<第92話>
(将棋道場の看板に、紙が貼ってある 見つめる馬島)
『世界アマ王者 浅利氏 指導対局中』

(道場の中にて)
浅利「だから言ってんじゃん 名前だけで指導対局に 人を集めるなら
 羽生とか谷川に頼めって」
席主「オレはそういう 軽薄なことはしねぇの
 アマの指導は アマ高段者が向いてるって」
浅利「ケッ 正直に『金ない』って言いなよ」

浅利「信念はともかく ヒマなんだけど
 表に立って 客引きとかしたら?」
席主「バカヤロ そんなことするくらいなら 道場なんかやるか!」

(ドアが開き、馬島が入ってきた)
カラン
席主「いらっしゃい」
馬島「指導対局・・・ してくれるんですか?」
席主「ホーラ いるんだよ! 志の高いのは!」
浅利「いいから 商売商売」

(席主、営業スマイルで)
席主「席料と指導料で 2500円です」
馬島「高い 帰ります」
席主「あ・・・ ちょ・・・」
浅利「ホーラ 言われた」
席主「うっせえ 安売りはしねぇから」

浅利「少年 待った」
(振り向いた馬島)
浅利「席料500円出せるか? 指導料2000円は オレが出してやるよ ただしオレに勝ったらな
 あ・・・それじゃあ2500円全部を 負けたほうが出すほうがきれいだな
 そういうの好きだろ? 少年?」

(浅利の前のイスに座った馬島)
浅利「来たね? 読み通り!」

(浅利、席主に向かって)
浅利「ってわけだ 一局終わるまで 席料待ってやってくれ」
席主「そりゃいいが・・・ 高校生相手に 真剣はまずかろう」
浅利「真剣じゃねぇよ 自腹か オレのおごりか 決めるだけだよ」
席主「ハァ」

馬島「オレさ 今メチャメチャ頭に来てんの 将棋強いヤツに
 将棋強いヤツ メチャメチャにしてやりたい気分だから」
浅利「へー おっかないねぇ あ タバコいいか?
 オレは強くねぇよ 安心しな」
席主「世界アマ5連覇の浅利が 弱いわけねぇだろ よく教わるといいよ」
浅利「よせよ」
(浅利、眼光鋭く)
浅利「・・・ま・・・ 暇人には 暇人の矜持があるんだがな」

矜持(きょうじ)とは、プライド、ほこりの意味です 
このシーンの浅利氏、タバコを片手にする姿がキマってます

浅利「平手でいいかい? じゃ先手でどうぞ」
馬島「ハイ お願いします!!」

先手馬島▲7六歩 後手浅利△3四歩 
馬島▲8六歩 浅利“ホォ?”△8四歩
馬島“鷹洋と比べて 普通の対応だ この人 この戦法知らないな?
 トップアマ? 遠慮なくいかせてもらうよ!!”

得意の角頭歩戦法を採用した馬島君、トップアマとの勝負の行方は? (つづく)