コンピュータVSプロ棋士―名人に勝つ日はいつか
岡嶋裕史(おかじまゆうし)著 PHP新書 720円(税別) 2011年2月1日初版

(帯の背面に書かれてあるものを書き出してみました↓)
・プロ棋士に勝ったコンピュータの思考とは?
・「最強の将棋ソフト」ボナンザの特徴
・チェスのチャンピオンにソフトが勝った日
・将棋ソフトが進歩してきた道
・将棋ソフトの「読み」と「局面評価」
・清水女流王将対「あから2010」の激闘のすべて
・名人への挑戦、乗り越えるべき課題とは?

非常に面白く、最後まで一気に読みました どれもこれも私の興味をそそる内容ばかりでした
著者の岡嶋氏は、コンピュータの専門家ですが、将棋はめったに勝てないヘボ、だそうです

冒頭の第1章では、2007年のボナンザvs渡辺竜王の、クライマックスの局面が
わかりやすく説明されていて、グイグイ引きこまれました
渡辺、本当に危なかったですね

次の第2章では各種のボードゲームにおけるコンピュータの進歩の歴史と現状が書かれてあり、
だいたいは知っていたものの、とてもいい復習になりました

第3章~第5章までは、将棋ソフトの開発の歴史、
コンピュータ将棋のプログラムとはどんなものなのか、が説明されています
これも実にうまくまとめられていて、復習になりました
ボナンザがいかに革新的なプログラムだったのかも、よくわかります
超文系人間の私レベルでもわかるように書いてあり、ためになりました

第6章は、清水vsあからの一局を、詳細に解説してくれています
佐藤康光と、藤井猛の大盤解説の言葉がそのまま引用されていて、臨場感たっぷりです
初~中級者の人は盤に並べながら読むといいと思います

第7章は総まとめです これはさらっと読めます

全体的に、プロ棋士側、ソフトの開発者側、どちらに肩入れすることなく、実に客観的に書かれています
「コンピュータ将棋の歴史や、今の現状はこうなっている」という書き方で、
著者の考え方を押し付けてきたりは全然してません
そして、文章がうまいです ときどき読み方がわからない漢字が出てくる以外は、
スラスラ読んでいけます ベリーグッドです 

私はコンピュータ将棋の進歩にすごく興味があるので、ニーズにドンピシャリと合致しました
評価をつけるとしたら、最高ランクのSですね

さて・・・ この本のサブタイトル、「名人に勝つ日はいつか」ということですが、
「その日」はもう過ぎたのかもしれないな、という感想を抱きました
あからの対戦相手が、羽生だったとしても、
あからが勝っても全然おかしくなかった、と読んでいて率直に思いました

康光と藤井の大盤解説より、あからの指し手が上回っていた場面が、何回もあったんですね
「あからのボナンザクラスタは、1秒間に2491万局面を読んでいる」と
書いてあるのを見て、もうこりゃ、人間が勝てないのも無理はない、と思わざるを得ませんでした

プロもコンピュータに勝てなくなる、もしくは、もうすでに勝てない── 
認めたくはないですが、もうそれが紛れもない現実なんですね
時代の流れですから、どうにもなりませんね

ただし、これは著者も書いていることですが、単純に「人間側の敗北」ではないとも受け取れます
コンピュータや将棋ソフトの開発だって、当然人間がやっているわけですからね
そういう意味では、コンピュータ将棋の進歩は人間の知性のすばらしさの証、なのでしょう
ともあれ、一つの時代が終わったんだな、と、ため息が出てしまいました