2ヶ月前に行われた倉敷藤花戦第1局、里見女流四冠vs矢内女流四段のタイトル戦です
スカパーの囲碁将棋チャンネルで、藤井九段の解説がありました

NHK杯で聞き手をしている矢内の力量はいかに? 
両者の定跡の知識、発想、里見の寄せの鋭さが出ています 
双方、力を出し合った好局だと思います こんな乱戦も将棋にはあるんですね
以下に、藤井九段の解説をまとめました

藤井「この一局は、最近棋風の幅を広げている矢内さんの、らしさが出た将棋だった
 持ち時間2時間の中では、2人とも相当読んでいると感心した」
(しかし、2局目の対抗形では矢内に緩手が続き、あまりいいところなく破れ、タイトル奪取はならず)

<参考>里見は現在、女流名人・女流王位・女流王将・倉敷藤花の四冠王、
  16才のときにこの棋戦で初タイトル奪取、4連覇中で、今期永世称号がかかっている
  矢内は予選で、女流棋士46名のトーナメントを勝ち抜いて、挑戦者になった
  矢内は倉敷藤花戦は、挑戦5回目 過去4回、いずれも2連敗でまだ1勝していない
  この対局の前までの2人の対戦成績は、矢内5勝、里見10勝 里見の5連勝中
  (非公式戦も含む数 棋譜でーたべーす調べ)

前夜祭での2人のコメント
里見「ただ楽しみという気持ちが強くて、見ている方にも楽しんでいただければいいと思います 
 タイトルは獲られることも獲ることもどちらも受け止める準備はできています
 とにかく自分の将棋を一生懸命指したいです」

矢内「すごくワクワクしている 毎回挑戦させていただくたびに、今回こそはと思っています
 5回目の挑戦ということで、これだけ挑戦者になれるということは、きっと相性のいい棋戦だと
 思うので、なんとかがんばりたいです」

開始日時:2012/11/08 10:00
棋戦:第20期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負 第1局
持ち時間:各2時間
消費時間:111▲120△120
場所:東京・将棋会館
先手:里見香奈倉敷藤花
後手:矢内理絵子女流四段

