渡辺明 二冠vs羽生善治三冠 NHK杯 決勝戦
解説 藤井猛 九段

花粉症にかかったのか、と思ったら、いつもの慢性の鼻づまりだったギズモです
喜んでいいのかわかりません どーもです

オープニングに、「決勝戦」」の文字がデーンと出た いよいよ決勝! 緊張するなあ
さあ矢内が、と思ったら、どこぞのアナウンサーが出てきた(^^; 
まずはアナによるインタビューから始まる、これが決勝の光景だね 
渡辺竜王・王将と、羽生王位・王座・棋聖の頂上決戦、いよいよこのときが来た

アナ「決勝に向けてどんな気持ちで臨んでますか?」
羽生「そうですね 何回出ても、独特の緊張感がありますね」
渡辺「今まで2回チャンスがあったんですけど1度も優勝がないので、初優勝めざしてがんばりたい」

藤井「決勝は重みがありますね 棋士はたくさん出ているのに、作ったような組み合わせ、
 ふさわしい組み合わせになりましたね」
矢内「1年を通して一番活躍した2人の決勝ということで、今日も熱戦になるのではと楽しみにしています」
今日は矢内は特にオシャレしている、いいねえ 

アナ「今期の対局で、印象に残っているのは?」
羽生「山崎との将棋は序盤から激しい将棋、乱戦が続いたということで、インパクトがありました」
渡辺「深浦との初戦、初戦から強敵をむかえてしまって、イヤだなと思ったんですけど、
 そこをうまく切り抜けられたので、いい波に乗れたかなという感じですね」

藤井「早指し棋戦ですので、もっと若手が活躍すると思ったんですけど、2人とも若手をうまく
 押さえ込むので、若手に強いというところが印象的です
 (今期のベスト局は)稲葉vs丸山の将棋は、早指しならではの大熱戦だった」
矢内「トーナメント戦は、実力と勝負強さを感じる 若手の活躍もあったんですけど、
 上位陣の手厚さを感じました」

目の前で振り駒が行われ、先手は渡辺となった
渡辺「大きな舞台なので、力を出し切って、いい内容の将棋が残せるようにがんばりたい」
羽生「張り切って、勢いのある将棋が指せるようにがんばりたい」

いよいよ対局開始
先手の渡辺は当然のごとく居飛車、対して羽生は、角道を止めた!? おいおい、何だこれは、
どういう意味だ 振るのかと思いきや、居飛車! 角道を止めて、矢倉模様にしようとしているのか
無理やり矢倉というやつだ 羽生にしては、かなりめずらしい 
今期NHK杯で、森内が阿久津に対して指していた(森内は作戦負けしたが、結果は勝ち)
受け身になりやすい戦法、羽生の棋風と合うか?

藤井「これは、意表を突かれましたね 決勝で用意するにしては、思い切った羽生の作戦
 終盤に自信がある2人なので、序盤はそれほどこだわりがない
 この羽生の作戦、後手は勝率がそんなに良くない 
 大事な決勝に持ってくるというのは、どういった考えがあってのことか」

矢倉風に駒組みが進む
藤井「角の動きでは、羽生のほうが手数がかかっている」
そうか、だからこの作戦を選ぶ人が少ないのだね
藤井「力戦ですね 早くも力勝負 関西の山崎なら、向かい飛車にします(笑)」
それ、やりそうだね 山崎、陣形バラバラが好みだもんね

2人の対戦成績が出た 渡辺24勝、羽生21勝とのこと
藤井「渡辺vs羽生は、ファンの間で一番見たいカードだそうです 世代の違う天才どうしの対戦だから、
 ということでね 渡辺が大きく勝ち越せば世代交代だが、羽生も負けていない」
そう、最強決定戦の意味があるもんね 私も今日をすんごく楽しみにしていたよ

さらに、藤井「渡辺には指し手に好き嫌いがある 私が『こうやったらどうですか』と言ったら、
 『その手は棋風じゃないんで』と何回言われたか、わからない(笑)」

駒組みがまだ続いているので、雑談が続く
藤井「羽生のNHK杯の(勝てば)25連勝というのは、人類が滅ぶまでないと思う、無理ですよね(笑)
 羽生はA級順位戦では(今期三浦に負けるまで)21連勝というのがある
 でも渡辺なら、羽生を止められるんじゃないか、という空気がある
 渡辺は今期のNHK杯では内容的に危なげがない 淡々と指して、普通に勝っている印象」
羽生は、前局の郷田戦、めちゃ危なかったからな 他は会心譜だけどね
渡辺は、中村太地戦の終盤で緩んだだけで、他は圧勝というイメージだ

