今回は第3回となる。
初手▲7六歩に対して、後手が2手目△9四歩と突いた場合。そして2手目△1四歩と突いた場合を調べてみた。
奇襲と言えば奇襲だ。阪田三吉が後手で▲7六歩△9四歩も▲7六歩△1四歩も指していることで有名。
なお、今回から、考慮時間を10分にした。待つのがつらいが、せっかくなので長く考えさせた。
3手目の先手の候補手の数は3つで調べたが、この記事では2つだけ取り上げることにした。
候補手の数が多いとごちゃごちゃしてしまうので。

①初手から▲7六歩△9四歩 (後手が飛車側の端歩を突く)

<激指15>
+78 ▲2六歩 (ソフトが示した、3手目の最善手)
+62 ▲3八銀 (ソフトが示した、3手目の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。

<やねうら王>
+124 ▲2六歩
+106 ▲6八玉 

<水匠3改>
+98 ▲5八玉
+45 ▲2六歩


②初手から▲7六歩△1四歩 (後手が角側の端歩を突く)

<激指15>
+56 ▲7八金
+56 ▲2六歩

<やねうら王>
+82 ▲2六歩
+86 ▲7八金  (最善手より高い数字だが、こういうことはよくある現象)

<水匠3改>
+61 ▲2六歩
+54 ▲7八金

~今回のまとめ~
△9四歩の局面の平均数値は、+100。△1四歩の局面の平均数値は、+66。(評価値の一番手の数字を合計して3で割った) 
この△9四歩と△1四歩という手は、「イメージと読みの将棋観1」に詳しい。その本での結論は、△9四歩より△1四歩のほうが、とがめにくい、というものだった。今回のソフトの検討でも、それが見て取れる。
前も書いたが、ソフトは振り飛車を不利と見ているので、あまり振ることをしない。だから△9四歩を活かしにくいのだと思う。

これは余談だが、マンガ「月下の棋士」で、主人公の氷室が端歩突きを得意にしている。1巻でのライバルの滝川との対戦で、滝川が先手で▲7六歩、氷室が2手目△9四歩と突く。そして滝川が▲5六歩と突き、そこで氷室の封じ手となる。
「イメージと読みの将棋観1」では、森内、谷川、渡辺の三者が3手目は▲5六歩と突きたい、と語っている。
「月下の棋士」の初版が1996年。「イメージと読みの将棋観1」の初版が2008年だ。
なんと12年前に「月下の棋士」で▲7六歩△9四歩▲5六歩という手順が考えられていたのだった。
今回の調査では、候補手3手の中で▲5六歩は残念ながら、3つのソフトの中では見られなかった。

次回も初手▲7六歩に対する後手の2手目について書く予定。
第2回の今回は、まだ奇襲戦法には行かない(^^;
初手の最悪手は何か、調べてみた。
初手▲7八銀や▲8六歩は、ある意味、奇襲であると思う(笑)
どの手が最悪手になるか、みなさんも予想して欲しい。

エントリーしたのは、次の6種類の手。
初手▲7八銀
初手▲3八金
初手▲5八金左
初手▲8六歩
初手▲9八香
初手▲1八香

では、激指15と、やねうら王と、水匠3改で調べてみよう。考慮させた時間は5分。その手に対する後手の候補手の数は3つで調べたが、この記事で紹介するのは2つにとどめた。ごちゃごちゃしてしまうから。評価値のマイナスが大きいほど、後手が有利ということを示している。


①初手▲7八銀 (先手が角道を開けにくくなる手)

<激指15>
-34 △3四歩 (初手▲7八銀に対する後手の最善手)
+11 △6二銀 (初手▲7八銀に対する後手の次善手) 以下、他のソフトの場合も同様。

<やねうら王>
-50 △3四歩
+25 △6二銀

<水匠3改>
-35 △3四歩
+1  △7四歩

結果、初手▲7八銀は、それほど大きなマイナスにはならないようだ。そして、この初手をとがめるなら、後手は△3四歩。これは当然でしょう。


②初手▲3八金 (2017年の電王戦で、佐藤天彦名人にPonanzaが指した手)

