将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編
上野裕和著  マイナビ将棋BOOKS 2012年10月初版 1400円+税
評価 S 難易度 ★★~★★☆  
コンセプト<プロの最新の居飛車対振り飛車の序盤を知ろう アマ級位者向けに書いたガイド本>

まず、この本は「定跡本」ではなく「ガイド本」です
普通の定跡本だと、いきなりその戦法の序盤の一手一手の意味を詳細に解説していますよね
定跡書ではその方法でいいでしょう でもこの本はガイド本なので、違います

その戦法(中飛車、石田流、角交換振り飛車)がなぜ出現してきたか、という歴史から振り返り、
一手一手よりも、序盤の急所の局面だけに絞って図を使って、
その局面の何をどう見たらいいかを、教えてくれます

振り飛車側の狙いに対し、それに対する居飛車側の対抗策というように、
順を追って非常に丁寧に解説してくれています 
そして最終的に、現在のプロの最新形にまで導いてくれます

指し手順ばかり解説すると、「木を見て森を見ず」になりがちです 上野先生は、そうならないように、
その戦法の全体像である「森」をしっかり見せてから、手順という「木」に移行しています

この本の特に優れたところは、著者の急所の局面を見抜く着眼点、
そして、とことんわかりやすさを追求した文章と構成にあると思います 
レイアウトも考えてあり、解説と図面が違うページに、なんてことがまずありません
図面でも重要な駒を太字にする、駒の動きを矢印で説明する、という工夫がなされています

個人的に一番Goodと思えた点は、定跡手順の「基本」だけに特化して教えてくれていることです
(それも基本中の基本) 難しい変化は、あえて載せていません それがいいのです 
将棋に関しては、今までそういう本が意外となかったのです 
大抵のアマの人には詳しくは必要ないし、難しい変化まで載せてしまうと、
読むときにそちらに時間と労力を奪われて、肝心の基本がおろそかになってしまいがちなんですよね

プロの中で誰がその新手、新戦法を指したのか、も調べてくれて書いてあるので楽しいです 
重要なことと、上野先生が特に言いたいことは、太字で書かれています 読みやすいです
雑談のコーナー「ブレイクタイム」も面白く、中でも
「勝った直後の棋士は、なぜ笑わないのか」には共感し、納得させられました 
個人的には、「勝った棋士よりも、負けた棋士のほうがなぜよくしゃべるのか」も
書いてほしいかったです(笑)

この本の完成に至るまでに、きっと実際に複数のアマ級位者の人に読んでもらい、
ダメだしを何度も食らって、書き直しに書き直しを重ねたんだと思います 
これはハンパなく推敲していますね 上野先生の努力に最大の敬意を表します 

ほぼパーフェクトと思えるこの本ですが、読み終えた人は、きっと全員、重大な問題を抱えてしまいます
それは『「居飛車対振り飛車」のプロの序盤は知ることができた、でも「相居飛車」と「相振り飛車」は
どうなっているの? 同じようにわかりやすく教えてくれないだろうか?』という大問題です

上野先生、どうにかなりませんかね?
これではまるで「抜群の腕前のマッサージ師に右半身だけマッサージしてもらい凝りを取ってもらった、
でも左半身には触ってもらってないので凝りが取れていない」というような状態です(^^;

ともあれ、すばらしい本です NHK杯を楽しみに見ている人なら間違いなく買いです
上野先生、ありがとうございます!!