羽生善治 三冠vs森内俊之 名人 NHK杯 準々決勝
解説 島朗 九段

今期のNHK杯もベスト8、煮詰まってきた 本局はゴールデンカード、永世名人どうしの対決
こんな大一番だと、見ているこっちが緊張します 小心者のギズモです どーもです

羽生は1985年四段、竜王戦1組 A級 19世永世名人 現在、王位、王座、棋聖の三冠を保持
ハッシーと山崎に勝ち準々決勝進出 本戦は27回目の出場 NHK杯の優勝は10回(名誉NHK杯)

森内は1987年四段、竜王戦1組、現役名人、18世永世名人 
阿久津と藤井に勝ち準々決勝進出 本戦は24回目の出場 NHK杯の優勝は2回
(2人の対戦成績は、羽生の64勝、森内の52勝)

解説の島「豪華な組み合わせですね 羽生はNHK杯でも圧倒的に勝ち続けている
 一戦一戦はキワドイ将棋ばかりだが、結果的に連覇を積み重ねている 反射神経がすばらしい 
 1年を通じてちょっとおかしな時期があっても、すぐ修正してくる 欠点のない棋士
  
 森内は子供の頃からの羽生のライバルで、大舞台ですばらしい勝負を展開している 
 羽生のNHK杯での連勝(22連勝中)を止める気概を持って挑まれていると思う
 (すべての手を読み)手を拾っていく将棋なので、長時間のほうが強さが出る
 9時間の持ち時間なら、7時間、8時間を越えたあとに強みが出る
 森内としては終盤に時間を残し、羽生の逆転術を食い止めて、手厚さを全面に出したいだろう」

事前のインタビュー
羽生「森内は非常に重厚で、手厚い棋風 
  最後まで集中力を保って、非常に激戦の将棋が指せるようにがんばりたいと思っています」

森内「羽生は本当に強いですね このNHK杯では長い間負けていないようですし、
 なんとか自分で止めたいと思います 終盤までついていって、ワンチャンスに賭けるような戦いが
 できればと思っています」

先手羽生で、いよいよ対局開始  
注目の戦型は、森内の一手損角換わりだった こりゃ、森内、本気出してきたな、と思った
森内としては羽生に攻めさせて、自分は徹底的に受けに回って、得意の受けつぶしを狙ってきたな
私は4手目ですでにそれがわかった そこそこのマニアだろう(^^;

羽生が棒銀に出て攻勢を取ると、森内は腰掛け銀から金銀4枚で固めてきた
島「一番オーソドックスな形 森内がこの形をやってきたからには、
 かなり準備があり、やれる見込みがあって選んでいるでしょう」

矢内「お2人とは有名な島研で」
島「あ いえいえ 私の名前がついているだけでね 
 彼らに教えてもらうことばかりで、自分が敬謙な気持ちになっていく気がしましたね
 この世代は50になっても55になっても、強くあり続けるだろう 衰える要素がない」

さて、森内は3筋に歩を垂らし、さらに自陣角を放ち、先手の飛車のコビンを狙うという、
受け主体の組み立てだ やはりこういう徹底防戦に出たか 
羽生はとりあえず玉をカチカチにしたけど、攻めはどうするのか? 
と思ってる間もなく、1筋から仕掛けた! 島「それほど迷いがなかったですね」
羽生はいつもながら、本当に元気がいい 本局でも積極的だ

端で銀と香の交換になったはいいが、後手に、と金を作られそう まだ後手は金銀4枚でめちゃ固い
島「森内は金銀の力を信頼する将棋」 矢内「それが厚みの棋風ということですね」 
先日、藤井はこの森内の厚みに討ち取られたが、羽生はどうか

森内、時間を使って慎重に進め、と金を作った 受け止めたか?
しかし、ここで羽生に好手、端に王手の角打ち一発! これで、と金をはらうのが好感触! 
この端角は私にも見えててうれしかった 
島「森内としては、読みの裏をいかれたか イヤな感じ、不本意な展開ですね
 しかし森内は自滅しない将棋、自滅したところを見たことがない」
後手は、まだ駒損したわけではないもんね ただし、歩をたくさん取られてしまったけど・・・

