羽生善治 名人vs森内俊之 竜王 NHK杯 3回戦
解説 藤井猛 九段

私はYahooを自分のパソコンの「ホーム画面」にしている
先日、「羽生がケガ NHK杯出場は危うし」とかいう見出しでYahooニュースで報道されたときは、本当にびっくりした
本当にそういう見出しで、クリックしてみないと詳細が出ないのだから、心臓に悪かった 
私のよく知っているほうの羽生さんは無事にしっかりNHK杯に出場しておられる、一安心だ(^^;

今回から3回戦、ベスト16に入った 
ベスト16の表に切り替わったのだが、それが出場棋士の顔写真付きの表になっている
これはいいねー 視聴者への心配りが感じられる ただ、やや顔写真が小さくて見づらいが(^^;
・・・ハッシーは顔がでかいから、大丈夫か?

羽生は1985年四段、竜王戦1組、現名人で、19世永世名人、永世称号を6つ持っている
29回目の本戦出場 2回戦でのvs高橋は横歩取りの持久戦から、うまく手を作って高橋にほとんど何もさせず、圧勝していた

森内は1987年四段、現竜王 18世永世名人 26回目の本戦出場
2回戦では、木村にノーマル角換わり相腰掛け銀でのギリギリの激戦を制し勝ち
 
解説の藤井「羽生は最近はさらにまた、最新型をよく指してますね だんだんと年齢を積み重ねると、少しは変化球が多くなるかと思うんですが、全然そんなことがなくて、どんどん最新型に突っ込んでいくというか、若々しい将棋を指してますね
森内も羽生と同じようなスタイルでやっていると思うんですけども、森内のほうがちょっとベテラン風な感じはありますね 色々やりますね」

事前のインタビュー
羽生「森内さんは、積極的な動きと大胆で力強い受けに特徴のある将棋だと思っています 早指しですので、元気のある、ねじり合いの将棋を指してがんばりたいというふうに思っています」

森内「羽生さんは、今さら私がお話するまでもないですけど、20年以上ずっとトップを走り続けてきて、素晴らしい活躍だと思っています せっかくの羽生さんとの対戦ですので、初心に戻って自分らしい将棋を指したいと思います」

聞いていた藤井「羽生から見たら、森内は力強いんですね たしかに、私から見ても森内は力強いですよ 
森内からすると、若いときから羽生を追いかける立場で、今でもそういう目線で見てるのかな
戦型予想は、羽生自身が今日何に興味があるか次第なんですよ」

先手羽生で対局開始 戦型は、ノーマル角換わりの相腰掛け銀になった
藤井は振り飛車党だから、どういう解説になるか注目された
藤井「ちょっと前までは先後同形からの、先手が歩をたくさん突き捨てて攻めていくことが主でした それが10年ぐらいずっと指されて、現時点では先手良しっていう結論がようやく出たんですね 現時点では、です 全く変わるかもしれませんけどね それが落ち着いたと思ったら、後手が右桂を跳ねないで待機する作戦が見直されて、なかなか大変だなあってことになってるんですよ」
おおーー、藤井、角換わりの解説もうまい! 概要を一気に簡潔にまとめて説明してしまった 国語のテストで「何字以内にまとめよ」という設問がよくあるが、それだと満点だろう(^^;

さて、羽生と森内、両者ともに序盤は研究範囲とばかりにどんどん進む
羽生が右四間から、仕掛けたのもほぼノータイムだった そして「定跡」どおり進んで行っているとのことだ

羽生が攻め、森内が受ける展開  
森内の打った自陣角、△6三角という手が、私には「ん、何だ、これは、初めて見た気がするが?」という一手だった
藤井「この戦型ならではの手ですね」
そして藤井の解説によれば、3つの狙いがある、とのこと 符号が続いて申し訳ないが、▲4五桂を取る狙い、将来の▲4一飛成を防いでいる狙い、そして9筋の端攻めまで狙える角打ち、それが森内の△6三角ということだ
ふえーーー、そんなに狙いが多い角なのか 筋違い角で3つの狙いがあるって、なかなか観たことがないなあ

ただ、△6三角は森内のオリジナルではないとのこと そこから少し手が進んで、
藤井「たくさん実戦例があるから、現局面の進行も今までにあると思う」

ここで、2人の過去の対戦成績が出た 羽生73勝、森内57勝とのことだ
藤井「今年のタイトル戦、名人戦と棋聖戦で2人は指していて、羽生が全部勝った」
この数字、私は森内がかなり善戦していると思った 何しろ、羽生は通算のタイトル獲得が90期、森内は通算12期だからね

中盤の戦い、羽生が森内の玉頭に歩を垂らしたのだが、森内が玉でそれを取りにきた! おおーー、これは勇気がある・・・
チェスでキングが攻めの戦力になる、という手筋に似ているなー (ちなみに、森内のチェス好きも有名)
藤井「力強い受けがさっそく出ましたね 森内が強く出たので、早くも勝負所です 羽生は攻めないといけない」

羽生、どうする・・・ もうけっこうピンチなのかも、と思っていると、桂のタダ成捨て! どうせ取られる桂を捨てて、敵陣を乱す発想か そうか、それがあったか 効果はどうか?
藤井「これは、あれじゃないですか 妙手というか、いかにも羽生らしい手ですね」

藤井「僕なんかだと、『手は考えるもの、ひねり出すもの』なんですが、羽生は『手が見える』 言葉どおり『見える』という状態は、よほど調子がいいときですね 羽生は考えるより先に見える、見えてから確認する、みたいなね」
そうだねえ、羽生は私が観ても、「まず見えてる、そして確認している」としか思えない 「うーん、どうしよう? あ、思いついた! いい手発見!」っていう風に指している割合が、一番少ない棋士なのではないだろうか   
なんか、「楽に勝ってる」という気がするんだよね 2回戦の高橋もそうだ 
羽生は勝ちを確信したら手が震えるというので有名だが、それは「羽生に考えさせた証拠」、ということで、もう対戦相手に敢闘賞をあげたらいいんじゃないだろうか(^^;

他にも藤井はたくさん雑談してくれた 羽生と大山15世名人の違いとか、2年前の羽生のNHK杯5連覇がかかったときに自分が解説者だった、という話だ 

さて、駒損した羽生が攻めなければいけないが、どうなるか、という展開だ
藤井「羽生の攻めが続くかどうか ちょっと心細い攻め」
ここで、驚くべきことが発覚した 森内の△6三角のあの筋違い角、これが8一の桂を守っている、という状態になっているのだ
△6三角は、3つだけではなく、4つの意味があったのだ なんと4方向に具体的な意味がある角だったのだ! こんな角は今まで観たことがない・・・  

ここから、藤井が感心する手の応酬となった
藤井「指されてみればなるほど、です」
藤井「(金を打たれて森内が悪くなったかと思いきや)羽生に金を使わせちゃったほうがいいってことですね 森内の読み筋ですね」
藤井「(清水さんが番組の冒頭に言う)究極の好手、妙手、でしたっけ(笑)」
清水「なるほど、がずっと続いていますね」
藤井「今日は、なるほど、しか言いません」
ここは笑った 藤井さん、今まで序盤のわかりやすい説明、そして豊富な雑談で楽しませてくれてたのに(笑)
終盤は「なるほど」で済ますのが「藤井システム解説者バージョン」(^^;
うん、でもそれがこの将棋に関しては一番いいかもしれないね やっぱり羽生と森内、すごいもん 

終盤、盤上はキツネとタヌキの化かしあいといった様相だ どっちが上を行っているのか?
すると、羽生が森内に手順に金をボロッと取られる、という展開になってしまった 
森内が金を補充した手が、次に初級者でもわかる強烈な狙いがある手で、これでは羽生がツライ・・・ 羽生大ピンチか・・・

藤井「これは森内がだいぶ優勢です 2人の将棋にしてはだいぶ、めずらしく差がつきました 森内の理想的な展開です 相手に攻めさせて、駒得して反撃するという、森内の受け将棋の理想的な展開」
清水「(そういう展開にするのは)すごく技術が要りますよね」
藤井「そうそう、うっかりがまず出ないようにしないといけないです」
清水「森内竜王の真髄(しんずい)が発揮されている感じでしょうか」
藤井「はい、はい」 

そして、森内は飛車取りなんかに見向きもせず、どうぞ取ってください、と寄せに出た手、それが決め手になった
藤井「そうか 解説者は『差がついた』、と言っていたけど、これ以外では難しいのかもしれない」
うーんと、あの、藤井先生、私でもそこでは飛車は逃げない手から考えたいところでしたが(^^; 

残りの考慮時間、羽生▲0回vs森内△4回となった 羽生のほうが先になくなった これも珍しい現象だ
藤井「羽生マジックが出るんでしょうか」
と言っていて、これでまだ助かるかも?という手順を藤井は指摘していたが、結局、羽生はマジックを出すことはなかった

羽生「負けました」 100手で森内の快勝となった
私は一瞬、羽生が森内に握手を求めるか、と思ってしまった チェスを観たのが効いているな(^^;

藤井「森内は手堅いイメージがありますけど、力強い受けと最速の寄せで、森内のいいところがいっぱい出た将棋でした」

内容は濃かったと思うが、一気に終局になったことも手伝って、早い終局時間だった
感想戦が20分間ほどあった 清水「仕掛けのあたりから、でよろしいですか? では、お願いします」
うむ、清水さんのこの誘導、それはとてもいい 前の司会の矢内さんは何も言わず、感想戦の時間があまりないのに、別にポイントでないすごく手前の局面から感想戦を始めてしまうパターンが度々あった
あと、対局者の2人に、「20分間、時間があります」というように時間を知らせてあげてほしいと思う

ただ、本局の感想戦は、私には何を言っているのか、難しくて不明だった(笑) 
あの最後の藤井の指摘した「玉の逃げ道を開けて、粘れるかも」という変化はやって欲しかった・・・
森内が「これは手拍子でしたか こっちもありましたかね?」という感じで発言していたのが、蛇足と言えば蛇足だった あー、たまたまうまくいった面もあったわけか(^^;  

本局は、確かに差がついたが、満足だ 藤井さんの楽しいトーク、森内の力強い玉上がりの受け、何より4方向に意味があった△6三角・・・ △6三角は、取られることにより、その役割を完全に全うし、勝因そのものとなっていた
この△6三角は「4方向に意味がある見事な角打ち」の代表例となるだろう この角が9筋の端攻めまで狙っているという意味を解説していた藤井さんはさすがだ、他の解説者なら指摘できたかどうか
羽生にはもうちょっと粘ってみせて欲しかったが、まあ仕方ない 
森内竜王が受け将棋の本領を発揮して羽生名人を上回って快勝、うん、面白かった!
素晴らしい企画だったです とても面白かったです
なんで、これがもっと早く実現しなかったか、と思えるくらいでした

NHKの夜7時のニュースでも、5分以上にわたって取り上げられていました

私のチェスの知識は、ルールは全部じゃないけどだいたい知っている、それくらいです
キャスリングは知ってるけど、アンパッサンって、なんだったっけ? そういう感じです
大阪に住んでいたとき、友人と20局くらい指しました 
ただ、お互いにあまりにヘタすぎ、駒をうっかり取られたほうの負け、そういう勝負でしたね(^^;

(なお、今回の出場者たちのコメントは、あくまで「だいたいの感じ」です いつものNHK杯の記事のような精度ではメモを取っていませんので、参考程度にしてください)

・解説していた日本人チェストッププレイヤーによれば、チェスは先手勝率が55%ほどとのこと
私はもっと差があるのかと思っていました
将棋では2011年度のプロ棋士の先手勝率が54%ほどですから、そんなに変わらないですね 
ただ、どれくらいのレベルのチェスプレイヤーどうしの数値なのかはわかりませんでした
それと、チェスでは先手が引き分けに持ち込める確率っていうのが別にあるはずなので、将棋と一概には比べられませんね

・羽生さんは日本人トップレベルだが、カスパロフさんに勝つには絶望的な実力差があるとのこと
レーティングでは羽生さんは2400点、カスパロフさんは2800点くらいだろう、とのことで差が400点というのは、もし1局でも引き分けたらすごいこと、だそうです

・チェスは駒音が基本的になし あっても置くときのコトッという音くらい これは寂しいです(笑) 将棋のパシッという駒音、私は大好きなのです

・チェスは握手に始まり、握手に終わる これは私は知りませんでした 握手するのがマナーとのことです

・チェスはだいたい将棋でいうところの80手前後が平均手数とのこと 
ただ、チェスは先手後手の手を一組で一手と数える(それは私は知ってました)ので、それだと40手前後ということになります 

・カスパロフのレベルでは4割くらいが引き分けになる、との解説者の談 カスパロフさんのレベルの実力者どうしが戦えば4割は引き分けになるんでしょう 
1996年のディープブルーの対戦では、カスパロフさんから見て3勝1敗2引き分け、1997年のディープブルーとの対戦では1勝2敗3引き分け、というのは私は知ってました そして再戦を望んだカスパロフさんに対して、IBM社は「もうプロジェクトは終了しました」と回答 その後、ディープブルーは解体処分 ・・・あまりに鮮やかなIBMの勝ち逃げ(笑)

・解説者は、グランドマスター(GM)は世界で千人くらいいる、チェスで食べていけるかどうかは自分しだい、とのコメント

・解説者は「チェスではもう将棋の電王戦のようなことは行われていない、コンピューターは局面をチェックするのに使っている」とコメント

・視聴者からの質問コーナーで、「電王戦タッグマッチに相当するアドバンスドチェスでは、人間の考えの介入する余地があるのか」という、注目される質問がありました 解説者は「終盤で駒数が少なくなったときに、ぼんやりした手が必要なときがあり、それがコンピューターにはなかなか指せないことがあるのでは」と、やや語尾を濁した回答でした 

・対局の内容自体は、私には皆目わかりませんでしたが(笑)、解説を聞いていると、1局目は後手の羽生さんが駒損から不利になり、そのまま押し切られるという、完全な力負けだったようです
・2局目は先手の羽生さんが積極的に出て、リードしたかも?と2人の解説者が言っていましたが、「千日手」模様になってしまった 打開の権利があったのはカスパロフさんだったが、まあこのまま引き分けにして終わるだろう、という雰囲気で解説していたところ、カスパロフさんが打開! 驚愕する解説者2人(笑) そして解説者2人がびっくりする構想の手で、見事に羽生さんを投了に追い込んで、カスパロフさんの勝利 解説者の「(羽生さんの手の)何が悪かったんですかねー 全くわからないですねー」が印象的でした 解説者は「カスパロフさんを本気にさせたのは、羽生さんの実力のたまもの」と大評価

局後の感想戦やインタビュー、長かったので、面白かったところだけ
カスパロフ「私が序盤で悪手を指して悪くしたあとは、エネルギーを全部使ってどうにか生き残る展開になった 今日の対局は、私にとっては負けると失うものが多かったので、プレッシャーだった」

将棋とチェスの切り替えをどうやってしているのか、と聞かれた羽生「切り替えが難しいので、今日、私が将棋をやったら、とても弱いと思います(笑)」と回答 これは面白かったです 羽生名人に将棋で勝つ秘訣、それは対局直前に羽生さんにチェスをやらせる、これだったんですね

・カスパロフさんは感想戦では、1局目の後も2局目の後も、ひたすら内容の技術論に没頭し、さながら、ひふみんの「しゃべり出したら止まらない解説」のよう(^^; 
進行の藤田女流が「次がありますので・・・」と恐縮していた(笑) 藤田女流は、チェスについて勉強してきた、とのことで好感度UP やはり、藤田女流は私の中で、全女流棋士中、ナンバー1の最高の進行、聞き手役ですね


今回のこの企画、私にとっては最高でしたね なんで、もっと早くこういうのが実現しなかったのか、と思えたくらいです
将棋をやっている人って、チェスにちょっとくらい興味があるのが自然ではないですかね
もちろん、実際に自分がプレーするかどうかは別問題として、チェスの試合って、どんな感じでやってるんだろう?とか、思うはずです 以前から、羽生さんがチェスをやっている姿を観て見たい、と私は思っていました それが観れて、大満足でした

カスパロフさんはチェスの普及、羽生さんも伝説の人物と対局、それぞれ、双方得るところがあって、観ている人にも「チェスってこんな風なんだ」と思えただろうし、発見もあったと思います 私にとって、素晴らしい企画でした、良かったです!!
http://live.nicovideo.jp/watch/lv198374968

色々と発表がありました まとめておきます

・角川歴彦という偉い人がドワンゴ主催の電王戦関係に関するエグゼティブプロデューサーに就任
角川さんには谷川会長からアマ五段の免状が授与された

・来年3月から始まる電王戦FINALの対戦カード発表

斉藤五段vsApery 3月14日
永瀬六段vsSelene 3月21日
稲葉七段vsやねうら王 3月28日
村山七段vsPonanza 4月4日
阿久津八段vsAWAKE 4月11日
(曜日はすべて土曜日)

プロ棋士側にはコンピュータ対策の講師として、西尾六段がついているとのこと
対局会場はまだシークレット、との川上会長の談

・そして元チェスチャンピオンのカスパロフさんによる振り駒が行われ、歩(表)が3枚出て、プロ側の3局先手が決定
斉藤、稲葉、阿久津が先手番 永瀬、村山は後手番と決まった

・11月28日、すなわち、あさってにカスパロフvs羽生のチェスの対局が行われるとのこと
先後1局ずつ、2局行われ、持ち時間はチェスの早指しルール 25分で1手につき10秒追加

