渡辺明 三冠vs広瀬章人 七段 NHK杯2回戦
解説 佐藤天彦 七段

おお、今日は渡辺の登場か 広瀬も強いし、好カードだ (ちなみに渡辺29歳、広瀬26歳)

渡辺は2000年四段、竜王9連覇中 A級 棋王、王将の三冠 1回戦シード 本戦は12回目の出場
広瀬は2005年四段、竜王戦2組、B1 1回戦で瀬川に勝ち 本戦は7回目の出場

解説の天彦「渡辺は非常に合理的、現代将棋の礎(いしずえ)を作っている
 穴熊の堅さとか、攻めの技術をどんどん進化させていっている 現代将棋を引っ張る存在
 広瀬は僕よりちょっと年上だが同世代で、この世代の中では唯一のタイトル経験者で若手トップクラス
 お互いに実戦的で勝ちやすい棋風」

事前のインタビュー
渡辺「広瀬はタイトルを獲ったこともあって、有望な若手なんで、初戦からイヤな相手を引いて
 しまったなと思ったんですけども 広瀬は居、振り、両方やるので戦型は相手まかせ
 昨年は優勝させてもらったので、まあまた今年も、と思ってます 大変な相手ですけどがんばります」

広瀬「渡辺はタイトルを長年保持していて、さらに2つ奪取、昨年はNHK杯優勝、充実期に入っている
 数年前にNHK杯の同じ2回戦で対戦して負けてしまったので、雪辱に燃えている
 内容にも結果にもこだわりたい」

2人の対戦成績は、渡辺5勝、広瀬3勝とのこと

渡辺のインタビューを聞いていた天彦が、気になる発言をした
天彦「渡辺は今日ちょっと、体調が悪いかなと見える いつもと比べると元気がないかな
 今日は正念場なんじゃないか」 天彦と渡辺はよく知った仲だ
その天彦が「渡辺の体調が悪いように見える」と言った 今日の渡辺は大丈夫だろうか?

先手渡辺で、広瀬が角道を止めて四間に振り、相穴熊に進んだ 相穴か この2人ならこうなるところか 
どちらかと言えば広瀬の土俵だが、渡辺も当然想定していただろう
天彦「この戦型を期待していた方も多いんじゃないでしょうか 
 相穴で、見たいカードのナンバーワンじゃないでしょうか」

渡辺の4枚穴熊が完成したが、広瀬は迷いなく仕掛けた 
広瀬の金2枚はまだ6筋に居るが、これが広瀬流か
天彦「囲いは渡辺のほうが堅いが、広瀬の側は5筋に、と金が作りやすい」
渡辺も応戦し、すぐさま中盤へ突入した 

天彦「広瀬の穴熊は、固めるだけじゃなくて、バランスを取りながら、さばきを優先したり、
 と金作りを優先したり、理論立ててシステム化している そして、フワっとした大駒の使い方がうまい」

天彦「僕も渡辺と同じ居飛車党で、居飛車党ならではの愚痴を言い合うんですけど、
 今はすごくどの戦型でも研究が進んでいて、矢倉、角換わり、横歩取りといった戦型は、
 詰みまで研究されていることまでありますけど、どうしてもそっちのほうに重点がいってしまう
 そこにいきなり振り穴がくると困る(笑)」

さて、局面、広瀬が香得して受けに回っている 馬を自陣に引いて、手厚そうだ
天彦「広瀬としては駒得なので、考えがいがある局面 ここを何とかすれば有利になる」
渡辺、やや苦しいか? しかし、じっと歩を垂らして相手のミスを待つ、という手を指した 
うん、さすがだ だが、広瀬も離れていた銀をじっと引き、渡辺に手を渡した 
うわ、こういうの、やられたら困るなー さすがプロ同士の応酬だ

天彦「渡辺は歩切れなので、ちょっと広瀬持ちかな」
ちょっと、と言うが、渡辺は歩が0枚、広瀬は5枚、これはかなり大きそうだ 

渡辺のほうに、具体的に指したい手が見当たらない これはピンチなのでは?
ついに渡辺の守りの銀が、桂でアタックをかけられた
天彦「ここは広瀬のほうがうまく指している 渡辺としては難しい局面」
考慮時間の残りも、▲渡辺0回vs△広瀬2回になってしまった 
渡辺、ここから30秒将棋、これは苦しい!

渡辺は攻め合いに賭けたが、広瀬に無視されてしまった
天彦が解説で、歩を使った、穴熊崩しの具体的な手順を示している
天彦「(こういう風に)要領良く攻められたら、一瞬で(崩壊する)ということになりかねないので」
矢内「今の歩の使い方はすごい、いいですね!」
天彦「ありがとうございます(笑)」

広瀬は天彦の指摘した筋で居飛穴を崩し、そして馬をドッカーンと切って、一気に決めにきた!!
天彦「厳しい情勢になってきましたね」
こ、これは強烈 もう全然ダメじゃん? もうこれ、粘りようがない
ええー どうしたの、今日の竜王は?? まだ何も「これが竜王の手だ」という手を指していない

広瀬の振り穴はほぼ手付かず、渡辺の居飛穴だけ完全に崩壊、大差がつき、渡辺が投了!
98手で広瀬の圧勝! えええーーー 渡辺が負けちゃったー しかも相当なボロ負け
番組開始から1時間9分、時間もずいぶん余った、早い終局・・・

天彦「広瀬の、リードを拡大する技術が際立った 最後は見ている方が『これだよ、これ』っていう
 気持ちよくなる決め方で、広瀬の会心譜だった」
矢内「渡辺としては不完全燃焼でしたね」
天彦「渡辺と言えど、こういうこともあるかな、と納得していただきたい(^^;」

15分ほどあった感想戦では、渡辺は10分間ほどやった時点で、早々に
渡辺「はぁー、いや ありがとうございましたー」と言って頭を下げた 
はい、もう感想戦終わり、と言いたげだった
完敗で全然ダメ、今日はもう切り上げて、早く帰りたいといった様子だった 

対局前に、天彦が「今日の渡辺は体調が悪そう」と言っていた心配が、ズバリ的中した
感想戦での渡辺は鼻声で、おそらく風邪を引いていたのだろう 広瀬も鼻声だが、これはいつものことだ
この日の渡辺は体調が悪かったのだろう、それがモロに内容と感想戦で表れていた 

こんなアッサリ負ける渡辺は私は初めて見た あー、これは見ている側としては残念・・・
たしかに広瀬は強かったが、渡辺の力はこんなものではないはずだ 
前回優勝、そして三冠の渡辺が、その実力を発揮することなく、2回戦で消えた 
将棋を指すにも、人間、まずは体調が大事だな、と思った一局だった 

<お知らせ> 明日の7日、ニコニコ動画で15時から第3回電王戦の棋士の出場者発表があります