*藤井「持ち時間は各2時間と、タイトル戦としては短い」
*以下、コメントはすべて藤井九段のもの
*ギズモの補足は(カッコ)の中に書いています
▲7六歩
*(先手は里見)
△3四歩
*(矢内は、白い和服で登場 下は紺のハカマ)
▲7五歩
*戦型は普通の考えれば、里見の振り飛車、矢内の居飛車 
*しかし里見は時々居飛車を指している
*矢内は挑戦者決定戦の中井戦で、振り飛車を指している 
*これは里見が振り飛車を明示した手
△8八角成
*矢内は持久戦志向の棋風なので、意表の一手だった
*この角交換は序盤から積極的な手 先手は▲同銀と▲同飛、両方ある 里見はどちらにするか少し考えていた
*▲同銀なら穏やかな進行になる
▲同 飛
*これはストレートに向かい飛車に回り、目いっぱい得しようと突っ張った手
△4五角
*ここから難解な定跡に飛び込む
▲7六角
*△2七角成と▲4三角成では、先手のほうが他にも駒を取れる分だけ得
△4二玉
*ここで先手、2七の守り方が難しい 先手は美濃囲いにしたい
▲3八銀
*里見は突っ張った
△5四角
*後手は△2八角と打ち込む狙い
▲7八飛 △7六角 ▲同 飛 △2八角
*先手はこのまま香を取られてはまずい
*ここから難解な定跡がある
▲5五角
*香の取り合いは、馬の働きの差で先手が得
△3三桂
*受けるにはこれしかない
▲7四歩 △同 歩 ▲8二角成 △同 銀
*次の手は、初心者の方はびっくりするかもしれない
▲1八飛
*これで先手良しに見えるが、さらに定跡がある
△3九角打
*この手の真の狙いは△1九角成~△2八角成
*(見たこともない右下の形、すごい(笑))
▲6八銀
*ここで後手が△1九角成▲同飛△2八角成を決行すると、▲4六角△7三銀▲3六歩で大丈夫 マジックのような手順
△7三銀
*これは矢内の新手で、本局での矢内の試みだった 従来の手は△7三桂
*△7三桂は、△4五桂と△6五桂の跳ね出しを狙っている 矢内は△6四銀~△7三桂として、銀も活用する狙い しかし、私の主観ではやはり△7三桂だったかもしれない
▲3六歩
*先ほど言った▲4六角が、すぐに1九に利くように用意した手
△4五桂
*△6五桂の応援がないので、あまり迫力がない
*ここで先手は▲5八玉としておくのが有力だった
*それで後手に攻めがあったかどうか
▲3九金
*里見は自陣を清算しにいった
△同角成 ▲4八角
*これが、この際の受けの形
△同 馬 ▲同 玉
*飛車と金の交換、4五の桂が取りきれるがどうかが勝負
*△6五桂の応援があれば全然違う局面、今のところ△7三銀の効果は見えない
△8八角
*先手は歩切れなので、香を取られるのは痛い
▲6六角 △同角成 ▲同 飛
*6三に飛成を見た手
△1五角
*これは鋭い手、厳しい 4五の桂はタダで取りたいので、▲3七桂とは受けたくない ▲2六角と受けると△3三角とかわして後手良し 
*(△3三角が飛車に当たるように、さきほど△8八角から飛車を6六に呼んでおいたのだ 矢内、すばらしい!)
▲2六歩
*2七の歩がいないほうが玉が広い、という意味の手
△同 角 ▲3九玉
*先手としては怖い順だが、よく踏み込んだ
△4八金 ▲2八玉
*△4四角と引いたときに、▲1五角の王手金取りが発生している
*▲2六歩は受けの妙手だった
△3八金
*だから後手は先に金を清算せざるを得ない
*味消しだが仕方がない
▲同 玉 △4四角 ▲7七角 △6六角 ▲同 角
*形勢はまだ、はっきりしない
△3五歩
*これは控え室で評判のいい手だった
*歩が攻めに加われば、後手の攻めが切れなくなる
▲3三角打
*一見、玉を逃がしてしまう手だが、次の▲5五角引成が手厚い
△5二玉 ▲5五角引成
*ここで次の手、△2五飛が控え室の予想だった 以下△2七銀を受けて▲2八金は△3六歩が桂を守った攻防手になる
*
*しかし局後、対局者いわく△2五飛には▲4五馬と取られ、以下△2七銀▲3九玉△1八銀成▲同香△2七飛打のとき、▲1九金で受かるのだった ▲1九金は両対局者だけが読めていた手 (▲1九金が読めている2人、強い!)
△4四銀
*銀を使ってしまってもったいないが、これは最善手だった
▲4六馬
*この次の矢内の手が失着だった
△3六歩
*これがあせった手、敗着 ここでは△6四銀と出たかった(いつか△5五銀右と出る狙い)
*以下、△7三桂の活用を見込めて、大変な形勢だった
*序盤で上がった△7三銀がようやく活きる展開だったのだが、矢内としては惜しかった
▲同 馬
*これで▲4六歩が発生してしまい、後手はゆっくりできなくなってしまった
△3七歩 ▲4九玉
*1八の飛車がよく利いていて、後手は攻めが続かない
△6四銀
*この手を早く指していれば、だった
*形勢は先手が良くなった
▲4六歩 △6五銀
*形勢が良くなると、あせることもあるのだが・・・
▲8八角
*里見は落ち着いている
△3八飛
*後手は何か攻めるしかない
▲4五歩 △1八飛成 ▲同 馬 △4五銀
*後手は手を戻さなければいけないのでツライ
▲8二飛
*4五の銀は取ると△4七飛の筋が発生する
*今すぐ取る必要はない
△6二金 ▲7二金
*里見は決めに行く 緩まないように心がけているのだろう
△5一金
*先手は金を渡すと、自玉に詰みがあるので怖いところ
▲3三角成 △3八歩成
*王手馬取りが発生し、うっかり、見落としかと思われるが・・・
▲同 玉 △3五飛 ▲3七歩 △3三飛
*これは里見の読み筋
▲4五馬
*後手に飛車を使わせることにより、先手は自玉が安全になった 
*(里見、角をわざと取らせるすごい発想 つええー)
△5四銀 ▲7一銀
*私なんかだと、馬を1回逃げそう(笑)
△8四角
*矢内としてはもうほとんど勝ち目はないが、2局目につなげるべく、がんばる
▲6二金 △同 角 ▲同銀成 △同 金
*あとは先手がどう寄せるか
▲7二金 △6一金打 ▲同 金 △同 玉
*玉は下段に落とせ
▲5四馬
*厳しく行った
△同 歩 ▲5三銀 △7二銀 ▲5二金
*送りの手筋
△同 金 ▲同銀成 △同 玉 ▲7二飛成 △6二銀
*ここでは即詰みはまだない
▲6一銀
*ここで△4一玉と逃げれば詰みはなかったが、▲6二竜で全く後手に勝ち目はないので、矢内は形作りで詰まされる順を選んだ
△5三玉 ▲6二龍 △同 玉 ▲7一角
*差が開いている局面でも、詰ませにいって詰まずに逆転というのはよくあるので怖い
*だんだんベテランになると詰まさなくなる(笑) 若いうちはどんどん詰ませましょう
△7三玉 ▲6五桂 △8四玉 ▲8五銀 △同 玉 ▲7七桂
△7五玉 ▲5三角成
*以下、△6四歩▲8五金△7六玉▲8六金までの詰み
*
*<藤井九段の総評>
*矢内としては、△6四銀と出るタイミングが遅れたのが悔やまれる それをとがめた里見の正確さが印象的だった
まで111手で先手の勝ち