・森下電王戦システムというルールで、大晦日にツツカナとの対局が行われる
持ち時間は3時間、切れたら1手10分
森下九段「(このルールなら)十冠王以上に強くなるんじゃないでしょうか」
川上会長「まだ公平なルールではないと思う 新森下ルールをまだ提案していただければ」
森下九段「試しにこのルールでやってみたら、ソフトの精度もすごい上がってびっくりしました」

・トヨタがスポンサー主体となって行われる、「リアル車将棋」 人間将棋ならぬ、自動車将棋をやるとのこと
「最大」の将棋で、違った車種の車を駒に見立て、運転者によるドライビングテクニックが見ものとのこと
2月8日に西武ドームで行われる 対局者は羽生名人vs豊島七段


カスパロフさんvs羽生さんのチェスでの対戦は楽しみです
しかし、他の企画は・・・ なんか・・・ 
2時間以上にわたった記者発表会の全体を通して、もう連盟は、ドワンゴにとことん付いて行って、どんなことでもやっていきますっていう感じが私には見受けられました 
川上会長は「電王戦(コンピュータを使った何かしらの将棋)をますます盛り上げていきたい」という趣旨のことを言っておられました 5vs5はもう来年でFINALなのに、まだまだ何か色々と企画しておられるようです
まあ、連盟が「ドワンゴの企画に乗っていく」という方針を決めたというなら、もう仕方ないかもしれません
ふーー・・・
前回の第1局のとき、反則規定を見直したのだが、そのとき私が今まで知らなかったことがあった
連盟の規定では、以下のようになっている
「対局者が秒読みの最中に駒を手から落とした場合には、指で盤面部分を押さえ、どう指すかを言えは着手の代用と認める。」
(「言えは」は私の誤字ではなく、連盟のHPの誤字)

私は符号を言うだけで、着手の代用になる、と今まで思っていた 
「指で盤面部分を押さえ」なければならなかったのだ
確かに、対局中に「7六歩・・・」などと独り言をつぶやいたとき、それが着手とみなされてしまう規定では、ダメだ
「指で盤面を押さえ、かつ、どう指すか言う」、これが規定だったのだ 今まで私は知らなかった 符号を言うだけでいいのかと思っていた 
ただ、秒が切れそうで慌てている最中に、自分の指したい手が盤の遠いスミの升目だったりした場合、指で押さえるのがうまく出来るのか・・・(^^;

さて、気分を変えて第2局だ 第1局は内容は清水の逆転勝ちだった
本局の解説はハッシー、聞き手は安食女流だ 立会人は中川さんだ 

香川は通算53勝31敗 0.631 服装は、落ち着いた色のスーツっぽい服だ
ハッシー「香川は振り飛車党なんですけど、最近ではめずらしい角道を止める古風なタイプです (そういう作戦は)けっこう僕好きなんですけどね あんまりパッパと動いていくのは好まないのかもしれない じっくりした棋風なのかもしれないですね」
うーむ、このハッシーの香川さんに対する棋風分析はどうなのか たしかに前局の第1局は角道を止めた三間だったが、前期女流王将戦では早石田系も2局指しているし、里見さんとのタイトル戦では2局、居飛車を採用している
 
清水は通算567勝222敗 0.719 服装は、見た目に鮮やかな黄緑色のブラウス ・・・清水さん、NHK杯の司会のときでも、このくらいの色の服でいいんじゃない? NHK杯ではかなり地味な感じが(^^;
ハッシー「清水は居飛車党の本格派 そんなに玉をガチガチに固める感じじゃない ずっとそういうスタンスを変えない」

ハッシー「対抗形になるのは間違いない」
対局開始の一礼をするときの、清水さんの背筋の伸び具合といったら、もう、ホントすごい! ピーンと伸びており、江戸時代の武士の作法にのっとっているようだ 茶道を長年やっている成果だろうが、礼ひとつでここまで感心されられるとは(^^;

先手香川で▲ゴキゲン中飛車+美濃vs△居飛車+左美濃になった
アマチュアどうしでよくあるような戦型になり、戦いが起こって中盤が続くが、どうもハッシーの予想手と違う手が続く
両者、軽い?疑問手を出し続けているようだ 
ハッシー「んー これでは香川が苦しい」
ハッシー「清水も攻めあぐねた感じ」
こんな解説が続く 局面は、戦いが始まって手数が進んだわりには、双方あまり敵陣に攻め込んでいない

ハッシー「香川は苦しい時間が続いている 清水は悪手さえ指さなければ負けづらい」
と言っていたのだが、清水が桂を単騎で跳ねて攻めて行った その桂がすかさず香川に狙われた
ハッシー「清水変調、中途半端に攻めてしまった」 

そして、形勢はまた混沌、形勢互角なのはいいのだが、お互いに相手陣に駒が行っていない
安食「どこを攻めたらいいか、わかりづらい将棋ですね」
ハッシー「香川が勝つまでは気が遠くなる」
うわー、なんか、グダグダってことか・・・(^^; いつ終わるのか・・・

が! ここで、香川が初めて魅せた この一局の白眉(はくび)となる、強手一発! 竜を受けに使い、捨ててしまうが自陣を安全にする手だ おおー、この発想はすごい!
安食「すごい手が出ましたね」
ハッシー「勝因になるか、敗着になるかです」
安食とハッシー「香川は度胸がありますね~」

そしてさらに、香川は清水の攻めを放置して、強く攻め合った 気合いの一着! これもハッシーが全く考えなかった手だ
これが通るのか・・・ そしたら、通った! 見事に成功、形勢が一気に香川に傾いた
ハッシー「これは逆転しました 香川が良し」

とどめとなったのは、香川の自陣の美濃囲いを再構築する守りの手だ まだ攻められていないのに惜しげもなく持ち駒のカナ駒を投入、「負けない指し方」を知っている、「順位戦の手」とか「三段リーグの手」とかいわれる類の手だ  
あとは、一手一手の寄せを着実に指し、香川の勝ちとなった 149手で香川の勝ち

ハッシー「清水が優勢だったが、中途半端が重なって逆転を許してしまった 清水にとってはちょっと悔しい一局になってしまったですね」
安食「香川の勝負手も印象に残りましたね」

局後の勝利者へのインタビュー
香川「分かれはちょっと苦しかったと思うんですけど、終盤にチャンスが来たかなっていう感じです
(竜を受けに使い捨てた一手が、見ていて印象的だったがどうだったか、安食さんの質問に答えて)
だいぶ苦しかったと思うんですけど、自玉が安全になって駒を盤上に増やしていけるので、勝負手で自信を持って指しました
(最終局への抱負は)とりあえず2局で終わらなかったことにホッとしているんですけど、ここまで来たので全力で指したいと思います」

本局は、全体にお互い疑問手が多く、あまり良くない内容だったと思う この2人の強さはこんなものではないはずだ
ただそんな中で、香川さんの「竜を受けに使い捨てて、自陣を安全にした勝負手」 あれがキラキラ光っていた あの一手は男性プロでもなかなか指せないだろう
残すは最終局、お互いに持っている力を出し切って欲しい! ・・・もう結果は知ってるんで(笑)
畠山鎮 七段vs熊坂学 五段 NHK杯 2回戦
解説 中川大輔 八段

お、今日はハタチンとクマーか クマー、1回戦の香川女流との戦い、本当に見事だったよ 今回も力を見せるか? そして解説は中川さんか、やったあ、私は中川さんが好きだ(^^; 

ハタチンは1989年四段、竜王戦2組、B1 1回戦で佐藤慎一に勝ち 17回目の本戦出場
佐藤慎一との一局は、相矢倉でわずかなスキを見逃さず、佐藤慎一にほぼ何もさせずに完勝だった

クマーは2002年四段、竜王戦5組、フリークラス NHK杯は初出場
1回戦で香川女流に勝ち そのときの解説者の中村修さん(香川女流の師匠)は、終盤で際どくなったときにクマーの応援をしたのには爆笑した(^^; 中村「取れるか、取れるか、熊坂ー!!」

中川「ハタチンは攻め将棋で強烈なパンチを繰り出す 私も何度ももらいました 『鎮(まもる)は攻める』と言われています 最先端の定跡に精通している クマーは攻守にバランスが取れた将棋 居飛車、振り飛車、両方指す 最先端の形ではなく、自分の力が発揮できる形の作戦を練っていると思います ハタチンが攻めて、クマーが終盤で体(たい)を入れ替える感じの展開になるだろう」

事前のインタビュー
ハタチン「熊坂五段は1回戦の将棋でも非常にしぶとく、手が見えている印象でした 奨励会時代から非常に早指しの手の見え方が良くて熊坂さんの将棋が始まると、東京の控え室では何人かで囲んで、みんなで盛り上がって観ていたように思います 私も年齢的には早指しがキツイといわれる年齢ですけど(45歳)、このNHK杯は出場するのも楽しみですし、1回戦も力以上のものが出せたと思いますので、今日も実力以上のものを出そうと思っております」

クマー「畠山鎮七段は関西棋士の仲でもバリバリの攻め将棋 ハードパンチをうまくかわすことができるか、と考えております 最近少し調子がいいので、駒を前に前にと思って強く指したいと思います」

聞いていた中川「ハタチンは謙遜(けんそん)されてますね ハタチンは早指しも得意で、手もよく見えると思いますよ クマーは最近好調で、各棋戦でよく白星を重ねています ハードパンチだけはもらわないほうがいいかもしれません(笑)」

さて、先手ハタチンで、▲居飛車vs△角交換四間飛車になった 流行の戦型だ
ここで、衝撃的な発言が中川から出た
清水「最近、熊坂さんはこの戦型をよく指されているようなんですが」
中川「あ、そうですか」

えええー、「あ、そうですか」って何? 解説者なのに、対局者が最近どんな戦型を指しているかを知らないの? 下調べを全然してきてない、対局者の最近の棋譜を全然見てきてないってことだ そんなのあるか?   
あまり知られていないことだが、プロ棋士と観戦記者などの関係者だけがアクセスできる棋譜のデータベースがあるのだ それを使えば、プロ棋士の誰が最近はどんな戦型を指しているかなんて、すぐ調べられるはずなのだ 戦型なんて、序盤だけパパッと見れば済む話ではないか 解説の仕事って、収録日の当日に決まるものではないだろう 下調べする時間があるだろう それなのに・・・ うーん・・・

気を取り直して、続きだ(^^; 
中川「このクマーの作戦(角交換四間飛車)は、後手番のときに使い勝手がいいんですよ 先手、後手に関係なく指せます いつでもね」 
うむ、わかりやすい解説だ
中川「位(くらい)を取るということは、自分の陣地を広くして、相手の進展性を奪うんです」
うむうむ、わかりやすい 中川さん、解説自体はとてもいい 

清水「クマーと中川さんは仙台の同郷ということなんですね」
中川「あ、そうです 私が奨励会の幹事をやっているときに、クマーがちょうど四段になったんですよ 三段リーグが混戦ぎみでそのワンチャンスをつかみましたね そういった意味ではクマーは勝負強いです」

気になったので調べてみると、クマーは平成13年からの後期三段リーグで13勝5敗の成績で昇段を決めている この成績なら例年並みで順当と思うが、最終戦で順位1枚上の相手が負けたために、クマーがギリギリ昇段をゲットしている その順位1枚上の人は高野悟志三段(当時)、大平が最終戦で高野に勝っている 大平はそのとき16勝2敗のダントツの成績で昇段、大平は最終戦はすでに消化試合だったのに、全力で戦った、ということだ クマーは大平に恩がある、ということか?(^^;  高野三段はその後、年齢制限で退会、結局プロになれなかった・・・ やはり三段リーグは厳しいな・・・ (順位戦データベースという個人様が管理している神サイトがあり、そこで調べられるのです)

さて、まだ戦いが始まっていないが、中川さんと清水さん、色々と雑談してくれるので、楽しい
中川「この戦法は終盤が激しくなります 寄せのメドを立てておかないとね 戦法の質っていうのを見極めないとね 角換わり腰掛け銀が激しくなるのと同じこと」
うむ、戦法の質を見極める、これは非常~に大事だと思う ノーマル振り飛車の美濃囲いが居飛穴に負け続けたのだって、要するに戦法の質を見極める目がなかった、ということだろうし、△8五飛が出始めた頃は、先手側は全く戦法の質を見極められずにボロボロに負けていった  

角を持ち合い、ハタチンの▲居飛車+銀冠vsクマーの△向かい飛車vs美濃だ
まだもう少し駒組みが続くだろう、と思って観ていたところ、突然ハタチンが仕掛けていった 美濃囲いのコビンを攻める、積極果敢な攻撃の一手! 
中川「あ いきなり行った こりゃもう、(この手には)畠山じるしがついてます ハンコがついてますよ 畠山、ってね これは私には指せない」

局面が進み、持ち駒の角を手放して1歩得したハタチンがいいか、角を温存しているクマーがいいか、形勢は微妙のようだ 
中川「クマーの金銀が乱れたと見るか、厚くなったと見るか」

ここでまた雑談があった ぜひ書き残しておきたいので、書いておく(^^;
中川「私と畠山さん、東西の奨励会の幹事をやっていたんですが、時期が同じで、よく電話で幹事の方針みたいなものを話し合ったことがありました 畠山さんは奨励会員に厳しくてね それはいいことなんですよ 棋士になるまで、色んなことを学ばなくちゃならない 将棋以外でね そういう事を教えてくれる先輩ていうのは少ないんでね 幹事がある程度、厳しくやらないとね 怖い人がいると、人間、謙虚になっていきますのでね」
清水「関西の若手の活躍されている方にお話を伺いますと、畠山さんの厳しさに感謝されている方が多くお話聞きますね」
中川「今、関西で活躍している若手は、たいがい畠山さんにお世話になっている人たちだと思いますね」

これはとてもいい話だと思った ハタチン、トーナメントプロとしてはさほど目立った結果は出していないが、今の関西の若手たちの成長がハタチンのおかげだとしたら、素晴らしい功績だ ここ10年くらいで、関西の雰囲気が変わったのは有名な話だ
(ちなみに、畠山鎮をウィキペディアで調べると、糸谷を指導した話が書いてあります)

盤上、まだ本格的な戦いになる様子がない、と思っていたら、クマーに好手が出た 軽く歩を突き出す、柔軟な着想! しかもノータイムだ
中川「うまい手、軽手、なるほど! たしかにクマーは自分で好調と思ってるだけあります」
清水「クマーの好きな駒は『歩』とおっしゃってまして、そのものの一手ですね」
おおー、清水さん、そんな情報まで調べてきていらっしゃる、実にいいね!

手が進み、クマーにまた感心する一手が出た 当然の一手と思われる手をすぐ指さず、しっかり考えてもっといい手を見つけ出したようだ
中川「戦前のインタビューで、『駒を前に前に』って言っていたのが表れてますね 好調だと、こういう細かい応手が見えてくるんですよ」 
 
ハタチン、追い詰められたか 有効な手がなさそう・・・ 
ハタチンは銀を打ったが、それはさっき中川に「ここに銀を使うのは無駄使い」と断言された手ではないか 
中川「これはクマーが優勢 打ちたくない銀だからね」

中川が「朝メシ抜いてもこの一手」という手をクマーはもちろん逃さず、差がついた様子・・・ これはクマーの会心譜か?

が、しかし、ハタチンもあきらめない 自らの馬の利きを止めてしまうところに桂を打つという、実に考えにくい手だ
中川「勝負手、強い手だな」
クマーも気合いよく対応 
中川「善悪はわからないけど、強い手ですよ」
ハタチンはさらに勝負手を続けた 一見、ぼんやりして狙いが一つしかない角打ち、しかしこれが打たれてみると、なんだか厳しそう・・・?  んー? ええー? これ、厳しいのか?
中川「しぶとい手ですねー どっちが勝つかわからないねー」

おおお、なんか、すごいいい内容になってる、観てて面白い 好勝負!
そして、クマーが金をぐいっと出たところで、盤上のボルテージは最高潮に達した
中川「す・ご・い手だね~ あ、こう! あこれ、何かわかんないけど、いい手ですね 何だかわかんないけどいい手(笑)」
見ごたえ充分、これは楽しい! 両者全く引かないとはこのことだ 

一手違いの寄せ合い、いよいよ最後の勝負
クマーが攻防手を放ったと中川が解説した直後だった ハタチンは王手王手で迫るのかと思ったら、クマーの玉頭に馬を作ってじっと手を渡した!
中川「下駄を預けましたね なるほど いい手だね ハタチンが残してるかもしれない」

おおー、確かに、これは・・・ ハタチン、自玉の安全度を見切り、相手を受けなしに追い込む、絶好の判断か!! 
中川「クマーの金が出たのがどうだったかな いい手に見えたんだけどね~ それより、ハタチンの迫り方がうまかったですね」 
いや、これはホント、ハタチンの寄せの構図の描き方、これがうまかったとしか言いようがない ハタチン、つ、強い・・・
93手でハタチンの勝ちとなった 

局後、クマー「いやー ちょっと前に行き過ぎちゃいましたねー」

中川「クマーが非常にうまく指していて、優勢だったと思うんですけど、ハタチンの意表をつく(そっぽの)銀打ちでプレッシャーをかけたのが巧みでしたね あれで優劣不明な終盤に持ち込みましたんでね 最後、クマーにはもうちょっと手段があったかもしれません」

これ、本局はすごく面白かった、良かった! クマーは負けたけど、途中、いっぱい良い手を見せてくれた 好調なのが随所に伝わってきた 「前に前に」っていう積極性が最後は裏目に出たかっこうだが、これはもう仕方ない クマー、よくやった

そして、そんな調子の良いクマーの指しまわしに、見事に耐えて逆転勝ちを決めたハタチン、強かった! さすがB1棋士! あきらめないで見えづらい勝負手をよくぞ連発したものだ 最後にクマーの玉頭に馬を作って手を渡した決め手、あれはいつから読み筋だったのか・・・ 全くすごい これは偶然の勝ちではない、ハタチンの構想力のたまものだ 本当に感心した クマーは玉頭が薄かったんだね クマーの頭が薄いという弱点を見事に突いたのだから、さすがだ!!

