われ敗れたり コンピュータ棋戦のすべてを語る
米長邦雄永世棋聖著 中央公論社 1300円+税 2012年2月10日初版

この本、もちろん発売されたことは知ってました でも、私は買う気になれなかったんですよね
なぜなら、1月14日の決戦、私はあれを楽しめなかったんです
あれをずっと午前10時から終局まで(そして後のインタビューまで)見ていたわけですが、
あんな疲れた将棋観戦は今までなかったです
だって、全然戦いが始まらないんですもん 
やっと始まったら、あっという間にボンクラーズが怒涛の攻めが決まり一気に終了・・・

でも、Rocky-and-Hopperさんの棋書ミシュランで紹介されていて、がぜん興味がわいて、
買ったみたんです
そしたら、この本、すごく面白いじゃないですか! スラスラーと読めてしまいました
私がまともに本を読む、というのは、いつ以来でしょうか、1年ぶりくらいかも(^^;

米長さんが、どれだけこの一戦に賭けたかが、とてもよく伝わってきます
いや~、米長さん、文章うまいな~ ここまでうまく書く才能ある人、なかなかいない!

米長さんのホームページに連載されていた記事に、自身で解説を加える、という
スタンスで進んでいきます 読みやすいです

米長さん、詰将棋を解き、ダイエットもして、自宅に特製のボンクラーズを置き練習対局、
そして事前の色々な打ち合わせetc・・・
ひとつのイベントを実現させるって、大変なことだな、とあらためて思いました 

「棋譜解説」は別の章にまとめてあるので、棋譜自体を理解できない人は、
その章はもう飛ばしてしまえばいいと思います 
棋譜を理解しなくても本番の雰囲気は充分に伝わってくると思います

ボンクラーズの初手が▲2六歩だったときの対策も米長さんにはあったそうで、
それも知りたかったですね 終局後の記者の質問で、それを誰かに質問してほしかったです

最後の章の、棋士、コンピュータ開発者へのインタビューの項は、人選がよく、中身も読み応えあり!
24の席主、久米さんも答えてます 
(でも、なぜかボンクラーズの製作者の人にはインタビューがないです)
私のこの一戦の感想は、△6二玉+位取り作戦で、勝ちだけにこだわって、
勝てなかったのだから、見ていて残念だったですね 負けるにしても、普通に戦ってくれていれば・・・
今でもこの一局、ショックでひきずってますもん 銀河戦を見るのを中断してるくらいですからね

来年、プロ5人vsCOM5つの対戦が予定されているそうですが、ちゃんと実現しますかね?

この本の欠点は、12月21日に行われたプレマッチに関してほとんど触れられていないことですね
あれも重要な対局だったのですから、触れないというのは・・・
あまりにもボロ負けだったから、なかったことにしたいのでしょうけど(^^;
それから、ボンクラーズ側から見た視点はないですね でも、これはしょうがないでしょう
あくまで米長さんが出した本なので、それはしかたないと思います
あと、値段が高いです 小型本にして800円くらいすれば、
もっと大勢の人に買ってもらえただろう、と思いました 
せっかく100万人が観戦したのですから、この本もたくさんの人に読まれてほしいです

来年、5vs5の団体戦の後にも、ぜひこういう本を出して欲しい!
いや、出すべき、出してください! 


初版、修正しないといけない箇所がありました
57ページに、↓の詰将棋が1題だけ載っているのですが、七手詰め、と書いてあります
これは、どうみても五手詰めです
そして、初手の王手は5通り、と書いてあります 
▲3二飛成、▲3二飛不成、▲2三飛成、▲2三角成、▲2三角不成の5通り、と書いてあります
これも間違いですね 初手の王手は7通りです ▲1三飛成と▲1三飛不成、が抜けています

後手の持駒:飛 角 金四 銀四 桂三 香四 歩十六 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ 角 ・v桂 ・|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v玉|二
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=0 まで