第19期 銀河戦
本戦Dブロック 10回戦
松尾 歩七段 vs 杉本昌隆七段
対局日: 2011年3月30日
解説:飯塚祐紀七段
聞き手:矢内理絵子女流四段
記録:伊藤明日香女流初段

おー聞き手に矢内か! 日曜でもないのに、矢内に会えるとは幸せだ 
矢内、ロングヘアーで、ぐるんぐるんで巻き巻きだ この髪型、セットに何時間かかっているんだろうか

余談で、杉本の師匠、板谷の名言で、「将棋は体力」というのがあるそうだ
板谷の著書の「熱血順位戦」という本に書いてあるらしい 杉本はその遺志を受け継いでいるとのこと
杉本の長手数は有名だからね
その本領発揮、先日の順位戦、杉本があの戸辺を180手で倒した一局が週刊将棋に載っていた
戸辺の香、香、飛、飛の四段ロケットを杉本が金銀5枚と馬で受け止めたという将棋だった
図面を貼っておきます↓

後手:杉本
後手の持駒:金 桂 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v歩 ・ ・v玉 ・|一
| ・ ・ ・ ・ ・v金v金 ・ ・|二
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・v桂v銀|三
| ・ ・v歩 馬 ・v銀v歩v歩 ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・|五
| ・ ・ ・v馬 ・ 銀 ・ ・v歩|六
| 歩 歩 ・ ・ 歩 歩 香 ・ ・|七
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 飛 金 香|八
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 桂 玉|九
+---------------------------+
先手の持駒:香 
先手:戸辺

以下図より、▲3六香打△2二金打となり、180手で杉本の勝ち こりゃーすごい(^^;


さて、勝ったほうがDブロックの最終戦で羽生と対局できる、という一局だ
杉本は前局で北浜に勝ち、松尾は予選シード
22年度の成績は、杉本12勝19敗 松尾20勝19敗 2人の対戦成績は杉本の3-1

解説の飯塚「杉本は振り飛車の名手、以前は角道を止める振り飛車を指していたが、
 最近はゴキゲンなどの振り飛車に新境地を見出している 粘りに定評がある
 松尾は次世代の俊英 居飛車中心に何でも指す 序盤に工夫を凝らす
 松尾は何でも指すので、戦型は予測不能 相振りもあるかも」

先手杉本で、▲7六歩△3四歩▲7五歩だ おお、早石田だ さてさて、松尾はどうする?
松尾、△8四歩と強気で対応! 早石田を正面から受けてたったか

杉本、居玉で▲7四歩ともう開戦だ これって、鈴木大介流だっけ 久保流だっけ もうわかんない(^^;
飯塚「お互いが突っ張るとこうなる」
序盤早々、大駒の交換、もう大乱戦だ 
飯塚「こういう激しい順が隠れているんです まだまだ新手が出てくる 将棋は奥が深い」

さて、この将棋、中盤戦を飛び越えて、もう終盤だ 松尾がどんどん時間を使って考えている
飯塚「湯水のように時間を使いますね~ 確かに、後手のほうが手が難しい将棋」
松尾は一手ごとに充分に時間を使っているのだが、あんまり後手が有望には思えない・・・
すると、飯塚が「こうやったら早く決着がつきます」という△2八馬を、松尾が指したではないか
あれ、これ大丈夫? 後手は、こんなのんびり1九の香を取りにいく手が間に合うのか?

矢内「現状は、どちら持ちですか?」
飯塚「その質問を恐れていたんです(^^; でも先手持ち」
ここで、杉本に好手が出た 松尾の攻防の△5五角に対して、手堅く銀を打つ▲6六銀!
飯塚「杉本らしい、手堅い手ですね」 
うわー、これで先手陣は鉄壁だわ 杉本はこれで駒得を主張しようっていうんだね 

さらに、こんどは矢内が好手を発見 ▲7六桂と打つ手を指摘している
矢内「変な手ばっかり見えて(笑)」
すると、杉本の着手は▲7六桂! 矢内、大当たり~
飯塚「手を矢内さんに聞かないといけませんね(笑)」
杉本はその桂を跳ね出して活用、絶好調だ 
飯塚「こういう攻めは重いんですけど、何せ後手玉は居玉ですからね」

盤面、金銀と香の交換で、もう断然杉本が駒得しているぞ 松尾はどうするんだ?
と思っていたら、なんと、いきなり投了してしまった! 43手で杉本の勝ち え~ もう投了か!
時間も番組開始から1時間3分だった 手数も時間も短けぇ~(^^;

杉本のアマチュアっぽい攻めが炸裂、その後には一転して▲6六銀という手堅い受け、
これで松尾を圧倒してしまった、という一局だった
正直、松尾はいいところなしだった 
差がつかないように、序盤から考え込んでいたのは松尾のほうだったのだが・・・

この▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩の出だし、
以前のNHK杯の▲永瀬vs△康光のときもそうだったが、今回も同じことを思った
後手の居飛車側は、飛車先を伸ばした2手が、何の役にも立っていない 結果的に、2手パスだ

居飛車側は、総手数が短い乱戦の中での2手パス、これではダメなのではないだろうか?
3手目▲7五歩に対しては、何か別の対策が必要なのではないか?
Rocky-and-Hopperさんのホームページの「もうコワくない早石田」をもう1回熟読して、
じっくり検討してみる必要がある、と思った 

松尾という一流クラスのプロでさえ、3手目▲7五歩で、43手でボロ負けすることがある
早石田の乱戦のこの一局、居飛車側からすると、一方的に攻められ、負かされ方があまりにひどい
そのくらい、3手目▲7五歩はコワいのだ まさに「居飛車の天敵▲7五歩」だと思った一局だった