感想戦でも、ハタチンは「中川流の金上がりで、ガッ!と」としゃべりながらその手を示してくれて、マニアをニヤリとさせてくれた

今週は雑談、そして将棋の内容、共に充実していて大満足だ
解説者が雑談で楽しませ、丁寧に説明し、対局者が解説者の予想を上回る手をやって見せてくれる、これは理想的なあり方だと思う 
クマー、負けたけど、良かったよ! そしてハタチン、会心の逆転劇、お見事!!

でも一つだけ、これから出てくる解説者のみなさま、対局者の最近の棋譜ぐらい、調べてきてください(^^;
一方、清水さんの事前の情報収集能力、努力はとても素晴らしいですね! それに関してはナイスです

来週は羽生vs森内、これは見逃せない!!
連盟の反則規定「対局者以外の第三者も反則を指摘することができる。」
この意味するところを、もっと考えてみました

そして、私が出した結論はこうです 「この規定は撤廃したほうが、スッキリする」

昨日の私の案、あれも一案で、あの案に変えれば、現状よりもずいぶんマシになると思います
しかし、さらに考え、もういっそ、この条文は撤廃する、これが一番いい、そう私は思いました

「対局の勝敗を決めるのは対局者 反則行為があっても、対局相手が指摘しない限り、反則にはならない」
もう、これでスッキリしますよ

田丸九段は、自身のブログで「対局者以外の第三者(立会人・記録係・観戦記者・棋戦関係者・観戦者など)が反則を指摘しても、助言にはあたりません。」と書いておられます 2011年11月の見解です
http://tamarunoboru.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-17ff.html

田丸九段といえば、立会人の経験も多く、プロ棋士の中でも物知り博士として知られ、今年6月の連盟の総会のときには議長を務めた人です 
「第三者」の定義を連盟はHP上では公表していませんが、田丸九段は、「観戦者」が反則を指摘できる、という認識なのです 
これは、恐ろしいことですよ 全くの一般人が、反則を指摘する権限がある、ということです 今回の女流王将戦の件でいえば、大盤解説場に居たお客さんが、ダッシュで対局場まで走っていき、対局室に飛び入って、「反則です! 反則負けで終局となります」と宣言する権限がある、こう受け取られる可能性がありますよ 
今回の香川さんのケース、けっこう微妙でもあったので(私は反則行為だと思いますが)、たとえそのお客さんの判断が間違いだった、と後から判明しても、ただお客さんは「権限を行使しただけ」、そういうことです 

今は、ニコニコ動画などで対局の模様が生配信されている時代です ニコニコ動画では、匿名で観戦者のコメントが流れ放題です 「第三者」の権限を持つ人が、恐ろしいほどたくさん居るのです 
「第三者」の権限を観戦者にまで与えてしまっては、とんでもないことになりかねない、そう思いますね

田丸九段は、「現行の対局規定は1989年に制定されました。」と書いておられます 
この「第三者が反則を指摘することができる」はいつ条文となったのか、それは私にはわかりません

そもそも、なぜこの条文ができたのか、私の推論ですが、おそらくこうではないか、と思うので、書いておきます
「反則をたびたび平気でする偉い先輩棋士が居た しかし立場の弱い後輩棋士は、反則を指摘するとその後にイジメなどにあうかもしれないので、なかなか指摘できない そこで、第三者にも助けを求めるべく、この条文ができた」
私の推論ですが、これが真相ではないでしょうか 

今年の将棋世界11月号、つまり先月発売された将棋世界に、河口俊彦さんの記事に、こうあります
この記事は重要と思いますので、ネット上に挙げておく必要もあると思い、少々長いですが転載させていただきます

将棋世界2014年11月号 P124~P125
「評伝 木村義雄 第17回 関西棋界の状況」より 【記】河口俊彦
『昭和18年、戦時下にあっても、名人戦その他の対局は行われていた。しかし、第4期、第5期についていえば、ただ行われたというだけの、内容のないものだった。戦火はひろがり、将棋を指すどころではない世相であったことも考えなければならない。そうだとしても、木村以外の当時の高段者達は堕落しきっていた。新聞将棋が盛んになるにつれて、棋士の懐が豊かになっていったのは、これまでに書いた。それはよかったのだが、そのお陰で皆、遊び事に興ずることになった。大成会の幹事長の金子金五郎ですら、飲む打つ買うに明け暮れる、どうしようもない人になっていた。
また対局マナーもだらしないもので、待った、は当たり前のこと、とはいわないまでも、かなりあったらしい。念のため書いておくと、相手が指した手を見て、待った、はさすがにしない。指してしばらくして気が変わるとか、ポカに気がついて、指し手を変える、という類の、待った、である。名棋士の花田長太郎も、しばしば、待った、をしたらしい。昭和11年の第1期名人戦挑戦者決定戦でもあったと、観戦記に書かれていた。書いたのは樋口金信という名物記者だったが、そんなことまで書かれては指せない、と、棋士から観戦記忌避の抗議を受けたと樋口氏は明かしている。
資料を読んでいると、いろいろな人がやっていたらしく、どうも、反則、という意識が薄かったようである。私も少年時代に戦前の大家の記録をとって、待った、の場面を何回も見ている。
これは昔書いた話だが、一つ例を挙げよう。萩原淳八段と加藤一二三六段が対戦したときのことだが、これはB級2組順位戦の最終局で、加藤はすでに昇級が決定していて、荻原は勝てば復帰という一番だった。将棋は荻原優勢で進み、終盤になったころは、荻原必勝となっていた。そこで荻原は寄せを狙った手を指したが、しばらくして「こんなアホな手はあらへん」とかいって、荻原は指した手を変えた。明らかな、待った、である。加藤は何も言わず、そのまま荻原勝ちで終わった。荻原は機嫌よく帰ったあと、残った加藤少年は「あれはひどいよね」と口をとがらせた。
私は意外な思いがした。待った、は当然のことと思っていたからである。当時はまだ反則など正式な規則がなかったのだ。
今になって思うのは、加藤が、ひどい、と思ったのなら、その場で、きっぱりと言わなければいけなかった。それを言えなかったところに、勝負師としての甘さがあった。大山康晴に勝てなかったのは、そんなところにも一因があった。』  

この記事の中で一番衝撃的なのは、待った、を目撃した若き日の河口さんが「待った、は当然のことと思っていた」、このことです 
だから、連盟は「第三者が反則を指摘することができる」という規定、これを作らざるを得なかった、これが実情ではないでしょうか 

しかし、今、もう時代は変わりました 今、強いプロ棋士、上位にランクされている男性棋士のみなさんが、こういう反則行為を平気でしますか? していないでしょう? 私は、少なくとも今A級に居るような上位棋士で、そんな人は知りません それとも、私の知らないところではしているのかな?(^^; いやいや、みなさん、とってもマナーがいいな、と本当に感心して観ています

これは、昔の時代と比べて、素晴らしい意識の変化ですよ ここまでプロ棋士の意識を決定的に変えた変革者、それは誰あろう、現会長の谷川浩司その人でしょう 若き日の谷川さんが21歳で名人を取って、「1年間、名人位を預からせてもらいます」と発言したときから、時代は動いたのです 「名人って、とんでもなく偉い立場の神のような存在なのに、こんな謙虚な発言をするものなのか」と、当時の関係者たちは、どれだけ衝撃を受けたことでしょう 

谷川さんのその後の各メディアでのインタビューの受け答え、なにより対局中のマナーの素晴らしさは、後進に脈々と受け継がれ、羽生さんをはじめとする、マナーが素晴らしいプロ棋士たちの育成につながったのです

谷川会長、今回、谷川さんの素晴らしさがあらためて私にはわかりました 紫綬褒章、受章おめでとうございます!

さて、話を戻します そう、もう時代は変わったのです 河口さんの記事を読めば、一目瞭然ではないですか 
この「第三者による反則指摘ができる」という条文、もうこれは要らないのではないですか?
もちろん、この規定がなくなると、困る場合もあるでしょう でも、あると、さらに困るのではないですか?
この規定は、現在ではむしろトラブルを生む原因になる場面のほうが多いのではないですか?
ややこしいし、何より「第三者にまで責任が及んでくる」ということにつながっていますよ
対局中に、一般人の観戦者が突然、ふすまを開けて対局室に飛び入ってきて、「反則です!」と宣言してもいいのですか?
その一般人がルールをよく知らない人で、実際には反則ではなかった場合でも、その一般人は、「反則と思った」ので権限を行使しただけ、対局室に入ったことはかなり失礼にあたるが、その指摘行為自体はオッケーとされる、現状はそういう規定ですもん
一般人には、どんな人が存在するかわかりませんよ 平気で迷惑行為や犯罪を繰り返す人もたくさんいます 
将棋関係者でも、タイトル戦で対局中の羽生さんに「サインを求めた」ベテラン観戦記者が居ましたね (2009年の名人戦、しかも手番は羽生のとき)

田丸さんは自身のブログで「第三者が反則を発見したのに指摘できないというのは、納得いかないと思います。」と書いておられます
しかし、プロ棋士の公式戦で、一般人にまで反則を指摘する権限を与えるのは、どう考えてもおかしいでしょう 「対局を見せてお客さんに楽しんでもらう」のがそもそもプロの役割なのに、反則があったときに観戦しているお客さんにまで「観ていた私も第三者なのだけど、指摘するべきなのか? どうなの?」という精神的な責任の一端を担わせてしまう今の規定、これはおかしいですよ

ニコニコ動画で生で観ている観戦者、NHK杯を録画放送で観ている観戦者、そういう人にも反則を指摘する権限を与えていると思われても仕方ない現状の規定、どう考えても、改定、または撤廃が必要です

これは、プロだけの問題だけではなく、アマチュアにも重大な問題なのです
『公式アマ大会では、連盟が定めるプロ公式戦での「対局規定」が原則として適用されます。』と田丸さんのブログにも書いてあります 私はアマチュア棋界にとっては、この規定は、むしろ邪魔だと思います トラブルの元だからです 観戦者は、一切口を出さない、アマチュアではそう決めていたほうがよっぽどスッキリすると思います アマチュアは、棋力の幅もピンキリならば、その大会の規定をどこまで知っているかなんて、当然ピンキリですからね 規定が誰にでも分かりやすいほうが当然、いいでしょう

アマチュアの大会で、第三者に指摘されて対局が終わってしまうと、勝ったほうも後味が悪いんじゃないですか? 
勝ちになったほうは、「オレはあの程度の反則なら、気にならなかった。許容範囲だった。最後まで指して、内容で勝ちたかった。それなのに、観戦していたどこの誰ともわからないヤツが、対局を終わらせてしまった。反則で勝ったって、全然うれしくない。そもそもオレはアマチュアで、勝ち負けよりも、楽しむのが目的で指しているんだ。すごく面白い局面で、オレは指し続けたかったのに、なんで観戦していたヤツが対局を終わらせてしまうんだ。」
こういうことが、ありうるわけです 実際、あったかもしれません

この規定、これはアマチュア大会には不要のやっかいものなのでは?
この規定はもう今はプロでも形骸化していて、現状では第三者に無用な権限や責任感を与えてしまっているだけ、プロにとっても要らないのでは?、と思えてしまします
  
とにかく、議論の余地があることは確かです
谷川会長、田丸九段、そして連盟のプロ棋士の方々、なんらかの対処を、よろしくお願いします!
昨日の件、あれに関して考えました それで、大事な提案があります
連盟に、反則規定の改訂を望みます もちろん、すごい改訂じゃないです(^^; でも大事なことです

まず、連盟のHPのどこに反則規定が書いてあるのか、かなり見つけにくいです
これはなんとかしましょうよ こんなの、やれば出来ることです 職員に命じたらいいんですよ
現状では、「トップページ」からずーっと相当下がっていき、左側にある「よくある質問とお答え」をどういうわけかクリックし、「将棋のルールに関するご質問」というのがあるから、そこかなと思ったらそこには書いておらず、右下の「対局規定(抄録)」を発見してようやく今回の秒読みや第三者うんぬんに関する規定の発見につながるわけです 
これはさすがに、なんとかしてください なんで、「よくある質問とお答え」の中に今回の規定があるんですか 
トップページの上段に並んでいるカテゴリの中に、「将棋のルール」というカテゴリを追加したらどうですか?

その反則規定ですが、現状は「対局者以外の第三者も反則を指摘することができる。」とあります
この「第三者」が誰を意味するのか、説明不足なのです これが問題です 
田丸九段のブログで、「反則が確認された場合の第三者の指摘について」という記事を見つけました
http://tamarunoboru.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-17ff.html
この中で田丸九段は、「対局者以外の第三者(立会人・記録係・観戦記者・棋戦関係者・観戦者など)が反則を指摘しても、助言にはあたりません。」と書いておられます
観戦者が指摘してもいいそうです でも、これは田丸九段の個人的な見解にすぎないのでは? だって、連盟の規定には、第三者が誰を指すのか、全然明確にはしていないんですからね 連盟の公式見解が田丸九段の見解と同じならば、言葉を足すべきです どう考えても、これはそうすべきでしょう

さて、これが一番大事な提案ですが、「第三者が反則を指摘することができる」のですが、多くの場面では、これは、実際にこの行動に出るは難しいでしょう 「対局中に反則をしたら、即負け」と連盟の規定にもあります すなわち「第三者が反則を指摘する」というのは、「第三者が勝敗を最終決定する」という行為です 
将棋の対局とは、対局者2人のもの、これは大原則で、将棋指しならみんな分かっています
それを第三者が突然割って入って対局を止めて勝敗を宣言する、これは現実問題、至難の業でしょう 
記録係の奨励会員や、読み上げの女流棋士なんて、権力が全然ないのが実情ですもんね その人たちがプロの先生を相手に、「反則負け、終局です」と宣言できますか? 相当困難でしょう  

そこで、こう条文を変えましょう 第三者の定義を明確にした上で、
「第三者が反則を指摘することができる。または第三者が審議を提案することができる。第三者は対局後に審議を提案することもできる。」
これでどうですか? これで、ずいぶん、マシになるんじゃないですか? 「審議」をいう項目を作らなければなりませんが、それも作りましょう いきなり「反則負け」を指摘するのではなく、「今のはどうなの? 僕は反則だと確信したけど、対局を止める勇気はない でも反則行為に違いない」という場合に審議にかける権利がその第三者にある、これを制度にするのです これでかなり良くなると思いますよ

第三者が対局後にも審議にかける権利を持つことにより、勝敗は変わらなくとも、危うい行為をした棋士が「注意」や「警告」などを受けることになる可能性がある、そういうことです 
審議に何度もかけられる棋士がいたら、なんらかのペナルティーを与えたらいいんです
この条文に変えたら、たとえ「第三者による審議」が行使されなくても、反則行為を減らすための抑止力になりますよ

とにかく、今の「第三者が反則を指摘」というのは、「第三者が対局を突然終わらせ、反則負けを宣言し、ものすごい重大な責任を負う」ことになっています それは多くの場面で記録係として第三者となっている奨励会員には、責任が重過ぎますよ 誰も記録係、読み上げをやりたがらなくなってしまいます 記録係が足りてないというウワサも聞きますしね 
「第三者による審議」の項目を追加して、「第三者」の責任を軽くしてあげるべきです そして、反則に対する抑止力にするべきです 

タイトル戦で立会人を務めることになる偉い立場のプロ棋士にとっても、いざトラブルが起きたときに、「今の微妙な行為は、審議にかけて、後に裁定を下す 対局はこのまま続行し、勝敗はそれで決める」などと判定することができるわけです 立会いの棋士の精神的負担が、ずいぶん軽減されます

どうですか、谷川会長? 合理的な判断を下す、渡辺会長になるまで、待たなくてはだめですか?(笑)

まとめると、こうです
・第8条反則6の項目について、第三者の定義を明確にする
・そして「第三者による審議の提案をする権利」を追加し、第三者の責任を軽減する 反則に対する抑止力とする
・第5条の秒読みの項目が、1分将棋と30秒将棋の項目しかないので、40秒将棋の項目を追加する
・第5条の秒読みの4の項目については、誤字を修正する

後ろの2つは、連盟のギャグですか、と言いたくなりますが(^^; どうかよろしく検討してください
(追記・この一件は、次の日にも考えることになりました)
囲碁将棋チャンネルで、毎週土曜の夜に放送されている女流王将戦の内容をお伝えしている 今回は15日に放送があった対局 

いよいよタイトル戦、3番勝負が始まった 九州の宮崎県で10月4日に行われた第1局
前夜祭では、主催社である霧島酒造株式会社の社長の「きれいなお二人、そしてきれいな水の霧島山系で・・・」というシャレた挨拶、そして連盟の青野専務理事の「昨年に彗星のごとく現れた香川さんと、そして『まだまだあなたたちの時代にはしないわよ』という清水さんの戦い」という挨拶があった
対局者2人のコメントは、清水「大好きな対局会場、そして香川さんと戦えるのがうれしい」
香川「防衛戦なんですけど、お相手が清水先生なので教わりたい」

