郷田真隆 九段vs永瀬拓矢 六段 NHK杯 2回戦
解説 森下卓 九段

矢内、黒でビシッと決まっている 今日は郷田と永瀬か 
郷田は昨年のNHK杯、準決勝の羽生戦で大逆転負け、あれは悔しかっただろう
永瀬と言えば千日手、今日はそうならなければいいが(^^;

郷田は1990年四段、竜王戦1組、A級 1回戦シード 22回目の本戦
永瀬は2009年四段、竜王戦4組で優勝 C2 1回戦で堀口弘治に勝ち 3回目の本戦

解説の森下「郷田はずっとトップで第一線を張っている、剛直というか正々堂々、直球一本という感じ
 永瀬は大変熱心な研究家 つい最近まで振り飛車主体だったが、ここ1年居飛車を指していて、
 この3~4ヶ月は居飛車しかやっていないんじゃないか 棋風を転換している」

事前のインタビュー
郷田「永瀬は振り飛車党だったが、最近は居飛車もやっているのでどうなるかわからない
 張り切って、いい対局をしたいと思います」

永瀬「私が先攻する展開になればいいなと思っています
 新人王戦の記念対局で郷田九段に破れているので、今回はリベンジしたいと思っています」

先手郷田で対局開始 ▲2六歩△3四歩▲2五歩の出だしだった
森下は戦型は横歩取りを予想していたが、これは郷田が横歩取りを避けた指し方だった
森下「予想外の展開 そうとう郷田がガマンした この出だしは、研究しないベテランの指し方
 先手としてはやや作戦的に損だろう しかし横歩取りはもう今、研究で9割勝負が決するので、
 郷田は力で来いということだろう」

森下「▲2六歩△3四歩▲2五歩は森内が羽生に対して名人戦で指して、勝ったから、
 みなさんアレルギーがなくなってますけど、負けたら『何をやってるんだ』となる(笑)」

2人の対戦成績が出て、永瀬の1-0ということだった
矢内「リベンジしたいのは郷田のほうですね(笑)」

戦型は、永瀬が振り、角交換で▲美濃vs△穴熊になった
永瀬が穴熊が未完成のまま、3筋から果敢に仕掛けた
郷田が▲7七角と自陣角を打ち、3筋に歩も謝った 永瀬だけ、角と歩を手持ちにしている分かれだ
森下「正直言って、永瀬がポイントを挙げていると思う」

永瀬、次の一手は2筋を受ける手だが、どう考えても△3四飛と浮き飛車にして形良く受けるだろう、
と思っていると、なんと△3三銀と引いたではないか あれ? 何かイヤな手でもあったのか? 
ここは大きな分岐点だった 激指定跡道場3に訊いてみたところ、
△3四飛の場合、形勢0点で全くの互角、△3四飛に▲2四歩とされて、これを△同歩は▲3五歩!で、
さばきあいになるとのこと △2四同飛は飛車交換になって形勢互角とのことだった 
そうかあ △3四飛には▲2四歩△同歩▲3五歩という攻め筋があったのか、
永瀬はそれを気にして△3三銀だったのか

森下が「永瀬流は(4一の金を)△3一金と寄ります」と解説していたところ、これがビンゴ!
永瀬の手は△3一金、当たりだった 
しかし、ここから永瀬の手が、なんだか変なふうになっていく
再度、銀が△4四銀と出たからには、▲2四飛は当たり前の手だ
永瀬は考慮時間を使わずに△2二歩、それに対して▲2三歩も当然の一手
そこで永瀬はなんと4回も考慮時間を投入したではないか あらあら、どうなってんの?

永瀬は大長考の末△7一金と穴熊を固め、森下「はぁ~ この忙しいときに」
郷田はそれならこっちも力を溜めて、といわんばかりに右桂を▲4五桂と躍動
あらー、ここに桂が跳ばれて活躍されては、永瀬苦しいか

永瀬は挽回すべく△6四角と手放したが、この角が▲6六歩~▲6五歩で、狙われてしまった
ここ、永瀬は△4二角と引き上げることになったが、まだしも△7四歩~△7三角とガマンしたほうが
良かったのではないだろうか 本局、もうここで差がかなりついてしまった印象だ
本局、4二の角が全くと言っていいほど働かない、遊び駒になってしまった
(訂正:後日確認したところ、△7四歩~△7三角は▲5三桂成があるのでダメだったんですね)

まだ中盤でお互い考慮時間を使いきり、30秒将棋になった  
森下「ちょっと永瀬が苦しくなった感はいなめない」
そうだよねえ 永瀬のほうには主張がない 穴熊も金銀2枚だから、あんまり堅くない 
森下「いつの間にか、郷田が指せる局面を迎えている」
ん~、永瀬、考慮時間の使い所を間違えたのでは? △2二歩▲2三歩のときに大長考だったからなあ

永瀬は駒の働きも悪い、駒損もしている 玉も堅くない 
あとは手続きか、と思われたが、永瀬は勝負手を放った
郷田が▲2八歩と受けた手に対して、無理やり△2七香の打ち込み! うわ~ こりゃ~すごい(^^;
超、強引だ これには森下もびっくり
森下「ええ~ 初めて見ました、この手は これは初めて見た手ですね~」

だが、郷田はさすが一流棋士、こういう勝負手にも動じなかった 的確に対処した
矢内「永瀬としては、ちょっとずつ体力を奪われている感じですね」
穴熊が受けなしに追い込まれる、典型のような終盤で、郷田の快勝となった
105手で郷田の勝ち

森下「永瀬がポイントを挙げたと思うが、△6四角に対して▲6六歩~▲6五歩が厳しかった
 郷田が力を存分に発揮した」

あー、これは永瀬がちょっと出来が悪かったなあ 森下は序盤は永瀬がうまいことやっていた、
と言っていたけど、本当のところはどうだったのだろうか 
激指定跡道場3では、△3四飛と浮いても互角(0点で全く差なし)、
本譜の△3三銀では+32点と言う事だった 
激指を信じるなら、別に永瀬がうまくやっていたとも言えない 

対抗形では、振り飛車側は中盤で、何か工夫した手が必要になることが多いのだが、
永瀬がそれを見せることができずに、郷田に自然にやられてしまった印象の一局、これは残念だった
永瀬、今後一流棋士の仲間入りをするには、振り飛車では一流のさばき方を見せれるようになって欲しい

これは結果論だけど、本局は穴熊が未完成なまま仕掛けたのは、その後の指し方が
永瀬のほうにとって難しかったということだったのだろう
郷田は、無理ない手を積み重ねて無難に勝った、というように見えた 

ところで、森下は本局を通じて、予想外の手が出ると、すごく驚いていたけど、
来年の電王戦、大丈夫だろうか? 私は永瀬の△2七香なんかは、善悪はともかく、
コンピュータがやりそうな手だと思った
コンピュータなら露骨な手を当たり前にやってくる 今から森下の電王戦が心配だ(^^;