第19期 銀河戦
本戦Cブロック 6回戦
広瀬章人王位 vs 糸谷哲郎五段
対局日: 2010年11月24日
解説:片上大輔六段
聞き手:山口恵梨子女流初段
記録:渡辺弥生女流2級

先週の土曜にあった銀河戦 大注目の好カードだ
広瀬は予選で高田に勝ち 糸谷は本戦で遠山、富岡に勝って2連勝中
22年度の成績は、広瀬31勝10敗 糸谷26勝19敗 2人は初手合い

解説の片上「広瀬は昔から振り飛車穴熊を得意としていて、振り穴王子と呼ばれている、
 しかしオールラウンダーで何でも指せる 終盤が得意 非常に繊細な手を指す
 糸谷は独特の戦型を指すと同時に、最新形にも詳しい 早指しで、間髪いれずに手が返ってくる」
聞き手の山口「広瀬は、悪魔のような終盤力、というキャッチコピーがありますね」

雑談で、片上「広瀬は勝っても負けても、ひょうひょうとしている 負けても悔しそうじゃない
 糸谷は逆で、負けると悔しがるタイプ」
山口「広瀬は、王位を取ってから、何か変わったということはありますか?」
片上「全然ないです、取る前と同じ(笑)」

先手広瀬で、振り飛車を目指したのに対し、糸谷は飯島流引き角戦法だ
そこから角交換があり、▲金銀が分裂型の中飛車vs△居飛車となった
そして広瀬、▲1八香で穴熊を目指した 金銀が分裂型の穴熊なので、これは珍しいね
片上「▲1八香、出ましたねえ 穴熊には偏見があるんですよね プロは穴熊好きですからね
 広瀬の場合は、香が上がってファンから歓声があがるので、うらやましいです(笑)」

糸谷は相変わらずの独特の時間の使い方だ
1秒のノータイムで指したかと思えば、取る一手のところで考えている これぞ糸谷流だ
片上「糸谷を相手にすると、時間配分が難しいんです 一方的に時間を使うわけにはいかないのでね」

広瀬が8筋に飛車を振って、逆襲し、開戦だ これは中飛車の常套手段だね
糸谷は△6四角と好位置に角を打ち、対抗した
片上「広瀬は腕の見せ所ですね 並みの手では先手はさばけそうにないなあ」

しかし、広瀬はさすが、この局面をさばき形に持っていった こんどは糸谷がどう受けるかだ
片上「△6二桂と受けるのは、形が悪いんで思考から切り離しちゃう手ですね」
が、糸谷の指した手は△6二桂!
片上「あ、打ったよ やらないと言うとやるからなあ(笑)
 タイトルホルダーを相手にこの桂を堂々と打てるのは立派ですね 受けただけの桂ですからね」
この手は指しにくいよね 私なら指せない 指して負けたら、怒られそうな手だね(^^;

飛車交換になり、終盤に突入 ここからが見ものだった 盤面で再現しました↓
今、△8九とで、飛車の取り合いになって、先手の広瀬の手番 
片上「次に△8八飛が厳しいですから、広瀬は▲8一飛と打つでしょう」 

後手:糸谷
後手の持駒:飛 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v桂 ・v金v玉 ・ ・|二
|v歩 ・v角v歩 ・v銀 ・v歩v歩|三
| ・ ・v歩 ・v歩v銀 ・ ・ ・|四
| ・ 銀 歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 歩 歩 歩|七
| ・ ・ ・ 金 ・ ・ 金 銀 香|八
| 香vと ・ ・ ・ ・ ・ 桂 玉|九
+---------------------------+
先手の持駒:飛 角 桂 
先手:広瀬

▲8一飛 △7一飛 ▲同飛成 △同 金 ▲1六角 △3三銀


実際、▲8一飛と打ったのだが、そこで糸谷は、ノータイムで△7一飛と合わせの飛車!
お~! これは思いつきにくい
片上「はあ~ こんな手があるんですか 気づきにくいですね」
さすが糸谷だ・・・ 広瀬、▲8一飛の筋がなくなり、攻めに困ったか、と思われた

そこで出た、広瀬の勝負手▲1六角!! な、何これ?? 意味が全然わからない
片上「おお~ なんだこれは?? いやこれは見ごたえがありますね
 必殺手になっているんでしょうか?」
考える片上、次に先手から4三に角切りから飛車の打ち下ろしが、どうにも受けにくいではないか?
片上「いやうまい手が出たと思いますね 読んでいるレベルが違いますね」

指されてみてもすぐ意味はわからなかったが、解説を聞いていると、後手、受けにくい?
というか、受けがないのか? この手は私なんぞ一生考えても浮かばないだろう(^^;
しかも、△7一飛と意表の合わせの飛車を打たれた直後に、この▲1六角が指せるんだからすごい!

ところがだ そこでまた糸谷の対応が△3三銀という受けだった
どうやらこの手が、この場合の正解手だったようなのだ うわ、これはどういうレベルなんだ・・・

ここからも難解な局面が続いた 広瀬は▲7七飛という攻防の自陣飛車を打ち、また片上を驚かせた
片上「強いですね 手が見えてますね」 
私ももう驚きっぱなしだ(^^; さすがの2人、これは見ごたえ充分!

ここから最後まで、片上に「いや~ わけがわかりません」という攻防が続いたが、
冷静な手を指し続けた糸谷に軍配が上がった 126手で糸谷の勝ち
糸谷、特に受けが強かった! 
前にプロの誰かが「糸谷の受けは、プロの中でも5本の指に入る」と言っていたとおりだ 

片上「予想どおりというか、予想以上に見ごたえがあった 大駒で、はっとさせられる手が多かった」
山口「大熱戦でしたね」 

この一局、片上ですら、置いていかれ気味というレベルの戦いだった
広瀬、糸谷の両者の発想が、思い浮かばない手の連続だった  
特に、上記の図面でのやりとりのところ、これはさすが一流プロの手だね 
どうやったら▲1六角、そして△3三銀なんて浮かぶんだ・・・ やっぱり才能だねえ 
事前の期待どおりの一局だったよ とても面白かった!