解説は安用寺六段、聞き手は村田女流二段 記録は野田澤女流1級 読み上げは伊藤明日香女流初段 
対局が始まり、先手清水の▲居飛車+左美濃vs後手香川の△ノーマル三間+高美濃という戦型
関西人コンビの軽妙なトークで、私は楽しんでいた

が、終盤、事件は起こってしまった・・・ 
104手目、形勢不利で、秒に追われた香川が、「9」まで読まれても指せなかったのだ 香川が手をすべらせたのだ
香川が持ち駒の歩を盤上に置いて着手完了したときには、明らかに秒が切れていたと私には思えた 
しかし、「10」は読まれず、対局は続行された 
結果は117手で香川が投了、清水の勝ち

詳細は以下のとおり
103手目で、安用寺が雑談している 香川の駒台には桂3枚と歩5枚
安用寺「持ち駒が桂ばっかりっていうのは、寄せにくいんですよー 『3桂あって詰まぬことなし』って言いますけどねー、あれ、ホンマ、大ウソですよ」
村田「ええー(笑)」
安用寺「3桂あったって、詰ましたことってないんです(笑)」
村田「それめっちゃ衝撃的な事実を」

そして104手目、問題のところ 後手の香川の手番
香川が秒を「8」まで読まれても何もせず、「9」まで読まれたところで駒台に手を伸ばした
そして、歩を持ち上げようとしたが、うまく持ち上がらず歩はすべってしまい駒台に裏返った 
この時点で秒読みの伊藤明日香が「10」と言うかと観ていた私は思ったが、伊藤明日香は何も言わず
香川は慌てて7三の位置を指で示したが、何も言わず 指で示すのが精一杯で言うことができない
遠くの位置からの「×××(聞き取れず) おっ!」という男性の声が対局室のマイクに入る 声の主は青野であろうか? 記録の野田澤女流と読み上げの伊藤明日香女流を挟んで、立会人として青野九段が真ん中に座っていたからだ 声色は中年男性の声だった 
香川が歩を持ち直し、7三に歩を置いたときには、秒読みの伊藤明日香が正確に秒を読んでいれば、どう観ても「10」は絶対に経過していた ただ「11」には間に合っていた(もちろん「11」なんてないけど)
そのまま対局続行

この場面、見ていた安用寺はすぐさま、
安用寺「今のは『先に歩を打つ』っていうのを示しましたから、一応オッケーなんですけど、ただまあ、あんまりマナーは良くないですね 秒を読まれている間に地点を指してね、歩っていうふうな感じで、こう、言えばオッケーなんです だから今のはオッケーなんですけど、マナーは良くないですね」 

105手目
安用寺「(香川は)必死で仕方ないですね もうパニックです 香川さんとしては、(形勢が)こんなはずではというのが絶対あるから 人間どうしは面白いね 見てるほうは面白いです」
そして、何事もなかったように、対局は続けられた 
 
私は呆然・・・ おい、これ、反則負けじゃん・・・  誰がどう観たって、「10」までに指せていないじゃん 何で、そのまま対局続行なの? 連盟の使っているストップウオッチって、「9」で止まる性能を持っているの? 誰か、「ザ・ワールド」のスタンドでも使ったの? 
確かに、安用寺の言うように、秒読みの最中に着手できなくても、指で盤の升目を示して声を出して「歩!」と駒の種類を言えば、反則ではない それは私も知っていた (ただ、駒の種類と局面によっては「銀打ち」とか「銀引き」と言わねばならない場合もあるだろう)
しかし、今回は、香川は明らかに何も声を出していない 香川を常時、映し続けていた小画面があり、映像をリプレイして観ても、香川は焦っているだけで何も言ってない  
対局室にあるマイクから秒読みの伊藤明日香の声を拾っている そして盤上の音を拾う別のマイクがあるのだろう、指したときの駒のパチッという音も常時、視聴者に聞こえてきている NHK杯と同じだ 香川が何か声を出していたなら必ず視聴者には聞こえたはず 「××× おっ!」と叫ぶ第三者の男の声が、それほど大きな声ではないがマイクに拾われて視聴者には聞こえてきている 香川が声を出したってありえるか? 

いや!? ただ、さらに念を入れてよくよく、じーっと香川を観察すると、香川は何か小さく口を開いている もしかして、このとき「歩」と言ったのか? 口の形からして、「歩」という動きにも見える もしかして、このとき「歩」という言葉を清水にだけ聞こえる声で言った可能性がある? 声が小さすぎてマイクに届かなかった可能性が? しかし、直後に香川が慌てて駒台に手を戻したときには、手に駒がたくさんぶつかって「ジャラジャラ」という音がバッチリ聞こえており、こんなに音が入るのに、香川の音声だけ入らなかった?

んんー、確かに香川が口をややすぼめている! このとき「歩」と言ったのか? もう、相当微妙だな 対局室に設置されてあるのは、かなり小さな駒音でも拾える性能のマイク それが声を全く拾えてないのは確かだ 
しかし香川は限りなく音量が0に近い声で「歩」と言った可能性がある それは否定できない これを、どう解釈するか・・・  

だが、20回くらいこの問題のシーンを再生して観た私の見解は、あれは香川は「歩」と発声していない 声の音量が全くないのだ 「一瞬口をすぼめるのが精一杯で、声には出していない」 それが私の結論だ

そもそも、大きな声で「歩!」というのがマナーではないか ハッキリと、最低限、相手には聞こえるように言うのが当然だろう
香川が清水にハッキリ聞こえるように言ったならば、必ず、絶対マイクで拾えたはずだ 小さな駒音すら聞こえるマイクなのだからね
 
香川は△7三歩と指そうとしたのだが、持ち駒は桂3枚と歩5枚だった 7三の地点に打てる駒は2種類あったのだ そして、7三に行ける盤上の駒も、玉と銀があった 香川は盤上で7三を指差したが、「歩」と明示しなければならなかったことは確かだ

清水が「反則負けですよ」と言って一方的に対局を終えたとしても、何も問題はなかった むしろ、そうすべきだった 
なぜか? 対局者は相手の顔を見ながら対局しているのではない 
将棋では、たまに相手の顔も見るが、ちらっと見るくらいだ もちろん、見る義務など全くない 
ちなみに今回の問題の場面でも、清水の目線は盤からずっと離れていないように小画面には映っている
今回の香川の行為は、「声としては聞こえなかったかもしれないけど、私の口を見てくれていれば、『歩』と言ったことがわかるでしょ、だって口をすぼめたんだから」 この香川の主張を良しとしてしまう、そういうことではないか
「声に出さなくても口の動きだけでいい」 そんなのは許したらいけないことは明々白々だ 秒読みに入ったら、対局者どうし、相手の口の動きを目で確認しながら指すとか、そんなのはありえない

今回の件、立会人の青野九段の責任は非常に重い 
プロ棋士、女流棋士はアマチュアの模範となるべき存在のはず アマ、プロ問わず、そもそも将棋では「秒が切れた、いや、切れない」の揉め事は多い 秒読みになったら、普通のプロは、切れないように必死になって指す それをファンもドキドキして観ている  それなのに・・・
 
立会人の青野九段、「××× おっ!」と言ったのは、何だったんですか? あの声は青野九段ですよね? 何か問題があったんじゃないですか? あなたの耳には、香川さんが「歩」と言ったのが聞こえたのですか? 聞こえたなら、何の問題もないので、叫ぶ必要はなかったのでは? 明らかに、香川さんの口が若干すぼんだ後に「おっ!」という声が聞こえてますよ? 「歩」と言う声が聞こえたなら、叫ぶことはないのでは?  

解説の安用寺六段、すぐに「今のはオッケー」と言っていましたが、あなたには香川さんの声がちゃんと聞こえたのですか? TVのボリュームを上げてVTRを何回も観ても、盤上の小さな駒音すら聞こえるのに、私には香川さんの声は全く、全然、聞こえませんけどね 

私が安用寺六段にまで責任を求めるのは、理由があります 以下、連盟のHPからの引用です  

日本将棋連盟による対局規定
http://www.shogi.or.jp/faq/taikyoku-kitei.html#hansoku

第5条 秒読み
対局者の持時間が切れた時点より、記録係が秒読みを行う。
1. 1分将棋の場合は「30秒・40秒・50秒・1・2・3・4・5・6・7・8・9・10」と、秒を読む。 最後の「10」を読まれた対局者は時間切れで負けとなる。
2. 30秒将棋の場合は「10秒・20秒・1・2・3・4・5・6・7・8・9・10」と、秒を読む。 最後の「10」を読まれた対局者は時間切れで負けとなる。
3. 対局者は残り10分になったら、1分将棋になる前から、同様の秒読みを記録係に要求することができる。
4. 対局者が秒読みの最中に駒を手から落とした場合には、指で盤面部分を押さえ、どう指すかを言えは着手の代用と認める。

第8条 反則
6. 対局者以外の第三者も反則を指摘することができる。


上記のように、第三者も反則を指摘できる、のです 
「第三者」というのがどこまでの範囲を指すのかが分かりませんが、この場合、第三者の立場のプロは青野九段と安用寺六段、そして女流のプロが3人も居たわけです でも、だーれも、反則を指摘しない・・・ これは問題では?とすら言わない まあ、女流は立場上、言い出しにくいでしょうね 聞き手の村田さんが、対局場まで走っていって、清水さんと香川さんの間に割って入っていって「反則です!」とも言いにくいでしょう でも、私は村田さんにすら、責任はあると思いますよ 村田さんは「私の耳には香川さんの声が聞こえませんでした」と言うくらい、できたはずです あるいは逆に村田さんには聞こえていたなら、「声が聞こえましたね」でも、もちろん構いません

安用寺六段、即断で「オッケー」と言い切れるきるほど、単純な行為でしたか? 私は音量を上げて何回もVTRをリプレイさせましたよ 本当に香川さんの声が聞き取れましたか? それとも、安用寺さんの正体は実は「デビルイヤーは地獄耳」のデビルマンなのですか?  

まあ、それにしても責任重大なのは、どう考えても立会人の青野九段です 
立会人として、対局者のそばにずーっとついていて対局を見ていて、「××× おっ!」
それで終わり、番組を観ていた視聴者に、全く何の説明もしないのはどういうことですか? ありえないでしょう
「××× おっ!」と叫んだだけで立会人の仕事が務まるなら、もう立会人なんて、廃止したらどうですか? 人件費削減になりますよ 立会いは何のために居るのですか? 
この番組は、全国の視聴者がお金を払って観ているのです たとえ香川さんの行為が反則ではなかったにせよ、対局室に居た立会人として、視聴者に対して何らかの説明が必要な場面だったでしょう 

終局後、対局者にインタビューがありましたが、香川さんも清水さんも、普段どおり将棋の内容を振り返って、「次局もがんばります」と言っただけで、この件には一言も、全く触れませんでした 私は対局の内容なんて、もう一気に吹っ飛びましたよ 
何の説明もなく、番組は粛々と終了しました 

連盟は、この女流王将戦、延々予選から決勝トーナメントをずーっと戦ってきて、晴れ舞台のタイトル戦、前夜祭までやって盛り上げて、あでやかな着物姿で対局して、それでこういう事件・・・

まあ・・・ 香川さんはこれにこりて、「『8』まで秒を読まれても全く手を動かさず放置で、『9』になってようやく駒を触りに行く」、というクセはやめるべきですね 今までずーっとこういう際どい指し方を香川さんはやり続けてきましたもんね よっぽど、駒の触り方に自信があるんだなあ、と私は前期から思いながら香川さんの対局を観てました 関西会館や立命館大学で散々、そういう「際どい指し方」を練習してきたんでしょうけど・・・ 
香川さん、今後もこういうことは起きますよ やめるべきですよ

・・・って、やめないだろうなあ だって、何にも問題にならなかったわけでしょ? 少なくとも、表だっては何も事件になってませんもんね 

私は、今回の香川さんの行為は反則だったと思います
周りのプロの人たちは、プロの規律を示すために反則負けにするべきでしたし、そして香川さんのためにも、反則負けにしてあげるべきでした 
立会人の青野九段、対局者であり大先輩である清水女流六段、解説の安用寺六段、この人たちの責任は重いですね 「観ている視聴者に対してプロの規律を示さないし、若手プロに対して後進の指導をしてあげない」 そういうことですからね

秒を読まれて慌てる、それは将棋では全く普通のことです だから対局者にこういう行為が起こっても、何も別に不思議はないし、それを非難するつもりは、私は、まっっったくないんです
下記のどれかであれば、むしろ今回のことは私は美談として受け止めたでしょう

・香川さんが着手したものの、「ああ、ちゃんと声にしなかったから、これはやっぱり反則だわ」と思い直して自分からすぐ投了する
・香川さんの着手後、清水さんが「ちゃんと私に聞こえるように声に出さないと反則負けですよ」と香川さんに対して発言、教えてあげる そして反則負けが成立、清水勝ちで終局となる
・立会人の青野九段が対局を中断、「審議」または「反則負け」を宣言する
・秒読みの伊藤明日香さんが、事務的に「10」と読み、終局となる それを周りが当然と認める
・記録の野田澤さんが「第三者」として、立会いの青野九段に進言する そして「審議」となる
・解説の安用寺六段が「第三者」として立会いの青野九段に進言する そして「審議」となる
・聞き手の村田さんが「第三者」として解説の安用寺六段に相談、そして「審議」となる
・観に来ていた大盤解説の会場のお客さんから「反則じゃないのか」との声があがり、これを「第三者の指摘」と解説の安用寺六段が認めて「審議」となる
・主催社の霧島酒造の社長さんが収録後にでもいいので「このことの説明を」と声をあげ、これを「第三者の指摘」と認めて「審議」となる
・対局終了後、番組内で青野九段らの関係者が出演して、問題の場面について視聴者に対して納得がいくような説明がある  例えば、青野九段が「私には香川さんの『歩』という声が聞こえたので、反則ではないとみなして対局を続行させました」と発言する、など

これらの中の、一つにでも該当していれば、(少なくとも私にとっては)美談になったものを・・・ 
問題が起きたときに、プロならどう対処するか、というのは、実は「大きな見せ場」、「チャンス」じゃないですか? 今回はどうですか? 現場のプロ7人が問題なしとしてスルー、これが現実・・・ ましてやタイトル戦で全国放送されると分かっていながら・・・  

対局日は放送日の1ヶ月以上前の録画番組なんですから、少なくとも、テロップくらい、流したらどうですか?
安用寺六段が「言えばオッケーなんです、だから今のはオッケーなんです」と即座に解説していましたが、香川さんの声が聞こえた視聴者って、存在したんですかね?   

今からでも、まだしも、説明を連盟はHPに載せるべきですよ 
じゃないと、本当に連盟は「9」で止まるストップウォッチを使っている、と私は理解してしまいますよ 

連盟の規則、「反則は第三者が指摘することができる」、というのもハッキリしませんね
第三者がどんな人物を指すのか、もっと明確にしたほうがいいですね  

それと、大事な規則に誤字がありますよ 「第5条 秒読み 4」の中です それも修正してくださいね 
誤字から、この規則はいかにも、もう「長年放置でほったらかし」ということが読む人に伝わってきます
そもそも、この女流王将戦は秒読みは40秒将棋なのですが、40秒将棋の項目というのがないですね・・・

くどいようですが、私は、香川さんが反則と思える行為をしたから、怒っているんじゃないんです
どういう場合に秒が切れたか切れないか、今後も頻繁に起こりうる重要問題なのに、ましてやタイトル戦なのに、対局でこういう行為があったときに、対局者と第三者、プロが合計7人も居て、全く何事もなかったかのようにスルーしてしまう、それに怒っているんです プロが7人も居てみんな全く問題意識がない、それを「あってはならない事件」と言っているんです

今回の事件で私が理解したことは、安用寺六段は地獄耳を持ったデビルマン、青野九段は「××× おっ!」と叫んだあの「×××」の瞬間に時間を止めたスタンド使い、そういうことです 以上です
(追記・この一件は、私からの規定の改定の提案事項として、この後、2日に渡ってとりあげるきっかけになりました)
松尾歩 七段vs丸山忠久 九段 NHK杯 2回戦
高橋道雄 九段

今日は松尾と丸山か なんとなく、似たものどうしの対戦 実力が同じくらいで、居飛車党 そして、なんか目立たない(^^; いや、目立とうとしない性格なのだろうね

松尾は1991年四段、竜王戦1組(来期は2組)、B1 1回戦で中村亮介に勝ち 11回目の本戦出場
1回戦のvs中村亮介は、今期の開幕カードで、亮介の振り飛車で対抗形になり、松尾が見事な25手の即詰みを決めて快勝している (もちろん覚えてるわけではなく、今調べたのです)
丸山は1990年四段、竜王戦1組、B1 前期NHK杯で準優勝により1回戦シード 24回目の本戦出場
うわ、丸山は前期準優勝か もう私の記憶にないが・・・(笑)

解説のタカミチ「松尾は居飛車党、角換わりの他に矢倉、横歩取り、居飛車系なら何でも指せる 丸山も居飛車党で角換わりを得意としている 先手でも後手でも角換わりを指す」

事前のインタビュー
松尾「丸山九段は攻守にバランスの取れた手厚い将棋を指される 普段は将棋会館で会ったりしても、気さくに話しかけてくれる先輩ですね (抱負は)いつもどおり集中して指すだけだと思うんですけど、一戦でも多く指せるようにがんばりたいですね」

