山崎隆之七段vs森内俊之名人   NHK杯 2回戦
解説 谷川浩司

おおっ、今週は矢内は真っ白なジャケットに赤のインナー、いい!! こういう色もどんどん着て欲しい
さて、今日は楽しみなカードだ 山崎が森内名人をどこまで追いつめるか? 

山崎は竜王戦2組、順位戦B1、1回戦で牧野に勝ち NHK杯は11回目の出場
森内は竜王戦1組、18世永世名人 1回戦はシード NHK杯は23回目の出場
2人の対戦成績は、山崎3勝 森内6勝

解説には、タニーがキター 相変わらず、すんごく高そうなスーツ 
「洋服の青山」には売ってなさそう(^^;
タニー「山崎は最新形にも詳しいが、決して人まねはしない、独自の感性で指す、
 こんな手で大丈夫かという手を見せる
 森内は、名人戦の最終局で勝ちきった精神力の強さがある 少し苦しくなったときに決め手を与えない
 腰の重さが特徴」

事前のインタビュー
山崎「森内は人柄は優しいが、将棋は厳しい 名人と当たる機会はそうそうない、
 早指しなのでチャンスはあると思う、全力を出し切ってがんばりたい」

森内「山崎は鋭い将棋、手が見える、秒読みに強い
 自分の力をフルに発揮して、自分のペースで戦いたい」

先手山崎で、相掛かりだ 森内が受けてたったか 
山崎は、以前、将棋世界のインタビューだったか、そこで「将棋の神様と指せるなら、手合いは?」と
いう質問に、「先手番」と答えていたので、先手に特に思い入れがあるのだろう
そして、先手が主導権を握る戦型と言えば、真っ先にこの相掛かりが上げられる
名人を相手にどこまでやれるのか?

雑談で、タニー「森内は昨年は順位戦と名人戦以外は調子は良くなかった、
 40代は、すべての棋戦でコンスタントに勝つのが難しくなってくる」
今、連盟のページで調べてみると、2010年度の森内の成績は、40戦22勝18敗だ
あー、あんまり良くないね ちなみに山崎は47戦29勝18敗 
タニーは29戦11勝18敗だ えっと、タニーはかなり悪いのでは(^^;
タニー「羽生さんのような特別な人もいますけどね」
羽生は、なんと57戦43勝14敗 これはすごい、すごすぎ!

さて、▲引き飛車+▲3六銀vs△中原囲いだ 森内、4枚の囲いで、玉は固いが発展性がない
山崎は▲6六歩で角交換を拒否し、森内が低い陣形のまま手が作れるかどうかだ
矢内が「どこが急所?」と質問している 後手はどう指すものか、私にもぜんぜんわからない

森内はとりあえず△8五飛型にしたが、山崎は銀を2枚とも繰り出して、ダブル棒銀とでもいうべき形だ
▲2五銀+▲3五銀の形、こんなのは初めて見たぞ なんともアマチュアっぽい作戦だ 
タニー「こういう棒銀は見たことがないですね ふふふ(笑)」
タニーも思わず苦笑している 筋のいい人ほど、こんな棒銀は思いつかないだろうね(笑)

強引に2筋で駒が交換され、先手は角銀交換で駒得だ これで先手が悪い理屈はないと思うが、どうか
矢内「山崎は決断よく進めてますね」
考慮時間の残りが、▲8回vs△3回になってる 森内、困ってるのか? 

タニー「山崎が良くなりそうだけど、実際には難しいというところか」
角銀交換だから、私なら絶対先手を持ちたい(^^; 私は駒得絶対主義者だからね
タニーも、「私は駒得重視なので先手持ち」
タニーは、駒に点数をつけて点差を数える、という理論の本を出しているくらいだもんね

さて、困ったように見える森内 こんな棒銀を名人が受けれないのか? それもなんだか寂しいな、
と思っていたら、ここから名人の芸を見せてくれた
タニー「さすがに△3五銀と打つわけにはいかないですからね」
と言っていたのに、森内は△3五銀!
手が進んで見ると、その結果は、タニー「こうなると後手がポイントを上げた感じ」
え~、タニーのあきらかに上を行っている、さすが現役の名人!

手を渡され、山崎が考え込んでいる ・・・まだ考えてる ・・・まだ考えるの?
・・・え~、またまた考慮時間使うの? 残っていた5回全てを投入し、山崎は▲3八銀!
なんだこれは? あ、次に後手の銀を殺す狙いか これ、単純な狙いだが受けにくいか???
タニー「さすが、考えただけのことはある手ですね」

森内、どうする!! 次に銀が殺されるけど、受けはあるのか!? 
と思っていたら、森内の判断は、△8五桂の攻め合いだった!! そうか、攻め合うのか
しかし、△7七歩成じゃ軽い攻めだから、と思っていたら、森内は△7七銀のぶち込み!! 
げえっ そ、そうか こんな攻め方があったのか ど、どうなってるんだ 山崎、ピンチなのか!?
タニー「山崎のほうが(表情が)まずかったかなー、という感じですね」

山崎は読みをはずそうとしたのか、▲4六角という手を指したが、
その結果は、傷口を広げるだけだったようだ
以下は、森内に攻めまくられ、山崎はボロッボロの、けちょんけちょん! 
あっという間に先手陣は壊滅してしまった 森内が大差で勝ちを決めた 100手で森内の勝ち

あ~、なんでやね~ん、山崎、良かったのは序盤の作戦がうまくいったところまでで、
あとは名人の強さを見るばかり 終盤というものがこの将棋にはなかった・・・ 全く残念無念orz

タニー「序盤は山崎ペースだったが、▲3八銀~△7七銀に対する受け方がどうだったか
 最後は差が開いてしまった」
山崎の長考の▲3八銀に対する△8五桂からの攻め合いが勝因ということだった

感想戦で、山崎「△8五桂が見えてなかった」 ああ、それは力負けだね ガックリ
タニーの事前の紹介での、「少し悪くなったところから決め手を与えない」と言っていた森内の地力が
発揮された一局だった

終盤が全然なくて、残念な内容となってしまった あ~、期待が大きいカードだっただけに・・・
山崎「仕掛ける前に、強い人は1回、玉を寄るんでしょうね どう指してもいいと思った」
あ~、名人相手に、容赦するような指し方をしちゃったか これは悔やまれる

まあ、けど、森内はやっぱり強い ▲3八銀なんて、全然読みになかったはずなのに、
瞬時に反応できるんだもんね 感想戦でも、変化順で鋭い手を挙げて、さすが!と思わせた

本局、終盤のない将棋で、残念だった 
ただ、この相掛かりの先手の、引き飛車+▲3六銀で行くぞと見せて、
▲6六歩の持久戦作戦、後手としては難敵だろう、と思わせた一局だった