<激指15>
-50 △8四歩
-50 △3四歩

<やねうら王>
-50 △8四歩
-40 △4四歩

<水匠3改>
-84 △3四歩
-50 △8四歩

初手▲3八金も、そこまで悪いというわけではなさそうだ。まあ、Ponanzaが選んだくらいだからね。やねうら王の2番手候補手の△4四歩って何だ。▲3八金△4四歩って、もう意味わからんね(笑) 水匠が厳しめの評価をつけている。


③初手▲5八金左 (先手は角頭を守りにくくなる手)

<激指15>
-130 △8四歩
-130 △3四歩

<やねうら王>
-185 △8四歩
-152 △3四歩

<水匠3改>
-116 △8四歩
-134 △3四歩

初手▲5八金左は、かなり悪い数値が出た。(水匠の評価値が、次善手のほうがマイナスが大きく、後手にとって△3四歩のほうが良い手だが、最善手の順番が数値どおりにならないこともあるようだ)


④初手▲8六歩 (角頭の歩を突いてしまう、明らかに損な手)

<激指15>
-112 △8四歩
-112 △3四歩

<やねうら王>
-216 △7二銀
-226 △8四歩

<水匠3改>
-185 △8四歩
-164 △3四歩

初手▲8六歩には、絶対△8四歩だろ!と思っていたが、ソフトはそうは思っていないようだ。驚き。
▲8六歩△3四歩でも充分、後手満足なの?(やねうら王の数値、最善手と次善手が数値順に並んでいなくて、おかしいが、さっきの水匠と同じでこういう現象があるようだ)


⑤初手▲9八香 (左側の角側の香を上がる手)

<激指15>
-141 △8四歩
-140 △3四歩

<やねうら王>
-233 △8四歩
-184 △3四歩

<水匠3改>
-153 △3四歩
-135 △8四歩

初手▲9八香は、取り返しがつかない。それにしても、ここまでマイナスが大きいとは。居飛穴になれば、損にならないのだが・・・。


⑥初手▲1八香 (右側の飛車側の香を上がる手)
 
<激指15>
-112 △1四歩
-109 △8四歩

<やねうら王>
-245 △8四歩
-211 △7二銀

<水匠3改>
-177 △8四歩
-153 △3四歩

初手▲1八香も、取り返しがつかない。振り穴にしたら、損にはならないが・・・。激指の△1四歩は、▲1八香をとがめようということか?面白い。やねうら王が厳しい評価をつけた。

~今回のまとめ~
初手の最悪手、平均値を出して、まとめてみた。3つのソフトの一番手の評価値を足して3で割った。小数を四捨五入した。

初手▲7八銀・・・-40
初手▲3八金・・・-61
初手▲5八金左・・・-144
初手▲8六歩・・・-171
初手▲9八香・・・-176
初手▲1八香・・・-178

めでたく、ワーストワンは▲1八香ということになった。うーん、振り穴にすれば、問題ない手と思うんだが、今回の調査では最悪手となった。ソフトが振り飛車を低く評価してるから、きっと振り穴が低い評価なんだろう。
個人的に、自分が後手を持ったとき、指されて一番ありがたいのは▲5八金左だ。▲8六歩は、明らかな挑発で、とがめきる自信がない(笑) ただの後手の手得に終わるだろう。
▲9八香と▲1八香も、これで形勢どうこうというのは、私のレベルではありえないだろう。
以上、初手の最悪手の検討結果でした。

後日に追記・初手▲1八飛という手も、かなりな悪手のようです。激指15で-104。やねうら王で-198。水匠3改で-111という数値を出してました。(各5分間計測)
平均で-138です。
今、ブログが更新ができてない。なんか、書くことないかなー、でも、あんまりディープな内容も書けないし・・・。

ということで、今回から、ソフトを使って、奇襲戦法の評価値を調べてみることにする。
個人的に興味あるので。もちろん、奇襲だから、受ける側に良い数値が出るのだけれど、それはどのくらいの程度なのか、が知りたいのだ。
1日1個ずつ更新の予定で、全10回くらいの予定。(あくまで予定)

