第18期 銀河戦
本戦Cブロック 9回戦
行方尚史八段 vs 千葉幸生五段
対局日: 2010年3月10日
解説:大内延介九段
聞き手:早水千紗女流二段
記録:井道千尋女流初段

いまひとつ地味なメンツ、と思いきや、これが面白い将棋になった
21年度の成績は、行方20勝14敗 千葉15勝14敗 2人は初手合い

解説の大内「行方は攻守にバランスが取れていて、本格的な棋風のオールラウンダー
 千葉は振り飛車党、玉を固めて大きくさばいていく棋風、最近は矢倉も指す」

先手行方で、▲居飛穴を目指す持久戦模様vs△室岡新手の△6二金型四間飛車、という戦いになった
おお、この△6二金型というのは、自分は話には聞いたことがあるが実戦で見るのは初めてだ
藤井システム復活の一端となるか、どうなるかワクワクだ 
大内「この形はトップクラスの棋士が採用したことはまだないので、
 優秀性がどこまであるのかわからない」

駒組みが終わった時点で、行方が大長考することになった
その間での雑談
聞き手の早水「大内九段は穴熊党の総裁と呼ばれてますが」
大内「私がやった穴熊は、居飛車の玉頭位取りに対抗する作戦だったんです
 今の穴熊は、最初から穴熊を目指している、勝負本位ですね」

大内「将棋の指し方は、時代を映す鏡なんです 
 江戸時代のゆったりした時代は、将棋もゆったりしていた
 明治初期や、その後の戦争の時代は角換わり腰掛け銀などの激しい将棋が流行った」
大内さん、もう引退が決まっているが、なかなか解説も的確だし、話も面白い

さて、行方は長考の末、穴熊はあきらめ、3筋と2筋の歩を突き捨てて仕掛けていった
局後、行方「長考したんで、もう行くしかないと思った」
銀桂交換で、角も交換、非常に激しい展開だ
大内「壮絶な攻め合いになりそう」

ここから一直線の攻め合い、一手違いの終盤に突入すると思われた、そのときだった
行方が、と金を払う▲4七金! 見ていた自分は思わず「げっ!」と叫んだ
そんな手があるの? そうか! 一見、金がタダでお手伝いに見えるが、
△同飛車成りには、角打ちの王手飛車があるのか!
大内「あっ、こう取った! あー、はーはー、なるほど! この辺が行方君の強さですね
 これ、いい手ですね この▲4七金にはまいったかな」
大内もびっくりで、賞賛の一手だった

行方のこの一手、指されてみれば当たり前の手だが、攻め合いに頭がいっているときだけに、
実戦では気がつきにくいよね 

この▲4七金、千葉も全く見えていなかったのだろう 千葉は長考の末、9筋から攻めていった
大内「尋常な手じゃ勝てないと見た勝負手だね」

千葉の端攻めに対し、行方は一番強気な手で応対していく
大内「え? 端を無視して攻めた? え? 先手は受けがあるの?」
行方、踏み込んで寄せ合いにもっていった 超ギリギリ、見てるほうが怖い、もうドキドキ(^^;

が、行方の読みきりだったのだろう、実戦はきっちり後手玉を詰まして行方が勝ちきった
しかし、優勢と思っているはずの将棋で、普通、ここまで踏み込むか(^^;

感想戦で、大内「面白い作戦だったね」
千葉「でも不発でした」
うんうん、△6二金型、面白い作戦だった
水面下で王手飛車の筋が先手、後手の両方にある将棋だったしね
一気の寄せ合いと思われた局面での行方の▲4七金、「行方はふところの深い将棋」と
大内が言っていたのがよく出た一手だった

最近はプロでは藤井システムがほとんど指されないが、
ひさしぶりに藤井システム調の攻め合いを見れて、とても楽しかった