けられる棋戦なんですか?
連盟の命運を賭けるだけの価値がある棋戦なんですか?

連盟がこの2年後のタッグマッチの話を断っても、ドワンゴにとってはそれほど大したダメージではないでしょう
ドワンゴのニコニコ動画の3大コンテンツといえば、「アニメ」と「政治」と「将棋」というのは有名です
それでも、ドワンゴにとっては将棋は、1コンテンツに過ぎません 
もともとドワンゴにとって将棋の電王戦というのは、降って沸いた臨時ボーナスみたいなものでした 連盟は、電王戦でドワンゴを充分儲けさせてあげて、有名にもさせてあげました 普段、ニコニコ動画はタイトル戦の中継などをしてくれてますが、それもドワンゴにとっては商売、それだけのことです 

ニコニコ動画は他にも音楽、プロ野球、教育、多彩なジャンルをやってます
一方、連盟にとってのコンテンツとは何ですか? もう、言うまでもなく、将棋でしょ? 将棋だけじゃないですか  
もし2年後にタッグマッチをやって「失敗」した場合、ドワンゴはただ将棋という1コンテンツの電王戦タッグマッチがダメだった、というだけで終わりますが、連盟は本質的にダメージを受ける危険がある、それに気づきませんか?


さて、この棋戦に反対の意見の人にぜひ認識していて欲しいのは「ファンの間で反対者数が過半数を占めないといけないんじゃないか」という考え方は、それは違う、ということです
選挙じゃないのですから、反対票が賛成票を上回る必要はないんです

ファンの間で相当数の反対がある、というだけで充分、連盟がこの棋戦を検討し直す理由になります
せいぜい3割も反対者がいれば、連盟も「これは問題になりそうだ」と感じるでしょう
あと、「連盟なんか早く潰れてしまえ」と思ってる人、こういう人は賛成票を入れるでしょう これは確実です(笑)

でもこの棋戦、ラッキーだったことも2つあると思います
1つ目は、高額賞金のビッグ棋戦にする、とドワンゴが言ってきたことです これは議論がやりやすいです
もし、ドワンゴが小額賞金で地道に開拓していく、と言ってきたのであれば、議論は加熱しにくかったですからね
2つ目は、2年後ということで、まだ議論を尽くす時間が残されている、ということです 
この2つの点は、私はラッキーだったと感じています


では、今後、プロ棋士はコンピュータとどう付き合っていけばいいのか?
その点について、私の意見を書きたいと思います 
故・米長会長は、「一番大事なことは共存共栄でね」と言っていました ドワンゴも、電王戦でプロ棋士が大きく負け越したときから、キャッチコピーになにかと「共存共栄」と触れ込むようになりました

私はそもそも、この「共存共栄」という言葉にかなり疑問を感じています 
共に在り、共に栄える・・・ これが本当に、これからプロ棋士がコンピュータと付き合う唯一の道なのでしょうか?
確かに、共に在る、というのはもう避けられないようです もうプロ棋士の間でも事前の研究ではコンピュータに考えさせる方法を何年も前から導入して、棋力向上の助けにしている人が多いと聞きます

では、共に栄える、はどうでしょうか? これは、そんな必要は全くないと思います
プロ棋士はプロ棋士どうしで戦って栄える、コンピュータはコンピュータどうしで戦って栄える、これでいいのです
言わば、「別栄」です 別々に栄えればいいのです
こういうのを生物学の用語では、「棲み分け」(すみ分け)と言いますね     

「棲み分け」の意味を調べると、こう出てきました
・生活様式のほぼ等しい異種の生物群が、生活空間や生活時間・時期を分け、競争を回避しながら共存する現象。ヤマメが下流に、イワナが上流にすむ例など。 

この「競争を回避しながら共存する」というところが大事です もう、プロ棋士はコンピュータと競争する必要はないのです
連盟も、本心では「競争はもう無理」と思ったから、5vs5の電王戦は来年でFINALにしたのでしょう?

「共存共栄」から、「棲み分け」へ・・・ 将棋ファンの意識がこう変わっていくのは時間の問題だと思います
「連盟はあと5年、耐えてくれ! あと5年もすれば、多くのファンの意識が共存共栄から、棲み分けに自然に変わっていって、タッグマッチという棋戦をやろう、なんて誰も言い出さなくなるから」 こう私は思っています 
 
最後になりますが、プロ棋士がコンピュータに負けましたが、これは連盟にとって「選べない未来」でした
いずれは来る時代の流れで、必然の未来でした 連盟にとってはどうしようもないことで、仕方なかったんです
電王戦をやろうがやるまいが、いずれはどこかで負けたのです
でも、2年後のタッグマッチをどうするかは完全に「選べる未来」です 連盟が、プロ棋士たち自らが選択して決定できる未来なのです この差はとてつもなく大きいです 

2年後の電王戦タッグマッチという棋戦、連盟は、そしてプロ棋士たちはいったいどう判断をして、どういう選択をするのか?
つまり、先を読むことが商売のプロ棋士たちが、「この棋戦を行うとどうなるのか、先を読めるのか」が問われているのですよね 
今後に注目していきたいです 短期連載はこれでいったん終了します また、何か動きなどがあったときに私はこの連載の続きを書くと思います (短期連載、終わり)
女流王将戦、ベスト8最後の一戦だ 伊奈川愛菓は、いながわまなかと読む ちなみに医学部の学生だ

伊奈川は通算成績34勝38敗 1回戦で山田久美女流三段に、横歩取りで快勝している
解説の横山「伊奈川は居飛車党で最新形に精通している 序、中盤でリードを広げてそのまま勝ちきる将棋」

矢内は通算成績357勝222敗 1回戦で蛸島女流五段のゴキゲン中飛車に、居飛穴で作戦負け模様になってしまったがそこから逆転勝ちしている
横山「矢内はもともと居飛車党だったが、最近は振ることが増えてきた 中終盤が非常にしっかりしていて、逆転勝ちが多い印象」

2人は初手合いとのこと
開始前の戦型予想で、横山「矢内が振って対抗形になるが、矢内がどこに振るか」
おいおい、横山、矢内が振るって言い切っちゃったよ、と思ったら・・・

先手伊奈川で▲居飛車、矢内は角道を止め、△ノーマル中飛車! 横山、大当たりだ(^^;
横山「めずらしい振り飛車ですね」
そうだなあ、ノーマル中飛車って、もうめったに見ないもんね 伊奈川は当然のように居飛穴に潜った
矢内は美濃囲いだが、中飛車のため、左の金が使いにくそう・・・ 
矢内、これでいいんか? こういう戦型は、振り飛車が勝ちにくいとされてるのではないのか?

中盤の折衝に入ったが、横山は早くも伊奈川持ちだ
横山「伊奈川の方が考えるのが少なくてすむ 伊奈川の序盤がうまかった 矢内は陣形をまとめるのが大変そうです」
おおおおーーい、伊奈川が序盤がうまかったというより、矢内の戦型選択が思いっきり疑問だ 何も策がないノーマル中飛車で居飛穴と互角に戦えると思っているのか? 

伊奈川は順調に押していき、玉側で位を取ってリードした なかなかの高等テクニックを見せた伊奈川、やるう
横山「鋭い手ですね これは厳しい 伊奈川は大きなポイントを稼ぎました」
伊奈川は、飛車をいつでも切れる状態、玉側方面でも押していける これは・・・ もうかなりの差・・・

▲居飛穴vs△ノーマル振り飛車+美濃の典型的な戦いで、矢内は金銀のまとめ方が難しく、矢内に間違う可能性が高い局面が続く 伊奈川はそれほど迷わずにすむという展開 
横山「かなり矢内が勝ちにくい これはかなり大変でしょうね」

いよいよ終盤の寄せに入り、伊奈川がノータイムで指しているから、読み切ったのか?と思っていたら、なんと、そこから事件発生! 伊奈川は矢内の玉を取り逃がしてしまったではないか! えええええーー 逃げられちゃった?? な、何でじゃあノータイム指しだったんだ・・・

横山「伊奈川は変調ですね 逆転したかもしれません」
その後、思わぬ熱戦になったのだが、矢内が落ち着いた指し回しを見せ、逆転勝ちに成功した
132手で矢内の勝ち

横山「序盤から伊奈川が非常にうまい攻めを見せて、ずーっと優勢だったと思うんですけど、矢内が非常に粘り強く受けて最後の最後に逆転しました」

感想戦で、中盤を振り返って矢内「なんでこんなにボロボロになっちゃったんですかね(^^; 完全にここは、あーあと思いながらやってたんで」

感想戦では、伊奈川が単純明快な寄せを逃していたと判明した 
うーーーーん、たしかに、終盤はどっちが勝つか、熱戦でハラハラした・・・ でも!でも! 伊奈川も矢内も、2人ともおかしいでしょ? 
伊奈川さんは、中盤までうまく攻めていたところまでは非常に良かった しかし、そこからノータイム指しで指して、寄せを逃すってどういうこと? ちゃんと時間を使って考えようよ 1手40秒あるんだから、35秒くらいまで考えたらいいじゃん 何で読み切ってもいないのに、ノータイムで指しちゃうの? こんなの、単に心がけだけの問題じゃん

そして矢内さん、1回戦で蛸島さんを相手にしたときも、モロに作戦負けになってたじゃん この一局も、作戦負けもいいところ・・・ 何の工夫もないノーマル中飛車+美濃囲いでは、居飛穴に互角には戦えないでしょう だからゴキゲン中飛車とか、角交換振り飛車が全盛なわけで・・・ これも棋力の問題じゃない、めっちゃ基本的な知識、もう常識中の常識・・・
伊奈川さんがミスしなければ、矢内さんは力をほとんど出せずに負けていたところだった

伊奈川さんも矢内さんも、将棋の棋力じゃないところで、おかしいんだよね
本局はいい手もよく出て、2人が地力を持っていて強いことは伝わってきた
でも伊奈川さんのノータイム指しでの寄せミス、矢内の作戦の選び方のミス、これが目立ってしまって、どうにもこうにも、という一局だった 

2人とも棋力はあるんだから、そして人に見せるために指しているプロなんだから、もっと心がけをしっかりして欲しい、マジで・・・
これでベスト4は、上田vs甲斐、清水vs矢内となった
10月25日(土) ETV特集「棋士VS将棋ソフト 激闘5番勝負」(Eテレ23時~)
http://www.nhk.or.jp/etv21c/file/2014/1025.html
今年の春の第3回電王戦を振り返った1時間番組です 
これは面白そうです ぜひ今から録画しておきましょう!
私が知ったソースは、阪田大吉さんの「将棋のブログ」なわけですが(^^;


あと、11月1日からの電王トーナメントと、
来春の電王戦FINALで使われるであろうPCがおそらくこれ↓ 359,980 円(+税)
http://www.dospara.co.jp/5shopping/detail_prime.php?tg=8&tc=60&mc=4979&sn=0#dospara_co_jp
(2行まとめてコピペしてGoogleに張り付ければOK)
今月号の将棋世界でもこのPCの宣伝が1ページ使って載ってました
今年の第3回電王戦で使われたものより値段が高くなってますね・・・

参考までに、今年の第3回電王戦で使われたPCはこれ↓ 299,980 円(+税) 
http://www.dospara.co.jp/5gamepc/desk/dgn_13_30_4489_0/

来春の電王戦FINAL、果たして内容や結果はいかに、今から楽しみです
羽生善治 名人vs高橋道雄 九段 NHK杯 2回戦
解説 加藤一二三 九段

さて、今日は絶対王者の羽生の登場だ 相手はタカミチ・・・ タカミチがどこまでやれるかだなあ
解説はひふみん! 「ひゃー」が聞けるか(^^; 清水さん、鮮やかな柿色の服で、秋らしいね

羽生は1985年四段、竜王戦1組 名人、王位、王座、棋聖を保持 1回戦はシード 29回目の本戦出場

タカミチは1980年四段、竜王戦2組、B2 1回戦で川上に勝ち この川上戦は、相矢倉での会心譜だった 34回目の本戦出場

清水「加藤九段はコンピュータとの対戦と言いましょうか、が記憶に新しいんですが、いかがでしょう」
ひふみん「最近電王戦の催しで指したんですけども、コンピュータとのタッグマッチで戦ったんですけども、終わってからしまったと思ったんですけども、対局中に私の友達のコンピュータが6四歩という手を示してくれたんですよ コンピュータがちゃんと候補に入れてくれてたのを僕はたまたま見なかったんですね 見てればね、6四歩という手は私が単独2位の大記録を達成した将棋の一手だったんですよ それで思ったんですけど、これからチャンスがあるならば、これからはコンピュータの候補をよく見ながら指そうと思ったんです 持ち時間が1時間の切れ負けなので、時間切れだけはなんとか避けようと思って極力自分の力で指したほうが時間がゆとりがあると思って指したんですけども、まあ持ち時間は1時間で指してみた結果、コンピュータの候補を色々見ながらでも1時間でさせる経験がついたので、これからはコンピュータを友達にして多いに活用して楽しくがんばりたいと思います」
清水「またこれからも違う将棋の楽しみ方もできるんですね コンピュータとね」
ひふみん「あ そうですね で思ったんですけど、感想戦っていうのがありますね 私たち3人で終わってから感想戦やったけども、感想戦なんかにコンピュータが入ってもらったらいいと思います つまり我々3人対局者が感想戦やってるよりも、コンピュータが『いやいやここではこの手がありますよ』ときっとね、教えてくれると思いますよ 間違いなく、うん 感想戦にも加わって欲しい」
清水「あ そうなんですね、はい(笑) 今日は人と人との戦いなんですが」
ひふみん「羽生名人はトップ棋士の中で作戦のレパートリーが一番広いし、彼は若いときからどんな将棋でも指して勝ってましたから、どんな将棋でも羽生名人は強いんです」
清水「指していない戦型がないぐらいですか」
ひふみん「ないですね ただ最近こそ振り飛車はあんまり見ないんですけど、どんな戦型でも指しこなす あと、数々の大記録を羽生名人は達成してますけども、勝ち数は歴代3位なんですよ 大山15世名人が1位で2位が私で3位が羽生名人なんです 羽生名人の勝ち星が1300に近いので、たぶんどうも残念ながら私の勝ち星を普通に行ったら抜かれると思ってます ただ公式戦の対局数は私が歴代1位だけども、これはたぶん誰からも抜かれないと思ってます
高橋九段は将棋は重厚で攻めも強いし私とよく戦ってますし、かつてタイトルの王位3期、十段1期、棋王も取ってますしA級在位も長かったし、まあいわゆる本格派ですから、よく読んでいる将棋なので、今日の将棋は羽生名人相手に相当肉迫すると思ってます」