まず今回は、使うソフトの紹介と調べ方。そして初手をソフトにかけてみる。
使うソフトは3つ。激指15。やねうら王。水匠3改。この3つ。

激指15は2019年7月に発売されたソフト。約1万円。激指シリーズは、市販のものとしては、おなじみ。使い勝手が良く、私はよく使っている。ただし、他の強豪ソフトと比べると弱い。評価値はマイルドで、そんなに差をつけないのが特徴。人間の大局観の感覚に近い。

やねうら王は2018年8月に発売された。約1万円。5つのソフトを内蔵しているが、その中でも最強のtanuki-2018というものを使うことにする。激指15よりだいぶ強い感じ。評価値は辛口。人間的には「ちょっとの差じゃないか?」という局面でも、かなり点差をつけるので、参考になる。

水匠3改はフリーソフト。水匠2が2020年のコンピュータ将棋選手権で優勝。2020年12月に水匠3が公開された。そこから一か月後に、評価関数を変えた水匠3改が公開。
現在、入手できるフリーソフトでは最強のはず。もちろん、やねうら王より強い。どんな評価値をつけるのか、私は知らない。

そして、私のパソコンのスペック。CPUは、Core i7-8700だ。メモリは16GB。2019年にドスパラで13万5千円ほどで購入した。
そんなにボロPCというわけでもないし、ハイスペックというわけでもない。
というか、こういう将棋の検討さえしなければ、私なんて5万円以下くらいのPCでも全然かまわないのだ。
将棋のためだけに、ミドルスペックPCを購入してるのだ。こういう企画でPCを使わないと損(笑)

さて、今回は奇襲戦法の局面に行く前に、何も指していない初手の検討をさせてみた。時間は5分。
短い、という意見があるのは分かってる。でも、5分で我慢してほしい。3つのソフトを動かすので、5分ずつでもう私の待ち時間がイライラして限界なのだ(笑)
候補手は5つ。定跡は利用しない。わかりやすいように、数値の先手側に+の表記をつけている。

まずは激指15から。1回目の計測。一番上が最善手。(定跡の利用なし)
+32 ▲7六歩
+28 ▲2六歩
+23 ▲7八金
+1  ▲1六歩

深さはpro+11まで読んでいた。これはおそらく最深の読み。これ以上の深さは存在しないと思われる。
候補手が4つしか出てないが、こういう現象は激指ではよくあること。

で、激指15で念のためもう1回、計測。2回目の計測は・・・。
+18 ▲2六歩
+15 ▲7八金
+8  ▲7六歩
+8  ▲9六歩

2回目の計測では、深さpro+9までしか読んでなかった。1回目とかなり違う結果だ。
そこで、もう1分、待ってみると・・・。読みがpro+11まで行った。数値も変わった。
+27 ▲2六歩
+27 ▲7六歩
+8  ▲9六歩
+1  ▲1六歩 

以上のような結果となった。1回目が5分計って+32の▲7六歩。2回目が1分オーバーの6分計って+27の▲2六歩or▲7六歩だった。候補手を見ると、初手だから、色んな可能性があり、ソフトも迷っていることがうかがえる。


次に、やねうら王。以下、私の関連記事で「やねうら王」とあるのは、すべてtanuki-2018のことを指す。
なお、私は、やねうら王の初期設定をいじっていない。1回目の計測。
+90 ▲2六歩
+45 ▲7六歩
+32 ▲7八金
+15 ▲3八銀
+34 ▲4八銀

候補手の4番目より5番目のほうが数値が高いが、これは、やねうら王ではしばしばあることのようだ。
読みの深さは44分の34(分数での表示)という数値が出ていた。

やねうら王での2回目の計測。
+42 ▲7六歩
+42 ▲7八金
+41 ▲2六歩
+27 ▲3八銀
+16 ▲4八銀

1回目とだいぶ違う数値となった。1回目では▲2六歩がダントツで+90になっていたのに、2回目では▲2六歩は+41までしか上がらなかった。深さは33分の33ということだった。正直、やねうら王の深さというのは、どう理解していいか、わかりにくい。


