三浦弘行 九段vs阿久津主税 七段 NHK杯 2回戦
解説 行方尚史 八段

矢内、白の服でビシッと決めてきたか いいねえ
今日は三浦と阿久津か 実力者どうしの一戦、楽しみだ ワクワク
A級に上がった行方の解説もどんなものかな

三浦は1992年四段、竜王戦1組、A級 1回戦シード 18回目の本戦出場
阿久津は1999年四段、竜王戦1組、B1 1回戦で中田功に勝ち 9回目の本戦出場

解説の行方「三浦は非常に深い研究と終盤の正確さで定評がある どこまで研究しているか、
 わからないというくらいに研究してきて、飛ばせるところまで飛ばす 早指しに向いている
 阿久津の将棋はとにかく華(はな)がある 乗ったときの駒さばきは棋界随一
 力戦形を得意としている 好対照なところがある2人」

事前のインタビュー
三浦「阿久津はオールラウンダーなので展開は読めない 阿久津は切れ味鋭い攻め将棋、
 一度不利になると手がつけられないところがあるので、しっかりと序盤から指していきたい」

阿久津「今回は対策はそんなに考えてきたわけではないのですけど、先後もわかっていないのでね
 三浦はすごい研究家で踏み込みもいいので、私が避けなければ激しい展開になるんじゃないか
 力が入っていても空回りすることが多いので、自分らしい将棋を指したい
 勝てれば一番いいんですけどね」

先手三浦で対局開始 序盤の十手くらい、猛スピードで進んだ 行方いわく「一秒指し」
これは笑った ネットの24の早指しでも、ここまで早いのはめずらしいくらいだ
ホント、最近は序盤の決まったところまでは早く進むようになったねえ

戦型は横歩取りになった 
行方「横歩取らせは三浦が一番深く研究している戦型と思われる、そこにあえて阿久津が飛び込んだ」
「横歩取り」のことを、「横歩取らせ」というのか 後手から見ればそういうことになるね

阿久津は飛車を深く引き、角交換から2筋にギューンと大転回してきた 
後手は阪田流向かい飛車のような形だ 
行方「大乱戦になりそうです 研究は関係ない将棋になりました」
いいねいいね 私は横歩取り△8五飛の、研究で勝負が決まる将棋はどうにも苦手だ
とにかく意味がわからないから(^^; 

対戦成績が出て、三浦3勝、阿久津2勝とのこと 案外対戦が少ないね
三浦が常に上のクラスで、まだ対戦が少ないということか

玉の囲いは、▲中住まいvs△金銀が壁の変な玉形になっている 
すかさず三浦が飛車をぶつけ、積極的だ 阿久津、穏やかに歩で飛車交換を防ぐかと思ったら、
3三の左金を2四にぐいっと出て防いだ おー、阿久津も果敢に押さえ込みを図ったか 
行方「もう穏やかじゃないですね タダじゃすまない 激しくなりました こういう力将棋はいいですね
 阿久津の2四の金がどうなるかですね 構想力が問われる局面です、類型がない」
うんうん、どうなるか これから一手一手楽しみだ  

すると、阿久津は右金も3段目の8三に出た! 盤面の右も左も押さえ込みにいったか
うわー、これはすごい 三浦の端攻めを緩和した意味もあるのか?
行方「阿久津は八方破れ、金銀がバラバラですね」
矢内「真似したら空中分解しそうですね」
行方「阿久津の才能が発揮されるような局面になっていると思うのですが」 
阿久津、才能があるとはいえ、2四の金と8三の金、こんな形で大丈夫か
後手は一手のミスも許されないぞ 一方の三浦は自然な駒組みだ

さてどうなるか ・・・ってあれ? 阿久津、玉を寄った? それは指しにくい手だと思ったけどな
何か危険か匂いがする 角を持ち合っているので、5二に利きがなくなったのはなんだか危なくない?
え~っと、三浦は飛車で金が取れるから、もういきなり飛車切っちゃうのはどう?
三浦も考慮時間を使って考えてる・・・ これは飛車切り、成立してない?
▲2四飛!△同飛に▲4一角で、馬作りが受からない 先手陣は中住まいで、飛車にはめっぽう強い
攻めが成立してるだろう 三浦、飛車切れ! 次の一手は飛車切る一手だ! ドカーンと行ったれ!

