鈴木大介 八段vs渡辺明 竜王 NHK杯 準決勝
解説 森下卓 九段

パソコンを使っていて突然フリーズすると、自分までフリーズしてしまうギズモです どーもです
いよいよ準決勝まで来た 羽生三冠、郷田棋王、渡辺竜王というタイトルホルダー、
そして鈴木大介八段という顔ぶれだ NHK杯で優勝経験がある大介が、どこまでやれるか
今回は渡辺に大介が挑むという一戦

大介は1994年四段、竜王戦2組、順位戦B1 千葉、タニー、高橋、屋敷に勝ち準決勝進出 
16回目の本戦
渡辺は2000年四段、竜王9連覇中、A級 深浦、中村太地、佐藤天彦に勝ち準決勝進出 
11回目の本戦

解説の森下「大介は師匠の大内ゆずりの豪快な振り飛車党 腕力の強い将棋 
 渡辺は無敵の竜王9連覇 最近ますます力をつけてきた、不動の王者 合理的でいくさ上手」

事前のインタビュー
大介「全力を尽くすだけですが、できたら渡辺の得意の穴熊に組ませて勝てればな、と思います」

渡辺「大介とは5年以上前と思うが、NHK杯で同じ準決勝で負けているので、その時の借りを返したい」

2人の対戦成績は4-4のイーブンとのこと おお、大介ががんばってるなあ 今日はどうなるか

先手大介で、▲ノーマル四間飛車vs△居飛車穴熊になった
2人のプライドがぶつかり合った戦型だ 序盤、とにかく手が進むのが早い
これはネット将棋か、と思うくらいだ 
森下「宣言どおりでしたね 最近ではノーマル四間はめずらしい」

このまま仕掛けまでノータイムか、と思われたが、互いに自重し、超持久戦になった
渡辺はとにかく玉を固めてる 後手、金銀4枚がくっつき、もうめっちゃ固い 
こんなにガッチリ組ませてしまって、大介は大丈夫なのか どれだけ成算があるのか?
大介のほうも銀冠から、左銀もくっつけてきて、かなり固い

森下「引退された櫛田が、ノーマル四間で居飛穴と戦っていたが、よくなげいていた
 『将棋は悪くならないが、最後に負けてしまう』」

渡辺のほうは、千日手OKのようで、もうノータイムで金銀を繰り替え、手損をして手待ちしている
局面は飽和状態、先に仕掛けたほうが負けそうだ
森下「大介はどうやって打開するんですかね」
矢内「息詰まるという感じ」

ここで大介、面白い構想を見せた 銀冠の銀の上に、もう一枚、銀を持ってこようという構想
へえー、そんな駒組みがあるのか この発想には森下も感心、
「銀多伝のような作戦、組めれば有力」と言っていたそのときだった!
 銀多伝が組みあがるスキをついて、なんと渡辺が仕掛けた! 9筋の端攻めだ 
わわわ、渡辺は完全な手待ちを繰り返していたのではなかったのか、仕掛ける用意もあったのか 
あわわ もしこの仕掛けから全面戦争になれば、もう囲いの固さが超大差だぞ 大介、何か策が?

私見では、これはもう収まらんぞ これは大差で後手が勝つ予感 
だって、後手の穴熊が崩れるのが想像できない・・・ 
ましてや後手は、細い攻めをつなげさせたら天下一品の渡辺だ
森下「谷川の言葉で『2手で1組の手』というのがあるが、大介がそれをやろうとした瞬間に、
 スキを突いて渡辺が仕掛けた」

渡辺は4歩を突き捨て、もう局面を収める気は全くない 
大介が押さえ込むか、渡辺がさばくか? 大介に手が広いが、その分、先手の手が難しい局面が続く 
盤面左側、こんなに戦いが広がってしまっては、もう先手は収集困難だ
渡辺はとにかく飛車角を動かしてさばければいい、という展開

案の定、大介、苦しくなってきた 早指しのはずの大介、考慮時間を先に使わされている
先手が不利になったのが素人目にも瞭然だ
矢内「渡辺の飛車が、うまくクルッと回ってきた」
と金を作られ、飛車に成りこまれ、もう大介陣は崩壊だ 渡辺の穴熊、全く何も手付かずだ

おいー、大介、このまま何もできずに負けるのか ボコボコやーん 
9筋の端攻めから始まって、飛車、角、香、歩で見事に手をつくられたな
森下「渡辺のほうには、全く無駄な駒がない」
大介は敵陣に打った歩の裏側を取られ、自陣に歩が打てないという、寂しい展開

森下「良くなってくると、(形勢がいいほうに)次々にいい手がでてきますから」
このセリフ、相当大差なときに出るフレーズだ もう大介、全然ダメぽ・・・

局面が悲しいので、森下が雑談でフォローしている
森下「内藤先生だったか、『強い人は勝ってから喜んで、負けてから悲しむ』
 大半の人は、勝つ前に喜んじゃって、負けそうだと思って嘆く」
これは至言だったね 私なんかその典型だわ

大介、このまま終わっては寂しいというところで、やっと力を発揮した手が出た
竜を自陣に引きつけ、まだがんばる、という意思表示だ おおっ ちょっと難しくなったか
森下「これは鈴木流ですね 感心しました」
さらに、遠見の角を打ち自陣に利かせたのも好手! まだ粘れるのか 

これ、後手をもって、攻めきる自信が、いきなりなくなったぞ 
自陣竜と遠見の角の粘りで、これはまだ大変か・・・? 後手の攻めの継続手は?
渡辺の次の一手に大注目! 
渡辺竜王の次の一手、それは・・・ ならばこっちも、と、遠見の角打ち!
大介の打った角の1マス上から打つ、という、見えにくい手! おおっ さすがだ これぞ竜王の一手
これは強烈 決まったか、決まったな もうダメだな

大介も戦意喪失、この角を打たれて投了した 122手、渡辺のド完勝だった
大介、投げた直後、ガックリと頭を垂れた あああー、何もさせてもらえずorz 

これでは、正直、プロ間でノーマル四間が激減したのも無理はない、
と思わされるのに充分な一局となってしまった 
穴熊の「固い、攻めてる、切れない」という典型的な勝ちパターンだった 
森下「こうなってみると、穴熊に組ませると損かなと」

これが四間飛車側が大介でなく、他のプロなら、まだ救いがあるのだ
しかし、スペシャリスト中のスペシャリスト、鈴木大介をもってして、この大差負け 
これでは言い訳のしようが1ミリもない ガクッ

感想戦では、四間側の方針が難しいとのことが挙げられていた 
受けきりを目指すのか、攻め合いを目指すのか、駒得に行った手がいいものなのかどうか
対して、穴熊側はとにかく飛車側で戦線を拡大してさばきを狙えばいいことがハッキリしている 
これが穴熊が勝ちやすい要因だね

穴熊側は全く何にも手付かず、四間側だけ終盤の投了図 
こうなるのが、私には渡辺が端攻めした瞬間から見えていただけに、悪い予感が当たってしまったorz
大介が不用意な囲い方をしたスキを突いた、渡辺の圧勝譜だった
先手の中途半端な囲い、投了図ではさびしかった あああー
渡辺竜王が磐石ぶりを見せつけ、決勝進出を決めた一局となった

来週は羽生と郷田だ 羽生が勝ち、2年連続で、渡辺vs羽生の決勝になるのか?