最後に、水匠3改で計測。ShogiGUIを使用。設定は初期設定のままで、いじってない。1回目。(定跡の利用なし)
+66 ▲2六歩
+42 ▲7六歩
+33 ▲7八金
+26 ▲9六歩
+4  ▲3八銀

1回目では深さはプロ10.88段だった。

次に、2回目の計測。
+55 ▲7八金
+42 ▲9六歩
+30 ▲2六歩
+24 ▲7六歩
+2  ▲3八銀

深さは1回目と同じ、プロ10.88段。初手▲7八金が最善と出た~。振り飛車党への挑戦状だろう。初手▲7八金で後手に振られても、先手が有利ですよ、と言っているのだ。ははは。

~今回のまとめ~
初手の最善は、同じソフトでも、計測する度に違う。オーソドックスな▲2六歩、▲7六歩の他に初手▲7八金も好む傾向にある。
ソフトの数値は毎回、変わる(今回は特にだろうけど)ので、参考程度にしてほしい。

さて、次回からいよいよ奇襲戦法を調べていくよ。
次からは各1回しか計測しないと思う(^^;
去年の7月の健康診断で、73.1㎏だった私。保健師さんにグチグチと「メタボだ」と悪口を言われて、私は内心、怒りを覚えた。
それからダイエットを始めて、現在の体重は・・・63.2㎏まで落ちました~!

そしてついに来た!今年の健康診断の通知が!7月の初旬にあるとのこと!
そこで62.8㎏を記録したいものだ。この数値はBMIと呼ばれる標準数値のこと。

ただし、去年の73.1㎏というのは、服を着たままの状態で量ってるから、本当はもう少し体重は軽かった。
服を着た状態で62.8㎏を記録するのは、厳しいかと。

でも、健康診断の日にちが決まったことで、なんだかダイエットにやる気が出てきた!

ダイエットの方法だけど、まだ寒い日も多いので、冷凍ゼリーは週に1個くらいしか食べてない。
運動のできない私は結局、食事制限するしかない。
今も日々、食べたい衝動に勝つか負けるかという闘いを繰り返しているのであった。

やるぞ~、62.8㎏を記録して見せる! 
あの保健師のオバハンに、もう二度と会わないために!
5手詰ハンドブックⅢ
浦野真彦著 浅川書房 1200円+税 2019年10月初版
コンセプト<使用駒10枚以内の、実戦形詰将棋200問>
評価 A  難度 ★★☆ (中級向け)

私が詰将棋本を解いたのは、2016年1月にレビューした 「青野照市の基本の詰将棋5手」、これ以来となる。5年ぶりって・・・(^^;

ハンドブックシリーズの安定感は顕在。でも、予想より簡単な問題が多かった。苦労したのは、1割~2割くらい。10問くらいは、読みぬけがあって、解答を見たときに「あ、その変化は読んでなかった」というのがあった。

打ち歩詰の打開の問題が数問出て来るが、よく5手という制約の中で問題を作れるもんだと感心する。お見事だ。

200問中、120問目を超えたあたりから、ちらほら難しいと思えるものが出てきた。
基本的には簡単だった。すぐ解けると、「え?ホントにこんな簡単に解けていいの?」と逆に不審に思って、確認に時間がかかるんだ(笑)
結局、200問を解くのに4時間くらいかかったと思う。もうちょっとかかってるかも。1問に1分以上かかってる計算だ。私はやはり詰将棋が苦手だ。

問題があんまり簡単だとトレーニングにならないし、難解だと嫌になってしまう。難度の調整は難しいところだ。
次は7手詰ハンドブックを解かないといけないが、いつになるやら。
日曜に10時15分からやってる、15分間のNHK将棋講座。半年ごとに内容が変わっていく方式。
しかし、これ、毎回、マンネリだと思いませんか?いつも将棋の技術的な話ばかり。
そこで、私が本当に観てみたいと思う講座を列挙しました。
こういうのを放送してくれ!

