先崎学のすぐわかる現代将棋
先崎学 北尾まどか著 NHK出版 2010年7月初版 1000円+税
評価 A 難易度 ★★☆~★★★☆
レイアウト良し フォントも柔らかい字体で個人的に好き 
コンセプト<ゴキゲン中飛車、石田流、角交換型振り飛車の技術をまとめた実用本>

「先崎ファンを自称してるくせに、発売から2年半経った今頃読むなんて遅いぞ」
というツッコミは甘んじて受けたいと思います 読まなかった理由を開き直って書くと、
読む気力が湧いてこなかった、ということです ・・・めんどうで(笑)
私の「角交換ありの振り飛車に定跡なんてない、どう指しても一局」という思いもありました

では、なぜ今読む気になったのか? 
それは上野先生の「将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編」を読んで、興味が湧いたおかげです!
上野本は、この先崎本を読むための基礎、土台の役目も果たしてくれたわけです
上野先生、本当にありがとう! (どっちの本のレビューをしてるのかわからんですね)

この先崎先生の本ですが、内容は「後手番ゴキゲン中飛車」、「石田流全般」、
「角交換振り飛車」を扱ってます(つまり、上野本とほとんど一致する)
この3つに絞って、序盤の知識と変化、その戦法の狙いを、先崎先生が語り口調で講義してくれてます
タイトルは「現代将棋」ということですが、他の戦法は扱ってません 反則ぎみです(笑)

振り飛車側の考え方と成功例を示し、それ対抗する居飛車側の手段、というように進んでいきます
公平な立場で書かれてはいるのですが、振り飛車の新しい作戦を紹介するという性質上、
振り飛車側が有利になる変化の解説ほうが断然多いです 
(私は居飛車党なので、何度も負けた気分にさせられました)

できるだけ語り口調の文章を加えて考え方重視で、という工夫はなされてはいますが、
それだけでは絶対に説明しきれないので、符号もふんだんに使われてます 
ですけど、私は盤に並べずに読むことができました 
24の上級レベルならほぼ盤に並べずに読めるでしょう 
(大乱戦の長い変化で符号がずっと続く話が、ごくたまーに出てきましたが、
「要するに大乱戦だ」と私は一瞬であきらめ、読み飛ばしました(笑))

居飛車側が飛車先を交換に行っていいのかどうか、と、振り飛車側が飛車を振った瞬間の
居飛車側の△4五角or▲6五角が成立するかどうか、がんばって説明してくれてます

上野本で紹介された手の詳しい説明が先崎本に載っていることはもちろん、
双方でうまい具合に補完し合ってるあっているところもありますね 
上野本は最新の作戦が(紹介程度ではあるが)載っていること、
上野本には「先手中飛車」があり、先崎本では「2手目△3二飛戦法、△3三角戦法」
があり、互いに補完し合ってます  

「上野本は楽しく読んだけど、先崎本では挫折した」となる怖れも充分にありますね
先崎本には「こんな序盤の細かい駆け引き、理解するのも覚えるのも大変」と思える所が、
私も多々ありましたからね 序盤早々に端歩を突くなんて、やはり難しいです

上野本と先崎本では、根本的にコンセプトが違うのですね
上野本は「プロの将棋を見て楽しめればいい向け、漠然と理解できればそれでいい」(ガイド本)、
先崎本は「実際に指してみたい人向けに、技術を教えるべく書いた」(実用本)、その違いは大きいです
(逆に、この先崎本をマスターできれば、この角交換系振り飛車3種類の序盤に関しては、
24の上級クラスには確実になれると思います)

さて、石田流の章では、初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩の進行が、
解説のメインテーマになってます 先崎先生は「アマの方は、3手目▲7五歩に対しては、
 居飛車側の人が堂々と△8四歩~△8五歩と指して、楽しんでもらいたい」と、繰り返し書いてます 
しかし、本書を2回読んで私は思ったのですが、ここからあまりにも石田流側の攻撃力が強烈です
7手目以降、先手有利になる変化がとにかく多いです 居飛車側はほぼ受けてる一方です

△8四歩~△8五歩は「石田流本組みに組ませない」という主張なのでしょうが、
7手目に菅井流の▲7六飛という手があってみては、それすら危ういですよね 
△8五歩まで進んでしまっては、後は石田流側が自分の研究したことをやりたい放題です
指していて楽しいのは主に石田流側の人で、マゾッ気がないと居飛車側はやってらんないかと・・・
△8四歩~△8五歩は、むしろプロの人にやってもらって、私は観戦にまわりたいです
(私は4手目△6二銀にしようと再認識しました チキンですね)

レビューを要約すると、
上野本を読んで実際に指したくなった人の受け皿になる本、ただし詳細ゆえ難易度UP、
角交換系の振り飛車で24の有段者を目指すなら、この本くらいは読んでおいたほうがいい、と言えます

最後に私が書きたいことを一つだけ
「何でこの先崎本より先に、上野本を出版してくれなかったんだよ、手順前後じゃねーか
 上野本という土台を先に読みたいのに、土台を後から出版してどうするんだ」
と読む側の立場だとつい考えてしまいますよね でも違うのです 
この先崎本があったおかげで、きっと上野本が出たのです
上野先生は、この先崎本を参考資料にしたことは多分間違いないのです

難しい内容が万人に理解されるためには、まず専門家だけがわかる専門書が出て、
次にその内容を一般に理解させるための普及本が出て、
最後に初心者にでもなるべくわからせるような本が出る、この過程をたどるものと思ってます  
そういう意味で、本を書く側、作る側の立場から考えれば、逆に「上野本の土台はこの先崎本だった」 
こう言えるのではないでしょうか?