さて、羽生は銀立ち矢倉、渡辺はごく自然な普通の矢倉という陣形
羽生は自分の右銀を自玉方面ではなく、飛車方面で攻めに参加させるという方針だ
玉に近づけておいたほうが指し方がわかりやすいが、攻めを見せる積極策に出たか
右桂も跳ねて、藤井「攻める気、満々ですね(笑)」

駒組みも飽和状態、と見て、渡辺が動いた 2筋に歩の垂らしだ
藤井「ま、ここで、羽生が指さない手は、歩をあやまる手ですね」
って、羽生は2筋をあやまった! ええーマジで? 藤井「ないって言っちゃったんですけど」
大丈夫か羽生! こういう手を指して、幸せになった人をまず見たことがない
2筋の勢力はもう渡辺のものだ 他に代償があるとも思えないが?
藤井「羽生は独特の感覚で、今日は来ましたね 普段、わりと自然に指す棋風なんですけど、
 力んだ感じの駒組みで、めずらしいですよ」 

藤井「渡辺はイヤな局面ではないが、具体的にどうするか」
渡辺は端歩を突いて、様子を見ている 藤井「タイミング的にいい手があった」
羽生は指す手が難しい わずかでもプラスになり、なおかつ手渡しになる手がない?
レベルが高いほど、こういうところで勝敗が決定したりするからなあ

羽生は香車を上がって、端攻めを見せて手渡しか それが無難か?
って、その香が渡辺に狙われた! 角のラインで香に照準を合わされてしまった、それがあったか!
あららら 羽生、地味にピンチなのでは・・・

間合いを図る手が続いたが、渡辺の手はごくごく自然 さて、どこから戦端が開かれるのか?
羽生の狙いとしては、6筋の歩をボチボチ突いて、桂で両取りを狙うくらいだろう
って、6筋の歩を渡辺が突いたーーー!! それは桂での両取りを自分から食らう手!
なんだそれは、そ、そんな発想が!? うわあー
藤井「すごい手が出ましたよ ここ突きますか ヒャー これはすごい手、自ら突くのは大胆ですね
 思い切った手が出ましたね 思い切ってますね!」

戦いを起こしてしまえば、陣形の安定度に差があるという意味だが、桂での両取りを自分のほうから
食らいにいく手、藤井「たとえ見えても、指しにくい手」
この手が指せるのは、おそらく世界に渡辺ただ1人・・・ つ、強い 渡辺は強い!
藤井「渡辺は矢倉の達人 こういう手があるんですね 勉強になります」

渡辺の妙手一発で、戦いが起こってしまい、羽生、もうピンチに見える
羽生はなんとまた自陣の2段目に歩を打って辛抱するという展開になってしまった
藤井もびっくりだ 藤井「飛車の横利きも消える 本来、悪い手です」
局面、渡辺ペースなのが明らかだ

羽生~ ここからの逆転勝利があるのか 頼む、まだまだ見せてくれ
しかし、渡辺の手は緩まない 細い攻めをつなげさせたら天下一品の技量を見せつけ、
羽生を確実に追いつめている 羽生の陣形、とにかく駒の働きが悪すぎる
王様は囲いの外 飛車は全くの遊び駒 苦しい材料ばかり、普通ならもうダメだ 
だが・・・! 羽生ならなんとか・・・!

藤井「渡辺ペースと思うが、羽生は計算して、この一局は、あえてそういう展開にしている
 (羽生の考えは)奥深くて私にはわからない 羽生はよくわからない将棋にして勝負している
 駒落ちの上手みたいな指し方 形勢はよくわからない」
形勢はまだハッキリしていない、と藤井は言うが、私見では渡辺にだけ勝ち筋があるように見える
何か一つ技がかかったら、羽生陣は崩壊するぞ  耐えろ羽生~ ミスれ、渡辺~

羽生もまだ終わらんよ、とばかりに見せた 玉のそばに、と金を作られた瞬間に手抜きで攻めた
渡辺がこれでミスってくれるか?
藤井「渡辺は、大砲(飛車)を5筋に回してくるのでは」 
その言葉どおり、渡辺の飛車がドーンと中央に転回してキター うわあー もう決めにきてるよ
藤井の解説がモロに当たりだすようではヤバい
羽生の考慮時間が0回になり、いよいよ追いつめられた もう本格的に大ピンチ!!

