第2回電王戦のすべて 
日本将棋連盟発行 1480円+税 2013年7月31日初版
著者の記述はなし 評価 A
コンセプト<あの世紀の一戦を出場者本人が語る> (帯の文をそのまま引用)

ひさびさの棋書レビューです(^^; 7月に発売された本で、私は読むのが遅れてしまいました なぜ遅れたかというと、第2回電王戦はプロ側が1勝3敗1分けで負けてしまったため、今まで私は、あんまり思い出したくなかったのです やっぱり、正式にプロ棋士が負けたというのはショックなんですよね でも来月の11月2日から、電王トーナメントが開催されるので、それまでに読んでおこうと思いました

本の構成は、対局したプロ棋士5人の自戦記がメイン、それと対局後のインタビュー、(プロ棋士、開発者の両方に) Ponanzaと激指の途中局面での形勢判断、開発者への50の質問(Puella αの伊藤さんにはなし)、関係者の観戦記などからなっています

全体に良く出来た本だと思います 夢枕獏さんの観戦記には、唖然としますが(笑) メインであるプロ棋士5人の方の自戦記が面白いです 私は棋譜は並べませんでしたが、楽しめました 特に船江五段の文章は大変に面白く、引きこまれました 大熱戦の様子が伝わってきます 文才がありますね! 以下、プロ棋士の自戦記で印象深かったところを抜き出してみました

阿部光瑠四段
「他にも立候補者はいるだろうから、私が選ばれることはまずないという軽い気持ちもあった。」 「私は今のコンピュータ将棋がどれほど指すものなのか、その実力を全く知らなかった。」 「(12月中旬にソフトの貸し出しを受けてから、実戦練習を)1日8時間、あるいは10時間」 「(練習対局で)私は最初8連敗を喫した。強い。持ち時間1時間、切れたら1分という設定だった。」
「こちらが振り飛車にすると、習甦は居飛車穴熊にしてくるのだが、これが異常なほどに強い。」 「私から攻める展開になると、ほとんどの場合切らされてしまい、負けた。」 
終局後は「自分自身、驚いていた。習甦相手にここまで大差で勝ったことは数えるほどしかない。」 「実は私は、今回私が負けたらプロ棋士が初めてコンピュータに負けたことになる、と いうことを知らなかった。」

佐藤慎一四段
「今回の電王戦出場を打診されたとき、棋士の代表として出るということが許されるなら、自分が出て出場したいと思う気持ちがあった。」 「一局を振り返ってみて、自分もコンピュータも良いところ悪いところがたくさん出た将棋だったと思う。」

船江五段
「(ツツカナの)4手目はなんと△7四歩。 楽しいことになってきたため、少し二ヤリとしてしまった気がする。」
「(ソフトは)隙があれば仕掛ける。奇襲も大好きだ。 今回の電王戦でも、5局全てでソフトが先攻している。 もし第3回があるならば、私は受けが得意な人が出場するべきだと思う。」
中盤で「どうやっても少し優勢に見える。しかしどうやっても少し優勢にしかならない。なぜなんだ。」 「人間が逃げ、ソフトが追い込むという展開になりやすい。本局もそうなった。 そして本局の直線は長かった。府中の直線よりもはるかに長く。それは信じられないほどに長かった。」
長い終盤で「手番が回り▲1六歩。待ちに待った▲1六歩。そして私は思ってしまった。 勝ちになったんじゃないか。いや間違いなく勝てる。」 「着手と同時に私は事の重大さに気付き愕然とした。こんな大悪手はない。」 「早く勝って楽になりたい。その誘惑に私は負けてしまったのだ。」

塚田九段
「(第1回電王戦で米長会長が負け)当時コンピュータ将棋の知識がほとんどなかった私だが、米長先生が完敗してしまったことはショックであり、同時に大変悔しかったのを覚えている。」 「応募締め切り当日に立候補した。」
当日の作戦、「4手目△4四歩と指したのは、実に11年ぶりのことだった。完全にソフト相手の作戦だ。」
事前の練習中、「4月7日(対局6日前) 何故かボンクラーズと指せなくなった。マニュアルがあるので、再設定を試みるも、全然できない。もう時間はない。『ツツカナ』と指すことにする。」 その練習中にツツカナ相手に、入玉して勝利したことで、「思えば私は、対局直前のこの一局で、大いなる勘違いをしてしまったのかもしれない。」
塚田によれば、ツツカナは入玉せずに玉が8八のまま動かなかったから、当日のPuella αもそうだと勘違いしていたというのだ 
終盤の、Puella αも入玉を目指す手の「▲7七玉を見て、私はそうとうショックを受けた。 その手だけはないと思っていたからだ。」 「私の指差し確認、楽しんでいただけましたか?(私は必死)」

三浦八段
「正直に書く。私は出場したくなかった。負けたときのリスクがあまりに大きすぎる。」 「出場を迷った理由として、私がコンピュータ将棋に関して全く知識がないことも大きかった。」 「電王戦第4局の日に、コンピュータ将棋協会の方から意外なことを聞いた。 最新のGPSと練習できるというのだ。私が(それまで練習で)使っていたのは1年前のバージョン。」
対局後「本譜の順が悪いとは思えないのだ。(GPSは)こちらの厚い部分を攻めている。 それ(GPSの攻め)がつながるとは・・・・」 「本局のGPSには疑問手がひとつも見当たらない。」

さて、当日の対局はともかくとして、塚田九段と三浦八段には、連盟から事前のバックアップがきちんとなされていなかったのが、非常に腑(ふ)に落ちないです 塚田九段は対局の6日前にPCの不具合で、ボンクラーズと練習対局ができなくなった、とあります 代わりにツツカナと指して練習したが、それが本番で大きな意味を持ってしまったのです
三浦八段は対局の1週間前まで、GPSの1年前のバージョンと練習していて、最新バージョンとあまり練習できなかった、と告白しています これではダメでしょう もっと、連盟全体で対局者をバックアップしてあげなければいけないでしょう なぜ、ちゃんとやらなかったのか? 第3回では、こういうことが絶対ないようにしてもらいたいものです 

それにしても、阿部光瑠四段も、塚田九段も、三浦八段も、この第2回電王戦の前までは、コンピュータ将棋のことをほとんど何も知らなかった、というのが実情なんですね
ネットの将棋倶楽部24では、bonkrasとponanzaが圧倒的な強さを見せ付けていたので、私はプロももっとコンピュータ将棋に関心を持っているものなのかと思っていました
コンピュータ将棋の強さを知っていたプロ棋士は、立候補しなかったというのがホントのところ?(^^;

今度の第3回、私は興味がわかない、と前に書いたのですが、この本を読んで、私の中で次の電王戦が盛り上がってきました どういう内容、結果になるのか、ドキドキしています
第2回電王戦を取り上げたもう一冊の本、「ドキュメント電王戦」のほうでまた感想を書く予定です