中村太地 六段vs渡辺明 竜王 NHK杯 3回戦
解説 村山慈明 六段

パソコン歴15年、やっとブラインドタッチができるようになったギズモです どーもです
今日の矢内は髪型がゲゲゲの鬼太郎みたいで、とてもいい感じだ 
さて、楽しみな好カードだ 王者渡辺に、若手の中でも期待大の中村太地が挑む一戦だ
太地、年末に逝った米長師匠のためにも、魅せる将棋を指してくれ!

太地は2006年四段、竜王戦4組、C1 小林裕士、松尾に勝ち3回戦進出 本戦出場は2回目 24才
渡辺は2000年四段、竜王9連覇中 A級 2回戦で深浦に勝ち 本戦出場は11回目 28才

解説の村山「太地はとても礼儀正しくて好青年、ここ1~2年の活躍がすばらしい
 勝率1位を取ったり、タイトル挑戦(棋聖戦)もあった 今一番勢いに乗っている若手の一人 攻め将棋
 (昨年度、40勝7敗で勝率1位 0.8511は歴代2位の記録 
 参考までに、歴代1位は中原誠 0.8545 47勝 8敗 1967年度 
 3位は羽生善治 0.8364 46勝 9敗 1995年度) 

 渡辺は竜王9連覇中で、永世竜王資格保持者 安定して活躍している印象 
 連敗しているのをあまり見たことがない 渡辺と言えば終盤の底力」

事前のインタビュー
太地「渡辺はどこをとっても一流と思いますが、特に判断力、終盤力に優れている棋士だと思います
 積極的な攻めの将棋を指したいと思いますので、そのあたりに注目していただければと思います」 

渡辺「太地は非常に伸び盛りの若手、これから対戦する機会が増えてくると思うので、
 ここはコツンと叩いておきたいと思います(笑) 
 (注目して欲しいのは)太地も攻め将棋なので、居飛車の激しい攻め合いになると思う、その辺りです」

村山「先手では角換わりが得意な太地、渡辺は相手の得意を受けるので、そうなるのでは」

先手太地で、角換わりを渡辺が受けてたった 相腰掛け銀だ 両者、指し手が早い
村山「渡辺の指し手は、竜王戦でも見せた専守防衛型」
この序盤、私事だが、ちょうど昨日、友人Nとこの戦型を指したのだった(持ち時間無制限)
明らかにそのおかげで一手一手の意味、以前よりかなりよくわかるようになった
攻めを開始したい先手の手に、後手が対応して受けていっているのだ

太地は▲5九金~▲6八飛~▲7七角の自陣角か この手順は知らないと指せないなあ
そこで出た、渡辺の穴熊を目指す△1二香! ここでクマるか!
村山「△1二香は『渡辺竜王』と書いてあるような手ですね(笑)
 渡辺は矢倉模様から穴熊に潜るのを得意としてます」

太地は潜られてはイカン、と仕掛け、さあ開戦だ 私は見ていてここまでもけっこう神経を使ったが、
2人にとってはこれまでは知っていて当然の知識、ここからが本当の戦いだろう

そしたらば、渡辺の△2七角キター なんだこれは・・・ 
村山「これは仕掛けられた瞬間だから成立する手、うまいタイミング、うまい手の気がします 
 流れるような手順」 即座に意味を解説してくれる村山、いいよいいよー
△2七角は、ほとんど時間を使わずに打っているため、渡辺の研究手だったと思われる
矢内「(ここまでのすべての渡辺の手は)計算し尽されたという感じが」

しかし、太地、取られる3筋の歩を突き出して勝負、村山「いい手に見える」 
太地、い~ぞ、い~ぞ 早くも一手指したほうが良く見える展開、これは見ものだ! 
渡辺、7七の角筋をどう受けるか、だったが、と金を作られながらの
開き王手をわざとかけさせた受け方! こんな受けはめったにないぞ 
(少なくとも私の実戦では出てこない)

渡辺の残り考慮時間が5回になり、
村山「渡辺は形勢がいいときには時間を使わないので、この局面がいいとは思っていない」
そこで出たのが△7四歩という竜王の攻め これは? 
そうか、玉飛接近している先手の陣形の欠点を突き、桂で両取りをかけようというのか
村山「△7四歩も急所の一手という感じ」
緊張の連続で、見ていて呼吸ができない、まさに一手一手に息がつまる

さて、これは単純な狙いだから、先手に何か受けはあるはず 何かあるはず あるはず・・・
って、ない? うまい受けが見当たらない? あわわ △7四歩と持ち駒の桂だけで先手陣崩壊か? 
そんなバカな! 太地、ピンチ これはかなりのピンチ 太地がんばれ~ なんとかしてくれ~
そのときだった 太地の指し手、それはなんと、すっと玉を一路かわした▲9八玉・・・! 
矢内「これは・・・!」 
村山「米長玉ですね! この手はすごい手ですね ここでこの手が出ましたか」
キターーー キタキタキターー 米長玉キターーー 
あの世から米長が降臨し、太地に指させた一手が出たー!! 
(収録当時はまだ存命だったかも、というツッコミは却下)

村山「渡辺も意表を突かれたんではないか」
画面に映った渡辺は、ただごとではないぞ、という目つき 対して、チラッと渡辺を見た太地!
くう~!! まるで超一級映画のワンシーン!! この米長玉は絶対に好手だ!! 太地がやった!!

