豊島将之 七段vs佐藤康光 九段 NHK杯2回戦
解説 谷川浩司 九段

2回戦屈指の好カード、才能あふれる両者がどんな将棋を見せてくれるか、非常に楽しみだ

豊島は2007年四段 竜王戦1組に昇級 B1 1回戦で村田智弘に勝ち NHK杯本戦は5回目の出場
康光は1987年四段 竜王戦1組、A級 1回戦シード NHK杯本戦は25回目の出場

解説のタニー「豊島はアマの頃から将来を嘱望されていた 研究熱心で、どのような戦法も指しこなす
 序、中、終盤、どこをとってもスキがない
 康光は初タイトルを獲ってから約20年活躍を続けている 康光ならではの独特の世界、序盤作戦を
 作り上げて、棋士の間でも注目されている 棋士会の会長もしている」

事前のインタビュー
豊島「康光は序盤の工夫が多く、中終盤に力強い将棋 今日も序盤から力戦形になるのではと思います
 自分らしく思い切りよく指したいと思います」

康光「豊島は非常に研究熱心な若手で、質も高く、指し手が他のプロに与える影響力も非常に大きい
 先手でも後手でも、向かい飛車か居飛車と想定しています
 ハラハラドキドキするような、迷路をさまようような内容が指せればと思っています」

2人の対戦成績は、豊島2勝、康光3勝とのこと

先手豊島で対局開始 康光のダイレクト向かい飛車に、
豊島が▲6五角とノータイムで打って、力戦になった
雑談で、タニー「豊島は順調にクラスを上げているが、棋戦優勝がまだないのは不思議
 康光は後手番だけでなく、先手番のときにも独自の工夫を見せているめずらしい棋士」

豊島は角歩、康光は角金を手持ちにして、互いに一段飛車に引いて、スキをなくしている
どこから戦いが起こるのやら、こう着状態ぎみになった

豊島が▲8九飛と地下鉄飛車で転回を見せたところ、康光は△9四角という端角を放つすごい一手!
この角打ちは康光意外は誰も思いつかないだろう 
タニー「△9四角というのは、良くしようということですかねえ うーん」
この奇抜な手をどう解釈したらいいものかタニーも困っていたが、
この角が危なそうでなかなか取られない展開になった 

タニー「形勢はわかりませんけど、(細い攻めをつなぐのが得意な)康光の得意な展開」
康光の攻めが続く 先手の玉頭を直接攻めていて、相当厳しい これは康光が押しているようだ 
豊島は玉の逃げ出しができず、受けの桂を打たされ、苦しそう
タニー「桂を打つのでは豊島はつらい これは康光が剛腕で、攻めをつなげましたね」
こうタニーも断言、康光の攻めがつながり、後はどう寄せきるかというところだった

しかし、ここから康光の手が乱れたではないか??? そうとしか思えない
本譜、康光は△5五歩~△5一飛だったが、△5五歩は▲同銀で豊島の銀を呼び込んでしまい、
△5一飛に至っては、玉飛接近の悪形になり、飛車が狙われるだけの駒になってしまったではないか
どう考えても流れがおかしい
矢内「こうなってしまっては、豊島がやれそう さきほどの局面で何かなかったですかね
 先手ばかり指した感じがします」

逆転に成功した豊島、今度は逆に豊島がどう勝つかだったが、さすがにうまかった
歩の叩き、角2枚を巧打、銀も攻めに参加させ、緩みがない 
そして、後手玉を追いつめてから、自玉を早逃げ! これが勝ち方のお手本のような筋だった
タニー「決めるだけ決めて、後手玉を受けのない形にしてから、玉をサッと引くということですね」

最後は「端玉には端歩」の格言で、受けなしに追い込んで勝ちを決めた 103手で豊島の勝ち   

矢内「康光らしい攻めが決まったかなと思ったんですけど」
タニー「(康光が調子が良く見えたが)小駒だけで、適当な攻めがなかったというのが
 康光の誤算だったかもしれません」

これは康光としては残念な負け方だろう 康光が△5五歩としたところ、
後手から他に何か有効な攻めがなかったのか きっと何か攻めがあったはずだ
感想戦がなかったので、わからないままだった そこで、激指定跡道場3の検討モードで、調べてみた
(下図は▲7八玉までの局面 後手番)

後手の持駒:金二 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v香|一
| ・ ・v玉 ・ ・v金 ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・v銀v桂v歩v歩|三
| ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|四
|v歩v桂 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・v歩v歩 銀 歩 銀 ・ ・|六
| 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ ・ 玉 ・ ・ 金 ・ ・|八
| 香 飛 ・ 桂 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角二 歩四 

激指の検討モード六段+++の結論は、最善手は△7七金 形勢は-154でほぼ全く互角だった
なんと、形勢互角で難しかったのか・・・ 
本譜の△5五歩も候補手の4番目に出てきていて、それでも互角ということだった
私見では後手の攻めが続いて、康光快勝になるというイメージで見ていたのだが、ハズレたなあ
とすると、△5五歩▲同銀の後の△5一飛が真の敗着なんだろう 
実際、激指に△5一飛と入力した瞬間、一気に約+700で先手有利になった やはりそうか

△9四角は康光しか思いつかないであろう攻め方で面白かったが、
終盤、康光が失速して残念だった △5一飛が決定的な敗着で、もったいなかった
私の大好きな棋士どうしの対戦で、期待が大きかっただけに・・・ 
もっと終盤のねじり合いが続いて欲しかった  勝った豊島には大活躍を期待したいところだ