第18期 銀河戦
本戦Hブロック 最終戦
羽生善治名人 vs 野月浩貴七段
対局日:2010年5月11日
解説:鈴木大介八段
聞き手:貞升 南女流1級
記録:井道千尋女流初段

21年度の成績は、野月23勝16敗 羽生30勝18敗 2人の対戦成績は羽生の5-0

解説の大介「野月は猛烈な攻め将棋、どんな展開でも攻めるタイプ
 羽生は柔軟な棋風、相手が攻めてくれば受ける 受けてくれば攻める
 野月がどう攻めて、羽生がどう受けるかという将棋になりそう」

大介「私は今期銀河戦で野月と指したんですけど、序盤、野月がドえらい作戦負けに
 なったので、野月の心配をしているうちに逆転されて負けてしまった(^^;」
なんじゃそれは(笑)

先手野月で▲居飛車、後手羽生の△ゴキゲン5筋位取りだ
野月が穴熊にしたのを見て、羽生が面白い構想を見せる
4筋の歩を伸ばし、四間に振りなおしたではないか
大介「これ、私しか指していない手なんです 羽生が指してくれてうれしいです」
戦型は、▲居飛車穴熊+袖飛車vs△四間飛車+美濃になった

野月が果敢に4筋から攻めた手に対し、羽生はなんと△2二角~△3三桂という構想!
△3三桂と跳ねた瞬間、自分は思わず「おおっ!」と声を上げた
大介「ほお~ これはすごい勝負手、意外な手ですね」 大介も驚いている
自分ならこの桂跳ねは絶対指せないわ、と思っていると
大介「私はこうは指せないですね」 大介も同感のようだ

しかし・・・? 手が進んで見ると、どう見ても羽生の2二の角が負担だ
野月がうまくとがめたようだ
局後、羽生「桂を使って、と思ったんですが、あっという間に悪くなっちゃった」
大介「△3三桂は羽生が安易に指した感がある これは信じられないけど、かなり羽生が悪いですね
 野月が勝勢だと思いますね」

な、何いい もう「野月が勝勢」という言葉が出た?
おお、これは、野月、羽生に勝つ、千載一遇の大チャンスが到来だ!
事実、局面は飛車交換になった後、野月が飛車を先着し、一方的に急所にと金を作ることに成功した
しかも野月は穴熊なのだ うわー、これは羽生の不出来な将棋で終わるのか

しかし? 羽生が耐える手を指し続けていくにつれ、大介の解説の言葉が変わっていった
特に野月が変な手を指したとも思えないのだが・・・
大介「野月の攻めが足りているか微妙」
大介「いつの間にやら羽生がやや良し」
大介「しかしどこで逆転したのか」
大介「穴熊の姿焼きというやつですね」

羽生の受けは的確で、野月の攻めを確実に防いでいった
歩で受け、角で受け、桂で受け、自陣の角が邪魔になったと見るや、角を見放して自陣にカナ駒を投入
そして竜を敵陣に置くでもなく、自陣に引き上げるでもなく、
中段で浮かせて受けに使ったのがとても印象的だった

野月は終盤、歩切れになったのに対し、羽生は歩を8枚も持ち駒に持っていた
「穴熊が姿焼きになった」と言われてからも、野月は勝負手を出して粘ったのだが、
羽生にことごとく冷静に受けられてしまった
最後は、羽生が手堅く自陣に金を投入し、囲いを再構築した手を見て、野月、戦意喪失した
穴熊がそっくり残ったまま、野月、投了! 
ええー、これを負けるのか この将棋を負けるのか 野月、オーマイガッ
大介「野月が終始攻めたが、羽生が丁寧に受けきった」

タイトル戦にからまない、並みのプロ棋士の目標の一つに、
「羽生に一回でもいいから勝つ」というのがあると思う
今回は野月、羽生に初勝利の大チャンスの到来だったはずなのに、終わってみれば順当負け

羽生の△2二角~△3三桂型をとがめたのに、勝ちに結び付けられなかった野月、とても残念だろう
羽生は△3三桂の疑問手を指した以外は、あとは人がかわったように強かった
この受けの指しまわし、大山15世名人の指し方がこんな風だったのかな、と思わせる一局だった

これでHブロックからは羽生が最終勝ち抜き者、野月が3連勝で最多勝ち抜き者になった