丸山「松尾七段は最新形に非常によく精通していて、手厚い将棋という印象です 集中してがんばりたいと思います」

タカミチ「お互いによく分かっているどうしの対決ですので、どちらが自分のペースに持ち込めるか」

先手の松尾の作戦、それはなんと初手▲5六歩からの中飛車だった しかし、特に驚くべきではないかもしれない 松尾は前期銀河戦の銀河戦の決勝トーナメント(対局日は今年の6月~8月)で、ベスト8のvs郷田、準決勝のvs羽生、そして決勝のvs渡辺と、すべてこの先手中飛車で戦っているのだ 結果は決勝で負けたが、郷田と羽生を見事に破っている
vs郷田とvs羽生では、ごく普通の▲振り飛車vs△居飛車の対抗形になって松尾は美濃で戦ったが、vs渡辺では、渡辺が相振りにしたため、松尾は左玉にして相穴熊になっている(もちろん、これらも今、調べなおした(^^;)

対して、後手の丸山の対策、それは相振りだった きっと、銀河戦の棋譜を研究していたのだろう 
タカミチ「最近では松尾が中飛車をやっているのは見たこともあるんですけど、この対戦カードではほとんどが相居飛車系なんですよね 今回もそうかなーと思ったら、いきなり中飛車でした それに対して丸山が全く迷わず三間飛車、お互いに呼吸が合ってるなー」
うーん、タカミチさん、あんまり銀河戦を知っていないのかなあ 一応、松尾は準優勝したんだけどね(^^;

松尾は例によって玉を左に持ってきて、持久戦の目指す構えだ これは、中飛車左穴熊というやつに組むつもりだろうね 
タカミチ「居飛車風の中飛車が今、流行っている この構えだと、居飛車の仲間に入れたいくらいなんですよね」
清水「相振りではない?」
タカミチ「玉があっち(左)に行くと・・・ やっぱり居飛車に入れたいかな・・・ 戦型分類が非常に難しい これは新しくできた形ですね」
うむ、この戦法は相振りなのか、対抗形なのか、見解が分かれるなあ(笑) 振り飛車かと考えると、従来の相振りとは明らかに違う でも、居飛車かって言われると、早々に中飛車に振ってるんだから、そうでもない かと言って、「その他の戦型」に入れるほどの力戦調かと言うと・・・ うーむ(^^;

過去の対戦成績が出て、松尾3勝、丸山9勝とのこと
タカミチ「松尾はここのところ、丸山の一手損角換わりに痛い目に合い続けているんで、今日は気分を変えてというところかな」
んー、銀河戦の決勝トーナメントで郷田、羽生、渡辺を相手に松尾は先手中飛車を3連投・・・(^^;

雑談で、タカミチ「松尾はいつも穏やかですね 発想が豊かで、松尾新手というのもけっこう世に出している 活躍してもっともっと名前が売れるべき存在と思うんですけど、丸山を含めた上の世代の人たちを突破するのが大変なんですよね
丸山は対局以外の仕事って受けないんですよね あまり解説とかイベントとかで出ることも少ないですよね ファンの方に聞いたら、『もうちょっと姿を見たい』っていう人が居たんですけど、丸山は出てないですね 対局最重点主義、他のことはやらない、徹底しているんですね 普段はすごく明るくて、よくしゃべるんですけどね」

まず松尾の話から 私の松尾のイメージは、えーっと、いつもそこそこ勝つけど、目立たない人 以上 ・・・って、ダメか?(笑) 前期の銀河戦では活躍したんだけどね 優勝していたら、相当有名になるチャンスだったけど、準優勝だったからね 先手中飛車3連投で戦った内容は、ベスト8のvs郷田は快勝、準決勝のvs羽生は苦しい内容を逆転勝ち、しかし決勝のvs渡辺は、渡辺の強さがいかんなく発揮されて、完敗だった この一局は渡辺があまりにも強すぎて完璧で、誰が相手でも手に負えなかっただろう  

丸山に関しては、実は私は丸山はすごく解説がうまいのを知っている 雑談は別にして、指し手の説明が非常にわかりやすく、安定感抜群の解説をしてくれる もう、プロ棋士の中でも指折りと思えるぐらいにうまいのだ しかし、めったに解説者になってくれない・・・(^^; 雑談をしない、というのもプラスに働いていて、最初から観ているほうが丸山には雑談を期待しないのだ(笑)
あ、そうだ ここで丸山がなぜ横歩取り△8五飛を採用しなくなったのか、名人まで取った原動力の戦法から手を引いて、なぜ一手損角換わりに移行したのか、私がTVで丸山から聞いた、とっておきのエピソードを紹介したい
丸山がTV将棋で横歩取り△8五飛の将棋を解説していて、接戦で後手側が負けになったときのこと 
丸山「この戦法は、後手が1歩足りなくなるんですよ」
これがズバリ、丸山が△8五飛から撤退した理由だろう、と私は思っている 横歩取り△8五飛は、お互いが手を尽くせば、後手側が1歩足りなくなって負ける、そういうイメージが丸山の中で出来上がったから、丸山はもう△8五飛を使わなくなったのだ 私はそう解釈した 超スペシャリストの丸山が言うと、すごく説得力があった ただ、今はまた△8四飛+△5二玉型とかが出てきているから、それはどうなのかは知らないけどね 誰か、直接、丸山に「△8四飛+△5二玉の後手側のイメージは?」と聞いて欲しい(^^;
 
さて、対局のほうだ 早々に角交換から、馬を作りあう展開になった 松尾は隅っこの香を取って駒得だけど、香を取った馬が遊んでいる 松尾は自陣も囲いが組む途中で、全体の駒の働きも中途半端 
一方の丸山は美濃囲いだし、非常にきれいな陣形を作り上げている 
タカミチは、形勢判断を悩んでいる まあ、難しい戦いというところか

タカミチ「派手な戦いになるかと思ったら、すごくゆっくりしたペースになりましたね」
まだまだこれからか・・・ と思っていたときだった 丸山が、金をスッと横に寄せた ん? 何だ、これは?
タカミチ「イヤな雰囲気がしますね 狙ってますね これは・・・ これは、松尾はどうするんでしょう」
え、何? ここから丸山はじっくり穴熊に組むのを狙ってるってこと? 
・・・って、違う!! そんなヌルイ狙いじゃない!! これは、丸山は飛車を下段に引いて、松尾の馬を殺す狙いか!! 飛車を引けるようにした金寄りか!! 馬が死ぬ!? あ、あわわわ

ピタッと手が止まり、考慮時間に入った松尾 どんどん時間を使っていくではないか
タカミチ「丸山としては、角交換を臨んだときから、これくらいのことを考えていた可能性がある」
うへえー、そ、そうか そうだな、丸山ならそれくらい狙いかねない! 丸山はそういうタイプだ(笑)

まだ指さない松尾、こりゃ、本格的に困ったか 馬の1手詰めがとにかく受けづらい 馬が「詰めろ」になってから考えているのだから、もう松尾の想定外の事態ということは明らかだ 
タカミチ「自分がこの局面で松尾のほうを持っていたら、内心ではちょっと泣いてますね どうしてこうなったかと(^^; 中飛車で穴熊にガッチリ囲って、という構想とはかけ離れてしまった 馬も取られそう」

松尾は考慮時間を連続5回も使う大長考で、ようやく手を指したが、事態は良くなっていないようだ 
タカミチ「松尾は何をやったらいいんでしょう・・・ 気の早い人だったら投了もあったかなーというくらいの局面だったんですけどね そういう判断をしちゃいます」
ええー、タカミチ先生、投了はいくらなんでも、早いでしょう? いや、気持ちは分かります、ホント、それは分かります だって、こんなはずではなかった・・・と思いますよね でも先手を松尾に代わってコンピュータにしたら、ここから粘り倒すと思うけどな(^^;

松尾は、結局、馬を捨てた 桂香と角の2枚換えだ しかし、2枚換えと言っても、振り飛車の「要らないほう」の桂香がさばけて、丸山、絶好調だ そして、考慮時間の残りも、松尾▲0回vs丸山△10回になっちゃった うわー これは厳しい

そして、ここからは丸山ワールドが炸裂だった 丸山と言えば、そう、激辛流の総帥と言うべき存在だ それを全国の視聴者に見せ付ける指しまわしとなった
タカミチ「ぼんやりした角成りで、何を狙っているのか分かりにくい、こういうところが丸山らしい」
タカミチ「丸山は何が一番安全かと考えて指している」
タカミチ「丸山陣は、鉄壁の状態ですからねー」
タカミチ「丸山は振り飛車も強い」
タカミチ「松尾は順位戦B1、竜王戦も1組(来期は2組)、めちゃくちゃ強いんですよね その松尾を相手にこれだけ快勝しちゃうって、あんまり見たことないですけどねー」
タカミチ「松尾がどうこう言うより、丸山の戦術的な、戦い方のうまさですね」

圧倒的な差がつき、100手で丸山の勝ち 丸山の美濃囲い、金銀4枚が丸々残ったまんまで手付かずだった

丸山の勝ち方、それは相手が手がないことを見越して自分だけ有利な手を指してじっと待ち、相手が無理に動いてきたところを一気に怒涛の寄せを決める、という、まさに獲物を捕らえるカマキリのような「狩り」の作業だった これが丸山将棋の真髄、お、恐ろしい・・・(^^; 
 
終局直後、松尾「いやー ちょっとひどかったですねー そうか、金寄り(から飛車引きで馬が死ぬこと)が見えてなかったですね ひどかったですね そうか」

タカミチ「丸山の戦い方のうまさがホントに光りましたね これから振り飛車党になったほうがいいんじゃないかというくらいに、うまい指し方をしましたね」

感想戦では、丸山が序盤の変化で誰も気付かない意外な手順を指摘してくれたり、松尾の側に苦しいながらも強引に馬を助ける術を繰り出して勝負したらどうだったか、が話し合われていて、とても面白かった 
馬が狙われて大ピンチ、だったんだけど、実際は最善でがんばるとまだ大変だったんだね でも、タカミチが解説していたように、人間は構想が大きく破綻すると「投了」したくなりがち・・・(^^; コンピュータにはそれがないからなあ
コンピュータは、自分側が形勢が悪いと自覚する能力はあるけど、悪くても投了しようと考えることがなく、悪くなる度合いが一番低い局面を選んできて、延々粘りやがる・・・ うーむ(^^;  

丸山、前期NHK杯準優勝の実力をまざまざと見せつけ、松尾に圧勝、という一局だった 丸山に負かされたときって、なんか・・・ 人間に倒された、というより、人間以外のわけのわからない生物に食われた、そんな感じ・・・ 
そう言えば、昔、先崎さんが丸山を評して、「エイリアン」と言っていたのを思い出した 「エイリアン丸山」の恐ろしさを、存分に味わった一局だった 食われた松尾に対して、合掌だ ナームー
里見香奈さんが、来年の1月から女流棋戦に復帰されることが決まったそうです
連盟のホームページに書いてあります http://www.shogi.or.jp/topics/news/2014/11/post_1112.html
来年4月からの三段リーグには参加しない、ということです

諸々のネットでの新聞社の各報道を見ていますと、里見さんの体調は未だに全く万全ではない、ということです
以下、3社から抜粋です

休場期間は当初、3月から半年間の予定だったが、その後、12月まで延長された。連盟によると、里見女流二冠から「症状はあまり良くなっていないが、1月から出る」と連絡があったという。(朝日デジタル)

里見は取材に応じ、「皆様に、これ以上ご迷惑をおかけするわけにはいかないと思い、正直言うと不安はありますが、やるしかない、やれるだけやってみるしかない、と決断しました」と胸中を明かした。
現在の体調については「思っていたようには良くならなくて、このまま休んでいても回復するのは難しいと思いましたので、不安はありますが、復帰を決めました」と説明。
復帰の連絡を受けた連盟常務理事の島朗九段は会見で、「不安を抱えながらにはなりますが、不退転の決意を感じました」と語った。
一方、女性初の棋士(四段)を目指して在籍する養成機関「奨励会」の休場期間は再び延長し、来年4~9月の三段リーグには参加しないことも発表。里見は「矛盾しているようですが、まずは責任を持って女流棋戦を頑張りたい」としながら、棋士という夢について「理解してくださる方は少ないと思いますし、言える立場にないかもしれませんが、目指したい気持ちは今も変わっていません」と静かに語った。(スポーツ報知)

電話で本人の意向を確認した島朗・日本将棋連盟常務理事は「症状は休場を決めた時点からよくなっていないとのことでした。不安を感じながらも、来年1月に復帰するという意欲を尊重したい」と語った。一方、三段リーグ休場に関して「棋士になる意欲はあるが、今は心身共に限界で、期待が重荷になっている部分もあるので早めに発表したいという意向でした」と補足した。(毎日新聞)

私はこれらの情報を読んで、「やばいなー、本当に危険なことをするなあ、周りの誰か、止めてあげてくれ! 里見さんをもっと休ませてあげてくれ!」と思いました

去年の6月放送されたTV番組、「情熱大陸」では里見香奈さん(当時女流5冠)の特集でした
その中で、元奨励会幹事として畠山鎮七段が登場し、こう語っていました
畠山鎮「その2つ(女流棋士として第一人者でいることと、奨励会員で四段を目指すこと)をこなすっていうのは、一般的に将棋を知らない方から見れば、2倍のエネルギーが要るかなと思うかもしれないですけど、そんなもんじゃないですね。もう8倍10倍の、もう・・・すごいエネルギーが要るでしょうね。体力的、精神的にはかなり・・・。まあ今までのどの棋士もやったことがない世界ですね。」

この畠山鎮七段の言葉はモロに的中、里見さんは今年3月からは休場することになったわけです
来年1月から女流棋戦、タイトル防衛戦を含む全ての女流棋戦に順次復帰するとのことですが、完全に回復したわけでもないのに、復帰する理由が「皆様に、これ以上ご迷惑をかけるわけにはいかない」という理由・・・ 
里見さん、本当に「皆様に迷惑がかかる」というのは、どういう場合ですか? 里見さんのような女性の超逸材を永遠に失うことこそ、将棋界の損失なんじゃないですか? 「症状は休場を決めた時点からよくなっていない」というのに、今、無理をして出て、本当に将棋が一生指せなくなってしまったら、どうするんですか? 

この問題、里見さん本人より、周りが問題だと思います 師匠の森けい二九段、里見さんを守ってあげないといけないでしょう 連盟も、「休場期間にかかる女流棋戦の主催各社様、関係者の皆様には御迷惑をおかけいたしました。何卒ご理解・ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。」と書いている場合ですか? 女流5冠と奨励会で四段を目指すことを両方やろうとした場合、本人にかかる負担がどうなるのか、本人に対する配慮をあまりに欠いた一文じゃないですか? 連盟は棋戦主催社に対する心配ばっかりで、里見さん本人に対する心配はしようとしないのですか? 今後、里見さんに続く女性たちが出て来て三段リーグを戦うことになった場合、その人が持っていた女流棋戦のタイトルをどうするのか、タイトル返上とか三段リーグを戦っている間は女流棋戦は休場の扱いにするとか、そういう話は出てくるでしょう? それは、「関係者の皆様には御迷惑をおかけ」している状態なんですか? あたかも、女流棋戦を休んでいるその女性が悪いかのような扱いになるんですか? 

私がもし、森けい二師匠の立場なら、里見さんには、いったん「引退」を強制しますね もう、引退です
そして、精神面、体調面が万全に回復し、「将棋がやりたくてウズウズして仕方がない」というくらいに戻ったら、そのときまた復帰すればいいんですよ 里見さんほどの実績を残したならば(女流のタイトル獲得16期)、女流棋界には、すぐ復帰できますよ
四段への夢、残念ですが、これはもうあきらめましょう 私が師匠なら、もう強制的にあきらめさせます 今22歳、原則26歳までに四段にならなければいけないわけですが、あと何期参加できますかね 10期弱ぐらいでしょうね 今現在、行われている三段リーグは35人で2位以内に入ることを戦っているわけです 里見さんは、リーグを戦う前からもう体調不良になっているわけで、それでは現実的に2位以内にはなれませんよ 厳しい見方ですが、三段リーグは厳しいんだから、しょうがないです
奨励会の言葉で、「奨励会は三段まで行ってやっと半分」というのがあります 里見さんは女性で初めて三段になった偉業を達成したわけですが、それでも半分まで行った、というのに過ぎません 現実をしっかり見て、もう四段への道はあきらめたほうがいいです 里見さんはどうやら、「四段になるか、それとも潰れるか」という賭けをしたがっているようですが、そんなのは、周りの人生経験豊富な大人たちが止めないといけません!

女流棋戦か三段リーグかどっちか、というなら、女流棋戦に復帰するんじゃなくて、女流棋戦はタイトルを返上して不参加、三段リーグをとりあえず1期だけ指してみる、というふうにはいかなかったんですかね? それで成績が悪かったら、もう四段の夢はあきらめがつくじゃないですか ・・・いや、ダメダメ、そういうのがまだ私も未練がある証拠! いったん、強制引退! だって、体調が悪いのでしょう? 明らかに、無理をしすぎから来る体調不良なのでしょう? だったら、休まないと! 