・・・な、なげえええええーーー ひふみん、どんだけしゃべるねん メモを取っている私を腱鞘炎にさせるつもりか(笑)
この時点で番組開始からすでに7分47秒が経過していた ちなみに先週の解説の広瀬はここまで4分28秒だった(^^;

参考までに、昨年度終了時の羽生の通算成績は、1760局 1270勝 489敗 0.722
昨年度の成績は、42勝20敗 0.677
同じく昨年度終了時のひふみんの通算成績は、2435局 1315勝 1119敗 0.540
昨年度の成績は、6勝19敗 0.240
さらに参考までに書くと、昨年度終了時のタカミチの通算成績は、1400局 795勝 604敗 0.568
昨年度の成績は、14勝18敗 0.438

事前のインタビュー
羽生「NHK杯の対局は持ち時間も短いですし、まあ秒読みになりますので、まあ迷いなく決断よく指すことを心がけています 高橋先生はですね、えーまあ重厚な棋風でもありますし、軽快な将棋を指すときもあるので、臨機応変に対応していけたらいいなと思っています」

羽生さんのインタビューの受け答え、いいんだけど、いつも「まあ」が多いのが気になる(^^; 私の知っている限り、羽生さんの唯一の欠点かな 羽生さんはファンサービスもいいしねえ ちなみに私は10年くらい前に羽生さんと握手してもらったことがある! イベント会場で、サイン会が終わってちょっと暇そうにしていた羽生さんがいたので、握手を頼んだら、心よく応じてくれた! とてもうれしく、いい思い出だ 羽生さんの握力、それは弱かった(笑) でももちろん、全力で握るわけはないから、実際の握力は測定はできないけど(^^; 谷川さんにも握手してもらったことがあるが、谷川さんは手が大きくけっこう強く握ってくれた おおっ谷川さん握力強い、意外、と思ったいい思い出だ ファンの人たちは、サインをもらうより、握手をしてもらったほうが思い出になるんじゃないのかな、と私は思っている 

タカミチ「本局を戦うことは非常に楽しみにしてました 自分の力をこの一局に全て出し切って、いい結果が出せるようにがんばります」

ひふみん「最近タカミチは羽生と非公式戦でありながら、達人戦で負かしてるんですよね これは心理的に大きいと思うので、今日は本格的な大熱戦の展開を期待しますね」
おお、達人戦、タカミチが決勝まで出てる(結果は森内の優勝)と思ったら、羽生を負かしていたのか 今日は期待できるかもな

ようやく対局開始、先手羽生で、横歩取りになった 例によって△3三角型、そして持久戦に進んだ
ひふみん「羽生のひねり飛車系統の作戦が本局の見所 ほとんど前例はない、力将棋になりました」

また、ひふみんの雑談が始まった「私の1300勝のほとんどが名局です んふふふ (以下、話が続く)」
もう私はメモを取る気力がなくなった(笑) まとめると、300局くらいは勝ち将棋を時間切迫が理由で負けている、とのことだった

2人の対戦成績が出た 羽生22勝、タカミチ2勝とのこと うわーーー 勝率1割切ってるかーー
ひふみん「データで見る限り、言うまでもなく苦手としているようですけど、たぶん内容で見ると、全部というわけじゃないけど、大接戦じゃないかと思ってます」
しかし・・・ もし町道場で22勝と2勝だったら、席主に「2枚落ちぐらいの手合いで指すように」と言われそうな気がする・・・(^^;

かなり長く駒組みの時間が続いている タカミチが長考している タカミチ、時間は大丈夫か

タカミチから仕掛け、ようやく戦いが始まった 
ひふみん「これは面白い 大決戦です 激戦になればなるほど、ある意味時間は必要ないんです 答えが出やすくなりますから」
ええー、そうは言っても、残りの考慮時間、羽生▲8回vsタカミチ△0回だぞ    

中盤の小競り合いが続く 形勢は・・・?
ひふみん「タカミチのほうが陣形がいい 駒がぶつかっちゃったらタカミチ有利という大局観が成り立つ」
たしかに、羽生の玉形はかなり中途半端な中住まい、それに対しタカミチの玉形は低くてまとまっていて堅そうだ

ひふみんが「戦いはまだこれから、優劣不明です」と言っていた刹那だった 
羽生が手裏剣の歩を放った タカミチ陣に切り込む1歩、▲2三歩という垂らし! これがひふみんが絶賛した手になった
ひふみん「おおー なるほどねー これはやっぱり羽生名人らしいですねー 相手にとってはプレッシャーになる手ですね さすが羽生さん、冴えてますねー これ、タカミチから見たらイヤな手でしたねー」

しかし、その▲2三歩もまだ決め手という手ではない 羽生も考慮時間を使いきり、両者30秒将棋に突入した
あー、まだ先は長そうなのに、これはキツそうだな 羽生とはいえ、大丈夫か
清水「羽生がずいぶん眉間にしわを寄せてますね」
ひふみん「今、羽生もなかなか大変なところです」
ホント、羽生の表情が険しい 局面もまだどこが急所なのかはっきりしないな・・・

んーー、羽生、30秒でどうする?と思われたときだった スッ、と羽生が4筋の歩を突いた・・・ おや、何だこれは?
そして、タカミチがそれを取ったところに継ぎ歩の手筋、これは??
ひふみん「さすが羽生流、冴えてますねー 羽生の突き捨ての歩から継ぎ歩、素晴らしいですね 私だったら自玉をとりあえず安全にする手を指しているところでした」
おおおーー 4筋が急所だったか! あの急所が見えづらい局面で、あっさり攻めの糸口を発見! すげえ!

ひふみん「こうなってくるとタカミチは受け一方」
羽生の桂が2枚とも中央に跳ねてきて、全軍躍動だ さっきの▲2三歩も大活躍、大仕事をやってのけた
タカミチは駒損が広がり、これは・・・ もう・・・ かなり大差・・・

ひふみん「羽生、表情は険しいけれども今日は逃がさんと思ってるんでしょうねー 今日はタカミチの指し手のどこが悪かったか・・・ 組み上がりは互角と思うんだけども、うーん・・・ 結果論として仕掛けがちょっと早かったですかねー?」
まだ対局は終わってないのに、ひふみんは感想戦モードだ(^^; でも、もうこりゃダメだね

清水「羽生の表情はものすごく険しいんですけども、局面は・・・」
ひふみん「局面はもう必勝形なんですよ」
その言葉の直後、タカミチが投げた 95手で羽生の勝ち うわー、なんだこの投了図、タカミチ陣だけ終盤で、羽生陣、全く手つかずで残ってるじゃん・・・ むっちゃ大差・・・ ひふみんの事前の予想「相当肉迫すると思ってます」はどこへやら・・・

ひふみん「羽生の手は一手一手冴えた手ばかりで、あらためて名人にふさわしいと思いましたね ▲2三歩の垂らしといい、4筋の継ぎ歩の攻め、それで決まってますよね いつもの羽生名人らしい、攻めて勝った将棋でしたね 羽生の会心の一局です」

9分ほどあった感想戦では、仕掛けのところばっかりやっていた もう、それは別の将棋なのでは・・・(^^;
タカミチは気合が入っていただろうに、ちょっとかわいそうなぐらいの完敗だったなあ
羽生22勝に対しタカミチ2勝、なぜこの数字になっているのか、それがモロに出ていた内容・・・
タカミチ、うーーん、タカミチ・・・orz

羽生は▲2三歩と、4筋の継ぎ歩攻め、見事としか言いようがない組み立てだ 
この人はやはり別格、そう思わせるに充分な一局だった
羽生がいつもの鬼の強さを発揮、タカミチを吹っ飛ばした一局だった これが全国放送で流れたのだから、タカミチはどうやって気持ちを立ち直すのか・・・ 棋士はメンタルのケアが大変な仕事だと思った(^^; 
2年後の電王戦タッグマッチで、プロ棋士が高額の賞金をもらってしまうことは、アマチュアにも少なからぬ影響を及ぼすのは間違いないでしょう
次のような未来予測を私が考えてみました 201X年の週刊誌の記事です

<201X年 週刊凸凹 臨時増刊号より>

先日行われた将棋のアマチュア界最高峰の棋戦、アマ名竜戦の決勝戦でその事件は起こった。
決勝を戦うのは、初出場のA君(5歳)、そしてBさん(90歳)。 
ここまで目立った実績は全くない2人だが、このアマ名竜戦の決勝まで勝ち抜いてきた。
大勢の関係者が見守る中、決勝戦が開始された。序盤からいきなり戦いとなり、激しい攻防が続いたが、形勢は不明のまま。
2人ともほぼノータイムで指していく。あまりのレベルの高い内容に、観ていたプロ棋士の一人も、驚きを隠せない様子だ。

しかし、ここでA君のかけているメガネ、それがA君の顔に対して大きすぎることに観ていた一人が気づいた。
あのメガネは、もしや・・・? 急きょ大会本部の審判団によって対局が中断され、A君が呼ばれた。
そして発覚したことは、驚くべきことであった。A君がかけていたメガネ、それは一週間前にSomyから発売された、「あんたも名人」という将棋専用のコンピュータ搭載のメガネであった。「あんたも名人」は近年赤字決済に落ち込んでいるSomyが社運を賭けて開発したもので、定価9万9800円(税別)。A君は、このメガネで「カンニング」してこの決勝まで勝ち抜いてきた、というのだ。審判団が集まり協議され、これは当然A君は失格処分か、と思われた。

しかし、審判団が裁定結果を下す直前、Bさんが口を開いた。なんと、Bさんが「ワシも『あんたも名人』メガネをかけているのじゃ」と告白したのだ。Bさんのメガネよく見ると、A君の黒色のメガネと違って白色だが、これはSomyが色違いで生産していたホワイトバージョンであった。

これには会場の誰もが騒然となった。両者失格か・・・。
しばらく審判団による協議が続いたのち、意見がまとまり裁定が下された。
この大会の審判長の役目を負っていた、日本将棋連合の谷山会長が口を開き、こう言ったのである。
谷山「『あんたも名人』メガネをかけて対局してここまで勝ち進んだことは、この大会のルールに抵触する。しかしこの決勝戦では両者ともに同じ条件で戦っている以上、公平と言うべきである。よってこの対局を認めないわけにはいかない。決勝戦はこのまま続行し、勝ったほうを優勝者、アマ名竜とする。」

なんと、谷山会長は「あんたも名人」メガネを使用したまま対局することを認めたのである。
決勝戦は続行され、終盤はプロ棋士でも解説のサジを投げるような、難解極まる戦いが繰り広げられた。
しかし、Bさんに一手甘い手が出たところで、A君が怒涛の長手数の即詰みを決め、見事勝利。
アマ名竜を史上最年少の5歳という若さで勝ち取ったのだ。

優勝したA君「将棋は3日前に覚えた。誰にでもすぐ勝てるので楽しい。将棋は楽勝。将来はプロ棋士になって、タイトルを取って大金持ちになる。このメガネがあれば勝てる。Somyにはもっと性能のいいものを出して欲しい。あと、子供用のサイズも。」

準優勝のBさん「ワシは万年アマ10級じゃが、このメガネのおかげで大きな大会でここまで勝ち進む経験ができた。今日の対局は、終盤に自分の指したい手があり、一度だけそっちを指してしまったのが敗因じゃ。今後の大会では、メガネの指示する手をいかに100%信用できるかが大きな要素になる。技術の進歩は素晴らしい。まだまだ長生きして、現役プレイヤーとしてがんばりたいのう。ワッハッハ。」

なお、大会後、日本将棋連合から公式発表があった。「来年からは、アマ名竜戦をポータブルコンピュータの持ち込み、及びその手を参考にしながらの対局を可とする棋戦にする。」
これにともない、アマ名竜戦の主催社であった朝読新聞は、主催を降りるとのコメントを発表した。
朝読新聞広報「棋戦の性質が大きく変わるので、我々は主催を降りることを決定した。」
代わって、株式会社ドニャンゴが新たに主催社になる見込み。
ドニャンゴの川下会長のコメント「伝統あるアマ名竜戦を主催できるのはうれしい。ドニャンゴが主催する以上、高額の賞金を用意してビッグな大会にして盛り上げて、将棋界の発展に貢献したい。アマチュアもコンピュータと共存共栄の時代。これからはアマチュア棋戦でもコンピュータの持ち込みが当たり前になっていくのでは。」 
(201X年 週刊凸凹 臨時増刊号より)



・・・上記はフィクションですが、現実にこういう事態にならないとも限りません 「アホなこと言うな」と思われるかもしれませんが、実際に「アホなこと」を2年後にプロ棋士たちが行うことが決定しているのですよ? 今だって、もうタッグマッチ自体は、すでにやっちゃってますしね 

相手も同じ条件の場合はいいだろう、そういう話では収まらないのは明白でしょう
アマチュアのモラルがもう断然低下しますね
今まではプロ棋士は、アマチュアの模範になる存在でした そのプロが「対局中にコンピュータの手を見ながら指して大金を得ている」という紛れもない事実は、アマチュアに「対局中にコンピュータの手を見ることは悪いことじゃないんだ、むしろ奨励されることだ」と認識させるのに充分すぎることですよ 
アマチュアの理屈にしてみれば、「プロですら許される、それどころか勝ったら大金と名誉がもらえているじゃないか だとすればアマチュアも当然許される」ということです

「将棋指しのモラル」は、「大会のルール」より、もっと深い部分で将棋というゲームを支えているものです それをプロ棋士自らが破壊するんですか? 

アマチュアの大会だけではなく、ネット将棋にも、間違いなく深刻なダメージを与えますね
将棋倶楽部24では、コンピュータの手を見ながら指す「ソフト指し」は厳禁です 「ソフト指し」がバレた場合、その会員は永久会員停止という厳しい罰則が設けられています 
24では過去のある時期、高段者たちが集まるタブ(区域)には、ソフト指しがあまりに蔓延したため、普通に指していた高段者たちが激減、来なくなりました 
事態を重く見た席主の久米さんは、「ソフト指し取締委員会」を設置して、手作業で一人ずつ疑惑の会員とソフトとの指し手の一致率を計算、そしてソフト指しと判明した会員を会員停止にしていきました そして、やっと普通に指す高段者たちが戻ってきたのです 

今でも「ソフト指し」をする会員とのいたちごっこは続いており、「ソフト指し取締委員会」の人たちは、ボランティアでがんばっているのです 久米席主も、度々会員に「ソフト指しは厳禁です」と呼びかけられています 
ソフト指しは高段タブに限らず、割合は少ないながらも、もっと低い段級の人も、いつ被害にあうかわかりません

24は、連盟運営のサイトです 今月の将棋世界にも、1ページ全体を使ってこういう宣伝が載っていました
「将棋連盟運営 世界最大のインターネット将棋道場で安全安心な対局を存分にお楽しみ下さい!」
山口女流と藤田女流がかわいらしくポーズをしていました
・・・全然、安全安心じゃなくなってしまうではないですか ソフト指しが堂々と行われる風潮になってしまうじゃないですか
プロ棋士自らが「ソフト指し」に当たることをやってしまうのですよ? 24ではレーティングという点数を賭けて対局しますが、プロ棋士は高額賞金を賭けて対局するのでしょう? どっちが重大ですか?   