村山「しかしこの場合は端攻めがありますね」 
いや、でも米長玉、好手だよね? そしたら、やっぱり竜王の端攻めキターーーー 
攻められてる先手玉が、米長会長の霊魂のように見える
渡辺、米長会長の霊魂に対し、容赦なし!! やめて~ 竜王、やめてくれ~

ぐうう、太地、苦しい、この端攻めは厳しすぎる そして、後手陣を見ればまだ鉄壁! うわあ~
村山「渡辺は細い攻めをつなげる技術が天下一品」
しかし、しかし時間の残りがお互い残り1回、早指しだから、まだわからんぞ
相手は前頭葉が人一倍大きいだけで、人間だ 化物ではないのだ まだわからんぞ!  
だが味よく飛車をグイーンと9筋に転回されて、大砲が玉に狙いをつけてキター 
もうダメか 顔が紅潮する太地・・・

もうお互い完全な30秒になり、手が進む
村山「渡辺は一気に決めるというよりは、だんだん相手の体力を吸い取っている指し方」
いや、しかしこれは? もっと早く寄せる順があったのでは?
渡辺は飛車打ちで確かに両取りをかけはしたが、もう全然ダメと思われた局面から比べれば、
先手もまだやれるのでは? なんだか、渡辺が寄せをしくじったのでは?
矢内指摘の△7二桂を指さなかったのは、おかしかったのでは? 
村山「太地もけっこう盛り返したんじゃないですかね」

おおお、竜王らしからぬ拙攻! 太地、まだチャンスが充分ある!
だが、画面に映っている竜王の表情が、全く変わらないのが気になる 失敗した、と思っていないのか?

太地、銀を見捨てて、香を補充する順を選んだか ちょっと考えにくい手だ
ん、それに対し、竜王の手は、盤上の歩を突き出す△6六歩・・・? ハア? なにコレ? うん? 
ちょっと見には意味がわかんない いや、じっと考えてみたけど、やはりわかんないな
村山「これは難しい手ですね これは・・・指せない手ですね なんとなく角打ちのラインを作った手かと」
絶対、私にゃ指せないわ というか、それから数手たっても、まだ意味がよくわかんない

後手の竜王の陣形、めちゃくちゃ固いが、太地も自陣に先受けの金底の歩打ちでがんばる
村山「いい手の気がします」 いいぞ、太地、これは充分にチャンスがある
後手の持ち駒は角角桂歩か 頭の丸い駒ばかりでは、先手陣にまだ寄りはない 太地、いけっ!

だが、竜王、△8六歩ってなんだ、さっきからわけのわからん手を続けるなあ
太地がミスなく受けてれば受かるはず、受かるはず、受かるはずと見ていたら、
なぜか竜王の攻めが手になってる!? まさかさっきの局面から手が作れてしまったのか? 
矢内「あの突き出した△6六歩が効いて来ましたね 指せない手でしたね」

あの手がまさか効いてくるって、マジで? △6六歩、意味が全くわかんなかったけど、
攻めに効果的な手だったということか ウソやろ??
しかし局面はウソをつかない、太地、粘るが、もう一手一手になってきているのが私の目にも明らか
えええええー なんでーーー 太地の根性の自陣角受けに、竜王の最後の決め手は、角合わせか
これはいかに太地といえどもダメだ、ううう、お、終わった・・・・・・

太地は投了を告げた 136手まで、渡辺竜王の勝ち 太地負けた・・・ 
村山「渡辺が△2七角からペースを掴んで、米長玉を攻めたあたりでは、かなり優勢になったと思うが、
 太地の粘りがすごかった ただやはり渡辺がしっかり寄せて決めた 
 終盤の△6六歩や△8六歩が参考になった 面白い一局だった」

△6六歩って、あれは単なる妙手ではないぞ
すでに30秒将棋が続き、太地がちょっと意表を突いた手を指した直後の一手だったのだ
そればかりではない、その前に明らかに竜王は寄せを失敗ていたはず、だから流れ的には逆転して
不思議ではない展開だったのだ そこで沈着冷静に△6六歩、そして△8六歩からの寄せ・・・

一局の流れの中で、渡辺竜王の立ち直り、これは見事としか言いようがない!!
竜王の精神力の強さは、あの2007年のボナンザ戦での、劣勢になった局面からの、
華麗な逆転劇を思い起こさせた

渡辺の今回の△6六歩を、羽生が以前にハッシー戦で指した△5六歩と重ね合わせた人も
多かったんではないだろうか? NHK杯で渡辺の見据える先、それはやはり羽生との決勝戦か

本局は、渡辺が終盤で1度寄せを誤ったということで、棋譜並べ向きではないかもしれない
しかしそこからの、早指しで30秒将棋の中での「竜王の立ち直る精神力の強さ」がモロに表れていた、
名局と言えると思う 太地もよくやった 米長玉も見れたし、充実度120パーセント、
今回は三局分くらい見た感じだった すごく、すごく面白かった!!

追記:今週木曜17日の、BS日テレの「コージ魂」というTV番組で、渡辺竜王を取り上げるそうです
気になる人は予約しておきましょう http://www.bs4.jp/koji/