森雞二 九段vs屋敷伸之 九段 NHK杯 2回戦
解説 高橋道雄 九段

連日の猛暑、みなさま、くたばってませんでしょうか 暑中お見舞い申しあげます 私はくたばってます
さあ、楽しいNHK杯の時間がやってきた 今日から2回戦、森と屋敷か 
1回戦で快勝した森、あれは胸がスカッとした 67歳の森が今回も元気のいいところを見せてくれるか

森は1968年四段、竜王戦4組、C2 1回戦で畠山鎮に勝ち 32回目の本戦出場
屋敷は1988年四段、竜王戦2組、A級 1回戦シード 17回目の本戦出場

解説の高橋「森は力強い振り飛車を得意としている 今期NHK杯出場では私の先輩は森だけ
 屋敷はA級になってから安定感が増している 居飛車の矢倉を得意としている」

事前のインタビュー
森「屋敷はどんな手をやってくるかわからないので、注意しようと思っています
 今回は居飛車vs振り飛車になる感じがします 勝ってもっと先に進みたいと思います」

屋敷「森は乱戦に強いタイプ 今回は力戦模様になると思います
 しっかりといい将棋、いい終盤を指したい」

先手森で、対局開始 先手が森だったので、「やった」と思った人は事情通だ
屋敷はA級順位戦で、先手番にめっぽう強く、後手番では負けているのだ

注目の戦型は、なんと森の▲ノーマル三間飛車+美濃vs屋敷の△居飛車穴熊!
も、森~ 角道止めたら、力戦にならんだろ、大丈夫なのか?
高橋「現代だと、ノーマル三間飛車には、居飛穴が定番ですね」
居飛穴に組ませてしまっていいのか 森には何か特別な作戦でもあるのか

高橋「歩越し銀のまま右桂を跳ねたのが、森らしいです」
さて、屋敷は何の不自然なところもなく、しっかり穴熊に組んだ
そしたら、森がいきなり銀をぶつけていった~! ええ~ もうぶっつけか もう本格的に戦いか
高橋「思いっきりいきましたね いや~ 勢いよく(笑) 
 どうなるかわからないけど、よくいってくれましたね」
なんだか、すんごい乱暴というか横着というか(^^;
高橋「プロ的には、味もそっけもない仕掛け(笑)」

銀交換になった結果、必然的に森の右桂が4五に跳ねることになったが、これがどう出るか
穴熊相手には5三に桂が成っても、全然大したことがないことが多いからなあ
高橋「4五に桂が跳ねてくれると、居飛穴側としては安心する
 あんまり見たことがない強気な振り飛車の攻めなので、森は大変と思う 腕の見せ所」

森、もう5回目の考慮時間に入っちゃったぞ と思って見てたら、飛車も切っちゃうのか!
どしぇ~ って、ええええ 今度は、飛車捕獲のために、完全にそっぽの銀打ち!!
こんなムチャな指し方、ありなの? プロの指し口とは思えないが(^^;
高橋「これ思い切った打ち方ですね これはなかなかできないや 勝負手ですね」
もう「勝負手」って(^^; 駆け引きとか、細かい応酬とかとは全く無縁な一局だなー
高橋「どう見ても、森のは率のいい指し方じゃないんですけど」

森、考慮時間を早くも使い切り、▲0回vs△6回になっちゃった わぁ、もう大丈夫じゃなさそう・・・
屋敷は冷静に対応していっているようだ 一時は駒割りが森の角得になったが、
駒の効率、そしてなんと言っても穴熊が堅い
高橋「屋敷としては、ここまで流れに乗って指していただけですね」

森~ がんばれ~ 屋敷玉が遠くて森が勝つ順は見えないが、
まだ簡単に森が負ける筋も私には浮かばない
高橋「(屋敷が優勢とはいえ)時間がないとあせるんですよね・・・っと言おうとすると、じっと香車を
 補充するんですよねえ こういうところが屋敷の強さ でも森も嫌味、嫌味と攻めている・・・」

そしたらば、屋敷は二度の底香打ち、そして鉄壁を築く△3三銀打ち!!
この手を予想し当てた高橋「△3三銀打ちの埋め込み、やると思いました(笑)」 
これで金銀4枚に底香付き、これぞ穴熊流!
あまりに手堅い屋敷の指し回しに、矢内も「うわー そうなんですね そうなんだ(笑)」

終盤だというのに玉を固めあった両者だったが、森のほうに手段が尽きた
もう固める手がないのだ
高橋「いやー ここにいたって森に指す手がなくなりました これは大変困りました」
でも、まだ終局までは長いんではないのか、と私は思っていると、ここから屋敷が素早かった
竜を3段目に引いておき、美濃の金が一枚浮いた瞬間を狙い、森の玉頭に香車をドカーーーン!!
この手が全く見えてなかった私は、一瞬「???」となってしまった
なんと、この香が取れない!! そして続く角打ちで、森の美濃囲いは轟沈(ごうちん)した
あっという間の出来事だった 森、なす術なく、あっけなく、即、投了! 96手で屋敷の勝ち

高橋「今度から(ルールを)穴熊はしないようにしないと(^^;
 これ、悲しいことになっちゃって」
なんじゃ、この投了図の圧倒的な大差はーーー 
屋敷の居飛穴、仕掛けられたときよりも断然堅くなってるもん 金銀4枚に底香付き、全く手付かず・・・
屋敷は考慮時間を3回余しての勝ちだった 圧勝と言える、磐石の勝ち方だった
高橋も思わず本音を漏らさずにはいられなかったね(笑)

高橋「森の気迫を感じた仕掛けだった しかしちょっと無理だったか
 その後の屋敷の落ち着いた指し回しが目立ちました 屋敷の堂々たる将棋でした」

感想戦が20分あったが、やはり持ち時間が短い将棋では、穴熊が勝ちやすい順が目立った
本譜の森の仕掛け、飛車切り、そっぽの銀打ち、いくらなんでも乱暴だったよ あー残念
1回戦のvs畠山鎮のときに見せた森のいいところは、今回は出なかった 完敗と言える内容だった
67歳の森の元気のいいところがまた見たかったのだが・・・

屋敷の居飛穴の勝ち方の見本といった内容だった 一局の流れとして、危なげなかった
森の敗因、それはやはり居飛穴に組ませてしまった作戦自体に問題があったと思う
角道を止める振り飛車は、コーヤンや鈴木大介にまかせておけばいいのだ
森には力戦振り飛車をやって欲しかった 
ノーマル振り飛車に対する居飛車穴熊・・・ 
それは高橋をもってして「(ルールとして)穴熊はしないようにしないと」と言わせてしまう、
そんな強力無比な作戦なのだ それをまたしても見せ付けられた一局だった