24のみならず、他の将棋ウォーズなどのネット将棋対戦サイトにも、当然影響は及びますよ ネットでは、対局者どうしのモラルが命綱なのですよ そのモラルをアマチュアのお手本になるべきプロ棋士自らが、破壊してしまうのですか?

プロアマ問わず、「将棋指しのモラル」は「大会のルール」より根深いところに存在し、将棋というゲームを支えているのです 連盟、そしてプロ棋士たちはそれを理解してくださいよ・・・
(その7に続く 来週の水曜掲載予定 次回でこの短期連載はいったん終了です)   
その4からの続きです
「プロ棋士はコンピュータに負けた そしたら今度はコンピュータを対局中に使いながら、高額賞金をもらうようになった」
世間一般の人たちがこのことを知ったとき、どういう評価を下すのか・・・  
2年後の電王戦タッグマッチという棋戦は、本当に大きな賭けだと思います それも、とてつもなく危険な賭けです  

この棋戦が仮に「失敗」し、世間一般の人たちのプロ棋士へのイメージが大きく変わってしまったとき、それは連盟にとって、取り返しがつかないことになることは間違いないと私は思います 

しかし、プロ棋士たちはこう考えるかもしれません
「プロ棋士は将棋ファンによって支えられているんだから、世間一般の人たちの評価などは、それほど関係ない」
本当に、そうでしょうか?

そこで、今回はこの設問を考えます 「連盟を根底で支えているのはいったい何(誰)なのか?」

まず、プロ野球球団や、プロサッカークラブの主な収入源は、何でしょうか?
それはもちろん、試合を見に来てくれる観客が払う、入場料です TVの放映権料などもありますが、メインはあくまでファンに直接、球場に足を運んでお金を払ってもらう入場料です

それに対し、将棋連盟はどうでしょう? 千駄ヶ谷の将棋会館に、ファンに大勢足を運んでもらって、入場料を払ってもらっていますか? タイトル戦で、ファンが直接見にいきますか? 大盤解説会や前夜祭などで、限られたファンから直接お金を払ってもらうということもありますが、全くごくごくわずかの金額でしかありません メインの収入源は何か? それは、新聞社からのスポンサー料ですね これで連盟は収入を得て、プロ棋士は生計を立てているのです

では、新聞を購読している人、というのはどういう人たちでしょう? 世間一般の人たちですね もちろん将棋のファンも新聞は買うわけですが、将棋には全く興味がない人たちのほうがもう断然、圧倒的に多いですよね つまり、連盟のスポンサーは新聞社ですが、その新聞社にお金を出しているのは、将棋に全く興味のない人たちが圧倒的な割合だ、ということです 
連盟の収入、プロ棋士の対局料の主な出所を考えると、実は将棋に関心のない一般人のフトコロだ、ということが言えるのです

ではなぜ、新聞社は棋戦のスポンサーになり、プロ棋士の棋譜を載せたがるのでしょうか? 将棋欄を読む人は少ないのに? それは、新聞社にとって、それが社会的なステータスになる行為だからです いわば、大新聞の証、というわけです
世間一般の人たちにはプロ棋士に対する尊敬の念がある、だから新聞社にとってはプロ棋士の棋譜を紙面に載せるのは社会的ステータスになる、という図式が成り立っているわけです 

ところが、この図式が崩れたらどうでしょう? つまり、2年後の電王戦タッグマッチで、世間の人の間に「プロ棋士は自分たちより強いコンピュータの手を見ながら指している 自分の頭で考えず、ただコンピュータの指示どおり、駒を盤の上に置いているだけ 幼稚園児でもやれることをして、高額の賞金を得るようになった」という評判が広まってしまったら?

今までの「プロ棋士への尊敬の念」が、ガラガラと崩れ、「プロ棋士に対する軽べつの念」が一般に広まってしまったら?
最悪の場合、棋戦のスポンサーになっていた新聞社らが、いっせいに手を引く可能性が出てきますね
新聞にプロ棋士の棋譜を載せることが、社会的ステータスでは全くなくなるからです

それでなくとも、2年後からの電王戦タッグマッチは、竜王戦、名人戦に次ぐ高額賞金で、非公式戦とはいえ、序列3位のビッグ棋戦になるのです 序列4位以下に落ちる棋戦を主催しているスポンサーたちは、これをどう思うのでしょう?
プロ棋士がコンピュータと組んで指すという、わけのわからない棋戦が、まじめなルールでやっている自分たちの棋戦よりも格上になってしまったと感じるでしょうから、不愉快な話だと思います

プロ棋士はコンピュータにすでに負けたわけだし、ただでさえ、近年、新聞社は購読者数が落ち込んでいるのです (つい先日も、Yahooニュースで時事通信が新聞購読の割合が過去最低を更新、と報じたばかりです 2008年から毎年行っている調査で、購読者は初回の86%からおおむね減り続け、今回が74% ということです たった6年で12ポイントも減!) 

2年後の電王戦タッグマッチには大金がかかってくるわけですから、プロ棋士たちは普通の棋戦よりも、このタッグマッチに事前の研究などの力をそそぐことになるでしょう
そうなると、普通の棋戦のスポンサーたちから、連盟に対して棋戦の賞金額の減額要求をしてくることが考えられます (このとき、スポンサーにとって都合がいいのは、竜王戦以外の棋戦は、賞金額、対局料が非公開だということです 賞金額を減らすことにより、その棋戦を潰さず、連盟に払うお金を減らすことが可能なわけです) 
普通の棋戦を主催するスポンサーたちの言い分は、「世間の人のプロ棋士に対するイメージが大きく変わったからね 連盟のブランドは地に落ちたよ これからは、お金が欲しいならドワンゴからもらえば?」ということです

2年後の電王戦タッグマッチで高額賞金をもらってしまうことが、連盟にとって、プロ棋士たちにとって、どれだけのリスクがあるのか、わかってきたでしょうか? 

まとめると、連盟のメインスポンサーは新聞社ですが、その新聞を買っている圧倒的多数は、将棋ファンでなく将棋に関心がない人たちだということです
それでも新聞社が紙面を使ってプロ棋士の棋譜を載せているのは、棋戦を主催することが社会的ステータスだからです
つまり連盟を支えている基盤の根底にあるのは、「将棋に関心のない世間一般の人たちの、プロ棋士たちに対する尊敬の念なのだ」 この事実に、プロ棋士の人たちに、原点に戻って今一度気がついて欲しいのです 

起動戦士Z(ゼータ)ガンダムというアニメがあります 最終回では、主人公のカミーユは精神崩壊を起こしますが、その直前、彼はこう叫びます 仲間が次々に大量に殺されたときのシーンです
カミーユ「生命(いのち)は、この宇宙(そら)を支えているものなんだ それを、こうも簡単に失っていくのは、それは、それは酷いことなんだよ!!」

このカミーユのセリフが、今の私の気持ちを代弁してくれています
ギズモ「世間の人が抱く将棋のプロ棋士への尊敬の念は、連盟を支えているものなんだ それを、こうも簡単に失っていくのは、それは、それは酷いことなんだよ!!」
(次回その6に続く あさって金曜に掲載予定)
まず、おとといのNHK杯の記事の反省から
おとといのNHK杯で、私は終局後の解説の広瀬の感想に疑問を抱いた
広瀬は「藤井ペースだったが、その後康光ペースになり、そのまま康光が押し切るかと思ったら最後はドラマが待っていた」ということだった
対して私は「藤井ペースで、康光が追い上げたが届かなかった、というのが正しいのでは」と記事に書いた
どちらが正しかったのか? それは、阪田大吉さんの「将棋のブログ」にある、激指13のグラフを見ればわかる!

・・・そう、激指13のグラフ、それはモロに広瀬の意見を見事に表したグラフの推移だった!
まあ、激指13だからって、必ずしも正しいわけじゃないけど、これはもう広瀬が正解だわ(^^; 
広瀬はあの難しい中終盤を、一言で的確に表現していたのだった さすがA級!

そして判明したことは、なんとあの最後の藤井の即詰み、あれは康光が逃げ間違えていたから詰んだ、ということだ 調べてみると、確かに詰まない・・・! 藤井が詰みを見切って寄せに出たのではなかったのだ そ、そうだったのか・・・ 藤井が王手ラッシュに出たとき、広瀬は「パッと読んだ感じでは詰まない」と言っていた これも正しかったのだ

今回は広瀬が正しかった まあしかし、私は激指で解析してから感想を書く、ということはしないでおこうと思っている なんか、興がそがれそうで、それはそれでイヤじゃない?(^^; 
NHK杯戦の激指の解析が見たい人は、阪田大吉さんのブログへどうぞ! そっちの役割は、阪田大吉さんにまかせた(^^;
阪田大吉さんのブログ、私はいつも本当に楽しみに見てますよ!(^^) 


さて、松尾と甲斐か 松尾がどれだけ甲斐を相手にやれるのか、見ものだ
ん、この解説者、誰? 私の知らない顔ということは、新四段か?と思ったら、横山泰明六段だった この人、目立たないな~(^^; 聞き手は貞升南女流初段だ

松尾は通算83勝112敗 0.426 1回戦で飯野に勝ち 飯野との一戦は相振りで攻め倒して圧倒していた
解説の横山「振り飛車党で、先後ともに最近は中飛車を多用している」

甲斐は通算206勝117敗 0.638 1回戦で岩根に勝ち 岩根との一戦は相振りで圧勝、ボロ勝ちしていた
横山「デビュー当時は振り飛車党だったが、最近は居飛車も多い オールラウンダー」

2人の対戦成績は、松尾1勝 甲斐3勝とのこと

先手松尾で、相振り飛車になった ▲三間飛車+美濃vs△向かい飛車vs+美濃だ
駒組み、まだしばらく続くのかと思いきや、角交換から、互いに相手陣に角を打ち合い、難しい将棋になった

双方、角で香を取り合う展開だ 松尾は攻め駒の香を取られたのに対し、甲斐のほうは美濃囲いの香を取られた
普通の感覚ではこれは松尾が有利な取引かと思ったが、そうでもなかったようだ
横山「なるほど~ 甲斐は相振りを指しなれてるなあって感じがします 甲斐はこういう局面の経験があるんでしょう 甲斐のほうを持ちたくなってきました」
おおー、美濃囲いの香を取られても、自分のほうが指せるという大局観! 甲斐、二冠の本領発揮だな

しかし、松尾も引き下がらなかった 狙われた桂を、相手の歩の頭に跳ねる歩頭桂の手筋!
横山「いやー これはすごいうまい手ですねー 急に松尾のほうを持ちたくなってきました(笑)」

その後も、お互いにビシビシといい手が続く レベルが高い、いいねいいねー! 甲斐は強くて当たり前だが、松尾が変な手をやってしまわないので、将棋が引き締まってる 松尾、やるう~

終盤、やはり甲斐が底力を出してきた 松尾の美濃囲い、上と横から迫られて、風前の灯だ 松尾は手駒を受けに投資して持ちこたえたが、これでは今度は攻め駒が足りなさそう・・・  
横山「松尾は攻めきれるかどうか、ギリギリです」
そしたら、甲斐は入玉を狙ってきたー あー そ、それがあったか こりゃー、ダメかもな
松尾、入玉を阻止できるか? 甲斐としては一手でも早く入玉を目指すところだ・・・ 

と思って観ていたら、甲斐はなんと、冷静に銀を殺しにいったではないか! うわー、この終盤、入玉できるかどうかの瀬戸際の局面で、銀を取りに行く手が見えてるのか な、なんという甲斐の冷静さだ

横山が、甲斐の入玉を防ぐ唯一の可能性、絶妙の勝負手を指摘していたが、松尾はそれは指せなかった ああー、勝負手を逃したか まあ、仕方ないか・・・
甲斐の冷静な手は続き、結局、入玉は全然しないまま、松尾を投了に追い込んだ 116手で甲斐の勝ち

横山「松尾の攻めが巧みで、少し指しやすくなったかと思ったけど、甲斐が非常に丁寧な指し回しを見せて逆転した一局」 

いやー、甲斐さん、鮮やか! 手数は116手だけど、もっと戦っていた感じだ 甲斐さん、選択肢が多い場面で、ことごとく間違えなかったなあ 終盤の40秒の秒読みの中でも、なんと沈着冷静だったことか こりゃ、他の女流はちょっとやそっとじゃ、かなわないわ さすが女流二冠! 
一方の松尾も、そんなに悪くなかった よく善戦していたよ 少なくとも、私より全然強かった(^^; プロはこうでなきゃね!