とにかく、私が師匠の立場なら、体調が万全に戻るまで将棋は一切、指させませんね それが師匠の務めだと思います

起動戦士ガンダム(ファーストガンダム)というアニメで、シャアがアムロにこう言う場面があります
シャア「君は自分がいかに危険な人間か、わかっていない。素直にニュータイプの在り様(ありよう)を示しすぎた!」
これを里見さんバージョンで言うと、
シャア「君は自分の体がいかに危険な状態か、わかっていない。素直に最強女流棋士の在り様を示しすぎた!」

里見さん、もっと体と心が回復するまで、休んでください! もう、5年でも10年でも! 今22歳、10年後に32歳でまた復帰したらいいじゃないですか そして周りの人たち、それを受け入れる環境を作ってください! 「皆様に迷惑がかかる」という理由で無理して出場するなんて、とんでもないですよ 里見さんほどの逸材を、潰すリスクを取ってはいけません! ボクシングで言えば、本人がいくらやると言っても、セコンドのタオル投入が必要な場合があるんじゃないですか? どうか、慎重に判断してください、切に望みます!   
将棋ソフトPonanzaの作者、山本一成さんが、NHKのTV番組サイエンスZEROで、「人間とコンピュータの未来」をテーマに、8分間ほどプレゼンをしておられました (15日の昼に再放送あり)

全部で6人の若き科学者がそれぞれのテーマでプレゼンしました

6人の科学者がどんなメンバーだったかというと、
「海洋生物学者」 ペンギン、マグロなどの動物に小型カメラを着けて、撮影して生態を調べるというもの
「脳科学者」 脳の能力を数式で表すというもの
「宇宙開発エンジニア」 宇宙に小型の個人用衛星を打ち上げる構想を研究している、というもの
「人工知能開発者」 これが山本さん 将棋ソフトのプログラム開発を通して人工知能を語る
「プラズマ研究者」 核融合反応の研究
「科学コミュニケーター」 発達する科学技術を一般人にわかりやすく教える新しい仕事、サイエンスコミュ二ケーターという仕事の必要性を語る

会場のお客の投票があり、それぞれのプレゼンが終わったあとのお客さんの投票結果は、
海洋生物学者・・・・・・・219ポイント
脳科学者・・・・・・・・・・・185ポイント
宇宙開発エンジニア・・・235ポイント
人工知能開発者・・・・・・168ポイント
プラズマ研究者・・・・・・・204ポイント
科学コミュニケーター・・・221ポイント

自分のポイントを見た山本さん、「そっかあ」と言ってましたね(^^;

海洋生物学者の人の研究は、とにかく単純明快でした
脳科学者の人は言っていることがほとんど意味がわからなかったです 脳の能力を数式で・・・ もうダメ(^^;
宇宙開発エンジニアの個人衛星を打ち上げる話、これが一番受け、トップを獲得したのもわかりますね なんか、壮大でちゃんと実用になりそうですからね ただ、衛星が宇宙デブリ(ゴミ)にならないか、それは心配でしたが、司会の人に質問されて、ちゃんと最後は大気圏に突入して消滅する、という仕組みとのことでした でも、その仕組みに故障とかトラブルがあったら、やっぱりデブリになっちゃうのでは、と思いましたけどね 私は宇宙デブリをテーマにしたアニメの「プラネテス」を全部観てますんで(^^;

プラズマ研究者の女性の人は、話が専門的すぎて、そんな「ヘリウムが電気的に中性」とかなんとか、そんなこと一般人が理解しても意味ないだろ?と思ってしまいました それと、危険性の話が一切なかったです 核融合って、とんでもなく危険じゃないの、福島の二の舞の恐れはないのか?と思ってしまいましたね 
科学コミュニケーターの人は、いつも人前でしゃべっているだけあって、しゃべりがうまかったです 科学技術がどんな仕組みになっているのか、一般人にわかるように教えることが専門の仕事として必要な時代でしょう パソコンの仕組みとか、バカでもわかる本を、ぜひ出版してください(^^;

さて、山本さんはどんなプレゼンをしたのか だいたいまとめました
山本「人間に出来て、コンピュータに出来ないことって、どんなことがあると思いますか?(中略) ゲームというのは、人工知能にとって、最高の実験の場なんです。2045年には人間の知能をコンピュータが上回る、そんなことを本当に考えている人たちが居るんですね。今から15年ほど前に、チェスのチャンピオンがコンピュータに負けました。今ならば将棋でもそういうことが起こる、私はそう思っています。(中略) 羽生名人を倒すには、コンピュータ自身が創造力をつけなければならない、真似して作った法則以外に、コンピュータが自分で発見した勝利の法則を加え、Ponanzaは強くなったのです。おそらく後、数年もすれば、羽生名人を倒せる、私はそう信じています。冒頭で2045年、人工知能が人間の知性を上回る、そういう話をしました。なんとなくそれを聞いて不安だなー、と思ったりするかもしれません。しかしそれは違います。将棋ではもはやコンピュータはプロ棋士にとって、かけがえのない練習パートナーです。多くのプロ棋士がコンピュータと戦うことによって、より強くなったのです。戦争、貧困、環境問題、これら人類が解決しなければいけない多くの問題は、人間と人工知能がいっしょに手を取り合えば必ず解決できる、私はそう信じています。ありがとうございました。」

山本さん、プレゼン、うまかったと思いますよ
ただ、会場の支持率をそれほど得られなかったのは、やはり将棋がどんなゲームか、それが認知されていないからかなー、と思ってしまいました 女性だったら駒の動かし方も知らないだろうし、チェスと将棋がどっちがどう、と分かる人も少なかったのかもしれません コンピュータがチェスでは15年前にすでに出来たことが、まだ将棋では出来ていないのか、コンピュータも大したことないな、と逆に思われた可能性すらあります(^^;
でも、です サイエンスZEROでは、電王戦についてすでに去年と今年、30分間フルに使って2度にわたって特集して放送しており、いまさら「将棋は終わるまでの選択肢が大体10の220乗の手があって・・・」と同じことを言っても仕方ないですからね それで8分が終わってしまいますもんね 

今こそ、将棋ソフトの開発者はその存在を注目されるべきですもんね コンピュータがプロ棋士にどんどん勝っている、この今の機会を逃したら、もう次は将棋が完全解明されたときぐらいしかなさそうです(^^; 

将棋ソフト開発に使った技術が、他の分野で役立つといいんですけどね コンピュータが膨大なデータを読み込んで、コンピュータが一番効率よく仕事を解決する方法(最善手)を考え出すんです

人工知能の開発を目的として、強い将棋コンピュータプログラムを作ること・・・ 私がもしその才能を持って生まれていたとしたら、やっぱり取り組んでいたんだろうなー もう、夢中になって寝食を忘れてやっていた可能性が高いですね 私も何か一つに夢中になるタイプですからね

ただ、山本さんの言うように「将棋ソフトが強くなることは、いいことだから大丈夫」かというと、私のような将棋ファンにとっては、必ずしもそうではないですけどね 
電卓の発明によって、人類の暗算能力は上がったんですか? そりゃ、ごく少数の暗算が大得意の天才集団の人たちは、電卓を答え合わせに使って、暗算能力を上げたのかもしれません でも、一般人はどうでしょう? 難しい計算はもう完全に電卓まかせ、自分でやる気もやる意味もなくなったでしょう 
暗算や、そろばんの達人たちって、電卓が登場する以前の昔は、すごい尊敬されていたと思うんです でも、今はどうでしょう? 日本そろばん連盟にとって、電卓の登場は歓迎すべき物だったんでしょうか? 共存共栄の関係を築くことが出来たんでしょうか? 

まあ、またこの話は、電王戦FINALが終わったら書こうと思います 私は開発者の人をマジですごいと思って尊敬してますんで! 将棋というゲームは日本の伝統ゲーム、そして日本人は機械分野でもトップ、だとしたら、強い将棋ソフトを作るのは、やはり日本人であって欲しいのですよ 
「1回も駒に触ったこともない」という外国人が将棋の最強ソフトを作ったら、やっぱり「日本の技術者は何やってんだ」ってなりますもんね チェスソフトで使われていた「全幅探索」の概念を取り入れたのが、日本人の保木さんでホントに良かったな、危ないところだった、とマジで思ってますもん
山本さんのこういうTVに出るなどの積極的な活動には、敬意を表したいと思います
・・・え? マイコミから発売されたPonaX? 山本さんも宣伝してた? 何のことかな・・・? 私は買ってないし~(^^; 
日曜の夜にNHK放送があった「サイエンスZERO」の山本一成さんのプレゼンについては、日を改めて感想を書きたい
明日書く予定です 山本さんが8分間ほどしゃべってくれますので、見逃した方、ぜひ観ましょう
再放送は2014年11月15日(土) 昼0時30分~
それと関連して、ニコニコ動画で伊集院光さんのラジオトークが聞けるので、サイエンスZEROを観た方は、ぜひこちらも聞いておきましょう↓ 「コンピュータ将棋の発展に感心する伊集院光」 これをまとめてくれた方、感謝です!
http://www.nicovideo.jp/watch/sm24808195?ref=search_tag_video


さて、女流王将戦、挑戦者決定戦まで来た この一局に勝った方が、香川愛生女流王将との3番勝負に臨む
解説は郷田九段、聞き手は斉田女流五段 あら、斉田さん、メガネをかけていらっしゃる メガネ姿がとても知的で素敵 似合ってるわ ・・・でも、なんで今までしていなかったのに、今頃メガネ? 近眼が進んだのか、それとも老 いや、なんでもないです(^^; 斉田さんは47歳か ・・・って調べてるし(^^; 

上田は通算185勝114敗 0.619 25歳
上田の戦いぶりはここまで、居、振り、両方採用している
1回戦の渡部女流初段戦では、振り穴を採用し相穴熊の激戦で辛勝
2回戦の室田女流初段戦では、室田のゴキゲン中飛車に対し居飛車を採用、長い終盤、ねじり合いを制した これは超激戦だった
準決勝の甲斐二冠戦では、居飛穴で甲斐のゴキゲンに対抗、難しいところもあったが、力で上回り快勝した

解説の郷田「上田さんはタイトル獲得の経験がある実力派です 女流ではめずらしいパワフルな将棋 観ていて非情に気持ちのいい将棋」

清水は通算563勝222敗 0.717 45歳
清水の戦いぶりはここまで、いつものことだが全て居飛車を採用している 
1回戦の室谷女流初段戦では、対抗形から難しい戦いになったが、終盤力にモノを言わせてねじ伏せた
2回戦の中澤アマ戦では、中澤の右四間に対して右玉という裏芸を見せて、危なげなく快勝
準決勝のやうたん、違った、矢内女流五段戦では、矢内のノーマル中飛車に対して▲4六金戦法を採用、解説の中村修を「40年前の戦法です」と驚かせた(笑) 長く戦いが続いたが、落ち着いた冷静な指し回しが光り、終盤力で制している

解説の郷田「清水さんは長年に渡ってずっと女流棋界を引っ張ってきた第一人者 今期も実力を発揮して勝ち上がってきたというところですね 2人が共通しているのは、終盤型ということです おそらく終盤の勝負になるんじゃないか」

先手上田で▲ゴキゲン中飛車、清水は例によって△居飛車の対抗形になった
清水が天守閣美濃に囲うのか、と思われたところ、上田が取った位をめぐって早々に駒がぶつかった
郷田「あ、こういうところが清水らしいですね (気持ちが)強い手を指す」

2人の対戦成績、清水の14勝、上田の4勝とのこと 
斉田「この2人は昨年度の女流王将戦でも当たっていて、そのときは上田が勝たれています 上田は昨年度も挑戦者決定戦まで進まれています」
そうか、上田さんは2年連続挑戦者決定戦に進出か
斉田さん、相変わらず「~されています」という口調だな~(^^; 斉田さんはずっとこの言葉使いで、「歩を取られました」と言うのだ 尊敬語なのか謙譲語なのか知らないけど、どっちが歩を取ったのか、すごいわかりづらいんだよね(笑) まあ、この言葉使いをするのは斉田さんだけなので、まだ気にならないけどね ただ、本局に関してはわかりづらい発言はなかったです(^^;

さて、郷田が解説してくれている
郷田「駒がバラバラになるから、1歩得にはなるけど、清水はこの歩は取らないでしょう」
と言っていたにも関わらず、清水、歩を取った! 
郷田「あ、取っちゃった(笑) やっぱり棋風ですね うん~・・・ 許さんっていうことですけど・・・」

清水、何とこの序盤早々の段階でもう勝負手だ ええー、これ、1歩得の代償に、相手にド急所に馬を作られてしまうじゃん  おまけに、自陣はバラバラ 勝ちにくくなること必定、これは居飛車としてはやってはいけない指し方ではないのか・・・

郷田は清水の姿勢の良さをほめている ホント、ものすごいキレイさだ 座っていて上田と頭一つ分近く、高さが違うのだ 上田の姿勢が悪い? いや、上田は普通(笑) 清水の対戦相手は気の毒とすら思える(^^;  

局面、やはり清水が苦戦になった
斉田「居飛車側はちゃんとやらないと、すぐ危なくなってしまいそうで、怖いですね」
郷田「ここまでは上田のペースかな しかし清水は終盤が強いから、ここからですね」

清水、もうここで耐えないと、すぐにでも崩壊してしまいそうだったのだが、そこからクイーン四冠の地力を魅せた! ノーミスで自陣を整えていき、勝負手として放った角打ちも、ズバリ、ピンポイントの急所の位置! うーん、やはり崩れない、この辺り、強い・・・
上田も郷田が気づかなかった手を指してみせ、郷田を感心させた
郷田「なるほど~ これは上田の棋風が出ましたね やっぱり終盤勝負になりそうです」

互いに25分の持ち時間を使いきり、1手40秒の秒読みの勝負 ▲上田の馬2枚vs△清水の飛車2枚
郷田「今の清水の手に対して、上田が守って、まだまだ長期戦になる」
と言った直後だった 上田、清水の攻めを完全にスルー なんと、攻め合い! ええー! 手がかりがないが、ちゃんと攻めの手が作れるのか? そうは思えん 上田、大丈夫か? 
郷田「棋風ですね~ 手としては守ったほうが良かったと思いますけどね 上田も頭をかいてましたが」

局面、進んでみると、なんか上田の表情が暗い・・・ 不本意そう・・・ ああー、何で攻めたんだ 
これ、清水は、と金を作って桂香を拾っていけば自然に良くなる めっちゃ手が簡単 上田はその前に攻めなければいけないが・・・ 攻めの手がなさそう・・・
そして、いったん優勢になったら守りに入る清水 うわー 激辛(笑)
郷田「清水は手堅くいきましたね 手がないでしょうっていうことですね 上田は自分から攻めると自爆ですし」

清水の駒得が確定、上田は被害が広まる前に攻めたが、やはりこれは攻め駒の数が足りてない、ただの駒損に終わった 上田、完全に自爆になった・・・orz

清水が攻めに転じ、上田の美濃囲いは風前の灯だ もう形を作って終局か?と思われた
しかし、上田は貴重な戦力の持ち駒を受けに投入、受けた! うおー、ここで受けにまわるのか 一手違いはあきらめて、相手の攻め間違いに期待か その発想がすごい(^^;
郷田「これは根性の手ですね~! まだ勝負は分からない、これぐらいは逆転することがありますんで」

思わず郷田も感心の手だったが、駒割は清水のほぼ飛車の丸得だ
双方の囲いは全然違うが、玉の危険度は同じくらいか ここから逆転ってあるのか? 