羽生の第2次攻撃、こんどは羽生が後手の飛車のコビンを狙う角打ち、そして、と金を同じように作った
森内はここは辛抱とばかりに、桂損を甘受で、と金をはらうという勝負手! おお、さすがだ
島「これは地味な手ですけど、森内の崩れないところが出た」
当然、羽生は同角と桂を取る、取るだろう うん? ノータイムで取るところだが、考慮時間を使った?
島「桂を取った後のことを考えてるんですね」

だが、羽生は凡人の発想とは全く違った! 桂を取る前に、4筋に下段の香打ち あわ、ここでか!!
事前に島が「羽生は下段の香打ちが好き」と言っていたが、ここでキターー
島「これが羽生の強さじゃないでしょうか こういうところの違いがあるんですねぇ」
完全に意表を突かれた森内、最後の考慮時間を使いきり、残りが▲5回vs△0回に、これは厳しい!
島「流れのある実戦の中で、一手一手を止められる羽生の強さが出た」
ここで手が止められるのか と金がはらわれた、この瞬間で・・・!

だが、以前、金銀4枚で堅陣の後手を、羽生はいったいどう攻めるのか 今打った香をどう活かすのか?  
先手の持ち駒は、桂と歩がたくさんか 桂と歩だけじゃなあ?
私は見てて、何も浮かばない 島ですら全然わからない様子

羽生は4筋と3筋に歩を次々に叩いていったが、真意がまるでわからない なんだ、これは?
島「羽生には、このあとの設計図があるのだろう」
え? また4筋を叩くのか 持ち駒の歩を全部使うのか
ええ? こ、これで手に・・・ なってる、手になってる!!
手になったーーー す、すごい、うますぎるーーー!!
島「ここまでの流れを読むのは大変 この9手1組の手順は難易度が高いですよ これは効きました」
私なんぞ、持ち歩の数(5枚)など全く数えていなかった 難易度が高いなんてもんじゃない、
この順をこの短い持ち時間の最中で指せる人間は、きっとこの世に羽生ただ一人・・・! 

ただ、島いわく「森内は苦しいながらも、最強の手で勝負している」
相手にこううまく指されたんじゃ、闘志をなくしそうなものだが、まだ決定的な決め手は与えていないか
さすが森内だ 粘って粘って、羽生の強さを引き出してくれ!

島「羽生は森内のいいところを出させていない」
画面に映った森内、呆然として目の焦点が合っていないか でも、元々か?

羽生は飛車を入手、矢内「どんどん大きな駒に姿を変えていく」
島「羽生の確実な手の前に、差が縮まらない」
さらに、いったん飛車を2段目に打ってから1段目に成る、という、軽手も出た これまた、ニクイ演出! 
島「自然な手ですねぇ 自然が思い浮かばないんですが」

ラストスパートをかけた羽生、もう誰にも止められない 
後手玉を上下から挟撃、小技の連続から竜をぶった切る大技につなげ、
最後は勇躍、先手陣に残っていた飛車がドッカーーンと成りこみ、ついに森内「負けました」 
手数107手、羽生、堂々の完勝!! 
つうえええええーーー 羽生、つえええええーーー
なんじゃこの強さは!! 人がここまで強くなれるのか? 羽生は人か? 人の姿をした神なのか? 

島「羽生の攻めがよくつながった 細かいところの攻めをうまく広げていった 森内としてはちょっと
 不本意な将棋だったが、4月から調子を上げてくるのでね 今日は羽生にうまく指された」

私見では、森内の調子は悪くなかったと思った この日の羽生に勝つのは人間には無理!
取れる桂を放っておいて、あのタイミングでの下段の香打ち そして9手1組の歩を使った連続技
持ち歩5枚をピッタリ使った、あの歩の使い方を短時間で発見できるなど、もはや神業!! 

羽生の会心の名局で、森内は本局ではナイスな斬られ役だった 
森内が金銀4枚で固めて、受けに徹してくれたがために、羽生の攻めの強さを十全に引き出していた 
羽生、NHK杯5連覇に向け、視界絶好調、オールクリアー! 羽生善治、本局もやはりすごかった!! 
(感想戦で、歩の連続技のシーンを再現してくれるともっと良かったです)