例えば、ゴルフで女子プロだからって、その辺のアマチュアよりヘタだったら、やっぱり見てるゴルフファンは興味をなくすだろう 将棋の女子プロも、まずは強くあってほしい 松尾は今回は負けたけど、充分強かった! 甲斐の底力を引き出していたもんね

甲斐が中盤でやや苦戦しながらも、相変わらずの落ち着きっぷりで、結果的には快勝を収めた どんな形勢でも、全く表情が変わらないねえ さすがに一枚、上手だ 甲斐は準決勝で上田女流三段と当たる
来年3月~4月に行われる、プロ棋士vsコンピュータの5vs5の対戦、電王戦FINALのプロ棋士側の出場者が昨日発表されましたね

(カッコ)内は年齢、通算勝率は昨年度終了時点のものです

阿久津主税八段(32) 竜王戦1組、A級 0.645 棋戦優勝2回 基本的に居飛車党
村山慈明七段(30) 竜王戦4組、B1 0.663 昨年度勝率1位 居飛車党
稲葉陽七段(26) 竜王戦2組、B2 0.693 昨年の銀河戦で棋戦初優勝 振ることもあるが、基本的に居飛車党
永瀬拓矢六段(22) 竜王戦3組(来期から4組)、C2 0.717 振り飛車党で「千日手王」だったが、2013年頃から居飛車党に転向した
斎藤慎太郎五段(21) 竜王戦6組、C1 0.676 前々期の順位戦でC2を一期抜け 居飛車党でじっくりした将棋を好む


このメンバーです 順位戦、全クラスから一人ずつ出るんですね
対抗形がどっち側を持ってもめっぽう強いとされるコンピュータ、やはりプロ棋士側は居飛車で行くんでしょう
記者会見を聞いていて気になったのが、村山は「前からどうしても出たいと思っていた」ということで、いいのですけど、それ以外の3人(稲葉は記者会見に出れず)は、いずれも「片上理事に請われて」という理由だったということです
「請われた以上、断る理由はない」とのことでしたが、自らの立候補ではないというのは、やはり気になりましたね

連盟側としては、「出たい」という棋士がすでにいなくなってしまったのか、それとも「出たい」という棋士はまだ他にもいるけど、勝ちに徹してこのメンバーになったのか・・・

村山の「勝てばヒーロー いいことづくめ」というPVでの言葉がありましたが、そもそも第1回電王戦が始まる前は、プロ棋士側は「プロのほうがコンピュータより強い」という認識じゃなかったっけ・・・ それが「勝てばヒーロー」になりましたか(^^;
三浦vsGPSのときのような約700台ものコンピュータ群に勝てば、ヒーローですけどね
事前に同一のパソコンとソフトの貸与ありで練習しまくって勝っても、ヒーローと言えるのかどうか 「コンピュータ」と言っても、1台のパーソナル・コンピュータ、すなわち個人用コンピュータですからね

電王戦FINAL、次は11月1日からの電王トーナメントでの、コンピュータ側の5つソフトの選出ですね どうなるのか注目したいと思います なんだかんだ言っても、私は電王戦FINALは楽しみにしてます(^^;
佐藤康光 九段vs藤井猛 九段 NHK杯 2回戦
解説 広瀬章人 八段

将棋の戦法の研究が進んで行くのには、2種類の人間が貢献している
創造派と呼ばれる人たちと、修正派と呼ばれる人たちだ 創造派が考えた新手、新戦法に、修正派が改良を加えていって、洗練された戦法になっていく 
創造派と修正派、どっちがファンに人気があるかって、もう言うまでもないだろう(^^;
今回対局するのは、創造派を代表する2人だ

康光は1987年四段、竜王戦1組、A級 1回戦はシード 26回目の本戦出場
藤井は1991年四段、竜王戦1組、B1 1回戦で渡辺大夢に勝ち 20回目の本戦出場

解説の広瀬「康光は長年トップとして活躍している 数々のタイトルや棋戦優勝をしていて、将棋界を代表する棋士 序盤から工夫を凝らし、それがプロでも真似(まね)のできないような力強さがある
藤井もトッププロ 振り飛車のイメージが強い 藤井も他のプロが真似できない序盤を指すが、力強さと言うよりは、繊細で細かいところまで研究が行き届いている」

事前のインタビュー
康光「藤井九段は、藤井システムや角交換振り飛車における序盤戦の新しい創造、開発というのは大変なものがある 将棋界の歴史に名を残す棋士の一人だという印象があります
(抱負は)ここ最近はNHK杯戦は全く勝てていないので今日はなんとかしたいという思いで臨みたい」

藤井「佐藤九段とは30局以上指してると思うので、色々、棋風は分かっているつもりです とにかく力強いと言いますか、非常に自己主張の強い将棋という印象があります 
(抱負は)集中してがんばるだけだと思っています がんばります」

広瀬「藤井が振り飛車で来ることは間違いないと思う 康光がどのような対策を立てているか」

先手康光で、▲居飛車vs△角交換四間飛車になった 
広瀬「藤井と言えば、最近はこの戦法で星を稼いでいる 最初の方は藤井が一人で開拓していった戦法なんですけど、プロ棋士みんなに認められて、升田幸三賞を受賞した 藤井は指し始めた頃は苦労していた印象だが、この戦法の可能性に気づいていたのでしょう」

2人の対戦成績が出て、康光23勝、藤井10勝とのこと うむ、差があるが、まあこんなものか
広瀬「康光の対策は、比較的新しい形です 穏やかな展開になりましたね 角交換四間飛車の持久戦バージョンです」
お互いに銀冠に囲い、盤面飽和状態 両者、手損での手待ちが続く

広瀬「藤井はこの戦法の本を出したんですよ」
清水「あ そうなんですか」
・・・ええー、清水さん、知らないのか(^^; 良書と評判で売れてる本なんだけどなー 現役女流棋士として、対策を知っていなくていいのか(^^;?

広瀬「康光が四段になった1987年は、私が生まれた年なんですよ」
雑談が続く どっちからも仕掛けない すごい手待ち合戦になってる 藤井はもう左銀を何度上下に動かしたことか
そして、ついに読み上げの室谷由紀さんの声がかかった
室谷「まで 70手を持ちまして、千日手となりました」
ああー、千日手かーー しかし、これ、室谷さん、よく千日手と分かるなあ いくら慣れた記録係とはいえ、同一局面3回をしっかり認識して数えるのは大変そう(^^; 後日追記・千日手は同一局面4回でした すいませんでした

康光、顔がゆがんでいた 藤井は「いやー」と小声でつぶやいた 
広瀬「両者、打開の意思はあったと思うんですけど、仕掛けると悪くなってしまうということで、しょうがない判断だったんでしょうね」
んー、双方、仕掛ける前の手待ちでの千日手・・・ まあ、責任は先手の康光にあるなあ 後手の藤井としてはもう仕方ないわ 

千日手指し直しとなり、先後が入れ替わった 藤井の先手で、▲角交換四間飛車vs△居飛車 
あ、まただ(^^; 今日は藤井はこれで行こうということか 
今度は序盤の展開がだいぶ違っていて、藤井が三間に振りなおし、早々に歩がぶつかった
広瀬「これが角交換振り飛車の一つのバリエーションです 本局のように石田流を含みにした形もある 非常に軽い振り飛車ですね」

しかし、盤面、また落ち着いた持久戦模様に・・・
清水「またじっくりしてきましたか」
広瀬「そうですね」
おいおい、また千日手もありうるのか、と思って、私はびくびくしていた

広瀬「(大盤解説で)こうなれば部分的には康光が成功です」
ところが、実戦、その筋に藤井が飛び込んだ! 戦い、ようやく開始だ
清水「藤井は来させたんでしょうね」
広瀬「誘いのスキだと思います これでもう収まらないですね」

藤井、盤面左を放棄する展開になり、大丈夫かと思われたのだが、
広瀬「けっこう振り飛車がうまく指している印象がある 振り飛車の形は軽い 歩もたくさん持っている これなら藤井がなんとかなりそう」
おおー、広瀬の形勢判断、出ました! 藤井がちょっとリードか 

そして、藤井の手番、手が広くて具体的にはどうしたものか、流れを急にする手が必要というところ、藤井に驚きの一着が出た
▲7五歩、という手だ 後手の7三の桂馬の頭を狙ったものだが、そう指すものなのか・・・
清水は「一転して7筋ですかー」と、感心していた
これが見えづらい好手で、非常に好着想だったと思う 後手の康光はその桂を跳ね、戦いになった
盤面、一気に激しくなった  藤井の狙いどおりの展開!

盤の中央で激しい駒の交換が行われ、全て清算し終わってみると、藤井良しに見える! おおー、これは、藤井がかなりいいのでは・・・ 藤井は手駒がたくさんで、手に困らないだろう 康光の攻め駒が、足りないように見える

康光は王手をかけて攻めの手がかりを作ろうとしてきたが、これは足りないだろうなー
広瀬「康光はしょうがなかったんでしょうね 王手で勝負と」 
解説の広瀬、「しょうがない」というフレーズを使った こういうときは、もう大抵ダメになったとしたものだが?

清水「色々と駒が当たっていますが」
広瀬「パッと状況を整理できないですね」
清水「康光も少し指しやすくなったな、と思ってるでしょうか?」
広瀬「そう・・・ ですね ここからは瞬発力の勝負ですね」
ええー、康光の猛然の追い上げ! 藤井は手が広すぎて、正解を指すのが非常に難しい状況が続いている! まだ分からんかー! これだけ持ち駒があって手番、まだ藤井に勝ちがあるはず、なんとかしろ、藤井!

清水「藤井としては、一気の寄せはありそうですか?」
広瀬「んー 一気に寄ればいいんですけど」
その時! 藤井が寄せに行った~ おおー 寄るのか? これ、もう即、詰まさなきゃ負けだろう
広瀬「そうか 危ないのか なるほど」
お? お? こ、これは? うまい手順の組み合わせがあったのか!! こ、これは・・・

藤井、力強くノータイム指しで、康光玉を長手数の即詰みに討ち取った うおーー、見事!
121手で藤井の勝ち やったー、藤井、すげえーー 最後のほう、ノータイム指しとは・・・

終局直後、康光「そっか いやー 詰まないと思っちゃった そうか そうか」

広瀬「最後、藤井がうまく指しましたね ちょっと気がつかない詰み手順でした 藤井がペースを握ったように見えましたが、康光が強く踏み込んで気がついたら康光のペースになっていたと思う 本来ならそのまま押し切るかと思ったんですけど、最後の最後にドラマが待ってましたね 大熱戦だったと思います」

うーん、広瀬の言う「康光ペース」がどの辺りだったのか、私には疑問が残った 
やっぱり、藤井が中盤でリードしていて、康光が相当追い上げたが、なんとか最後、即詰みに討ち取って藤井が逃げ切った、というのが私の見立てだ
いやー、それにしても藤井、よく勝ったなあ 最後の即詰みは見事としか言いようがない 1回戦のvs渡辺大夢でも、終盤はドタバタがあったが、何も手がかりがなかった相手玉を、一気に長手数(19手)の即詰みに討ち取っての勝利だった この2回戦でも、それをまたやってのけたなあ 本局、数えたら21手詰みか すごい! パチパチパチ

藤井と言えば、「終盤のファンタジスタ」の異名があるが、詰ます力は素晴らしい確かなもの、それを見せ付ける藤井の今期NHK杯となっている 

一方の康光、NHK杯の成績が気になったので調べてみた
2010年 2回戦○vs屋敷 3回戦○vs久保 ベスト8●vs羽生
2011年 2回戦●vs永瀬
2012年 2回戦●vs佐藤天彦
2013年 2回戦●vs豊島
2014年 2回戦●vs藤井
こうなってしまった これで4年連続、初戦敗退か 康光ほどの強豪が・・・ しかし、対戦相手も厳しいのばかりだ(^^; 

NHK杯は、千日手の分もしっかり放送しようという番組構成だが、それは果たしていいのかどうか 銀河戦は、指し直し局しか放送しない それでいいんじゃないのかな・・・
さて、来週は羽生vs高橋か これも楽しみだな~ 

<追記 後日談 2日後の記事よりコピペ>
まず、おとといのNHK杯の記事の反省から
おとといのNHK杯で、私は終局後の解説の広瀬の感想に疑問を抱いた
広瀬は「藤井ペースだったが、その後康光ペースになり、そのまま康光が押し切るかと思ったら最後はドラマが待っていた」ということだった
対して私は「藤井ペースで、康光が追い上げたが届かなかった、というのが正しいのでは」と記事に書いた
どちらが正しかったのか? それは、阪田大吉さんの「将棋のブログ」にある、激指13のグラフを見ればわかる!

・・・そう、激指13のグラフ、それはモロに広瀬の意見を見事に表したグラフの推移だった!
まあ、激指13だからって、必ずしも正しいわけじゃないけど、これはもう広瀬が正解だわ(^^; 
広瀬はあの難しい中終盤を、一言で的確に表現していたのだった さすがA級!

そして判明したことは、なんとあの最後の藤井の即詰み、あれは康光が逃げ間違えていたから詰んだ、ということだ 調べてみると、確かに詰まない・・・! 藤井が詰みを見切って寄せに出たのではなかったのだ そ、そうだったのか・・・ 藤井が王手ラッシュに出たとき、広瀬は「パッと読んだ感じでは詰まない」と言っていた これも正しかったのだ

今回は広瀬が正しかった まあしかし、私は激指で解析してから感想を書く、ということはしないでおこうと思っている なんか、興がそがれそうで、それはそれでイヤじゃない?(^^; 
NHK杯戦の激指の解析が見たい人は、阪田大吉さんのブログへどうぞ! そっちの役割は、阪田大吉さんにまかせた(^^;
阪田大吉さんのブログ、私はいつも本当に楽しみに見てますよ!(^^) 
では、なぜ高額賞金のタッグマッチ棋戦が重要な問題になるのか?
今回からは「高額賞金のコンピュータを使ったタッグマッチ棋戦がなぜ問題なのか、そして、問題の程度はどのくらいなのか?」という核心部分に入っていきたいと思います

これを具体的に理解するべく、一つの設問を考えます 
「2年後に始まる予定のこの棋戦の、成否を決めるのは何(誰)か?」
今回はこれを考えてみます

「2年後から始まる予定の高額賞金つきの電王戦タッグマッチ 仮に開催されたとしたら、この棋戦の成功、失敗を決めるものは何(誰)なのか?」 

・・・出場するプロ棋士と、そのがんばりでしょうか? ソフト開発者? 主催者のドワンゴの盛り上げ方? 連盟? 観た将棋ファンが喜んだどうか? この棋戦のキャッチコピーにあるように、「最高の棋譜」ができたかどうかでしょうか? あるいは、この棋戦に反対するファンが騒いだかどうか? もしくは、どうでもいいという関心のないファン?
ちょっと行を開けますので、少しの時間考えてみてください



私の出した答え、それは上記に挙げた例の中にはないです 
私の答え、それは「普段将棋に全く関心がない世間一般の人たち この人たちがどう思うか」 
これが2年後のタッグマッチの成否を決めるのだと私は思います 

タッグマッチの将棋の内容がどんなだったか、ファンが盛り上がったか、そういうことは一切関係なく、成否を最終的に決めるのは、将棋ファンも含めて将棋関係者ではない、「圧倒的絶対多数の、普段将棋に関心がなく生活している人たち」 これが私の出した結論です

竜王戦、名人戦に次ぐビッグ棋戦の誕生で、かなりの高額賞金を出すのですから、主催するドワンゴは例によって派手な演出で盛り上げようとするでしょう もちろん、連盟のほうとしても、プロ棋士対コンピュータの電王戦と同じように「普段将棋に関心のない一般の人が注目してくれるのはありがたい」と思って開催するのでしょうから、この棋戦を開催する以上は、マスコミが集まるのをこばむ、なんてことはありえないわけです 

そして週刊誌などのマスコミはネタを探すのが仕事ですし、プロ棋士が今まで見たことのない機械装置を身につけて対局している姿は「いい絵」になりますので、取材して取り上げることでしょう 
ですので、普段将棋に関心のない一般の多くの人たちにも、この棋戦でプロ棋士がやっていることが知れ渡るのは時間の問題でしょう   

では、この高額賞金のタッグマッチ棋戦のことを知ったとき、世間一般の人たちは、どう思うのでしょうか?