しかし、清水の次の一手が難しいか 何か攻めの手で明快な決め手があるか? 
上田玉、駒がゴチャゴチャとしていて、実に把握しづらい 手が相当広い 清水、決め手を出せるか?
郷田「どうするかな」
思わず考え込む郷田 

・・・そこで、出た、清水の相手の歩頭に桂打ち一発、歩頭桂! これが事実上の決め手! うおー、そうか これか!
郷田「なるほど~ これが一番いい手でしょうね」
強い! 清水、郷田でも発見できなかった寄せ! そしてその後も全く緩みなく、最短と思える手で一気に寄せきった こ、このスピード感、これは大げさじゃなくて「光速の寄せ」ではないか つ、つええーー!
96手で清水の勝ち 清水の寄せ手順、なんと鮮やか すごい、強い!(最後の△1七香に▲同香は△1九銀捨てで寄りがあるとの郷田の解説) クイーン四冠の終盤力、その本領発揮だった 96手か、もっと戦っていた感じだった・・・    

郷田「早い段階で戦いが始まって、上田ペースになったと思う ところが清水が中盤でよくガマンをして、清水が少し有利になってからは非常に正確な指し手で、ホントに終盤が見事でしたね 清水が早指しでも強いところを見せ付けた一局」

感想戦で、清水は「序盤は馬を作られてしまったのが大きかったですね」と作戦失敗を認めていた
上田は、中盤で攻め合いに出てしまったところを郷田に指摘されていた
郷田「ゆっくり指せば上田さん、まずまず」
上田「いやあ、そうでした」

清水さん、序盤のあの馬を作られたのって、どうなの? あんなの、見落としとかそういうレベルじゃなくて、3手の読みでアマ5級もあれば楽に読める手だ 要は大局観が悪いってことか・・・ そうか、実戦経験が足りないんだな、ってオイ、清水さんはもう大ベテラン(笑)  中盤は絶対に失敗できない展開になったが、ことごとく間違えないで耐えて陣形を立て直したのは見事だ そして終盤では、郷田ですらも見えなかった寄せ手順、それも1手40秒で、あのかなり難しい寄せ方を正確に決めていたのは、さすがクイーン四冠! 序盤力と中終盤力の違いがすごい女流棋士だ(^^;

本局は、清水の危なっかしい序盤、崩れない中盤、有利になったら手堅い終盤、最後の寄せの鬼のとごとき強さ、清水らしさが存分に発揮されていた一局だった

上田さん、2年連続で挑戦者決定戦で負けか あー、中盤、なんで攻めに出ててしまったか 馬2枚作って有利になったはずが、決め技がかからなくてあせったか? 引いた馬2枚を使って200手かけてでも最後には勝つ、その精神でいかないとダメだったな 残念だった・・・  

挑戦者が決定したので、インタビューがあった(短くまとめました)
清水「(今日の対局は)成長株の上田女流三段との対局でしたので、自分も負けないように若々しく積極的にという思いで序盤を進めたんですが、だいぶ苦しい展開にしてしまいましたが、最後は辛抱が実った一局だったと思います
(今期の女流王将戦を振り返って)全体的に全て『辛抱』という言葉がキーワードというか、そのテーマに沿って指せた感じがします 
(3番勝負への抱負は)伸び盛りの、実力人気ともに抜群の香川女流王将との戦いなので、すごく楽しみ、反面、緊張感を持って臨みたいと思っています」 

挑戦者は清水さん 香川さんはどう迎え撃つか ・・・うーん、私はもう結果は知ってるんだけど(爆)
だって、ネットで大々的に報道されてるもん しょうがないよね(^^; 内容に期待!
深浦康市 九段vs森下卓 九段 NHK杯 2回戦
島朗 九段

今日は深浦と森下、手厚い居飛車党どうしの対戦だ 解説は島さんか 島さん、NHK杯では出場者としては長いこと観ていない・・・(^^; 

深浦は1991年四段、竜王戦1組、A級 1回戦シード 22回目の本戦出場 42歳
森下は1983年四段、竜王戦2組、B2 1回戦で広瀬に勝ち 24回目の本戦出場 48歳
1回戦のvs広瀬では、広瀬の矢倉に対し森下は急戦矢倉で挑み、素晴らしい指し回しを見せて広瀬を圧倒、完勝していた

清水「島九段は連盟の常務理事をなさっていらっしゃいますけども」
島「対局は惨たんたるものなんですけども、おかげさまで元気でやっています 森下九段は棋士の中でも私が一番親しいと言っていいくらい、年代もそんなに離れていません(島は51歳) 本当に誠実、人柄も誠実、きちんとされた方ですね 
今日は相手の深浦九段もそうなんですけど、プロの振る舞いっていうのをぜひ視聴者の方に観ていただければと思います
深浦さんは同門ということで、同じ九州出身棋士で熱さがすごくある方だと思います 羽生さんとかに対してでも、常に勝つ気満々で立ち向かう気持ちの人なので、それが大棋士になった大きな要因ではないでしょうか」

事前のインタビュー
深浦「森下九段には、奨励会の時分から将棋を教わったんですけども、手厚い将棋を叩き込まれました 今日もそのつもりで心構えしてきました 森下さんからは色んなことを教わったんですけども、それを踏まえつつ少しでもがんばれればいいと思います また花村先生にほめられるような将棋を指したいと思っています」

森下「深浦九段は私の花村一門の後輩に当たるんですけども、もう根性のカタマリと言える存在なんですね 常々、あの根性が少しでも私にあればなあ、と思っております 本局は深浦九段の根性に負けないくらい私も根性を出してがんばりたいと思います」

インタビューを聞いていた島「お二人の師匠の花村の名前が出ましたけど、師匠の花村は豪快で磊落(らいらく 意味は「度量が広く、小事にこだわらないこと」)なイメージだったんですが、お二人はそれとは違った、非常にきちんとした将棋が全面に出ます ただ、本質はお二人は乱戦が好きなんですよ 教科書どおりの将棋とは程遠い、乱戦になってからがお二人の真骨頂だと私は思っています 根性って、今あまり聞かないですけど、将棋の本質かもしれませんね」

先手深浦で、相掛かりになった すぐには戦いにならず、両者、駒組みを進めた
島「もう研究将棋じゃない」

2人の対戦成績が出て、深浦2勝、森下5勝とのこと 両者ベテランのわりに、あまり戦っていないな
最後に戦ったのは平成20年ということは、もう6年も前か

深浦の▲矢倉vs森下の△カニ囲いで、持久戦になっている 駒組みが長いので、島が雑談をしてくれた
島「森下システムってあったじゃないですか 深浦が若手の頃、ずいぶんそれを使って活躍されてました 森下システムの極意はですね、良くするための戦法じゃないらしいんですよ 50vs50にするための戦法らしいんです つまり中盤まで大過(たいか 意味は「大きな失敗」)なく進めることで、最後は強い方が勝つことにすればいい戦法なわけです 森下システムは強い棋士がやるのは非常に有効なんだけども、そうじゃない人がやると逆に順当に負けてしまう、恐ろしい戦法らしいんです 私はもうちょっと早く聞きたかったですねえ(笑) だから藤井システムとかと、仕組みが違うんですよね」

へー、そうかあ 森下システムの狙いは中盤まで五分五分で進めることにあったのか 居飛穴に対して居玉で一気に潰しにかかる藤井システムとは全然違うね

島「森下は嫌いなのは横歩取り 全部の駒を使わないのでね 本局は森下の一番好きな将棋ですね ここまでは若干、森下がうまくやっている序盤」
・・・と、島が言ったその時だった 森下が△4四角と5三から1マス動かしてラインを変えた一手、これが島の絶賛した手になった

島「これが狙いでしたか これが狙いでしたか(2回繰り返した) きれいな将棋ですねー 美しいですね これは素晴らしい こういう構想だったんですね」
うお、この角が深浦の矢倉に入城した玉をにらんで強烈なのか んん、それによく見たら、なんかこれ、森下の攻めの陣形がすごく良くないか 森下の全部の攻め駒が好ポジションに居る 深浦、これは? まだ駒がぶつかっていないうちから、かなりもうヤバイのでは?
 
島「結果は分かりませんが、森下の完璧な序盤の指しまわしと思われます 森下の角はこれ以上ない良い位置 深浦はまだ良いところが出ていない」
大盤を使った解説で、島は森下が上部から深浦の矢倉を一気に押しつぶす手順を指摘
・・・こ、これは? 深浦、もう逃れようがないのでは? いつの間にこんな作戦負けに? おいおい、大ピンチじゃん なんでこうなったんだ 深浦はもうすでに、まな板の上のコイという状態だ 森下に攻めつぶされるのを待つばかり! うわー 序盤の駒組みでここまで差がついたのは、プロどうしではめずらしい! も、森下、恐るべし!

島「でも深浦はここからが力の出しどころですので」
いやー、これはいくらなんでも、差がひどすぎるだろう 対局者はアマ低段どうしじゃない、プロどうしだ 攻め合いに全くならない形なので、見た目以上の差があるわ 
森下は慎重に時間を使った後、いよいよ仕掛けてきた 歩を4つ突き捨てての総攻撃だ

島「ここから深浦は予想もしない、しのぎをいっぱい出してくると思います 深浦は勝ちの可能性のある手を探すのがうまいんです」
しかし、現実は非情 森下の気持ちのいい攻めが続く これは、大差では・・・ 少なくとも、森下が間違えない限り深浦に勝ち目はないわ

島「厳しい攻めですね~ 私はとても淡白なので、これだと半分・・・ 私が深浦の側を持っていたら、半分ちょっと・・・ かなり・・・ ダメージを・・・」
清水「それほどの局面を迎えていますか」
おお、島さん、「投了」の二文字はかろうじて口に出さないものの、もうあきらめムード(笑) 持ち時間の長い将棋で対局者が島さんなら、ここで投げてもおかしくないな~(笑)  マジで、それほどの局面だ 

深浦、なんとか粘るべく、玉を1マス、スッと引いた とりあえず角のラインから逃げたか なるほど、森下も読みにない手だったかもしれない
島「まずは1つ、深浦のこの玉引きはさすがって感じです」

しかし、森下の攻めが続く 矢倉崩しの手筋の初級者編に出てくるような△6六歩という急所の歩が入った
島「森下がこのまま優位を拡大しますと、生涯の一局になりかねない会心譜になりますね 深浦としてはこんな△6六歩を打たれた経験はないと思いますね それだけ森下が冴えてる 1回戦のvs広瀬でも、森下のあまりの強さに感激したと若手棋士が言ってました 深浦がここまで押しまくられてるのは、あまり見たことがない」

森下、ここから攻め切れるか? まあー、大丈夫だろうなあ ものすごい作戦勝ちだもん それに、深浦が攻め合いを望めないっていうのもポイントだ これは森下が勝つわ それも大差で勝たないとおかしいわ

深浦、なんとか粘る順を繰り出している 働いていなかった右銀を活用だ
島「出ましたね、深浦の受けの第2弾 森下がコーナーに追い詰めている感はあります 深浦は22回、NHK杯に出場していますけど、今日が一番良くないんじゃないでしょうか 信じられないくらい押されています 森下の攻めは飛車角銀桂の全部を使った理想形」
森下の序盤があまりにもうまかったな もう勝負は決まっただろう、TV消すか?(笑)
 
両者、考慮時間が0回になった ここからは30秒将棋 駒割は、森下の銀の丸得 しかし歩切れ どう決めるか?
島「森下は手が多すぎて、広すぎて、間違えやすい局面ではある 深浦はさすがですね 絶望的な局面だったと思うんですけど、嫌味を見せてきました 森下はもっと大差に出来たはずだという思いがあるでしょう」
んんー、まだ逆転の可能性がある? 決定的な差がつけられなかった? ええー? でも、でも、さすがにこれ、森下が押し切るんだろ?
しかし、島の予想手がはずれまくっていて、何かが起きそうな空気が・・・

島「森下将棋は、躍動の桂跳ねですかね~ それくらい当たって欲しい」
森下が角取りに桂を跳ね出し、そこまではずれていた島の予想手がようやく当たった
島「あ~ うれしい(^^;」

その直後だった 深浦、なんと角取り放置で、持ち駒の角を▲7六角と盤上に放った んん、何コレ? 意味がわからんが?
島「この▲7六角は、森下の飛車が4筋に転回してきて4九に成ろうとしたときに、4九を守っているんです さすが深浦が本領を発揮してきましたね」
ええー、す、すごい 森下の飛車が4筋に回ってきたときのことを想定した角打ちなのか そして攻めにもすごく利いている な、なんという角・・・ しかしそうすると、森下は当然、飛車は4筋に回って来ないだろう ・・・と思ったら、森下、4筋に飛車を回ったぁぁぁ~!! な、何で~ 4九に飛車は成れないんだって!! どういうこと??

島「え~!? そうですか!? え~ これ、メチャクチャきついです!? 飛車取りに桂打たれるのが、いやこれは痛すぎるような!?」
そして島の予想手のとおり、桂を打って攻める深浦 これで一気に攻守逆転!! これ、どういう展開??
島「なんかすごいドラマを見ているような・・・ 深浦の本領がここまで出てる将棋もなかなかない 森下はこんなはずではなかったですねー いやあ楽しい終盤になりましたねー」

おいおい、どっちが勝ってるねん あの序盤の作戦勝ちから、なんで森下の圧勝じゃなくて、こんなに競ってるの??
島「素晴らしい終盤です 森下の、追いつかれてもすぐ崩れないところもすごい 名局になってますね」

どっちが勝つか、わからないけど、あの大差から追いついた関係上、ムードが深浦に行っている 深浦、押せ押せだ
島「(大事なのは)あきらめない気持ちなんですね~ 圧倒されていて、これをはね返せるのは深浦だけでしょう」

森下、玉を左に逃げるか右に逃げるか、というところ、勝負で狭いほうをわざと選んだが、深浦の飛車にズドーンと成り込まれて、必至がかかってしまった 森下は深浦玉を王手で追ったが、詰みは・・・ 全然なかった・・・
133手、深浦の大逆転勝ち!! な、なんという・・・ これ・・・ 深浦の追い込みもすごかったけど、森下、この圧倒的に作戦勝ちな将棋を逆転負け! も、森下・・・ 森下・・・ これを負けるか・・・ 

感想戦がなくて残念だったが、ちょっとだけ終局直後の森下の声を拾うことが出来た
森下「決め手がね~ 分からなかったんですよね~」

島「深浦の本領発揮しすぎの逆転勝ちでした 森下としては手が広すぎて決め手をちょっと迷ってしまいました ただ▲7六角からの逆転打が鮮やかでしたね ホントにねじり合いのすごい将棋でした 期待どおりでした」

深浦の▲7六角は、まさに絶妙手だったな~ 4九の飛車成を防いでいたんだもんなあ それにも関わらず、飛車を4筋に回した森下っていったい・・・(^^; 
島さんの「期待どおりでした」の言葉、ちょっとトゲがある言葉とも受け取れる(笑) 
序盤のうまい森下が圧倒的に作戦勝ちして、それを深浦が根性と才能で大逆転する、という、これ以上ないオイシイ展開(笑) もうね、ここまで良く出来たシナリオは、どんな脚本家でも書けないよ(笑)

この一局、「深浦の本領発揮」というよりも、「森下の本領発揮」と言うほうが的確と思う人が多いだろう 私もその一人だ(^^; ここまで圧倒的な作戦勝ちを収めておきながら逆転負けできるのは、森下くらいではなかろうか(^^;
藤井もファンタジスタだけど、対抗形は飛車側で戦いが終わった後も、まだ玉側での戦いが残っているから、逆転の余地が多い しかし、相居飛車でハッキリ作戦勝ちしたら、たいがいそのまま押し切れるものだ
   
いや~、森下、魅せたな~ もう、これ、言っていいのかわからんけど、ここまで来ると「笑いが取れる棋士」と言っていいだろう いや、負けた棋士を悪く言うつもりはないんだけど、しかし、プロどうしでここまで圧倒的な作戦勝ちから、ものの見事に逆転負けを喫する棋士・・・(笑) 森下、その序盤力と中終盤力の落差、人間味あふれる、なんと魅力たっぷりであることか! 感動を呼ぶ棋士というのは多いけど、笑いを取れる棋士ってめったにいない、森下は、まさに将棋界の逸材だ! 

島は解説の途中で、「森下の生涯の一局になりかねない」と言っていた その言葉どおり、「森下将棋・逆転負け局集」の巻頭を飾りそうな一局で、実に面白かった(笑) まさに「傑作」というやつだ いや、だって、面白かったんだから、しょうがない これぞ、人間どうしの戦いだね! 森下、最高~! すごく楽しかった、ありがとう!!
NHK Eテレ サイエンスZREO 2014年11月9日(日) 夜11時30分~
http://www.nhk.or.jp/zero/

Ponanzaの開発者、山本一成さんが約10分間、コンピュータ将棋の開発を通して、コンピュータと人間の将来像についてプレゼンしてくれます ぜひ観ましょう!

それから、阪田大吉さんの「将棋のブログ」の将棋ニュースの欄で見つけたのですが、アメーバニュース(提供は日刊SPA!)の先日の電王トーナメントのまとめ記事が面白いです
・プロ棋士も「強くなりすぎ」と絶句 将棋電王戦FINAL出場ソフトが決定 前編と後編
http://yukan-news.ameba.jp/20141106-31986/

よくまとまっていると思うので、ぜひ読んでおきましょう これを書いた記者さんは、最後に「(電王戦FINALでプロ棋士が勝ち越すのは)応援はしたいのだが、正直なところ、どう考えても絶望的な状況」と書いておられるのが面白いです・・・(^^;
もう、笑うしかないっていうか(笑)
2014.11.06 アカン!
今、妹が2人目を産むというので、また愛知に帰省して来ている
1人目の赤ん坊は、もうすぐ2歳になる この子が、食べ物の好き嫌いがなくて、何でも食べることは前に書いた
で、今も変わりなくモリモリと野菜を食べる ニンジンやピーマンなど、よく食べる
私は野菜が好きではないので、この子に「ニンジン、まじゅい、まじゅい(まずい、まずい)」と言ってみた
そしたら、この子が「(何でも食べないと)アカン! アカン!」と言ってきた・・・

煮物の野菜とか、あんまり美味しくなくね? この子、煮物のシイタケとかキノコ類が大好きなんだよね
私「シイタケ、まじゅい、まじゅい」 
もうすぐ2歳の子「アカン! アカン!」
うーむ、この軽い屈辱感・・・(笑)

しかし、「アカン」というのは、完全に関西弁であり、妹が今住む長野県では使われない言葉だ
これから、「なんでやねん!」とか「ホンマやな~」とか、そういう関西弁を使う人間に育てたいものだ
清水と矢内の一戦 この一局に勝ったほうが、上田との挑戦者決定戦を戦う
解説は中村修、聞き手は中村桃子女流だ

清水は通算562勝222敗 0.717 45歳
1回戦の室谷女流初段との戦いでは、室谷の振り飛車で対抗形になり、息詰まる大熱戦の末、底力を見せ付けて勝ち
2回戦(ベスト8)の中澤アマとの戦いでは中澤の右四間に対し、右玉を採用して危なげなく快勝している

矢内は通算360勝222敗 0.619 34歳
1回戦の蛸島女流五段との戦いでは、蛸島のゴキゲン中飛車に作戦負けになってしまったが、蛸島のまずい攻め方があって逆転勝ちしている
2回戦(ベスト8)の伊奈川女流初段との戦いでは、伊奈川の居飛穴に、無策なノーマル中飛車で挑んで大苦戦、ほとんど負けのところまで追い込まれたが、伊奈川が寄せを間違い、どうにか逆転勝ちを収めている

解説の中村修「清水は数々のタイトルを取っていまして、対局姿がきれい 上品な感じがいつもします 矢内は清水と同じで対局姿が美しい この2人が対局すると、女流棋士のイメージ全体が上がる気がします 最近矢内は飛車を振るので、対抗形になるんじゃないか」

