中村太地 六段vs高橋道雄 九段 NHK杯 2回戦
解説 深浦康市 九段

さあ、楽しみなNHK杯の時間だ 今日は太地とタカミチか 25歳と53歳、若手vsベテランの対決だ
若手がベテランを鮮やかに吹っ飛ばすところが見れそうだが、どうかな

太地は2006年四段、竜王戦4組、C1 1回戦で野月に勝ち 3回目の本戦出場
タカミチは1980年四段、竜王戦2組、B1 1回戦シード 33回目の本戦出場

解説の深浦「太地は攻め将棋、奨励会の頃は振り飛車をよく指していたようで、フットワークの軽い攻め
 タカミチも攻め将棋、矢倉のような腰の重い攻めを好む
 ハードパンチの打ち合いになると思うが、冷静な受けのタイミングも見どころ」

事前のインタビュー
太地「タカミチは手厚い印象、最近は将棋界以外でもマルチに活躍されている
 横歩取りの空中戦になると思う 面白い将棋が指せるように精一杯がんばりたい」

タカミチ「太地は最近の若手の中でも好成績を上げている 今日は横歩取りになるかな
 初対局なので様子を見つつ指したい 今期NHK杯では大熱戦のいい将棋が目立つので、
 それに負けないくらい、いい将棋を指したい」

先手太地で、予想通り横歩取りになった ▲中住まいvs△8四飛+△4一玉型中原囲いだ
タカミチがさっそく△5四飛と歩越しに回り、積極的だ
深浦「タカミチの作戦は、ひと頃、中原流ということで見られたが、最近は見ない形 
 何かタカミチの研究があるはず」

タカミチ、中央を突破すべく、早くも長考に沈んでいる 
その間、雑談で、深浦「太地は好青年で、将来の連盟の会長候補じゃないかというくらい人望がある」
矢内「もう今からですか(笑)」
故・米長会長の愛弟子だもんね でも今から会長を考えるのはまだ早すぎるね(^^;

深浦「タカミチは他人と集まらず、一人で研究をするタイプ」
う~ん、しかしまだ序盤、すごくシンプルな局面なのに、早くも時間を使いすぎのような・・・
もう考慮時間を5回も消費してしまったぞ タカミチ、研究不足か 
いったん飛車を8筋に戻して、タカミチの決断は△5七桂成捨ての特攻! うわー もういけいけか
攻めが続けば、ということだが、果たして?
深浦「これもあるかなーと思ったんですけど」

太地、桂を▲同玉で取るか▲同銀で取るか迷うところだったが、銀で取ったか
でも△5五角が両取りであるから、これはどうなの? ▲同玉のほうが良かったような?
深浦「どっちで取るか、迷うところでしたけど」

桂得した太地が良さそうだが、自陣の駒がバラけている タカミチの中原囲いは鉄壁
太地は2枚角で受けきる方針か これで受けきれているのか? 
タカミチにじっと手を渡されてみると、やはり後手の中原囲いは堅い
手が全然ついてない これはどっちがいいか、わかんないのでは? 
時間をどんどん使っていってしまう太地、残りが▲2回vs△2回、残り時間がついに追いついた
これはタカミチが追い上げているのでは・・・

深浦「先手陣も乱れがあるんで、勝ちきるまでには大変なんで」
まだ深浦は形勢は太地がいいようなことを言っているが、これはもう大変なんでは?
もう両者ともに考慮時間を使いきり、30秒将棋になった 
まだ先が長いのに、これはここから両者しんどいな

飛車を打ち込まれた太地、秒を読まれて、何をする? おお、じっと玉の早逃げか! 
深浦「ほおー またこれは才能を見せましたね」
8八まで玉が行ければ先手も堅い、しかしタカミチもすかさず8八に歩の打ち捨てで壁銀にさせ、
ぬかりがない

タカミチが桂損を取り返し、深浦「太地がいいかなと思っていたんですけど、ここまで来てしまうと
 タカミチが盛り返した感じ」
うーん、どうだったのかなー △5五角を打たれた時点で、すでに相当競っていたのかもしれない
ついに太地、金を端に逃げるだけの手を余儀なくされ、これはつらい! こんな端の金、見たことねえー

さらに太地は玉を中段に浮かして、しのぎにかかる ギリギリの受け、危ないー
でも、後手からもこれ以上、どう攻めたらいいのか?
と思っていると、タカミチは、じっと、と金を作りにキター
こ、これは冷静、超冷静! 深浦「タカミチは落ち着いてますよね」

と金を間に合わせるべく、太地の手に丁寧に対応していくタカミチ
深浦「タカミチは方針を変えませんね これがマネできないんですよね」

そして、ついに、と金が間に合ってキター 太地、詰めろをかけられ、大ピンチ!
矢内「どう受けたらいいんですか?」
深浦「わかりません(^^;」
太地、秒を9まで読まれ、わあああーーと思って見ていると、太地、玉のナナメの歩をスッと上げた!
なんと、これが詰めろ逃れの詰めろ、盤上この一手と思われる妙手!
深浦「いや~ すごい手ですね 紙一重の受けですね!」

しかし、対するタカミチも、自陣に歩を受けた手がこれまた落ち着いた好手、全く引けを取っていない!
これは両者、強い!! さすがプロどうし、レベルが高い~
深浦「うわ~ すごい将棋だ なんでこんな冷静な手が指せるんですかね」 

と金で攻めている分、タカミチが優勢だなあ そしてタカミチが決めに出た
先手の馬の頭に歩を打ち、これがド急所の一発だった 最後は竜で桂をタダで食いちぎった手が必至、
鮮やかな手で勝負あり! 最後の竜で桂を取った手、これをあの秒読みの中、何パーセントくらいの
視聴者が気づいていたのか、個人的に知りたいところだ 私は全く見えていませんでした(^^;
104手、タカミチの快勝となった

深浦「タカミチが少し苦しいかと思ったんですけど、その後すぐ崩れないでついていく指し方は
 すごく印象的でした 太地は決定的な良さを見出せないまま、タカミチの追い込みを許した」

いや~、タカミチ、強かった! パチパチパチ
秒読みになってからの指し方は実にお見事で、一手の間違いもなかったんじゃないだろうか?
終盤、と金を作ってしっかり間に合わせた構想が実に素晴らしかった 
終盤の丁寧な受け、素早い寄せ、どれも魅せた!
53歳のタカミチ、25歳の太地を相手に、してやったりの会心の指し回しだったね 

実は私は最初は太地のほうを何となく応援して見ていたのだけど、タカミチが勝ったときには
完全にタカミチに拍手を送っていた ベテラン健在、おじさんパワー爆発! やったぁ(笑)

両者、ずーっと30秒将棋だったとは思えない、これぞプロどうしの芸だった
太地のほうもよくがんばっていて、見ごたえのある内容、
とても面白かった一局だった 満足、満足だ(^^) 

個人的な余談であるが、この一局は、東京から帰省していた兄(24では指せないくらいの低い棋力)と
一緒に観戦した 兄も充分楽しんで観ていた
NHK杯、棋力に関係なく楽しめる魅力的なコンテンツだと再認識できて、それも良かった
(NHK杯の前の将棋フォーカスの特集の内容も、特に良かった)