この棋戦が成功になるときは、世間一般の人たちがこう思ったときでしょう
「ああ、この前、将棋のプロ棋士はコンピュータに負けたって聞いたけど、今度はコンピュータを使って最高の棋譜を作り上げようとしているのか さすがプロ棋士、さらに高みを目指してがんばっているんだなあ」

一方、この棋戦が失敗になるときは、世間一般の人たちにこう思われたときでしょう
「何だ、この記事と写真? もうコンピュータにプロ棋士は負けて、プロ棋士のほうが弱いんじゃないの? それなのにコンピュータの手を見ながら試合をするようになったの? このメガネやタブレット、これでコンピュータに手を教えてもらいながらやるのか コンピュータのほうが強いんだから、プロ棋士はただその指示どおり駒を動かすだけってことにならないか? これだったら、ド素人のオレでもやれるじゃん ・・・何!? それなのに対局料が一局数十万円? 優勝したプロ棋士は1千万円以上も賞金がもらえるのか! オレなんて、1年間働いても数百万円がやっとだぞ プロ棋士っていったいどういう集団なんだ?」

「プロ棋士はコンピュータに負けた そしたら今度はコンピュータを対局中に使いながら、高額賞金をもらうようになった」
世間一般の人たちがこのことを知ったとき、上記の成功例と失敗例の、どちらの評価を下すのか・・・  
2年後の電王戦タッグマッチという棋戦は、本当に大きな賭けだと思います それも、とてつもなく危険な賭けです  

この棋戦が仮に「失敗」し、失敗例のような評価が下されたとき、それは連盟にとって、取り返しがつかないことになることは間違いないと私は思います 

しかし、プロ棋士たちはこう考えるかもしれません
「プロ棋士は将棋ファンによって支えられているんだから、世間一般の人たちの評価などは、それほど関係ない」
本当に、そうでしょうか? 次回にまた考えていきます (その5に続く 来週の水曜くらいに掲載予定)
2014.09.18 「電王戦タッグマッチに関する意見表明」
2014.10.03 「電王戦タッグマッチを考える その1 プロ棋士のコンピュータに対する認識の現状をまとめてみる 」
2014.10.04 「電王戦タッグマッチを考える その2 プロ棋士がコンピュータの強さを認めない理由とは? 」
に引き続く3回目の連載です 2年後に始まる予定の高額賞金の電王戦タッグマッチ棋戦について考えていきます

なお、今までの連載記事を探しやすいように、当ブログに「電王戦タッグマッチを考える」というカテゴリを追加しました
PC上で画面をスクロールした左下のカテゴリ欄、その一番上に持ってきました このカテゴリ欄から選んでクリックするか、または毎回の連載記事の右上にある「電王戦タッグマッチを考える」をクリックすれば、この一連の連載記事が全てまとめて出てくる仕組みです

今回は、今までにあった2つの事例を見てみます この2つの事例は、どうしても今あらためて思い出す必要があると考えました

まず1つ目は、今年3月、第3回電王戦の第2局、やねうら王vs佐藤紳哉プロのときの騒動です  やねうら王のプログラマーの磯崎氏が、対戦直前になって、佐藤紳哉プロの自宅に突然訪問して、勝手にソフトを入れ替えてしまった一件です これはルール上禁止とされていた行為でした しかしその磯崎氏の行為をドワンゴが認め、連盟も追従して認めました そのいきさつのPV(プロモーションビデオ、宣伝映像)が第1局の終局後に対局会場で流れたとき、会場は静まり返り、ニコニコ動画の画面文字は炎上、そしてファンの間で大騒動になりました 

その後にドワンゴの川上会長と連盟の片上理事らが急遽記者会見を開いて、ファンにお詫びし、ソフトを入れ替える前のバージョンに戻すことで、なんとか騒ぎが収まりました なんとも後味の悪い事件でしたが、あれは磯崎氏のみならず、完全にドワンゴと連盟の過失でした この一件は、プログラマーの磯崎氏は全くの個人の考えでやったことですが、ドワンゴ、連盟は組織で判断して下した決定です そこに、この事例の本当の重大さがあると私は思います 

「いや、あれはドワンゴ側は川上会長が一人で決めて、連盟側も片上理事が一人でそれを追認しただけだ」と考える人もいるかもしれません であるなら、なおのこと問題なのです プロ棋士vsコンピュータの戦いという、社会的に大注目されているビッグイベントなのに、そんな軽々しく川上会長と片上理事だけでソフトの入れ替えを認めたとしたら、それが大問題なのです せめて、双方なんらかの会議を開いて、周りの関係者の意見を聞くべきだったのです 組織なのだから、周りに人はいるはず、いるべきなのです しかし、ファンへのお詫びの記者会見を聞いていると、ドワンゴ側も連盟側も、その一人ずつだけで決めてしまった、というように私には聞こえました ドワンゴ側はともかく、連盟側も片上理事たった一人の判断にまかせっきりなのか? マジで?と私は衝撃を受けたものです

このときの記者会見、今でもまだ見られます 検索では見つけにくいので、アドレスを張っておきます
「第3回将棋電王戦 第2局の対局方法の説明」
http://blog.nicovideo.jp/niconews/ni045157.html

ドワンゴも連盟も間違うことはあるのです そして、今回の高額賞金の電王戦タッグマッチのビッグ棋戦設立に関しても、もしかしたら、双方、ものすごい少数の人間だけで判断して決定している可能性がある、ということです

そして、2つ目の事例です 連盟の棋戦問題に関する近年の出来事として、忘れてはならないのが、連盟が名人戦の主催スポンサーを変えようとしたときの一件です ウィキペディアより引用します
   
2006年3月、日本将棋連盟理事会は第66期(2008年)以降の主催を朝日新聞社に移管するとの方針を示し、この時点での主催社である毎日新聞社に対し、契約を更新しない旨の通知書を送付した。事前に何の相談もなく下された理事会の決定に、長年名人戦を通じ棋界を盛り立ててきた毎日新聞社は激怒し、大きな問題となった。(中略)
毎日新聞社側はこの(連盟の)主張に対し「将棋連盟は長年、十分な契約料を貰いながら財務改善の努力を一切しておらず、金に困ったから信義を捨て、伝統を売るのか」と社説で批判した。(ウィキペディアより)

これは、大きなニュースだったので、私ももちろん覚えています 毎日新聞は社説だけでなく1枚の全面を使って「連盟の行動は信義にもとる」とデカデカと書き上げていました 毎日新聞にしてみたら、今まで連盟にずっとお金を出していたのに、連盟がいきなり通知書だけで「こんどから朝日に乗り換えるから、あんたらはもう要らんわ これは決定事項だから じゃ、そういうことで」と言ってきたのだから、そりゃあ、怒りますよね

結果はご存知のように朝日新聞と毎日新聞の共催という形で落ち着いたから良かったものの、本当に大事件でした
この一件を見ていた他の棋戦のスポンサーの新聞社たちは、こう思ったことでしょう 「どんなに長年、お金を出していて付き合いがあったとしても、将棋連盟は、唐突に通知書一通で一方的に契約を打ち切ってくる 棋戦の名前も変えず、その棋戦丸ごと他のスポンサーに移す これまで培ってきた人間関係や築き上げたノウハウなど、無視する ずっと支えてきたスポンサー側の都合を、まるで考えない それが将棋連盟という組織なのだ」 

そしてこういう行為をすると、それは当然、連盟にそのまま返ってきます ある日突然、棋戦のスポンサーから連盟に通知書が一通届き、スポンサーから「もうウチが主催している棋戦、辞めるから これは決定事項だから じゃ、そういうことで」と言われるのです 
連盟とスポンサーの双方が、その棋戦の賞金総額などを話し合って折り合いをつける そういうことが全くなく、スポンサーからいきなり「辞めるわ」の紙切れだけで、その棋戦がある日突然潰れる 今後そういうことになっても、全く文句が言えない立場に、連盟はもう少しでなるところだったのです この一件は、そういう危機だったのです

この名人戦移管の事例に関しても、連盟内部では最初からプロ棋士みんなで話し合われた形跡がほとんどなく、大問題に発展してからようやく棋士総会が開かれたのです 名人戦はプロ棋士全員の基本給を決めているメイン棋戦です そのスポンサーを変える問題、こんな超重要なこと、「まずは事前にプロ棋士みんなで意見を出し合う、それから相手側スポンサーと話し合いながらく少しづつ事を進めていく そして、双方納得したところでようやく決定に至る」
これが定跡じゃないですか? プロ棋士たちはそれを全くせず、結果、連盟を、そして自分たちを危機に陥れたのです プロ棋士のみなさん、もうこの時のことを忘れたのですか?

「やねうら王のソフト入れ替えの一件」、「名人戦のスポンサー移管で大問題に発展した一件」、この2つの事例は、重要な事を決める前に、みんなで話し合うことの大切さ、周りの意見を聞くことの必要性、このことを教えてくれているはずです
  
ただし、プロ棋士たちはこう考えるかもしれません 「今度の高額賞金タッグマッ チ棋戦は、重要なことじゃない だから話し合う必要がない」 

では、なぜ高額賞金のタッグマッチ棋戦が重要な問題になるのか?
次回からはいよいよ「高額賞金のコンピュータを使ったタッグマッチ棋戦がなぜ問題なのか、そして、問題の程度はどのくらいなのか?」という核心部分に入っていきたいと思います

・・・今回は2つの事例を取り上げるだけで、こんな分量になってしまいました 
えーっと、この短期連載、その3で終わる、と書きましたが、私はまだ全然書き足りず、終わりません(笑) まだ先に続くことになりました(笑) なお、この一連の記事に関するページリンク、引用、コピペ等は歓迎します 無断でお好きにどうぞ 
(次回、その4はあさって土曜に掲載予定です)
毎週火曜は、女流王将戦の感想を書いている 土曜に囲碁将棋チャンネルで放送があった分だ
持ち時間各25分で、切れたら40秒というルール

今回の聞き手は中村桃子女流初段、解説は富岡八段だ 中澤アマが清水を相手に、どこまでやれるかという一戦

中澤アマは高校3年生 1回戦で井道女流初段に勝ち この一局は井道の振り飛車にうまくさばかれて、だいぶ苦しくしたのだが、そこから粘って会心の逆転劇を見せた一局だった
富岡「中澤は居飛車党の攻め将棋」

清水は通算成績が、560勝221敗 0.717 1回戦で室谷に勝ち 室谷との一局はものすごい大激戦、激闘だった
富岡「清水は女流王将は9期取っている第一人者 居飛車党で厚みのある棋風」

先手中澤で▲居飛車の右四間vs清水の△右玉になった 中澤のほうは、右四間でよく見る低い陣形
清水の陣形は2枚落ちの上手の理想形といった感じだ 
中村桃子「清水は姿勢がきれいですね 対局姿が美しい」
ホント、清水の対局姿勢はすごいね ファッションモデルは立ち姿の美しさで商売しているプロだが、清水のこの正座の美しさはそれに匹敵するわ 半端じゃない(^^; さすが、茶道を長年やっているだけあるわー

富岡「清水は大ベテランだから、右四間で簡単に潰されるとは思えない」
中澤から仕掛け、いよいよ戦闘開始 中澤、歩を突き捨たので一気に猛攻するのか、と思いきや、勢いなく駒を撤退してしまった   
富岡「あれ? 中澤はどうして強く行かなかったんでしょうね? これは清水が得をしました」
んー、中澤の手、角を連続3回1マスずつ引くっていうのは、あんまり見ないな 清水がちょっとリードか
富岡「しかし、形勢と勝負は別ですからね 清水も秒読みですし」

中澤~、なんとかしろ~、と思っていると、それが出た 中澤に渾身の勝負手!
富岡「中澤は攻め将棋ですねー これ面白い将棋だなー」
中村桃子「もう一勝負ありそうですね」
よし、まだ勝負はわからなくなった! 清水を追い詰めろ~ 

と、思ったその直後だった 中澤、ドーンと飛車を叩き切って、大技をかけにいったのだが、これが私にはとても良い手に見えなかった
清水の玉は広すぎて、これでは残った小駒だけでは攻め駒が足りるとは思えない・・・ 中澤、これは判断ミスでは?

