突然ですが、詰将棋に対して、私が子供の頃、どう思っていたか、書いておくべきと思いました。
私は詰将棋というものを、根本的に誤解してたからです。

私が子供の頃は、こう思っていました。
「詰将棋? そんな変な詰まし方をして、そんなのは実戦には出てこないから意味ないよ」
「どうせ実戦では、一手余して、完勝する。そんなギリギリの詰まし方まで追い込まれる前に勝ってみせる」
「詰将棋は詰将棋が好きな人がやる、別の趣味」

・・・これらの考え方が過ちであることに、私は子供のころには気づきませんでした。

私がこの誤った考えになったのは、当時は良質な詰将棋本が、世の中に絶対的に不足していたのも、大きな原因でした。
だいたい30年近く前ですが、そのころ出版されていた本というのは、例えば「1手詰~13手詰 ○○九段作品集」みたいなものが、大半だった印象があります。
1手から13手って、小学1年生から高校3年生くらいまで使う数学の本みたいなもので、そんなの、使いにくいったらありゃしません。棋力対象の幅が広すぎます。
それに、作品集という言葉が、いかにも「鑑賞用」というニュアンスを出しています。

この流れが劇的に変わったのが、「ハンドブック」シリーズの登場でした。
2004年に「5手詰ハンドブック」(赤い旧型)というのが発売され、私は初めて一冊を通して解き、「詰将棋ってこんなに面白かったのか」と、初めて思いました。浦野先生、ありがとう。

さて、「指す将棋派(実戦派)」の人は、「詰将棋」をやるべきか? それは断然、「やるべき」です。
その効能とは、何なのか。なぜ詰将棋をやるべきなのか。
それは、指す将棋(実戦)というのは、「頭の中でいかに速く正確に長手数、駒が動くか」を競い合っているゲームだから、と言えます。
もちろん指す将棋では発想や知識も問われますが、上記のこともモロに問われてくるわけです。
上記のことを鍛えるのに、詰将棋は断然、役に立つんです。

頭の中で、駒が速く動けば動くほどいいし、正確に動けば動くほどいいし、先まで読めれば読めるほどいい。
これは将棋を指すうえで、もう間違いないです。

「詰将棋は、最後の詰ますときに役に立つよ」と言う人がいますが、それは100点満点中で20点くらいの回答だと思います。
もちろん最後の詰めにも役に立ちますが、駒がぶつかる中盤から、詰将棋でつちかった能力が役に立ちます。
なにせ、頭の中で駒が高速に正確に動くわけですから。それは中盤でも必須の能力です。

詰将棋では正確な相手玉の対応を考えますので、「勝手読み」、「読み落とし」が減ります。
受け全般にも役に立ちます。攻めてばかりの人にとっては、うまくいかない場合を発見できるようになるので、バランスが良くなると思います。

例えでよく言われますが、詰将棋は、いわば、脳の筋トレですね。
ほとんどのアスリートが筋力アップトレーニングやっているように、指し将棋にも詰将棋という筋トレが有効なわけです。

じゃあ詰将棋、やればやるほどいいのかということですが、指し将棋派の人は、やはり一問10分以内に解けるくらいのものを、どんどん解いていくのが王道なやり方なんじゃないかと思います。
私の父は、すごく弱いですが、朝日新聞に週一で載っている7手~11手詰を、その一題を一週間かけて解く、というやり方をしています。
さすがにそれでは指し将棋派には効率が悪いんじゃないですかね。
プロだと一問に何日もかけるというのがありますが、それは一般のアマにはいまいち参考にならないでしょう。
詰将棋を解いている時間それ自体が楽しい、全く苦にならない、時間も持っているというのなら、一問に好きなだけかけてもいいのでしょうけど。

ところで私は詰将棋が好きか嫌いかと問われたら、断然、「嫌い」と答えます(笑)
私が詰将棋が好きだったら、もっと24で高いレートを出せてました(^^;

詰将棋は指し将棋(実戦)でも役に立つ! そんな当たり前のことに、子供の頃は気づきませんでした。
まあ私は昔からNHK杯を観るのが何よりの楽しみで、実戦すらあんまり指していませんでしたけどね。昔は相手もいなかったですから。

藤井聡太四段ブームですが、詰将棋について誤解をしている人も、中にはいるんじゃないかな、と思って、書きました。
詰将棋選手権を3連覇している藤井四段は、頭の中で駒を超高速に、超正確に、超長い手数を動かせるのです。自動車でいわば、最高性能のエンジンを持っている、と言えます。

結論・詰将棋は指し将棋をトレーニングする際の重要ツールである
(詰将棋を作るほうの文化、観賞用の詰将棋の文化も、もちろんあります)