羽生~ 見せてくれ、前局に続き、奇跡ってやつを!
が、羽生の頼みの玉頭攻めも、渡辺に冷静に対処されたみたい
的確な応手で、渡辺はミスる気配がない 郷田戦の大逆転の再現は、厳しそう ぐうううう 

羽生、角交換を図り、決死の勝負だ 
藤井「イヤですね 角交換するとね 羽生の陣形をみると、もっとよく出来そうというのが
 あったはずなんですけど」
渡辺の考慮時間も0回に、これで両者30秒将棋 まだ希望はあるのか?

藤井が「けっこう羽生陣もしっかりしているんですよね」といっていたそのときだった
私の目に、渡辺の手で、盤中央に打つ、味の良さそうな角打ちが見えた 藤井も発見! 
藤井「あ ピッタリですね 攻防にすばらしい角です それがあまりにも厳しいです」
渡辺の指し手、それは無情にもその角打ちだった 4方をにらんだ、盤上この一手の角打ち!
ついに・・・ 決め手が出た・・・ 素人目にも、もう逆転はないな・・・orz

羽生が純粋な桂損になり、銀損になり、もう渡辺の勝ちは動かなくなった
藤井「渡辺勝勢です 攻めがヒットしましたね 
 羽生の作戦は、何かあったら、いっぺんにダメになる戦型なので、やむなし
 羽生がこういう戦型、指し方を選んだのは不思議な感じがしましたね 
 結果的に出来の悪い将棋になってしまった」
あ~、言われてしまった 羽生が自分から誘ったとはいえ、受けにまわる一方になり、
持ち前の攻めの力が出なかった・・・

109手で、大差がついたところで羽生が投了した 渡辺、危なげない指し回しで、完勝 
終盤がなく、渡辺の中押し勝ち あああー、これは残念・・・orz

羽生の趣向の銀立ち矢倉は全く機能せず、玉は裸状態 
そして飛車は狙われただけの駒になっていて終始働かず、
駒損が重なり羽生陣だけが崩壊、ということで終局になってしまった
渡辺の6筋からの意表の手づくり、あれがあまりにも絶妙で、以降、羽生に勝ち目はなかったようだ

藤井「渡辺が自然な攻めでペースをつかみ、快勝した 今日も的確な手が多かった 
 羽生があえて力戦形に持ち込んだのが興味深かった」

終局後のインタビュー
渡辺「チャンスをものにしたいと思っていたのでうれしい
 あまり指したことのない戦型だったが、矢倉模様ですからね 中盤の手を作るところが難しかった
 駒得したあたりで、いけそうな気はした」
羽生「序盤の長い将棋で、どこから駒がぶつかるかわからなかったが、うまく攻めの糸口を作られた
 (24連勝は)よくここまできた、という感じですね」

ぐああ これで決勝が終わりか 期待があまりにも大きかっただけに、喪失感がすごいな
終局後、かなりの虚脱感に襲われてしまった 終盤がなかったからね
別に、羽生が負けても良かったのだ 相手は渡辺だし、どっちかが負けるのだからね
でも! 終盤までどっちが勝つかという熱戦を見たかった 
大熱戦で、これが超トップどうしの、超天才どうしの、っていう内容を・・・

準決勝の郷田戦に続き、羽生のひねった作戦、これが完全に裏目に出てしまった 
渡辺相手には通用しなかった やはり、トッププロでは初手から一手たりとも全く妥協しない手が必要、
ということが結論、だった そういう将棋だった

羽生は不出来だったが、渡辺にはこれといった疑問手もなかったようで、強かった
羽生から突くと思われた6筋を、自分から突いていった発想、あれは見ていてシビれた 
桂で取られて即、両取りがかかるのに、だもんなあ あれは思いつかないわ 
羽生は局後に「全然考えてなかった そうか」とのこと 渡辺将棋の眼目の一手、天才の一手だった
渡辺はその後の指し回しも、いつもどおり見事、好調を感じさせるものだった

第62回NHK杯は、渡辺の優勝で幕を閉じた みなさま、お疲れ様でした
来週はA級一番長い日の特集が放送で、来期NHK杯は4月7日からとのこと

さて、来期の前に、電王戦が始まる それがこのブログにどう影響するか、今はまだわからない
プロにはコンピュータをバッタバッタとなで斬りにしてほしい(^^; プロの活躍に期待大だ