・勝又教授による、「新手年鑑」講座。
毎年、勝又プロは新手年鑑という、小冊子を将棋世界の付録で出している。それを元にした講座。数年分の量があれば、半年間、充分、持つと思う。新手の解説をTVでやってほしい。プロやAIの新手をバンバン紹介してほしい。新手に関しての著書がある片上大輔七段が講師をしてもいいだろう。

・斎藤八段による、「詰将棋」講座。
斎藤八段は藤井聡太2冠に次ぐ詰将棋の解答者で知られる。囲碁将棋チャンネルではすでに詰将棋解答選手権の特番をやっており、それは面白かった。そこで今度は、作家別に詰将棋を評論してほしい。浦野真彦、内藤國雄、伊藤果、谷川浩司、そして伊藤宗看、アマチュア作家など。その作家の作風が良く出た作品というテーマで、どんどん紹介していってほしい。賞を取った作品も紹介してほしい。作家の人がゲストで来れば完璧だ。

・所司先生による、「世界の将棋」講座。
チェス、マックルック、チャンギ、シャンチー。せっかく将棋を趣味にしているのだから、見分を世界に広めよう。
チェスに関しては、森内が講師でもいいだろう。視聴者がチェスを半年、勉強するのは、すごくいい企画だと思う。

・先崎九段らによる「ギャンブル」講座。
先ちゃんがパチンコ、パチスロ、チンチロリン、大富豪、麻雀などについて語る。屋敷が競艇の講座をやり、渡辺が競馬について語る。
半年はキツイから、分担でそれぞれ一か月づつでいいのでやってほしい。島や森内がモノポリーやバックギャモンについて語っても面白いだろう。勝負ということで、将棋となにかしら共通するものがあると思うんだ。

・普段、将棋をアマチュアに教えているプロたちによる、「教え方」講座。
道場を開いている棋士や女流棋士は多い。そこで、その先生たちが将棋をどういうふうに教えているかを、視聴者が学ぶ講座。
高橋和さんや、北尾まどか女流にぜひ講師として来てもらいたい。

以上、こういう斬新な企画、通りませんかね?
証言 羽生世代
大川慎太郎著 講談社現代新書 1000円+税 2020年12月20日第1刷発行
評価 A
コンセプト<棋士たちが羽生世代を語ったインタビュー集>

Amazonでやたら評価が多く、評価が高かったので、買ってみた。
そしたら、やっぱり面白いんだ。棋士16人にインタビューしているが、普段、あまり聞けない、室岡、豊川、飯塚といった人選が貴重。
観る将にとって、ぜひおススメというべき内容となっている。
話題になってる本というのは、読んでみるべきだと再認識。難しい技術書じゃないんだから。
先ちゃんが言っている、「奨励会は、まず体力のないものを落とす。次に精神力のないもの。最後に将棋が弱いものを落とす」というのは至言だろう。
羽生世代が居て、まいったという棋士もいれば、良かったという棋士もいる。様々だ。
個人的には、森下へのインタビューで、私の頭の中で森下の口調が完全に再現された。森下が私の脳内でしゃべりまくり、面白かった(^^;


上記は、先日の日曜のNHK杯。
▲西山女流vs△八代七段の、途中図(54手目)です。今、後手が△5五同歩と取ったところです。
次に西山女流の指した手、それが敗着となりました。

図から西山女流の指した手は、▲8二歩でした。この手でそれまでほぼ互角だったAIの評価値が、ググッと後手に傾きました。以後は先手にはノーチャンスで、西山は一方的に負かされました。八代の竜王戦1組昇級は伊達じゃなかった・・・。

▲8二歩の何がそんなにいけなかったのか、少し考えてみましょう。
局面、ここは先手にとって忙しいです。次に後手から△5六歩という手が見え見えだからです。先手としては何か対処が必要。
しかし西山は▲8二歩と指してしまいます。
▲8二歩以下、△9三桂▲8一歩成△5六歩と進みました。そして終局(84手)まで、先手が9一の香を取る手は、ついに回って来ませんでした。

