杉本昌隆 七段vs菅井竜也 五段 NHK杯 1回戦
解説 阿部隆

矢内、モスグリーンのミリタリー風のファッションだ 
今日は菅井の登場か 中堅の杉本をバッサリ斬るところを見せる、かな?

杉本は1990年四段、竜王戦2組、順位戦B2 予選で村田智弘、神崎に勝ち 11回目の本戦
菅井は2010年四段、竜王戦6組、順位戦C2 最強戦優勝により、予選はシード 2回目の本戦

解説の阿部「関西所属の2人の対戦 
 杉本は粘り強い振り飛車党、菅井とは対照的、長手数の大家、理論的で重厚な棋風
 菅井は攻め味鋭い振り飛車党 将棋の大好きな少年といった面影をいまだに残している、
 菅井は前期NHK杯でベスト8までいった、関西期待の星」 

事前のインタビュー
杉本「菅井は現在の段位より、はるか上の実力を持った若手 手ごわい相手 まずは初戦を勝ちたい
 振り飛車は菅井にゆずって、私は居飛車でいこうかと思っている」

菅井「杉本先生は、終盤の鋭い、スキのない棋風という印象です
 優勝めざしてがんばりたいと思います」
・・・この菅井の、相手の印象のフレーズ、誰に対しても使えそう(^^;
優勝を目指してるってか 頼もしい それには、まず杉本をバッサリと斬らないとね

先手杉本で▲居飛車、後手菅井の△ゴキゲン中飛車だ 杉本が丸山ワクチンの角交換、
お互いに軽く囲っての戦いとなった

菅井、▲5三角を打たせている間に、向かい飛車に振って、棒銀模様で2筋から攻めてきた
銀が四段目までいったはいいけど、そこから前には進めない 銀がお荷物状態だ
阿部「菅井は銀がさばけない △3五歩とはいけない」
しかし、直後、菅井の手は△3五歩! これには笑った

菅井、6筋と5筋の歩を次々突き捨てた うわー、若手らしい、勢いがある!
矢内「開戦は歩の突き捨てから、といいますが、ポンポコポンポコ」
阿部「子供将棋名人戦のような、元気よさがある(笑)」

それからおもむろに△3五銀! これは怖い順だ 先手に何をされるかわかんないからね
阿部「これで後手がうまくいくとは思えない、正直」
しかし、杉本に考慮時間をどんどん消費させる、ということになり、
菅井は時間的にはずいぶん有利になった
盤面のほうも、かなり競っているようだ 杉本にもっと良くなる順があったのでは、と思われたが、
もう振り返っている時間はない

菅井、元気がいいだけではなく、じわっと△5二金寄、と指すなど、プロの味を出している 

阿部によると、最善を逃した手がお互いに出ているようだが、好勝負だ 形勢、かなり競ってる
私も、見ているのに夢中になってしまい、メモがほとんど取れてない あちゃーー(^^;

阿部「ここは△8四歩か? それが後手玉を広くしながら、先手玉にとって詰めろみたい」
菅井の手がピタリと一致、△8四歩 おおー、さすが阿部さん
阿部「菅井はこういうマクリが得意なんですよ~」
マクリ、とは、競馬や競艇の用語で、後ろから一気に抜き去ることだね

杉本、▲7一と、で下駄を預けた この杉本の手、「7、8、9・・・」と秒を読まれて、
10秒を越えていたようにも見えたが、10秒未満で着手を手で示しているので、OKなのだろう

後は、菅井が先手玉を詰めるかどうか、の勝負!
おおっ、菅井、ノータイムで、と金を寄った! 自信満々の手つき!
やっぱ、勢いのある若手は強いね 読みきりかあ 杉本さんのような中堅は、斬られ役なのだろう

Zガンダムの最終回で、シロッコがシャアに対して、「貴様のようなニュータイプのなりそこないは、
 粛清される運命なのだ!」と言ったシーンがあった
菅井の「貴様のようなA級棋士のなりそこないは、粛清される運命なのだ!」というセリフが
ピッタリくる、そんなシーンだ

しかし、しかし!? 菅井、ノータイムで指したかと思ったら考え込む手もあり、
阿部もまだ読みきれてない 
阿部「うん? どうやって 詰むんだ 詰まないような気がしてきたな・・・」
ええ? どういうこと? 詰んでる? 詰んでない?
杉本の「まだだ、まだ終わらんよ!」という声が聞こえてくる
延々、詰むや詰まざるや、うおおお こ、これは面白い 将棋の醍醐味!

延々続いた王手王手、「迷ったときは銀合」の言葉どおりの銀合も出た
さらに連続王手の千日手で逃れた先手玉、最後はギリギリ詰みを回避!!
王手の開始から36手、先手玉、詰まず、115手で杉本の勝ち!
ふう~、これは面白かったなあ ここのところ、大差の将棋が続いていただけに、
ひさしぶりに将棋らしい将棋を見た、そんな気分だ 
「迷ったっときには銀合」この格言が出た終盤、これは見ごたえがあった!

総括して、阿部「指運」
指運だろうね さすがにプロでも最後まで読みきれて指しているわけではないだろうからね
菅井、優勝を狙ったが、1回戦で消えたか 
一局を通して、なんとかなった可能性が高いだけに、悔しいだろう
ひさしぶりに詰むや詰まざるやの終盤を見た、満足な一局だった