先手清水で、いつもどおり居飛車 矢内の作戦が注目されたが、前局のvs伊奈川と同じ、角道を止めたノーマル中飛車だった
それに対し、清水は急戦策を採用、▲居飛車急戦vs△ノーマル中飛車+美濃、という、かなりレトロな戦型になった
中村修「角道を止める振り飛車に対し、清水は急戦が多い 男性棋士では少ないですが」

2人の対戦成績が出て、清水43勝、矢内16勝とのこと けっこう差がついてしまっている
まあ、タイトルの通算が清水43期、矢内6期だから、対戦成績でもこのくらい差があるか・・・

清水は急戦策の中でも、▲4六金戦法という、対中飛車専用の作戦を採用した これは私は今まで本でしか見たことがないぞ こんなの、指す人がいるんだな~ 
中村修「▲4六金戦法は40年前の指し方です(笑)」
矢内のノーマル中飛車もめったに見ない作戦なら、清水もめったに見ない作戦だ 互いに絶滅危惧種どうしの戦法のぶつかり合いとなった(笑) 

清水が右金を出て行き、押さえ込みを計り、矢内がさばけるかという中盤 
中村修「清水の押さえ込みがうまくいっている感じ」
しかし形勢揺れ動き、
中村修「矢内が盛り返した 模様が良くなった」
その後も難しい戦いが続いている

かなり長い戦い、終盤の寄せ合いに入ったと思われたが、双方自陣に飛車を成り帰り、局面が一段落してしまった
もう1回、互いに攻めのやり直し! ぐわー、これは総力戦になってきたな
中村修「若干、矢内良し」
と言っていたところ、矢内が局面を決めに出た!
中村修「決着をつけに行きましたね 勝ちに行こうという手」
ノータイムで指し進めた矢内、勝ちを読み切ったのか、と思われたが、そのとき清水に渾身の勝負手が出た!
中村修「あー 勝負手ですね なるほどなるほど あ、これは良い手ですね 矢内もうっかりしましたかね」
なんと、清水に絶妙の切り返しがあった! こ、これは厳しい・・・

駒の損得で大差がついてしまい、もう矢内は全然ダメになった 投了するかと思われた 矢内はまだ粘っているが、これはただの悪あがき・・・ と思って観ていたのだが、なんか、清水の玉が危ない!? 矢内は非常に少ない攻め駒で清水玉を追い込んでいる うおー、もう投了しかないと思われたところから、ここまで迫るとは! 秒読みで清水が対応を間違えれば一気に大逆転だ どうなる? 
しかし、清水、この長い終盤でもまだ体力が余っていた 冷静な玉さばきを見せ、逆転を許さなかった
149手、長い戦いは清水の勝ち ふう~、総力戦だったな・・・

中村修「すごい将棋でしたねー びっくりしましたね お互いに何度もチャンスが来て、何度も失敗もありましたしね お互いに強い精神力でがんばったという感じ 最後は清水さんは指運があったと言うしかないですね ギリギリまでわかんなかったですからね 大熱戦でした」

双方、力を出した好局だった 矢内の最後の追い込みは特筆ものだ 私なら投了してる場面から、あわや逆転勝ちの局面を作り上げるとは・・・ さすが、地力があるな~
清水も、それを見切って、よく勝ちきった 長手数になっても乱れない体力、やはり女流の第一人者だ
双方、難しい局面での実戦的な手というのが多く観れた一局で、両者の実力の高さがよく出ていたと思う

ただし、だ 両者の作戦の選び方、これには疑問を感じざるを得ない 
矢内は前局で伊奈川に居飛穴でボコボコにされたにも関わらず、またもやノーマル中飛車+美濃
清水は▲4六金戦法という40年前の作戦
両者、これらの作戦をわざわざ選ぶ意味ってあるのか、と思えて仕方なかった(^^; 
終盤は確かに、両者力を出していたんだけど、解説を聞いていると、中盤は「おや?」という箇所が多かった 両者、選んだ作戦をうまく使いこなしているとはとても思えなかった  

清水さんは本局、勝つことは勝ったけど、ムチャクチャ苦労してねじり合いの末、ようやく勝ちだった
同じ矢内の作戦を相手に、伊奈川さんは居飛穴ですんなり作戦勝ちから勝勢まで行っていたからね  
矢内さんは、後手番でノーマル中飛車+美濃を使っていてはタイトルを取れるとは思えない 攻撃力がない戦法と思えるのだ 相手に居飛穴にされたときも困るだろう
両者、棋力はあって、他の作戦でも充分指しこなせると思うのに、今時わざわざこの作戦を選ぶ意味がやはりわからない

決勝の挑戦者決定戦は、清水女流六段vs上田女流三段の対戦となった
21歳の香川女流王将への3番勝負の挑戦権を得るのは、45歳の清水か、25歳の上田か?
順調に強豪ソフトが勝ち進み、決勝はPonanza対AWAKEになった
終盤、Ponanzaは自分のほうが千点ぐらい良しと言っていたのだが、なんと最後の寄せでミスがあったようで、大逆転!!
AWAKEが劇的な逆転勝利で、優勝となった

コンピュータ将棋どうしの戦いは逆転が非常に少なく、終盤は観ていてそんなにハラハラする場面がなくて、勝ち負けの意味ではあまり面白くないな、と思っていたところの出来事だった

表彰式では、Ponanzaの開発者の山本一成さん、呆然として言葉が出ない・・・
予選リーグではAWAKEに勝っているんだけどね
山本さんは自身のブログで、「優勝したら羽生名人と戦うために対局料の募金を集めたい」と言っていたが、それがパーとなったか・・・ まあ、また第3回電王トーナメントがあるかもしれないけどね

5位決定戦ではAperyが安定して勝ち進み、5位入賞、電王戦FINALに出場権を得た

5位Apery、4位Selene、3位やねうら王、2位Ponanza、1位AWAKE
前回と比べて新ソフトが3つ出て、見所が多そうだ
5つのソフト、この中ではSeleneが強いのかどうか、よくわからない

この順で出るということは、 
1回戦 斉藤慎太郎五段vsApery
2回戦 永瀬拓矢六段vsSelene
3回戦 稲葉陽七段vsやねうら王
4回戦 村山慈明七段vsPonanza
5回戦 阿久津主税八段vsAWAKE

こういう戦いとなるのか 来年の春、どうなるか、楽しみだな~
追記・11月4日に、連盟のHPで「※対局順は未定です」との発表がありました
棋士側がこの順番で戦うと決まっているわけではないようです


<お知らせ> 9日の日曜、NHKのTVの「サイエンスZERO」に山本一成さんが出ます!
10分間ほど、コンピュータ将棋についてプレゼンしてくれるようです 楽しみです!
http://www.nhk.or.jp/zero/
全部はしんどくて観れないので、激指と習甦の一局だけ、まじめに観ました

ちなみに私が持っているのは、2012年の7月に発売された激指定跡道場3

どうにか11位でギリギリ予選を通過した激指、決勝トーナメントで習甦と対戦
先手番を握り、矢倉に組んだ激指 習甦は急戦矢倉で攻め立てる
飛車を切る猛攻をした習甦が、うまくまとめて攻め勝った
激指は元気なく完敗という内容だったと思う

不思議だったのが、終盤、激指は相手の馬に金を当てる▲7九金という手を指していたところだ
そこから急に形勢が悪くなったように見えた
私が持っている激指定跡道場3では▲7九金は、検討モードの候補の4番手くらいにしか出てこない手で、疑問手と判断している
激指定跡道場3ではそれまでは-190点くらいの差で競っていたのが、▲7九金で一気に-500点くらいになり習甦の有利が確定になってしまった 
私の棋力から見ても、馬を取っている間に守りの金2枚がはがされてしまう手で、ひと目、終盤ではやってはいけない手だ
なぜ、最新の激指が▲7九金を指してしまったのか? 2時間切れ負けで時間がないといっても、高スペックのPCを使ってるわけで、やはりわからないなあ

ツツカナもBonanzaもYSSもNineDayFeverもGPSも出ていないのに、激指はベスト8以上の5位決定戦にも残れず
こりゃ、来月発売されるであろう激指14は、私は見送るわ・・・(^^;

決定の上位4チームは、Ponanza、Selene、AWAKE、やねうら王

AWAKEは村山七段や他のプログラマーが注目のソフトということで、納得だ 受けが強くて攻めさせない棋風で、こういう棋風はソフトでは今まであまり聞かなかったので、いいね
Seleneって強いのか? ソフトの紹介文を読んでも全然わからない(^^; 
「『そう言えばここ30局くらい桂香を動かしてない』なんて頃もありました」 という紹介文で、けっこう面白いが・・・ 村山七段の最後の一言では、Seleneはプロ感覚の手堅い将棋を指す、とのことだった

5月の選手権で優勝のAperyが5位決定戦に回ってしまった ただ、開発者の人は「Aperyを信頼しているので、5位に上がってくれるはず」と力強く言っておられた 私はたぶん5位はAperyだろうと思っている 習甦は、まあ、前回MVP取ったし、リベンジマッチにも勝ったし、もういいんじゃね?(^^; 私としてはAperyのほうを電王戦FINALで観てみたい
もちろん、習甦が勝ったら出場おめでとう、だけどね

あと、ソフトはほとんど居飛車系統の将棋ばっかり、というのはあまり面白くない・・・ やはりベースがプロの将棋から手本を得ているからだろうか? ここ10年くらい、トップ棋士はほとんど居飛車ばっかりだからね タイトル戦で飛車を振って勝ったのは、久保と広瀬の振り飛車穴熊くらいだ 他は羽生や渡辺がたまに振ったら、ニュースになるくらいだもんなあ(^^;

それから、印象に残ったのが、村山七段の言葉で、「ソフトと練習して自分が勝つときは、200手くらいいくときがけっこうある」という発言だ ソフトはとにかく粘るらしい・・・ うわー、めっちゃ大変だなーと思った
菅井竜也 五段vs増田裕司 六段 NHK杯 2回戦
解説 船江恒平 五段

清水「日曜のひととき、選び抜かれた好手、妙手の数々をお楽しみください」
今日は菅井と増田か 解説には、ふなえもんだ そう言えば船江はなんとなく、ドラえもんに似ていなくもない(^^;

菅井は2010年四段、竜王戦5組、C1 1回戦で高崎に勝ち 3回目の本戦出場
菅井は竜王戦5組で準優勝し、来期からは4組だ
1回戦のvs高崎では、高崎の角交換振り飛車に対して、菅井は居飛車で穴熊に組んで玉の遠さを活かして快勝している

増田は1999年四段、竜王戦4組、C2 1回戦で阿久津に勝ち 4回目の本戦出場
1回戦のvs阿久津では、不利なところから終盤に長手数の詰みで、会心の逆転勝ちを収めている

清水「船江五段はNHK杯の司会、初めてということなんですが」
船江「対局のときよりも正直、緊張しています(^^;」
・・・ここ、清水は「司会」と言ってしまっていた 解説の間違いだ(笑)

船江「菅井は井上門下の同門なので、日頃よくお会いするんですが、空気を吸うように将棋をするというか、ホントに将棋の虫で将棋が大好きという感じですね 菅井は元々振り飛車党だったんですが、今期から居飛車も取り入れてどちらも指している むしろ居飛車のほうが多いんじゃないか
増田は気合いを重視する棋風で、人柄、将棋、どちらも男らしいイメージ」

事前のインタビュー
菅井「増田六段はすごい攻め将棋だなという印象があります 公式戦でも3局ほど指したことがあるんですけど、いつも不思議な戦型に進むことが多いなと思っています 今日は振り飛車を指したいなと思っているので、振り飛車のいい将棋を指せるように最善を尽くしたいと思います」

増田「菅井五段はセンスは超一級品ですね 将棋に対する姿勢もすごくて24時間将棋のことを考えている印象を受けます 菅井五段とは過去3回やっているんですけど、こっちが奇襲戦法とかでボロ負けしているんで、今日はまともにがっぷり4つでいきたいなと思っています がんばります」

先手菅井で、▲中飛車vs△居飛車の角交換の戦いになった 
船江「よくある将棋になりましたね 中飛車に対して、プロ間で多い形 菅井はこの形は相当指している」

2人の対戦成績が出て、菅井3勝、増田0勝とのこと 最近の10月16日に王位戦があり、それも菅井が勝っている、とのテロップが出ていた つまりそれを合わせると菅井の4戦全勝だ

盤上、すごい持久戦になっている  
船江「こう着状態になることが多い戦型 先手番の菅井が打開したいところ」

ちょっと雑談があった 
船江「菅井が関西の研究会に入ったときに、増田は幹事だった 2人が最初に会ったときは生徒と先生の関係 菅井と私は何百局も指している」

なかなか戦いが起こらない・・・ もう双方銀冠に組みあがり、これ以上指す手もなさそう 増田は金を左右に動かして、モロに手待ち お互いに動けなさそう うーん、こういう風になるなら、初手▲5六歩からの先手中飛車っていうのは、あまりいい戦法ではないのかな?  
 
そう思っていると、菅井が動いた ▲6一角という打ち込み しかし、何だこれは? 狙いがわからない
船江「これは難しい手ですねー 現局面では狙いがないんですよね」
そう船江が解説していると、菅井がすごい構想を見せた 
なんと、交換して持っていた桂を▲8三桂と打ち込み、投入! な、何~ 見たことない筋だ こんなそっぽに桂を使っちゃって、これで良くなるってことがあるのか
船江「いやー すごいですね(^^;」

しかし、やはりこの▲8三桂は無理やりすぎるのでは、と船江
船江「菅井が攻めているが、増田がいなしながら、良い陣形を作っている感じ ここまでは増田のペースかなと思います」

戦いは右方面、玉頭戦に移った 
船江「お互いに銀冠なので、先に攻めるのは大変そう」
しかし増田から攻め、ここから激しい玉頭戦が延々続くことになった 

菅井が玉頭戦より、と金作りを優先させたため、増田に玉頭に厚みを作られてしまった 菅井は、と金攻めを間に合わせようと銀をはがしてなおも金取りに当てた 当然増田は、と金を取ると思いきや、手抜きで玉頭攻めを優先! うおおっ!!
船江「いや そういう手ももしかしたらあると思ったんですが いやー そうですかー」
清水「はあー」
船江「増田らしさがついに出てきましたね 男らしい一着 これはすごいですね 一直線の攻め合いで分があるので、なるほどという手ですね」    

ここから、玉頭でものすごいねじり合いに・・・ 残りの考慮時間、菅井▲5回vs増田△0回になった
船江「増田は読めば勝ちが見つけられそうな局面」
しかし、どうにも増田側は手が広くて最善を指しているのかどうか?
船江「これはちょっと解説がついていけませんね」

駒が色々当たっているが、両者放置で速度勝負 おまけに、玉頭の位がどれくらい大きいのか・・・
船江「手抜きに継ぐ手抜きでついていけない感じ」
うーん、船江すら思考が追いつけないのか 私は当然ついていけない(^^;

そんなとき、菅井に絶好の桂打ちが出た 桂を打ったときの菅井、パン!!と高く音をさせて響かせていた
船江「これを解説できなかったのは、恥ずかしいくらいの良い手です」
こりゃ、実質決め手だな この桂は厳しい!

船江「菅井の時間のペース配分も素晴らしいです これぐらい早く指さないと終盤に時間が残らないんだなあ」
そこからまだ増田は最後の勝負手を放ったが、菅井に冷静に見切られた 
143手で菅井の勝利となった 激戦だった

清水「手抜き合戦ですごい終盤でしたが」
船江「序盤はじっくりした戦いでしたが、中終盤の手抜き合戦はすごく見所があって、いい将棋だったと思います」

感想戦では、増田が勝ちを逃していたんじゃないか、ということだった
そうだねー、形勢も2転3転していたような内容だったね 私はあまりついていけなかったが(^^;

気合い重視の増田としては、真価が発揮できる展開だったと思うのだが、負けてしまって残念だろう 1回戦のvs阿久津で見せたような華麗な終盤力が発揮できなかったか 
むしろ菅井が気合い勝ちというところだ 菅井は当然の一手のところはノータイムで指していたのが印象に残った 82手目から玉頭戦が始まって、投了の143手目まで延々玉頭戦が続いたのだから、長かったなー(^^; 

ただ、菅井は中盤は疑問が残った ▲8三桂、あの攻めの組み立てで今後も勝てるとは思えないのでね 
菅井がねじり合いの激戦を力で制し、辛勝という一局だった
電王トーナメント、予選リーグの8試合があった(持ち時間15分で切れたら10秒将棋)

私が注目している激指は4勝4敗、11位でギリギリ予選をなんとか通過(12位までが予選通過)
めっちゃ危なかった!
開発期間がたった1年というnozomiが10位で、激指の上を行ってしまった

激指って、もっと強いんじゃないの~ 私の持ってる1万円出して買ったソフトは11位か~!(笑)
今年12月に発売されるであろう激指14を私は買おうかと思っていたけど、考え直すか・・・

激指は今年5月のコンピュータ将棋選手権では、5位だったんだけどなあ 
(その大会は25分切れ負け、激指は4勝3敗 優勝のAperyは5勝2敗)

激指は明日の決勝トーナメントでは鬼ブロックに入り、初戦で習甦と当たった!!
こりゃ、激指、ダメっぽいな・・・ なんか、振り飛車にしたときに負けてるとのことだった
その激指vs習甦の勝ったほうが、やねうら王と当たる これも面白そうだなー

Ponanzaはやはり強く、8戦全勝で首位通過 
ただ、激指とAperyはPonanzaを内容的に苦しめた、ということだった
明日も楽しみだ