富岡「まだどっちが勝ってるかわからない、いい勝負」
えー、そうかな これ、中澤の玉は寄せられるのが時間の問題なのに対し、清水は広すぎて捕まらないじゃん 清水がハッキリいいだろう
案の定、清水の厳しい攻めが決まりだした
富岡「あー 中澤はもう囲いを放棄して、玉を逃げ出そうということか なるほど 面白いですね~」
しかし、清水の追求は止まず、鋭い寄せが炸裂した
富岡「あー さすがは清水」
最後は中澤が落手(らくしゅ)を指し、単純な5手詰みに討ち取られた
72手で清水の勝ち 清水の快勝だった

富岡「中澤の攻めと清水の厚みの受けで、両者の持ち味が出た 中澤のほうに本譜以外に色々な手があったと思う」

感想戦では、富岡よりも中澤と清水のほうがよく読んでいた箇所も見られた 富岡さん、終盤は読みで対局者2人に負けてたじゃん(^^; 

んー、中澤アマ、もうちょっと力を出したかったなあ 1回戦の井道戦では、すごく粘って、最後の寄せがものすごい鋭さで、圧巻だったのにね 本局は、やはり飛車を捨てたのが悪かった 清水の右玉があまりに広すぎて、小駒だけでは攻め駒が足りなくなった・・・ 感想戦では、重大な見落としがあったということだった 中澤が見落とし手順の説明を自分でしてくれた 富岡には全然見えてなかったな(笑) 飛車を捨てた後に見落としに気づいたが、もう取り返しがつかなかったのか んー、痛恨・・・

一方の清水さんとしては、玉が薄くて怖い作戦だったが、特に疑問手はなく、危ないところはなかったと思う 安定していた さすがに強い 右玉を指しこなせるとなると、すごい武器だね 相居飛車の後手番で、得意戦法があるっていうのはいいねえ
アマチュア高校3年生を相手にクイーン四冠の清水が貫禄を見せ、快勝という一局だった  
<書式変更に関する、けっこう重要なお知らせ>
NHK杯の記事の前に、当ブログにおける書式の変更のお知らせがあります 今まで、当ブログでは、行の途中で、私の判断で改行をするタイミングを決めていました 読みやすくするために、良かれと思って、ずっとやり続けてきていたのです しかし、私のPCではうまく改行のタイミングが反映されていても、他のPCでは全くそうではない、ということに気づきましたorz 

私の家には今、3台のPCがあるのですが、その3台のPCで私のブログを見た場合、それぞれ全部、改行のタイミングが違っていることに気づいたのです 特に、画面の狭いノートPCで私のブログを読んだ場合、今までの改行の仕方では読みにくいことが判明しました よって、これからは改行のタイミングを変えさせてもらいます これにより、ある人は今までより読みにくくなるかもしれませんが、ノートPCで読む場合などを考慮し、変更します 当ブログでも、他のブログ全般に合わせたスタンダードな方式を取る、ということです ご理解をよろしくお願いします
 

木村一基 八段vs森内俊之 竜王 NHK杯 2回戦
解説 深浦康市 九段

今日は木村と森内か 木村は、先日までやっていた王位戦で、羽生を相手に4勝2敗1持将棋という健闘を見せた 私は阪田大吉さんのブログの事前の勝敗予想のアンケートで、羽生の4戦全勝に1票入れた(^^; 対するは、竜王保持の森内! これは好カードだ

木村は1997年四段 竜王戦2組、B1 1回戦で佐藤天彦に勝ち 16回目の本戦出場 1回戦の佐藤天彦戦は、横歩取りのねじり合いを、受け師の本領を発揮して制した木村の好局だった
森内は1987年四段 現竜王 A級 18世名人資格保持者 1回戦はシード 26回目の本戦出場 

解説の深浦「好取組みですね 2人とも受けに特徴がある 引き付けるだけ引き付けて、そこから反撃に出る その時の攻めの鋭さも定評がある 棋風が似ているところは多いと思います」

事前のインタビュー
木村「森内竜王は大変おおらかで、フトコロが深いなといつも感じさせられます 棋風のほうも同じようでして、いつもかかって来なさいと言われているようで、大変怖いです (抱負は)積極的に行くことを忘れないでいたいと思います 香車になったつもりで思いっきりぶつかりたいと思います」

聞いていた深浦「香車になったつもりでっていうところが気になりましたね どんどんかかって行くっていうことですかね? 行ったっきりにならないことを祈りますけどね(笑)」

森内「木村さんは元々実力的に定評がありますけども、最近特に乗っている、という印象です 将棋は居飛車の正統派で、受けに特徴がある将棋だと思っています いきなり強敵を迎えましたけど、思い切り良く指して、面白い将棋にしたいと思います」
   
聞いていた深浦「森内は好奇心が旺盛な方なので、遊び心で楽しんで将棋を指される印象があります 戦型は、重厚な相矢倉と予想します」
清水「ズバリ言ってしまいますね?」
深浦「はい、言ってしまいます」

先手木村で対局開始 あー、この2人は、駒を升目の下のラインに合わせて置くタイプだな やはり、受けの棋風だから、駒は低く見せたほうがいいのだろうか(^^; 
手がスラスラと進み、ノーマル角換わりの相腰掛け銀になった
清水「角換わりになりましたね」
深浦「んっ・・・(笑) 見事にハズレました(^^; 王位戦で、羽生によくやられた戦型がこの角換わりです その時は木村は後手番で受けに回っていました 後手を持って、イヤな手とかイヤな展開があったのかもしれない それを逆に森内にぶつけてみようということもあると思います」 

2人の対戦成績が出た なんと、木村の12勝、森内の10勝とのこと こ、この数字は! 木村、なんと、森内に堂々の勝ち越しではないか! 衝撃的な数字・・・  木村>森内なの? タイトルを一度も取ったことがない木村と、タイトル通算12期の森内 この対戦成績は、超意外だった んー、でも木村もタイトル戦には5回登場してるか とにかく、森内と22局戦って勝ち越しとは、木村、すげーな
深浦「木村が森内に勝ち越しているのは注目すべきことですよね」

さて、角換わりの相腰掛け銀で、最近プロがよくやる形になっている もちろん、私には細かいことは分からない(^^; 本局も、アマチュアお断りの序盤だ 両者、手待ち合戦をやっている 木村は飛車を振ったのにまた元の位置に戻し、森内は金を上下で手待ち 完全にお互いに2手損だ この序盤、理解できるアマチュアというのが存在するのか?(笑)
深浦「よく見ると、全くの先後同形になりましたね めぐりめぐって」
うん、深浦さん、序盤は解説がなかったけど、別に良かったと思う 難しすぎるから(^^;

木村から仕掛け、全面戦争となった 
この戦型特有の戦いで、盤面の左右両方で戦いが起こっている 木村が時間を使っていて、考慮時間の残りが、木村▲5回vs森内△10回と、差が開いた 森内が反撃して来ている 深浦がその森内の攻めの狙い筋を解説してくれた 流れるような手順で攻めが決まる順を説明してくれる深浦 はあ~、これは見事なもんだな~ 並のアマチュアなら、モロにこのとおり攻めを食らって、あっという間に負けてそう・・・ 

もうかなり局面は進んで駒がほぐれているのだが、森内は1回しか考慮時間を使っていない これも森内の棋力の高さの証明だ 森内の攻めが一段落したが、形勢はどうだろう? やはり、森内の攻めの桂が、木村の守りの銀と交換になったのは大きいか?    
深浦「先手の角換わりは攻めることが多いんですけど、木村がやると受けの展開になりましたね(笑) 後手の森内としては、攻める展開なので満足でしょうね」

ここで、雑談があった
清水「森内はバックギャモンで、今年の夏に世界大会に初参加して、4位入賞だったそうです 周りのみなさんがびっくりだったと伺いました 本格的に始めたのは半年ぐらい前だったという話です」
深浦「すごいですね~」 
うーむ、本格的にやったのが半年ほどで、初参加で世界大会4位・・・ 他のバッグギャモンのプレーヤーは形無しだな~(^^;

そして、両者互いに見えにくい手を連発し、見ごたえのある手の応酬の中盤となった 
深浦「複雑になってきましたねえ 受けのタイプにも2つあって、相手の攻めを無理攻めと見て全部受けるタイプと、攻め合いながら受けの手をひねり出すタイプがある 木村は両方得意ですから」

残りの考慮時間、木村▲2回vs森内△3回か 追いついてきたな 形勢はどうだろう、木村の飛車と角が働きが悪いと思うのだが? 森内優勢か?  
深浦「木村としては、危機感を感じる局面ですけど、木村は堂々としてますねえ」
森内の攻めが、木村の守りの金2枚にからみつき、どうもこれはこのまま寄せがありそうな雰囲気・・・ 森内の勝ちに見える・・・
深浦「木村の守りの金2枚が両方いなくなりそうですね」

しかし、そのときだった 木村が遊んで働きのなかった角を1マス、スッと引いた これに深浦が即、反応
深浦「いや~、気づきませんね~ これは気がつきませんでした はあ~ よく見えますね~ ほお~ これは感心しますね」
清水「木村流の恐ろしさが」
な、何これ? 私は意味が全く、全然わからなかったのだが、深浦の説明を聞いてようやく分かった なんと、邪魔な桂を王手で捨てて、相手の角の素抜きの大技を狙った一手だったのだ! うおー、こんな大技が狙いか、全く油断ならねーな! 

森内は当然ながら木村のその狙いを看破し、いよいよ寄せに入った 木村、耐えれるか? 無理だろうなあ もう、玉が裸だもん 一方の森内の玉はまだガチガチだし・・・
深浦「んー これで大丈夫という木村の判断はすごいですね 普通は選べない順ですよ」

森内が、角を叩き切って、一気に決めに出た あー、これで決まっただろう、ダメだろうな
清水「森内の手、バシッと音が聞こえたような」
深浦「森内がかなりいいような気もするが、実は接戦かな」
考慮時間が2人ともなくなり、▲0回vs△0回 んー? もう木村玉は風前の灯だけど、まさかこれが凌げる(しのげる)ってことがあるのか? まさか?
深浦「常識では森内の勝ちだが、もし木村が勝ったら会心譜」

ええー、これで難しいってことがあるのか 木村の玉は丸裸で森内に圧倒的に攻められている 対して森内の方は囲いがしっかり残っているっていうのに? 
深浦「木村の玉が詰めろの状態になるかどうかは、桂を何枚渡すかによります 私は読みきれません」
木村は両手で頭を抱えている 一方の森内は両手で顔全体をふさいでいる その2人の姿が同時に画面に映し出された しばらく、両者そのかっこうのまま動かず! うわ~、なんという楽しい絵だ(笑) 特に森内、秒読みなのに顔をふさいでいていいのか(笑) 
深浦「いや~、これは面白い将棋になりましたね」

手が進み、木村の攻めが続く ど、どうなる?
深浦「堅かった森内玉に、詰めろがかかりましたね いやー、こういう展開になるんですね 木村が攻めて、詰ませば勝ちという展開ですね どっちが読み勝ってますかね 面白いですねー」
しかし、木村は受けを選んだ 丸裸の木村玉、まだ受けがあったのか すげーな
深浦「詰ますか詰まさないかというところから、またヨリが戻りましたね 普通は戻らないですよ」

だが、この木村の受けに回った手に対しての森内の対応が、冷静沈着だった 30秒将棋ということを全く感じさせず、これがタイトルホルダーだという落ち着きぶり見せ付けた 的確に寄せていき、木村玉を討ち取った 110手で森内の勝ち! いやー、これは熱戦だった かなりの好局だったなー 

清水「一局を振り返っていかがでしょう」
深浦「激しい攻め合いから、森内がペースをつかんだ 森内はそのままどんどん攻めていったんですけど、木村が思いもよらない受け方で、局面が見たこともない形になりましたね 最後に木村が詰ましに行くチャンスがあった気がしますがね 非常に見ごたえのある面白い将棋でしたね」
あー、ここ、私はホッとした 何でって、先週、解説者の康光による総評がなかったからだ もうなくなっちゃったのかと、すごく心配していたのだ 総評、絶対になくしたらダメ! 今週、復活していて本当に良かった(^^;

感想戦で、木村「序盤で打った角が、すごい不発でしたね」
うん、それが敗因だね(^^; でも、よくやったよ その角を活用させた終盤での勝負手、見事だった
終盤の検討になり、木村の受けに回った判断がどうだったかという話になった 
木村「私、詰ますとかそういうのは全然ダメなんで」
実際、木村が受けに回らずに詰ましに行ったら、詰んだのかというのが検討された 難解極まる変化順が示されていた  結局、時間内に収まらなかったが、最後に清水に結論を求められた木村が一言
木村「たぶん詰み 惜しいことをしました」   

ああ~、たぶん詰みがあったってか 30手くらいの王手の連続での詰みっぽいな 惜しい~ 木村が詰ましに行かなかった原因は、「木村の詰みに対する自信のなさ」か・・・ ああー、これ、詰ましたら今年の名局賞ものだったなー 
でも面白い一局だった 実力者どうしの一戦、存分に楽しめた 木村、もうダメかと思われたところからの追い上げ、実に見事だった! 負けたけど、木村のほうの指し回しが印象に残った(^^;
 
そして、終盤の森内の、顔を両手で覆ってしばらくそのままずっと動かなかった姿、面白かったわ 秒読みなのに、盤を見ずに顔を覆ってるって、あるんだね いやいや、楽しい内容だった 実に良かった! NHK杯、先週に続き内容が良く面白い 棋士のみなさん、ぜひこの調子でがんばってください!     
昨日のその1からの続きです
「プロ棋士の多くがコンピュータの強さを本当の意味で認めたなら、自分たちより強いコンピュータの手を見ながら戦って高額賞金を得るタッグマッチという棋戦は、自然と成立しなくなる」と私は思いました

ではなぜ、電王戦で大きく負け越したのに、未だに多くのプロ棋士たちが、自分たちは棋力でコンピュータに劣っていないと思っているのでしょうか? その理由を、深くまで掘り下げて考えてみましょう

この問題の根本にあること、それはズバリ結論から言って、「立場」が違う、これだと思うのです ファンは「見る側」、プロは「やる側」、この立場の違いなのです これが私が出した結論です 将棋指しに限らず、あらゆるスポーツ選手などのプロ競技選手に言えることなのですが、「見ている側は客観的に強い弱いを判断するが、プロ自身は実はそれはしない」ということです

見る側のファンは、過去の対戦成績のデータなどから、この2人の対決ならこっちが強い、ということを考え、予想します しかし、やる側の立場にあるプロにとってはどうでしょうか? 例えばプロ野球で「相手はすごいピッチャーだから、まずヒットは打てないだろうなあ」と思って打席に入るバッターがいたら、それはプロのバッターとしては完全に失格なわけです 「打てる」、「うまくすればヒットを打てる可能性がある」と思わないと、ホントにヒットは出ないわけです

プロ将棋界で考えて、目立った実績のない低クラスのプロ棋士が、羽生名人と戦うことになった場合を考えてみましょう ファンは、所属クラス、今までの勝率、過去の対戦成績、そしてタイトル獲得数の実績などを考慮して、「まず羽生が勝つだろう 羽生のほうが強いんだから」と思うわけです しかし、羽生と実際に戦うことになったそのプロ棋士がその考えでいいでしょうか? 絶対ダメです 「まず相手が勝つだろう 相手のほうが強いから」 そんなことは、戦う本人は考えてはいけないわけです 対局が決まった以上「自分に勝つ見込みがある」と思わないと、勝つ可能性がホントに全くなくなるわけです 所属クラス、過去の対戦成績、実績、そういう客観的なデータをむしろ意図的に排除、無視して、「絶対自分にも勝機がある」と思わないといけないのがプロの立場なのです 

「勝てる、やれる」と思う思考に、根拠があればそれに越したことはないのですが、根拠なんて全くなくても「とにかく互角には戦える」とまずは信じ込まないといけないわけです こういう思考は、他のプロ競技選手にも共通するものだと思います

特に、プロ将棋界は、約160人という少ない人数で、何十年もずっと対戦が続く世界です 
「相手が自分より強いから、今回は対戦せずに、逃げることにする それで負けを回避する」 という選択肢があればいいのですが、それは出来ないのです 
こういう世界に身を置いたとき、いったん「あいつはオレより強い」と結論づけてしまうと、もう2度と勝てなくなることが考えられます どんなにその相手に負け続けて対戦成績がボロボロになっても、「あいつはオレより強い」と決め付けることはしないわけです そんな判断は、「やる立場」の現役プロはしてはいけないことなのです 

