第21期銀河戦 決勝戦 
稲葉陽六段vs橋本崇載八段
解説 谷川浩司九段
聞き手 上田初美女流
対局日 8月16日

今期の銀河戦もいよいよ決勝だ 稲葉とハッシー、どちらが勝っても棋戦初優勝となる大一番だ
稲葉はBブロックで金井、窪田、飯島、畠山鎮に勝ち、決勝トーナメントで屋敷、糸谷、行方に勝ってきた
今期ここまで6勝4敗 
ハッシーはGブロックで大平、渡辺に勝ち、決勝トーナメントで、高崎、木村、郷田に勝ってきた
今期ここまで8勝4敗

解説のタニー「稲葉は居飛車党で攻めが鋭い、早指しが得意
 ハッシーは居、振り、両方指す 最近は振りが多い 無理攻めはしない本筋の将棋」

準決勝終了後のインタビュー
稲葉「相手が強いので、自分の将棋をしっかり指したい」
ハッシー「稲葉は勢いがある ただ、後輩に踏みつけられて負けるのも悔しいので(笑)
 初めての対戦なので楽しみにしてます 自分の力を出し切りたい」

先手稲葉で、いよいよ対局開始 ハッシーは4手目に角交換、向かい飛車にした
雑談で、タニー「ハッシーは後手のときは角交換振り飛車を多用している 
 2月の私とのA級順位戦でも、この4手目角交換をやってきた
 ハッシーも30歳だから、そろそろ勲章が欲しいだろう」
上田「あの早指しの強い糸谷さんが、『稲葉は僕より早指しが得意なんですよ』とおっしゃってました」

お互いに銀冠に組んで、しっかりした駒組みだ さあ、どういう将棋になるか 
私はハッシーを応援しているがどうか 振り飛車にしたのが吉とでるか凶と出るか

タニーが「この駒組みでは地味な戦いになることが多い」と言ったその瞬間、
稲葉が元気よく攻めていった ▲6六角と打ち、積極的に打開だ 
しかしタニーはこの角打ちに否定的な見解、
タニー「▲6六角はどうだったか この角は死ぬので、パッと見、稲葉が困ってそう」
ここから稲葉は強気で攻め合いで勝負に行った
タニー「ハッシーとしては、何かうまくやれば有利になれそう」

だけど、ハッシーにも案外うまい手が見つからないようだ
タニー「良くなりそうだけど、意外に難しいというのは、あせる」
ここから細かい折衝が数手続いた ハッシーは取られる桂を歩頭にタダ跳ねしたのだが、
稲葉はそれを取らない、という虚虚実実のプロならではの高度な攻防だ

さらに、稲葉は自玉側の相手の歩をわざと伸ばさせ、それを狙うという構想を見せた
通常では考えられないこの発想、タニーもすぐには理解できないでいた
そして局面が進んで見ると、タニー「今度は稲葉のほうを持ってみたい感じになりました
 どこがどうだったかわからないんですけど」 

駒割りは、稲葉が銀銀桂を、ハッシーは角角を駒台に持つことになった
勝負は盤面左の玉頭戦に持ち込まれた ハッシーを応援している私としては、
かなり嫌な予感がする展開だ 玉頭戦では、角は使いにくいので、これはハッシーやばいのでは・・・

稲葉のちょとした手順前後をとがめるべく、ハッシーも勝負をかけるが、あまり効かなかった
稲葉が駒得、そして玉頭方面でも手厚く、制圧している ハッシーは主張点がない
うわ、これは大差なのでは 考慮時間の残りも、稲葉▲6回vsハッシー△1回になってしまった
タニー「稲葉がはっきり有利になった」

だ、だめだー もう素人目にも、後は押せ押せで上から単純に攻めていけば自動的に稲葉勝ちという
局面ではないか ハッシーのほうは、飛車と金がモロに遊び駒で全く働いていない 
上田「わかりやすい局面ですね」
タニー「稲葉としては、とにかく上から押さえていけばいいですからね
 ハッシーの表情は、現局面を考えてるというよりも、どこが悪かったのかという顔ですね」

稲葉は守りに回らず、強気で決めにきた タニー「稲葉は全く震えてませんね」
決勝戦ということで、ハッシー、すぐには投了せず、捨て駒を連発し、王手を連続して手数を
伸ばしてみたものの、稲葉に見切られ、届かなかった ハッシー、無念の投了!
101手で稲葉の勝ち、優勝が決まった  ああー、ハッシー・・・orz

タニー「最初はハッシーが良かったと思うが、稲葉が勝負手を連続して放って逆転し、
 それからは稲葉は全く震えなかった」

感想戦では、稲葉は▲6六角を打った後の分かれについて、「悪くはなっていないと思った」
ハッシーは稲葉の中盤の構想に脱帽していた 
ハッシー「(一見、攻めの拠点になると思えるのに)こちらの歩をわざと伸ばさせて、
 それを逆に狙うという発想に参った 玉頭戦に持ち込まれ、角が使えないので、それで困ってしまった」
この一局は稲葉が完全にハッシーの上を行った 一局を通して、ハッシーに勝ちはなかったね

優勝者インタビューで、稲葉「僕は小学生の頃から早指しで、プロになったら銀河戦で
 優勝するだろうなと思っていたが、実際はずっと勝てなかった
 今はプロ6年目で、持ち時間の長い将棋のほうが得意になってきたかなと思ってきたところで
 優勝したのも不思議だと思った 今期は勢いよく指すことを心がけた
 それでいい結果が出たので、来期からも続けていきたい
 これで満足せずに、2回3回と優勝したい ありがとうございました」 

ああー、ハッシー、負けたか・・・ まあ完敗だったので仕方ない内容だった
本局は大技はなかったが、稲葉の中盤での構想が見事、それに尽きた

あの糸谷をして、「僕より稲葉のほうが早指しが得意」と言わせるのだから、
優勝も意外な結果ではないね 稲葉はこれで七段に昇段ということだ

第21期銀河戦はこれで幕を閉じた タイトルホルダーが次々に破れ、なかなか面白い年だった
来期も注目局があれば、簡単にこのブログで振り返りたいと思っている