橋本崇載 八段vs宮田敦史 六段 NHK杯 1回戦
解説 渡辺明

今日は、勝ったほうが2回戦で羽生と対戦できる、という大事な一局だ
私はハッシーが好きなんで、ハッシーの応援だ おおっ、ハッシーが和服でキター 気合い充分! 
羽生への挑戦者は、やはりハッシーであってほしい さあ、いけ、ハッシー!

ハッシーは2001年四段、竜王戦1組、順位戦A級 予選はシード NHK杯の本戦は8回目の出場
宮田敦史は2001年四段、竜王戦5組、順位戦C1 予選で、武者野、遠山、飯島に勝ち
 NHK杯の本戦は4回目の出場 所司門下で、渡辺の兄弟子(あにでし)

解説の渡辺「ハッシーは今期からA級ということで、和服で気合いが入っている
 宮田は昔からああいう感じで、まじめ 2人とも、居、振り問わず指すので、相振りもありうる」

ハッシーは和服だけど、宮田のほうもスーツで黄色いネクタイが似合っていて、いいと思った
矢内は今日も、頭の後ろにでっかいカタマリをのせている ホントにでっかい(^^;

事前のインタビュー
ハッシー「宮田は詰めの名手で、切れ味鋭い将棋 ひさびさのNHK杯出場なので、気合いが入ってます
 一局でも多く勝ち進めるように、がんばります!」(左手でガッツポーズ)

宮田「ハッシーは流行よりも、自分のスタイルを貫く将棋だと思います
 できれば一局でも多く指したいですね」

渡辺は「ハッシーは、おとなしめのコメントだった」と言っていたけど、
ガッツポーズしただけで、もうそれでいいんじゃないだろうか 
ハッシーはもう、奇をてらって自分を売り込むことはしないでいいのだ 何しろA級棋士なのだから!

先手ハッシーで、3手目に角道を止めた これが最近のハッシー流だね 
4手目が△8四歩以外なら、ハッシーはここから石田流に組むのだ 
本局は宮田が△8四歩だったので、矢倉になった

両者、スラスラーと進めていき、がっぷり4つの、相矢倉だ
渡辺「矢倉では今、一番多い形 ▲6五歩は10年くらい前に宮田が指した新手で、最有力とされている、
 先手の攻勢、後手はしばらく受けて、カウンターを狙う将棋」

駒がぶつかって銀交換になったが、まだ定跡が続く
矢内「長い定跡ですね」
渡辺「相矢倉の定跡は長いです 相矢倉と角換わり腰掛け銀の定跡は、100手近くまである
 他の戦型だと、そんなに長いのはない」
100手か~ 将棋の知らない人に、「定跡って、何手くらいまであるんですか?」
と訊かれたら、「プロの将棋で長い定跡だと、100手近くまであります」と答えればいいね

ハッシーが、桂、香を捨ててかかる攻め、宮田が受けきれるかどうかだ
渡辺「私はまったく同一の将棋を指して、先手を持って、負けた記憶がある
 ▲3二銀と打ち込んだのだけど、その後が一手も思い出せない(^^;」
だが、そこは竜王8連覇の実力者だ
渡辺「先手が一番うまく指すとこうなる」という順をスラスラ~と並べてくれた 渡辺、さすが!

宮田は時間を使っていないなあ まだ考慮時間を全部残しているぞ
ところが、▲6三金と、角取りに打った局面で、宮田の手が止まった
雑談になり、矢内「宮田は控え室でもずっと詰将棋を解いていました」
渡辺「私が10才とかで、宮田は13才とかだったのかな、初めて教室に言ったときも、
 宮田はすんごい難しそうな詰将棋を解いていた、30何手詰めとか(笑)」 

さあー、勝負どころだ どうなるんだ ハッシーは勝てるのか ドキドキ 見ているこっちが緊張する
渡辺「後手だと、この先の展開によほど精算が持てないと、選ばない局面」
宮田、なかなか指さない まだ考える、まだ考えるのか
なんと、一気に7回も考慮時間を使った! う~ん?? 困ってるのか??

宮田は結局、角を逃げる手だった おおっ、渡辺が「こうなると先手良し」と言った変化ではないか
渡辺「形勢は先手ペース 先手番の得がまだ残っているくらいの形勢」
いけるぞ~、ハッシー、勝って、羽生へ挑戦権をゲットするんだ!

そして、▲2四歩、の取り込みが無条件で入った! おおお、これは先手のペースだろう!
勝てよ~、ハッシー、これは勝てる! いけいけ、ハッシー!
渡辺「普通にいけば、先手が良さそう 飛車の応援も効く」

渡辺「いや~、これ、受けがないんですよね と金の攻めなんでね 先手は駒損なしで攻めてるんでね
 もっと悪い攻めの感じになっても、やれる感じなんでね
 △2二歩に対して、うまい攻めがあれば、もう終わり なければもうちょっと粘れる」
何か攻めの決め手があるのか・・・!? 私にはわかんない・・・

したらば、ハッシー、▲2三銀の打ち込み! 見ていて思わず「おおっ」と声が出てしまった
大盤で検討を始める渡辺、この▲2三銀に対して、うまい受けは・・・ 見当たらない!
やったーー ハッシー、決め手が出たー
攻めのお手本のような、教科書に載りそうな会心の攻めが決まった! 

飛車がドカーンと成りこみ、もう、もらったぜ! ここからの逆転はさすがにないだろう
と、思ってたら? なんだか、宮田の玉が反対側にどんどん逃げていく
あらららら、まだ続くのか? そして、なんだかちょっと、怪しい雰囲気に・・・
渡辺「後手が最後に反撃できそうな気配がある」

え、怖いな 何しろ、宮田は終盤の詰めの名手 ま、でも、先手は矢倉囲いが丸々残ってるから、
大丈夫だろう ・・・って、△9六桂の王手がいきなりキターー! や、やばい??
渡辺「そこから来ますかあ ちょっとイヤな感じですね~ 1回は見せ場が来ましたね
 さっきまでの楽勝ムードでは、もうない」 
そして、さらに△8六桂!! 矢内と渡辺、同時に「おお~」
矢内「再び、歩の頭に桂が飛んで来ましたね」
やばい! マジやべえ! 踏ん張れ、ハッシー・・・!!

宮田、強い、ぐぐうう、と思ったそのときだった 
ハッシー、もらった桂で、後手の角道遮断の▲7五桂! うわ、なんだこれは いい手?
宮田も返すカタナで△同角と捨ててきたが、角の利きがなくなって、先手玉が安泰になった
宮田の攻めが尽き、133手、ハッシーの勝ち! 
やったああーーーー っふうううううーー、危なかったーー

矢内「▲7五桂が」 渡辺「決め手でしたね」
総括で、渡辺「ハッシーがうまく攻めて、最後は一瞬、ヒヤッとしたものの、おおむね大丈夫だった、
 という一局」
ハッシー、結果的には快勝だった でも、見せ場をつくらせてしまったのは問題だったと思うけどね
でも、この将棋は結果が大事! これで羽生への挑戦権をゲーーーット!
ふう~、普段は特に、どちら側の応援をして観戦する、ということは私はないのだけど、
今日はかなり力を入れてハッシーの応援をしていたので、肩に力が入って、肩が凝った~
文中に、「!」がかなり多くなってしまったのも、そのためだ(^^;

よーーし、これで2回戦は羽生戦だ 羽生の5連覇を阻止する刺客、まずはハッシーに決定だ
2回戦が断然、楽しみなカードになった
今日は対局前にガッツポーズをしたハッシー、2回戦では、対局後にガッツポーズを見せてほしい!