<第95話>
馬島“い・・・ いったい この寄せは いつから用意されてたんだ・・・!?”
浅利 ふーっ(煙を吐いて、タバコの火を灰皿で消した浅利)

浅利「少年・・・ 将棋ってのは 最善手を選ぶゲームじゃない」
馬島「ハァ? じゃあ何選ぶの?」
浅利「最善手なんて 選択肢の一つだ
 将棋はね 『相手を罠にかけるゲーム』だ」
馬島「・・・!」
浅利「相手の心を読んで 見落としやすい罠を仕掛け 待ち伏せたり 追い込んだりするゲームだ」 

(呆然とする馬島 盤上に目を向ける)
馬島“たしかに・・・ 自分の駒が邪魔で詰まされるなんて・・・ 思ってもみなかった・・・
 この罠はどこで仕掛けられたんだ? 歩を垂らしたときか?
 オレが桂を打ったときか? それとも・・・
 それに最善手が選択肢の一つって なんだ? 最善は『最善』じゃないのか?”

浅利「いいね 少年 本気で考えてるね
 本気で考えろ そうすればたいがいの問題は突破できる
 ただしこの本気ってのは 自分の存在を賭けるって意味だぜ
 罠を仕掛け 獲物を追い込む猟師になれ 少年」

馬島「・・・・・」
(財布を取り出した馬島)
チャッ
(2500円を浅利の前に差し出した)
馬島「オレ・・・ 『少年』ではありません・・・ 馬島・・・ 馬島優一です」
(浅利に向かって礼をした馬島)
馬島「ありがとうございました」

(馬島、帰っていった)
席主「フウウ~ッ 浅利~っ メチャクチャだよ 高校生に 罠かけろって」
浅利「これでも 相手見て 言葉選んでんだぜ? 教育的配慮ってヤツだ・・・」
(500円を席主のほうに置いた浅利)
浅利「その金 ちゃんと受け取っとけよ 貴重な500円だぞ」
席主「貴重?」
浅利「ごくたまに出会う・・・ 『本気の証』だから・・・」

(帰り道を歩く馬島、背筋がのび、顔つきが変わっていた)

何もかもを見抜いていた浅利氏、恐るべし・・・ 馬島君の中で、確実に何かが変わりました! (つづく)