ここで、▲8二歩以下の一連の手順で、「先手の狙い」、その手数を考えてみましょう。▲8二歩は、後手の桂香を取りに行った手。まずこれで1手。後手に△9三桂と、桂には逃げられる。これはすぐ読めますね。△9三桂と▲8一歩成は、「見合い」の手で、先手の1手に、後手も1手かけており、相殺され手数には数えない。次は▲9一と、と香を取る手。これで通算2手。ここで勘違いしてはいけないのが、香を取っても、まだ先手は香を使ってはいない、ということ。香は盤面に打って使って、初めて意味を持つのです。持ち駒に香が余ったまま終局になるケースも多いことでしょう。つまり、香を盤面に打つ手、これで通算3手。

①▲8二歩、で香を取りに行く手
②▲9一と、で香を取る手
③盤面に香を打つ手

この3手がワンセットなのです。①を「当てる」、②を「取る」、③を「使う」、と覚えればいいでしょう。
香一枚のために、これだけの手数をかけようというのが先手の指し手の意味。
仮に、後手の香が働いている駒なら、また話は違ってきます。さらに、作った「と金」が働くのなら、また話は違ってきます。
要するに、「遊び駒の隅の香を取って使うまでに、3手もかける意味があるのか?」ということです。

「横歩取り3年のわずらい」という格言が、昔、ありました。横歩を取ると、元の位置に飛車を戻すのに、3手もかかるので、横歩を取るときは注意しろ、という意味です。それと似たことが今回の▲8二歩にも言えると思います。「遊び香取り、3年のわずらい」。

この図の局面、▲8二歩ではなく▲6六角が、やねうら王のおススメということです。
遊び香に限らず、遊び駒を取りに行くときは、気を付けましょう。以上です。
この春から、NHK杯でAIの評価値が出るようになった。昨年の秋から、囲碁将棋チャンネルの銀河戦でもAIの評価値が出るようになっている。
それで、両者には違いがある。NHK杯のほうは、画面上に表示。銀河戦のほうは、画面下に表示されている。
それは別にいい。しかしNHK杯のほうは、先手が左側。銀河戦のほうは、先手が右側なのである。
左右が逆なのである。これは分かりづらい。

なお、囲碁のNHK杯では、先手の黒が左側。竜星戦(囲碁将棋チャンネル)でも先手が左側だ。
Abamaの将棋では、対局者の位置によって、毎回変わっているようだ。先手が左右どちらの場合もあるようだ。
先日、囲碁将棋チャンネルで王将戦第4局の中継の再放送があったが、そこでは先手が右側に表示されていた。

NHK杯と銀河戦では、視聴者が対局者を観たときに、先手の人が左側なので、先手が左側で統一されそうなものだ。(ソフトの激指も先手が左側だ)
しかし囲碁将棋チャンネルの主張も分かる。大盤では名前が先手の人が右に書かれている。そして将棋には持ち駒という概念があり、大盤を観たときに、右側に先手の持ち駒がズラーッと並ぶことになる。だから先手が右側という手法にも、一理あるのであった。

(ところで竜星戦の表示方法だが、評価値のバーが、かなり短い。長さが半分以下だ。そして、それが見やすい。一目で視界に入るからだ。今のNHK杯や銀河戦のバーの長さは、長すぎる。あんなに長い必要は全くない)

さて、先手を左側にするべきか、右側にするべきかという話だが、解決方法がある。
私の父が言っていて、なるほどなーと思わされた。
それは評価のバーを、縦に表示する、というもの。先手が下側、後手が上側だ。
これなら分かりやすい。将棋は七段目~九段目の下段が先手陣、一段目~三段目の上段が後手陣、と初めから決まっているのだ。
だから理屈に合っている。
私も最初は拒否反応を示したのだが、この縦の表示方法は、たしかに理にかなっているのだ。
ぜひ縦の表示は、やってほしいものだ。まあ変わらないだろうが、NHK杯と銀河戦の今の対立は、やめてほしいと思う。