本戦Eブロック 9回戦
藤井聡太七段 vs 行方尚史八段
対局日:2019年4月19日
解説:大石直嗣七段
聞き手:伊藤沙恵女流二段

今回から、銀河戦の藤井聡太の対局を、感想を書いていきたい。
先日レビューした本、「藤井聡太の鬼手」で感動したので、ちょっと私に記事を書く気がわいてきたのだ。

藤井聡太は現在Eブロック4人抜きで、すでに最多連勝者となり決勝トーナメント進出を決めている。
4人抜きの内訳は、佐藤慎一六段、阿部健治郎七段、近藤誠也五段、畠山鎮七段にそれぞれ勝った。
ここからはもう負けても決勝トーナメントには出られるので、藤井としては気楽な対局の部類に入る。

今までの4局、特に藤井が不利になった場面はなかったのではないかと記憶している。
安定した勝ち方をしてきているように思う。私はここまでボーっと観ていて、あんまり記憶もないので申し訳ない。

さて本局。昨日の火曜の午後8時から放送があった。
解説の大石「藤井は、本人のもっともっと上を目指したい気持ちが伝わってくる。
行方は、昨年銀河戦で準優勝で惜しかった。秒読みになってから強い。お互い居飛車の本格派」

先手藤井で、角換わりかと思いきや、早々に行方が変化した。藤井の▲7七角をとがめるべく、行方が早繰り銀に出たのだ。力戦となった。行方の作戦がどうなるか注目だ。

そうほう居玉のまま、戦いに突入。角と銀桂の2枚換えで、藤井の駒得だが、まだ形勢は難しそう。
大石「勢いは行方のほうにある」 という解説だったのだが・・・

行方、自玉の玉頭に成桂をわざわざ作らせるという強手を出した。
しかし、急所に成桂ができたのは、やはり痛かったようだ。かさにかかって藤井が攻めて来る。
居玉だった行方陣、薄いし、受けるにも持ち駒もない。
藤井の飛車にドカンと成りこまれ、必至がかかった。 ♪ハイ それま~で~よ~
で、なんと67手の短手数で藤井の勝ち! 

えええええーーー これで終わりかー なめちゃん、もっと粘ってよ~ 67手ってなによ~orz もう終局・・・

大石「華々しい内容の濃い将棋。藤井が切れ味を見せた」
えええーーー 内容、濃いか? いやーーー これは・・・ 行方・・・

藤井には一手のゆるみもなかったのではないか。完勝だった。
感想戦で、行方「2枚換えではダメとしたもの」
20分くらいあった感想戦で行方は懸命に互角に戦える順を探していたが、見つからず。
もうね、早繰り銀の作戦自体、だめなんじゃないの。7手目の▲7七角をとがめるなんて無理なんだろう。
だからみんなは普通に角換わりに進むわけで。

行方の研究手順を完璧に打ち破った藤井聡太、その序盤戦術のレベルの高さを見せつけた。
あああー、もっと終盤のねじりあいを見たかったが、もうしょうがない。次に期待。
行方といえばトップクラスの棋士のはずなのに、藤井にかかればボロ負け・・・(^^;
今回の藤井の強さ、それは24に常駐しているソフト、JKishi18gouを思わせた。無駄な手がなく、とにかく終局が早いから。
藤井の底力を発揮させる棋士に登場してほしい。藤井の鬼手が見たいのだ。
次の相手は阿久津八段。放送は一か月後くらい。それに勝てば豊島三冠と当たる。
藤井聡太の鬼手 デビューから平成30年度まで
日本将棋連盟発行 著者は書籍編集部 2019年5月31日初版第1刷発行 1540円+税
評価 S  難度 ★★~(棋力の低い人でも、チャレンジして読んでみる価値あり)
コンセプト<藤井将棋のエッセンスを堪能しよう> 

鬼手は、「きしゅ」と読むものなんだそうだ。 
藤井の絶妙手のオンパレード。楽しい。面白い。素晴らしい。ビューティフル。ワンダフル。
冒頭から、29連勝を一局ずつ追っていってるので、読んでいるとこっちまで連勝の臨場感にワクワクしてくる。

次の一手形式となっている。藤井がその局面でどう指したか、読者がまず考えることができる。
「鬼手の背景」という説明文があるので、それをヒントにすればいい。
この説明文がかなり良い具合のできだと思った。今どういう局面なのか、把握するのにすごく役立った。
中には、「それを言っちゃー、答えを言ってしまったも同然ではないか」というものもあるのだが、棋力の低い人に向けて書いてあると思えば、しかたないだろう。
そうかと思えば、「そんな軽い説明ぐらいじゃ、次の手がわかるわけないだろう」という局面もとても多い。

私の正解率は2割ぐらいだったか。多くのものは、めっちゃ難しい。
藤井の指した次の一手に正解しても、その後の読みまで正確に見抜くのは至難の業だ。無理ゲーというやつだ。
自分と藤井聡太の棋力の違いをあからさまに感じることができた(笑)

解説で10手くらい一気に符号の連続で進めていることも頻繁。そこは読み手にある程度の棋力が必要とされる。
でも、棋力が低い人も、ソフトを使えば助けになると思う。私は激指を5~6回使った。
読み手は、どうせ何割かは理解できないことを前提にしよう。
解説はもっと詳しく書くのが理想だが、1題につき1ページに収めるとなるとこれが限界だろう・・・。