一方、ファンは、どっちが強い、という判断付けをどんどんします 「見る立場」のファンとしてはどっちが強いかを考えることは大きな醍醐味なんで、しょうがないです 

もっと、考えてみましょう 
将棋というのは、運の要素が振り駒しか入り込まず、負けると、ものすごく悔しい競技です 負けると全人格を否定されたような気分にすら、なります さらにアマと違って、プロは持ち時間が長く、メイン棋戦の順位戦は持ち時間が各6時間です こんな勝負、アマは体験することがまずないです こういう勝負で、負けたときのプロは、どういう精神状態になるでしょうか? 朝10時から始まって、終わるのが深夜12時を回る、終盤まで難解な局面をどうにか乗り越えてきて、最後に詰むや詰まざるやで競り負けたときのショック・・・ あるいは、事前に何日間も膨大な時間をかけて、その一局のために準備をしてきて、完敗に終わってしまったときのショック・・・ これはアマには想像できない精神的ダメージです

そんなとき、負けた側のプロが、「オレはこの相手より弱いんだ」と思うでしょうか? 負けた直後には、そう思うかもしれませんが、プロはそこから立ち直らなければいけないわけです 何日かしたら、「この前は負けたけど、オレのほうが弱いとは認めない この次は勝つ」と、こう思わないといけないんです こういう「自分のほうが弱いことを認めない、という心の訓練を、奨励会時代から始めて引退するまでやり続ける宿命にある人たち」それがプロ棋士という人たちだ、と思うのです 大変な精神力が必要な世界だな、とあらためて感じます

また、「プロ棋士は棋力が高いので、棋譜を見ればその強さが分かるはず」というのは、必ずしも正しいでしょうか? プロは今度対戦することになる相手を研究するとき、相手の棋譜を調べることになりますが、「相手の戦法の得意、不得意、どういう考え方で指しているか 指し手の善悪」 そういうことは調べていても、棋譜を見るときも、客観的に相手の強さを測っているのではない、そういう面があると思います 

棋譜を見て、研究対象の相手がどんなに好手を連発してすごい強い勝ち方をしていても、「この相手は自分より強い」と心の底から認めてはいけないわけです 次の対戦相手が格上の相手で、その相手の棋譜を何十局と研究しても、「この相手は自分より強い」と思わずにいること、これは苦行に等しい作業で、相当な精神力が必要だと思いますね

以前、鈴木大介プロが、ニコニコ動画でこんな雑談をしていました 
鈴木「屋敷さんは昔からすごく強くて、当時奨励会員だった私と指してくれたんですが、一日中指して、私が何度挑んでも、1回も勝たせてくれないんです ホントに嫌になりました(笑)」 
それでも、そこからがんばって、鈴木プロはA級まで登りつめたのです どんなに負けていても、現状をそのまま認めてしまわない限り、この先に活路はある、そう思って努力して強くなってきた、それがプロという存在なんですよね

つまり、ファンとプロ、この差は単に「棋力の差ではない」ということです 見る立場のファンは、客観的にどっちが強いか分析するが、やる立場のプロはそうではない、そういうことです プロは「相手が強ければ強いほど、実績の差や過去の対戦データなんかは全く気にしてはいけない」そういう考え方が求められる立場なんですよね

このプロの考え方「たとえ相手と自分の差がどれほどあろうが、自分より強いことは認めない」 今まで自分を強くするためにずっと培ってきたこの根底的な考え方を、つまりプロはそのままコンピュータにも当てはめてしまっているんですよね

かくして、プロはコンピュータと戦って負けても、自分たちのほうが劣る、ということは認めないわけです 電王戦で10戦して2回しか勝てなくても、内容がどれだけ力負けしていようとも、むしろ負ければ負けるほど「そんなのは気にもしない、無視する」という思考になるわけです 
 
今までの対戦成績や内容という客観的データでどっちが強いかを考える「見る立場のファン」と、そんなことは意図的に無視することが義務とすら言える「やる立場のプロ」、ここに問題の根本がある、それが今回の私の考察の結論です このギャップ、どうやって埋めればいいんでしょうか・・・? う~ん、この立場の違いから来る考え方の違いは、永遠に埋められない気がします・・・ 

こうして考えると、「プロ棋士にコンピュータの強さを認めさせる」のは、ファン側が思っているほど単純なことじゃない、ということが分かってきます 「コンピュータと戦って、プロが負けたら、プロはコンピュータの実力を認めるだろう 何しろ勝ち負けがハッキリ出る世界なんだから」 ・・・ここまで読めば分かるように、それは見るファン側の論理で、浅はかな考えだったわけです 

「プロがコンピュータの強さをちゃんと認識すれば、2年後のタッグマッチに関してプロが危機感を持って自分たちで話し合いの場を設けるはず」 この考えは、見る立場のファンからの一方的な甘い考えだったのです プロ棋士は「相手の強さを本質的に認めないことを日々訓練している存在」、「そしてそうしなければ相手に勝っていけない存在」なのですからね

あの、私は、そういう「プロ根性」を持っているのがダメだと言っているわけじゃ全然ないんですよ 分かりますよね? プロ根性を持っていなくて、対戦相手が自分より格上だからって、初めから負けると思っているやっている棋士がいたら、そんな対局、私は全く見たくないですもん 佐藤紳哉プロのように、「豊島? 強いよね 序盤、中盤、終盤、スキがないと思うよ でもオレは負けないよ 駒たちが躍動するオレの将棋を皆さんに見せたいね」 対戦相手が強いときこそ、こう言って対局に臨んでくれたら、見ているファンは拍手喝采するわけです

でも、コンピュータという今までと違う全く異質なものが出て来て、「タッグマッチで高額賞金をもらったらどうなるのか」という状況を、今きちんと理解すべき時に、そのプロ根性が、逆に障害となってしまっているのは確かだと思います・・・

「プロ棋士があと2年間の間にコンピュータの強さを客観的に認める可能性、それは極めて低い」というのが、現在私のたどり着いた結論です・・・
 
しかし、話を今後、先に進めるために、棋士たちの考えの背景を知ることが必要だと思ったから、書いたわけです また、ファンの間でタッグマッチについて議論するとき、ファンの議論が堂々めぐりしていてもダメなわけです その議論の中身の向上の一助になれば、と私は思っているのです マジに心からそう思って書いています 今回のタッグマッチの一件、私は本気で深刻に受け止めています

「タッグマッチやコンピュータに関して、一切話し合う必要などないという考えがプロ棋士たちの現状 しかもプロ棋士たちがあと2年の間にコンピュータの強さを客観的に認める可能性は、極めて低い」 では、私たちファンはどうすればいいのか? 2年後から正式に始まろうとしている高額賞金のタッグマッチについて、プロ棋士たちに、今、話し合いをしてくれるように、何か手立てはないのでしょうか? そして、この一件の問題の本質とは? 行き着く先とは? それはまた次回、私の考えを書きたいと思います (その3に続く 来週木曜ぐらいに掲載予定です)
電王戦タッグマッチの話です 私が前回の9月18日に書いた「意見表明」の記事で、席の足跡《CURIO DAYS》のブログで反響をいただきました どうもありがとうございます 今日から短期連載で、3回に渡って電王戦タッグマッチについて考えてみたいと思います

さて、私は「プロ棋士はコンピュータを使った対局では賞金を受け取ってはいけない」と主張しました そして、「プロ棋士のみなさん、この棋戦について、とにかくまず話し合ってください」と書きました 今のところは、プロ棋士たちが「話し合いの場を持とう、作ろう」という動きは何も見られません

2016年から正式に始まる予定のタッグマッチ棋戦は、竜王戦・名人戦に次ぐ高額の賞金がドワンゴ側から用意される、とのこと 優勝者には少なく見ても1000万円以上の賞金が与えられるのでしょう これだけのお金が賭けられれば、プロ棋士が今まで以上に勝つ確率が高い手を選択することはもう間違いないでしょう すなわち、コンピュータに依存する度合いが、去年や今年のタッグマッチよりも格段に高まるのでは、と推測されます

そこで、私は思うわけです
「なぜなんだろう? ネットの24での bonkrasやponanzaの圧倒的な強さを知らなかったとしても、今までの電王戦で、どんなプロ棋士も、コンピュータの強さはもう分かったはず 10戦でプロ側の2勝7敗1分けという数字からも証明され、何よりプロ棋士ほどの高い棋力があれば、棋譜の内容を見れば、コンピュータの強さは一目瞭然ではないのか? こんなに強いコンピュータとタッグマッチでと組んで戦えば、コンピュータの考えばかり採用してしまう危険があるのは明らかではないか 2年後にコンピュータと組んで、主導権をプロ側が握れるとは到底思えない」と・・・

「なぜプロ棋士たちは棋力が高いのに、未だにコンピュータの強さを認識しないのか?」 この謎に深く迫るために、今回はまず、今までのプロ棋士たちの発言をまとめてみました

先日の9月20日のタッグマッチの解説では、藤井プロがこう解説していた場面がありました
藤井「このタッグマッチというのは、コンピュータの言うことだけ聞いていれば勝てる、そんな単純な話じゃないんですよ」
しかし、この発言、これから先のことも見通して言っているのでしょうか?

今年4月に第3回電王戦の第5局が終わったとき、Ponanzaの開発者の山本さんが、こうインタビューに答えていました
山本「去年の10台のクラスタを組んだマシンより、今年の1台のマシンのほうがPonanzaの棋力は強くなっていると思います」 
これが、コンピュータの進歩の現実なんですよね 2年後の賞金つきのタッグマッチのときは、コンピュータはどれだけさらに強くなっているのか、空恐ろしくなります

その同じインタビューの場で、谷川会長はこう答えました
朝日記者「電王戦、プロから見て昨年度が1勝3敗1分け、今年が1勝4敗という結果だったんですが、レギュレーションとかの話はあると思うんですけど、現状はコンピュータがどういう実力にあるのか、ということをお訊ねしたいんですが? 例えばプロ棋士の中で何位くらいとか、プロの棋戦に出ればタイトルを取るんじゃないか、とか」
谷川「非常に難しい質問ですけども、昨年、今年の結果がありますので、やはりプロでも、えー・・・ その・・・ 中位・・・ 以上の実力があるということは認めざるを得ないかなと思っております」

去年の第2回ではコンピュータはA級の三浦に圧勝、今年の第3回ではレギュレーションでコンピュータ側に相当ハンデがあったのにプロの1勝4敗、そんな現状を目の前で見ても、谷川会長は「コンピュータはプロの中では中位以上の実力」という評価なのです プロ棋士は約160人ですから、真ん中は80位です 80位以上ですか・・・ 

何もこういう発言は谷川会長に限ったことではなく、同じ席で、森下プロはこう言いました
森下「プロ側が手元に盤を置いて動かしながら考えることができて、1手15分というルールで指せば、私はトップソフト5台に5戦全勝する自信があります」

先崎プロは、8月に発売された将棋年鑑の中でこう書いています
先崎「今人間とコンピュータの棋力はどうやらいい勝負なんですよ。で、その状態で戦うとどうしても人間は機械には勝てないんです。(中略)人間にとっては勝負というのはそうやって神経をすり減らすものですから。棋力が同じ機械には理屈からいって勝てないんです。」
私はこれを読んで、おいおい、勝てない、ということは棋力に差がある、という何よりの証明なのでは?と思ったのですが、とにかく先崎プロは、こういう認識なのです

他にも、菅井プロが第3回の電王戦出場前に、こう言っていました
菅井「これからはコンピュータのほうが強くなるという意見が多いと思うんですけど、自分は10年ぐらいしたら、人間のほうが強いんじゃないかなと思いますね コンピュータに抜かされることはないと思いますね」  

とにかく、こういう風に、「プロ棋士はコンピュータの強さを認めない」という風潮があるのです もちろん本来なら、誰がどれだけ強いか、という評価は人それぞれで、全く個人の自由なわけです しかし、このプロ棋士のコンピュータに対するこういう捕らえ方が、タッグマッチの問題をはじめとして、「コンピュータに関して、そもそも話し合いをしない」ということに直結していると私は思うのです 「コンピュータはプロ棋士より弱い、どんなにひいき目に見ても互角程度、だからコンピュータについて自分たちプロ棋士が話し合うことなど何もない」 こういう結論が出てしまうわけです プロ棋士たちにとっては「そもそも、話し合う理由がない」というわけです

ただ、全棋士がコンピュータの強さを認めていないのか、と言えば、そうでもないのでしょう 阿部光瑠プロは違いますね
阿部光瑠「ソフトとすごい対戦している人だったら、あれ(三浦vsGPSの△8四銀)を見ても驚かない  何でもやってくるって考えてるのがむしろ当たり前で 自分300局もやってるから分かるんですけど、そうしないとクセも見抜けないので 強いものだと認めてしまって、受け入れて指せば自分も強くなれるんで」

渡辺プロがつい最近出した本、「渡辺明の思考」にはこう書かれています
ファンからの質問(要約)「プロの公式戦において、荷物検査はあるのでしょうか? もしないなら、途中で席を立って現在の局面を調べられてしまう可能性があるのではないですか?」
渡辺「まず現在のところ荷物検査はないです。でも僕は、あったほうがいいと思っています。以前、携帯の持ち込みを禁止しようという話になったのですが、結局はまとまらなかったんです。 (中略)こういうことは言いたくないけど、この一局だけはどうしても勝ちたい、しかも大金が得られる、という将棋で不正をしないと言い切れるんですかね。状況によってはその人のモラルに任せるというのが、かえって酷ということもあるのではないでしょうか。 (中略)ただ、『ルールは必要ない』と考えている棋士が一定数いるので、それに関しては強く言えない部分があります。」
電子機器の持ち込み問題について、今はまだ何も明文化された規制がないんですね・・・

今回はまず、プロ棋士の認識の現状が、どうなっているかの確認でした 次回では、ではなぜ、「プロ棋士の多くはコンピュータの強さを認めない」という、こういう考え方になるのか これを考えてみます この原因を突き止めてみたいと思いました 「プロ棋士の多くがコンピュータの強さを本当の意味で認めたなら、自分たちより強いコンピュータの手を見ながら戦って高額賞金を得るタッグマッチという棋戦は、自然と成立しなくなる」と私は思ったからです

なぜ、電王戦で大きく負け越したのに、未だに多くのプロ棋士たちが、自分たちは棋力でコンピュータに劣っていないと思っているのでしょうか? 「そりゃ、単純だよ、プロは子供の頃から将棋一筋で生きてきて、プライドが高いからだ」という意見がすぐに返ってくることでしょう もちろん、それはそうで、激しく同意なのですが、もっと深くまで掘り下げて考えてみましょう (明日の、その2に続く)
第22期銀河戦、いよいよ決勝だ 栄冠を掴むのは、松尾七段か? 渡辺棋王・王将か? おおっ、聞き手は香川女流王将、そして解説は谷川会長! 豪華メンバーだ さすが決勝、いいねー なお、この決勝の対局日は8月11日となっている

香川「今期、ここまでの銀河戦の印象は」
タニー「16名の決勝トーナメント、かなり若手の名前があったんですけど、いずれも1回戦で敗れた 上位の壁が厚かった その中で豊島を破った田中悠一の活躍は特筆すべきものですね」

松尾は、Fブロックで畠山成幸、屋敷に勝ち 決勝トーナメントで村田顕弘、郷田、羽生に勝ち 今期のここまでの成績は9勝1敗
渡辺は、Gブロックで山崎に勝ち 決勝トーナメントで畠山成幸、康光、天彦に勝ち 今期のここまでの成績は6勝5敗

タニー「松尾は今期非常に好成績 今までなかなか全棋士参加の棋戦での優勝のチャンスがなかったが、準決勝では羽生名人に勝ったことですし、大きなチャンスと思っているでしょう 渡辺のほうは、今期あまり成績が良くない タイトルの挑戦権も逃してしまった しかし銀河戦は非常に相性がいいので、大きな結果を残したいと思っているでしょう 2人は兄弟弟子ということで、20年以上前から対局している仲だと思います 2人とも居飛車党なので、横歩取りになるか、角換わりになるか 後手の渡辺の作戦に注目したい」

いよいよ対局開始 先手が松尾なので、もしかしたら、またアレをやってくれるか、と思ったら、やったー、初手▲5六歩から中飛車! 松尾、決勝トーナメントで先手5筋位取り中飛車を3連投だ 郷田、羽生に続き、これが渡辺にも通用するか? これは見ものだ ワクワクするな~

渡辺の対策やいかに、と思ったら、なんと渡辺は迷うことなく向かい飛車に振った! な、なんと相振り~ 
タニー「もういきなり、予想がはずれてしまいましたね(笑)」
まさかの相振りとはなあ 松尾の作戦は、最近目にする、5筋位取り中飛車の左玉というやつか? と思いきや、松尾は飛車をまた2八に戻した あ、あら、こんな作戦があるの??