行方「三浦は九段になったんですよ 八段昇段からコツコツ250勝を挙げて」
あれ、行方は雑談してるなあ ここ、すごい重要な局面じゃないの?
って、三浦が▲2四飛いったーーーーーー 飛車切りキターーーーーーー
行方「おおおおお! やりましたねーー!」 矢内「お~!」
行方「これが三浦流ですね」 矢内「いきなり」 

そして三浦の次の手は▲5二金だった そうか、▲4一角よりこっちのほうが全然いいね
私は角が持ち駒だったから、飛車切りの後、角を打つことしか考えてなかった
飛車を切って金が手に入るんだから、▲5二金のほうが全然いいね 
金が持ち駒に入ることが頭にない、私も正解とは言えないね(^^;

さて、形勢はどうか? 攻めがつながってるか? 私見では、充分三浦がいけそうだ
行方「これはどうなんだ 一見、けっこううるさそうに見える」
えええ、まだ番組開始から37分、どうなっちゃうんだ? めっちゃ早い終局もありうるか
阿久津の「ん~」という唸り声が聞こえてくる 
行方「いや~ これは、阿久津のため息が」
ど、どうなっちゃうんだ 三浦陣は鉄壁、もうダメでは?

行方「この三浦の攻めを受けきらないと、阿久津にチャンスはない 攻めあう将棋ではない
 ちょっと痛いように見えます 阿久津玉、いきなりピンチになってます」
おいおいおい! とても受けきれるとは思えない お~い、阿久津、どうなってんねーん

そして、追いつめられていく阿久津玉
行方「阿久津はまだ全然、持ち味を出してないですからね」
うわー、こりゃ、飛車切り一発でノックアウト、という一局となるぞ あっちゃー

三浦の攻勢が続くが、阿久津も玉を上部に脱出してまだがんばってる
行方「少し三浦ペースだけど、攻めが続くかどうかギリギリの勝負です」
と言ったその刹那だった 桂で、飛車銀両取りがあった! ピッタリの手だ
行方「これは、いわゆる筋に入った気がします」

阿久津はまだがんばり、最後、三浦の中住まいの玉頭に手がつき、ちょっとヒヤリとはした
しかし、三浦が勝ちきった 99手で三浦の勝ち 投了は番組開始から1時間12分のときだった 
あー、一時はどうなることかと思った 37分の時点でもう投了もあるかという局面だったから(^^;
 
行方「いやー、三浦の飛車切りから一気の寄り身 三浦の力強さがいかんなく発揮された
 阿久津は本来の力を出せずに終わった」

感想戦で、阿久津「(5二の地点に利きを無くした)玉寄り、もう敗着ですね」
行方「まさかすぐに飛車切りがあるとは思いませんもんね」
三浦「まあ(飛車切りは)たまたま成立しただけですけど」

私は、いや、飛車切りはたまたまではない、と思った 
自陣は鉄壁、相手は金銀バラバラ、角を手持ちにしている
これだけ条件が揃えば、飛車金交換くらいはありうると思っていなければいけないだろう

それに、昨今のコンピュータの将棋を見ていると、そういう手を平気でやっているのだ
今までは中盤以降で飛車や角を切るというのが常識だった
しかしコンピュータは、まだ戦いが本格的に始まってないときにいきなり大駒を捨てる手をよくやっている
習甦と300局、練習将棋をした阿部光瑠は「コンピュータはなんでもやってくる、と思うのが普通」
という発言をしている
ボンクラーズと練習対局した塚田も「電王戦のすべて」という本で、相矢倉の序盤で角をいきなり捨てて、
代償に銀を棒銀のように前進させる手を指されて驚いた、とわざわざ図面を出して説明してくれている

今回、残念だったのは、阿久津が感想戦で、「まあしょうがないか」という雰囲気で笑っていたことだ
阿久津はあまりショックを受けていないように見受けられた
第2回電王戦での終局後の、佐藤慎一や船江の落ち込み、そして涙目だった塚田、
三浦の憔悴しきった表情、あれらとはかけ離れていた
プロ棋士が負けたときというのは、本来ああいう姿であってほしいと思う

もし阿久津が電王戦に出て、本局のようなふがいない負け方をしたら、
局後に同じように笑っていられるだろうか? 
ファンは勝ち負けだけ見ているのではない、プロは全力を尽くしてもらいたいと思う

期待が大きかった分、一方的な内容で、残念な将棋になってしまった
私が飛車切りを事前に予想できていた、というのも大きいだろう
全く予期していなければ、おお~!となっただろうけどね

ちょっと余談になるけど、私がもしプロのA級棋士並みに将棋が強かったとしたら、NHK杯も観ないし、
こんなにもプロ将棋のファンにはなっていないだろう 
自分が出来ることを他人がやって見せてくれても「ふーん、そんなの私も出来るわ」の一言で
終わってしまう だから、つくづく将棋が弱くて良かったな、プロの将棋がこれだけ楽しめるんだからな、
と普段から思うのだった これは本音です(^^;