もう名人がソフトに超えられたが、プロ将棋界には藤井聡太がいる。
これであと数十年は将棋連盟も安泰だろう。藤井聡太の将棋は、そう思わせるものがある。

「藤井の指し回しを堪能したいけど、棋譜並べってめんどうだからなあ」と思っているファンにピッタリな本だ。まさに私にうってつけであった。

さて、この本の問題点。
表紙の写真、先手後手のマークの表示に問題がある。
絶妙の☗4四桂、戦慄の☖7七同飛成、棋史に残る☖6二銀
これが正しいのだが、☗と☖が逆に見えてしまうのだ。
表紙の写真では藤井が黒の背広を着ていて、そこの上に文字が白抜きで書いてある。
「反転」という書き方だ。その反転を☗と☖にもしてしまったものだから、逆に見えてしまう現象が起こっている。
本の中でもその反転の現象がある。
「図は91手目☖4一銀まで」などと101局面分、あるのだ。
それが、後手が指し終えた局面のはずなのに、先手が指し終えたかのようなのだ。これは失敗だ。
こんな基本的なところでミスするってどうなの。
(幸い、説明文と解説文は反転されていないので大丈夫)

あと、訂正すべきところ。
P10 ☗2一銀不成から飛車を × ・・・☗8一銀不成から飛車を 〇
P10 プロ2勝目をあげた × ・・・プロ3勝目をあげた 〇 
(以上2箇所はAmazonのレビュー者の指摘)
P118 後手が悪いわけではない ×  ・・・先手が悪いわけではない 〇
P179 先手陣の急所を見抜いた ×  ・・・後手陣の急所を見抜いた 〇
P166 ☗4四香から、一気に × ・・・将棋DB2で調べると、☗4五香が正しい 
もうだいぶ経つが、5月5日のコンピュータ将棋選手権、最終戦が千日手になってしまい、とても残念だった。
最後の決定戦だけ、じっくり観るぞ、とPCの前で気合を入れていたのに・・・。
解説が始まる前に終局するという・・・orz

先週のNHK杯、福崎vs都成。これは福崎を応援していた私にとっては、痛快な一局となった。
福崎先生、ほぼノーミスで完勝。かっこよかったーー!! 2回戦の渡辺戦も、もしかしたら、万が一ということがありうる!
ないかな?(笑)

スカパーのファミリー劇場というチャンネルでやっていた、「小籔千豊の将棋道場小破り」の全10回が終わった。
指導役の元奨励会三段の甲斐さんが好青年で、いい感じでファンになった。
月756円の価値は充分にあった。楽しい番組をありがとう。
本家の囲碁将棋チャンネルでも、こういう番組を作ってほしいのだが。

6月2日に放送予定という子ども将棋名人戦、ヤフーのトップページの下段のニュースで、だれが優勝したか、ちらっと見てしまった。
おおーい、放送前のネタバレやめてー。

銀河戦は折田アマが8戦目でついに負けたが、そのときの相手だった野月は中盤以降が、さすがと思わせる指し回しで見ごたえがあった。
今は藤井聡太の出番待ち。どうも他のプロどうしは見る気がしない。

24のHefeweizenとJKishi18gou、レートが1000点アップしていて笑えた。
ドラゴンボールでいうと、スカウターが壊れるぐらい強いというところか。
私はついつい観戦してしまう。もうプロより圧倒的に強いんだもんなあ。

abemaTVの早指しトーナメント、今期はあまり観てないが、伊藤沙恵さんがどんな内容になるかは興味がある。

私の父が、森信雄の詰将棋本を4冊も買ってきているんだが、そんなにやれるの?
よりによって難しいとされる森信雄の本。まあ私も積読本はあるので、人のことは言えないが。

あと、激指15はいったいいつ発売されるのか??
現在、こんな感じ。
アマチュアの将棋上達法 (棋書レビュー)
clickshogi著 電子書籍 Kindle 版 2019年5月2日発売 250円 分量38ページ
評価 S  対象棋力は、主に中級者以上向けだが、かなり幅広く対応

「将棋が上達したい」と真剣に考えているアマなら、250円を払って読むべき本です。
特に「どういう勉強法がいいんだろう」と悩んで、レートが長く停滞している人にピッタリです。
図面はいっさい出てこない上達指南の理論本です。

私はこの本の著者さんと似た将棋歴であり、本書に書かれてあることに「そうだ」と同意したり、「そうか」と気づかされたことが多くありました。9割方、この本に書かれてあることは正しいと私には思えました。

ただ、私自身は何年も前から、「指す将」から「観る将」に移行しました。
それどころか今は「燃え尽き将」となっているので、この本が正しいことを身をもって証明することができないのが残念です。
24で指しまくっていた2000年頃の私にこの本を読ませたいです。
まあ私は当時、実戦対局や友人とのチャットなどを楽しみまくったクチで、それはそれで楽しかったですが・・・(^^;

この本を読んだら、上達する方法は分かります。
著者さんの独りよがりな点も少しありますが、それは個々に自分なりにアレンジしていけばいいんです。
結局、本書の内容を肯定しようが否定しようが、どっちでもいいんですよ。この本が考えるきっかけになれば。
実際に著者さんが何をどれだけやったか、が書かれていないのがやや残念ではありますが。

よくこれだけの内容を読みやすくまとめてくださった。
この本は将棋界の宝だと思います。評価Sです。
clickshogiさん、Good Job!!

(細かい点ですが、級を表す数字ですが、五級とか二級と書かれてありますね。
そこは漢数字ではなくアラビア数字に直すべきだと思います。)