香川「振ったばかりの飛車を2筋に戻してしまうという」
タニー「過去に何局かあるんですけど、これは不思議な作戦なんです 松尾は丸々の2手損ですが、居飛穴にスムーズに囲うことができるのが主張です 菅井が最初に指したと思います 初めて見たときは、何をやっているんだろうと思ったけど、丸山を相手に快勝していました それで認められた作戦です」
香川「2手損しても、バランスが取れているということなんですね」
私は全く初めて観た(^^; 丸々の2手損・・・ 自分では指す気がしないけど、色々まだ作戦の可能性って残ってるんだなあ

香川「2人の過去の対戦成績は、松尾の3勝、渡辺の5勝ということです」
全然一方的じゃない、松尾、がんばれ~ ちなみに、私はどちらかというと松尾の応援だ 両者、穴熊に潜り、相穴熊となった 松尾が飛車を2筋に戻したため、松尾▲居飛穴vs渡辺△向かい飛車の振り穴という、対抗形と呼べる形になっている

タニー「松尾は右銀を5段目に出て、積極的ですね」
松尾が動きを見せた 5筋の位を放棄、手を作りにいった 今までノータイムで飛ばしていた渡辺、ここが勝負所とばかりに、すかさず長考に入った そして決断、決戦の順を選んだ! さあ~、どうなる? 松尾は2筋を完全に明け渡し、中央を突破する構想だが、うまくいくか?

本格的な戦いに突入し、銀が交換になった この分かれはどうか?
タニー「渡辺は、自分の好みでない手、違和感のある手は最初から読まないということを徹底してる、合理的 この局面、渡辺は松尾の攻めを余せると思っているでしょうね」
残りの考慮時間に、差がつき始めた 松尾▲4回vs渡辺△10回だ

タニー「松尾は、ここで飛車角両取りに銀を打つ手が一応あるんですけど、その瞬間に渡辺に角を王手で切られて、飛車には成りこまれて逃げられる 結局、飛車も角もタダでは全然取れない 打った銀が丸々残ってしまい、空振りになるから、打たないでしょうね」
と、言っていたら、なんと松尾はその銀を打った! えええーー こ、この手? これ、アマ初段もあれば、打たない手なんだけど・・・

タニー「んー 打ちましたかー」
香川「やむなし、という感じだったんでしょうか」
うわー、この銀打ちは、相当ありえない手だわ もう渡辺の優勢は間違いない ただ、この松尾の銀打ち、香川の言うとおり、他に手がなく、やむなしというタニーの解説だった

渡辺は飛車が1段目に成りこんで駒得、松尾は打った銀が完全に遊び駒 双方、同じ穴熊囲いでも、松尾のほうは銀1枚分、薄い もう渡辺の勝ちで決まったか、と思われたのだが、この勝負、ここからが見所だった
タニー「まだどの変化も、それほど簡単ではない」
んー? 案外、渡辺のほう、後続手が難しいの? 手が難しい? 優勢なことはもうハッキリしているんだけど、具体的な手が見えない? ん、こ、これはめずらしい局面だな

どうする、私ならどうする? 持ち駒、歩以外の小駒が3枚あるから、やっぱり何か攻めるのがセオリーだよなあ 竜と小駒を協力させて、何か攻める手を・・・ んー、これという手がない? あせるなあ と思っていると、渡辺の手、それはなんと、じっと自玉の整備! 金を一つずらし、穴熊をさらに固めた! う、うわーー これ、私も一瞬だけ考えたけど、実際に指すかーーー  
タニー「渡辺は悠然としてますね この後、ゆっくり攻めようということですね」
渡辺、すごい大局観! すごい落ち着きっぷり!

渡辺、このまま終局まで差を詰めさせずに行けるか? 残り考慮時間も、お互いにほぼなくなった 
タニー「渡辺としても、そんなに簡単ではないですねえ」
しかし、渡辺は的確と思える手を指し続けていく どうにかしたい松尾は、底歩を打つためだけに1手をかけて1歩を補充するという、苦肉の策の手を指した
タニー「松尾の充実ぶりを感じる一手ですね」
んんんんーー、松尾、よく指したとは思うけど、それではツライのは明らか・・・

まだ渡辺側を持ってどうするか、私にはわからなかったのだが、渡辺は正解と思われる手を指し続けた すごかったのが、「わざと松尾に攻めさせて、松尾の持ち駒がなくなったところで攻めに転じる」という、高等テクニックを見せたところだ こうやられると松尾は受ける持ち駒がない こ、こりゃ、すげえ・・・ もう勝ち目ないわ だ、だめだこりゃ 

タニー「非常にわかりやすい、渡辺の手勝ちですね」
単純な手数計算になり、渡辺は当然の見切りを見せた 松尾、簡単な詰みの局面まで指し、投了した 90手で渡辺の勝ち 渡辺の完勝となった な、何これ・・・ 圧倒的・・・ 役者が違う・・・

タニー「序盤、松尾が意欲的に右銀を出ていって、渡辺も決断して決戦を選んだ 松尾は、銀交換のあとに意外に早い攻めがなかったのが誤算ではなかったか 松尾の5筋の攻めより、渡辺の2筋の攻めのほうが早かった 渡辺の危なげない勝ちっぷりでの優勝だった 年明けのタイトル防衛戦にも、はずみがつくんじゃないか」

わ、渡辺、つえええええーー もう、完璧じゃん 松尾としてはノーチャンスの内容 渡辺、このめったに見ない戦型を指しこなしたのもすごいんだけど、特に印象に残ったのが、形勢が良くなってからの終盤の指し回しだ 「優勢なのは明らかで寄せ合いの場面だが、手が広く何をしたものかわからない」、そこに「時間が切迫してきて、優勝のプレッシャーがかかっている」というシュチュエーション、並みの人間なら絶対に焦ると思うんだけど、そこでじっと自陣の整備! 

相手のほうが大駒をたくさん持っていたので、長期戦にするのは非常に勇気がいるはず しかしそこで相手に手がないことを見越して、じっくりと遠巻きに迫る、渡辺の大局観のすごさ! これを事もなげにやってのける、こいつは、ただ者じゃないわ 器が違うわー

感想戦で、渡辺「あまり実戦例は多くない将棋ですよね」
松尾「本譜の中盤以降は全然自信がないですね 両取りの銀打ちも不本意だったんですけど、仕方なく打った、遊び駒になってひどい駒ですよね」
渡辺「中盤以降は形勢がいいんで、確実に行こうかと」
松尾「手堅く来られて、しびれました こちらはやる手がないんで」

15分感想戦があったのだが、中盤以降はちょっとさわっただけですぐ終わり、もっぱら、仕掛けがどうだったか、が2人の関心事となっていた ホント、もう、この将棋は仕掛け以後は検討してもしょうがないなあ 松尾は勝負所が全くなかったもんね それだけ、渡辺の中終盤が完璧だった証拠だ 優勢になったとはいえ、寄せ方が難しく、考えにくい手の連続だったのに、全くのノーミス 渡辺、強い、強すぎる・・・ 

感想戦が時間がきて終わったときに、香川さんの声のかけ方がちょっとおかしかった
香川「本日はお疲れのところ、ありがとうございました」
いや、香川さん、棋士は対局が本業だから(^^; 他の仕事で来たならその言葉でいいけど、対局が終わったあとに、棋士に対してその言葉はおかしいと思う(笑)

表彰式になり、タニーから挨拶があった
谷川会長「第22期銀河戦も無事に終了しました 視聴者の皆様方には厚く御礼申し上げます この銀河戦というのは、1年間に100局以上も公式戦が生(なま)で観られるという、非常に贅沢な棋戦でありまして、その中で渡辺二冠が4回目の優勝ということで、優勝には慣れているかもしれないんですけど、今期に限ってはやや不本意な成績が続いているという中で、優勝できたということは非常に大きな感慨があるのでは、と思います ぜひ来期以降も銀河戦をはじめ、囲碁将棋チャンネルをご覧いただければと思います どうぞよろしくお願いいたします ありがとうございました」

タニー、挨拶、やっぱりしっかりしてるなあ 私はこんなスピーチ、紙を見ながらでないとできないわ(笑) だけど1点、「銀河戦は生(なま)で観られる棋戦」と言ってしまうのはどうか 対局日と放送日が3ヶ月も開くときがしょっちゅうあるもん・・・(^^;

株式会社囲碁将棋チャンネルの代表取締役社長の人からも挨拶があった こちらは要約だけ書きます(^^; 
岡本社長「第22期が無事終了いたしました 第23期も引き続き放送を続けてまいりますし、さらなる充実した棋戦に育ってくれればと思います」
運営のみなさん、私はすごく感謝しています ありがとうございます 思えば、銀河戦は運営側からしてみれば、不遇の棋戦だったのですよね なにしろ、第1期から第7期は非公式戦でしたもんね 苦難の時期があったのですからね 銀河戦はよくがんばってくれていると思います、もう一度書きます、どうもありがとうございます!

そして、渡辺に、表彰状、賜杯(しはい)、目録が授与された
渡辺「今日は4回目の優勝をすることができて、大変うれしく思っています 今期は全部で5局指したんですけど、最初に指した山崎さんとの将棋は、もうかなり負けに近い将棋だったので、それを勝った上に優勝までしてしまって、不思議に思っています 決勝戦は一度も負けたことがなかったと思うんですけど、違ったらすいません(^^; ですので、非常に相性がいいなと感じていますので、これからもがんばりたいと思っていますので、視聴者の皆様方には来期以降もご視聴いただけますよう、お願い申し上げまして、簡単ではありますけど、謝辞とさせていただきます どうもありがとうございました」

調べたら、渡辺は銀河戦の決勝では、そのとおり負けたことがないね 2005年に森内名人、2007年に同じく森内名人、2011年に糸谷五段に勝っている  今期はたしかに、vs山崎は負け将棋だった感じで、vs畠山成幸も危ない勝ち方だった しかし、尻上がりに調子を上げていき、vs康光、vs天彦、そして本局のvs松尾、この3局は実に強かった

終わりかと思いきや、まだ渡辺へのインタビューがあった ここまで来たら、私は意地で書く(笑)
香川「それでは、あらためて、渡辺銀河にお話を伺いたいと思います」
渡辺「棋戦の優勝は、普段から目標にしているので、今日勝つことができて大変うれしく思っています」
香川「4回目の優勝ということで、すばらしい成績ですね」
渡辺「ありがとうございます(笑) 自分でも相性の良さを感じています ただ、優勝した後の翌年の成績はあまり良くないので、気を引き締めて次もがんばりたいと思います」
香川「視聴者の皆様に一言、メッセージをお願いします」
渡辺「今期も一年間、ご覧いただきましてありがとうございました 私個人としては大変うれしい結果でした まもなく第23期が始まります 銀河戦以外にも番組がありますので、視聴者の皆様には囲碁将棋チャンネルをご覧いただいて、腕をみがいていただければと思います どうもありがとうございました」
香川「以上を持ちまして、表彰式を終了します 今一度、渡辺銀河に盛大な拍手をお願いします」
そして、優勝カップ、花束を手にした渡辺がアップで映され、番組が終了した

・・・って、おーい、松尾は? 準優勝の松尾、一瞬も映らず! 優勝と準優勝、扱いが天と地ほど違うな~(笑) この前のテニスの全米オープンなんかは、負けて準優勝だった錦織にも、優勝者と並んでファンの前でインタビューがあったけどなあ 錦織は「またこの場に戻ってきたい、次は優勝カップを手にするために」とか、そういうことを言ってくれた 松尾には、インタビューに答える場が全くなし! 厳しい~(^^; 関係者のみなさん、準優勝者にも一言くらい何か言わせてあげて~

いやいや、それにしても、本局の渡辺、なんという強さだったことか 私は松尾を応援していたが、ここまで力の差を見せつけられるとは・・・ 「松尾と棋風が似ている」と言われたことがある私としてはショックがある(笑) とにかく、渡辺が圧倒的な内容で、勝つべくして勝ったね 優勝者にふさわしいわ

これで今期銀河戦が終了した! やったー、私、厳しい週4回の更新を2ヶ月間、やり遂げたー(^^) ・・・もう、来年からは、週4回の更新は無理だわ 体が持たないわ 今期銀河戦は、終盤の10回戦くらいから後は、全部の感想を書いてきたけど、来期から、どうしようか 週3回更新なら出来ると思うんだけどなあ 女流王将戦とかぶってるから・・・ まあ、ゆっくり考えよう みなさま、お疲れ様でした~!