決勝トーナメント 1回戦 第4局
深浦康市王位 vs 西尾 明五段
対局日: 2009年6月24日
解説:藤井 猛九段
聞き手:千葉涼子女流三段
記録:野田澤彩乃女流1級

13日の木曜に放送された一局
西尾はCブロックの最多連勝者、深浦はEブロックの最終勝ち残り者

20年度の西尾の成績は27勝15敗、深浦は27勝24敗 2人は初手合い
解説の藤井「西尾は戦型全般に渡って研究家、深浦は王位のタイトルを取って充実している
 研究家どうしの一戦」

先手西尾で、深浦の一手損角換わりだ
藤井「一手損は手が広すぎてわからないことだらけ、これからもっともっと指されていくんでしょうね
 角交換の将棋が嫌いな人には残念だけど(笑)」とのことだ

藤井は角道を止めての陣形の細かい整備が得意なので、
あまり角換わり系の将棋は好きではなさそうだ

自分としては、角換わりは好きなので、今のプロのこの傾向は歓迎だ
まあ、横歩取りは定跡を覚えられない、矢倉は金銀の扱いが下手だし、
陣形の組み方でいつのまにやら作戦負けになっているので、
残ったのが角換わり、というわけだが(^^;

西尾▲早繰り銀vs深浦△腰掛け銀になり、深浦が序盤早々にいきなり歩を西尾の飛車先に叩いて、
研究手であろう角を打ち、戦いが始まった
西尾も迷うことなく自陣角を打ち、対抗した
藤井「お互いの研究がぶつかっている」

深浦の手がいったん止まり、
藤井「これで先手が有利なら、深浦先生、王位の資格を疑われますね~」
こういう藤井のピリ辛の解説は好きだ

深浦が歩切れなのに対し、西尾は歩を5枚も持つ、というめずらしい展開だが、
藤井「後手は盤面に歩がないので、金銀が動きやすい」
へ~、そういうこともあるのか、と思った

西尾の▲3五歩、という後手の銀頭に叩く手が飛び出し、
藤井「歩は3筋に底歩を打つものと思っていた、だから▲3五歩は考えにくい手だった
 指されて見ると痛いか?深浦さんも見落としていたかも?」

深浦、ここで考慮時間も残り1回まで減った 
おお、これは西尾、金星か!と思って見ていたが、
ここはさすが深浦、困っていたわけではなく、先まで読んでいたのだった
飛車の空成りが見えにくい手で、これで一気に寄せ形にもっていった

聞き手の千葉涼子は、この空成りが見えていて、藤井に教えていた
その前の手順では、とんちんかんなことを言ったのに、この千葉の思考回路は
いつもながら全くわからない

深浦が勝ち筋になったのだが、西尾が8八の銀を▲7九銀と引いてがんばった手に対し
藤井「深浦が勝ちのはずですけど、さて寄せてみろ、と言われたら自信ないですね
 一手指すと、景色が違って見えます」
ここは面白かった 藤井らしい発言だ 
藤井は終盤が苦手で、しょっちゅう逆転負けを喰らっているのだ
序盤が得意なのでリードすることが多いが、序盤の作戦勝ちからの見事な逆転負けっぷりに、
藤井は「終盤のファンタジスタ」の愛称もあるくらいだ

が、実戦では深浦がよどみなく寄せ切った
藤井「双方の研究がぶつかったが、歩損しても指せる、と判断した深浦の大局観が上回った
 さすがです」

この一局、キビキビした好局だったと思う
王位vs五段とは言え、内容では深浦は楽に勝ったわけでは全然ない
あたりまえだど、プロの上位レベルでは一手のミスも許されないんだな~、と思わされた一局だった