ドキュメント電王戦 その時、人は何を考えたのか
著者 羽生善治、川上量生ら 計27人 徳間書店 1600円+税 
2013年8月31日第1刷 評価 S 
コンセプト<符号や図面を極力なくした文章のみで、第2回電王戦を関係者が振り返る>

この本、とにかく面白いです もっと早くレビューを書きたかったですが、今頃になってしまいました 面白いと思ったところを書き出して、そのつど、私の感想を書くという形式にしました 感想、いっぱいあって長くなるので、今回は前編です

P24 夢枕獏さんの文から、以前に羽生さんにインタビューしたときのこと
夢枕「羽生さんに『将棋が解明されてしまって、たとえば先手番がこうすれば必ず勝つ、と分かってしまったら、どうしますか?』と聞いたんです。その瞬間、将棋が終わっちゃいませんか?と』 そうしたら羽生さんは、『大丈夫です、ルールを一個変えればいいんです』と平然と答えたんです。 たしかに、成った歩を一回をもう一回成らして別の動きを加えるとか、たったひとつルールを加えるだけで、いきなり可能性が広がります。 一度解明された『答え』が遠のいて、新たな『問い』が浮かび上がってくる。」

しかし、この羽生の答えは、残念ながら答えになっていないと思います
新ルールには、人間よりもコンピュータのほうがすぐに対応してしまうんじゃないでしょうか 今までの定跡、常識が通用しなくなったとき、困るのは人間のほうだと思います それに絶妙のバランスで成り立っている今の将棋のルールを変えるのは、ものすごく難しいと思います そして、将棋を完全解明できるようなすごいコンピュータなら、そのうち新ルールをも完全解明してしまうでしょう それでまた新ルールを加える、そんなことを繰り返していると将棋が全く別のゲームになっていってしまいかねません

P28 勝又の文で、羽生世代の六人(羽生、森内、佐藤康光、郷田、丸山、藤井)が紹介されています
勝又「六人を羽生世代と呼ぶことがあります。」
羽生世代に先崎が入ってない! あっちゃー、先ちゃん、完全に無視された 個人的にツボでした(笑)

P35 勝又「初期のコンピュータは、低スペックのパソコンとの戦いでした。 数手も読むと、すぐメモリがパンクしてしまいます。」
次回の電王戦では、メモリ64ギガバイト、市販価格が約31万円のPCとのこと↓ 
http://www.dospara.co.jp/5info/share_g.php?contents=denou&waad=hX0TUucV
(ちなみに私が4年前に約10万円で買って今使っているPCはメモリが4ギガバイト 今年、私の父が買った約10万円のPCはメモリが8ギガバイト)

1997年にIBM社がディープブルーというチェス専用のスーパーコンピュータを作って、当時のチェスチャンピオン、カスパロフを倒したことは有名です 「コンピュータチェス」でウィキぺティアにはこんなことが書かれていました↓
「2003年には汎用PCと一般人が購入できるソフトが、ディープ・ブルーの様な専用機に匹敵する性能を持った事が窺える。」
三浦に勝ったGPSはPC679台をクラスタ並列させていましたが、今から何年か後には、もうそれが一台のPCの中に収まっちゃうんでしょうか? 恐怖です

P55 阿部光瑠の文 2012年12月15日、出場者が決定して、記者発表会インタビューに答えて
───コンピュータ対策の手を選びますか。
阿部「いいえ、コンピュータということは意識せずに、自然に指すつもりです。定跡とか手順で普通に戦いたいと思っています。まっとうに戦ったほうが悔いも残らないと思うので。」

しかし、阿部光瑠は「電王戦のすべて」で以下のように告白しています
このインタビューの後、習甦を貸与してもらった阿部は「最初8連敗を喫した。強い。」 「こちらが振り飛車にすると、習甦は居飛車穴熊にしてくるのだが、これが異常なほどに強い。」 「習甦にはクセがある。」「これなら勝てる。試行錯誤の末にたどりついた、太い蜘蛛の糸だった。」 「散々やって分かったことは、力将棋では勝ちにくく、むしろプロが何十手にも及ぶ定跡を整備してきた角換わりや矢倉といった戦型にこそ、勝機がある、ということだった。」
阿部光瑠は300局以上の練習の中で、自然に指すのはあきらめ、コンピュータ対策をした、というのが明らかに正しい言い方でしょう  しかし、光瑠はよく勝った もし、光瑠が猛特訓をしなくて負けてて、プロ側の4敗1分けだったら、と思うと、目も当てられない  若干18歳、大仕事をやってのけた 光瑠は本当にえらい!
今度の第3回電王戦は、事前のソフトの貸与がある、どれだけ練習してくるかという勝負になるでしょう 出場者5人には阿部光瑠を見習って欲しいと切に思います そして、プロ棋士よ、勝ってくれ!

P63 事前のソフトの貸与について、習甦の開発者の竹内さんが答えて
竹内「第1回でボンクラーズを伊藤さんが貸していたので、貸して当然と思っていたんですよ。ところが、わたしの後でPonanzaの山本さんが『貸しません』ってストレートに言って、え、そんな選択支もあったのかと驚きました(笑)」

これは、マジで危ないところでしたね 貸し出しがあって本当に良かった この「貸与があるかどうか」という質問を会場でしたのは山崎バニラさんでした、バニラさんの貢献は大きい(笑)

P65~ 竹内さんがインタビューに答えて
「二十歳くらいの頃かな、『羽生の頭脳』全十巻を読み込んで、影響を受けたと思います。」 「たぶん究極のコンピュータ将棋のソフトはシンプルだと思うんです。」 「僕も、自分以外の対局では全力で人間のほうを応援していました(笑)」 

竹内さん、本当に将棋が好きなようでプロ棋士への尊敬も感じられ、いい人で、私も好きになりました 先日の電王トーナメントでも5位に食い込み、第3回も出場決定、良かったです(^^) 

P78~ 柴田ヨクサルさんのインタビューに佐藤慎一四段が答えて
柴田「電王戦に出場することになったのは、米長会長から声をかけられたのが切っ掛けですが、なぜ自分が指名されたと思っていますか。」
佐藤「実は、よく分からないんです。まさか自分が選ばれるとは思っていませんでした。連盟から『出たい人は返信するように』という手紙が来ました。僕は返信しなかったので選ばれないと思っていましたが、出場する棋士を発表する当日に電話がかかってきました。 『君に決まった』と言われてびっくりしました。『なんで僕なんですか。いいんですか。誰も手を上げる人がいなかったんですか』と聞いても、『いや、まあいいから君なんだ』としか答えてくれない(笑)」
柴田「特に理由の説明はなかったんですか。」
佐藤「理由を聞いていないので、今からでも知りたいです。」

う~ん、ここは重要な点と思います 自薦なのか他薦なのか、なぜ佐藤慎一四段が出場することになったのか、どう考えても、もっとはっきりさせるべきでしたね

柴田「僕は、ネットの将棋倶楽部24では2000点くらいです」

柴田ヨクサルさんの棋力が見えましたね 他の有名人も24で指して何点いけるか、知りたいところです つるの剛士さんは、24での早指し制だと、現状では何点くらいかなあ

佐藤「練習に使ってたツツカナは、振り飛車が多かったように思っていましたが、本番のPonanzaは全然棋風が違いました。一発勝負なので仕方ないですが、どのように戦うべきか、序盤からよくわからなかったですね。」

ソフトの貸与がないと、どうしてもこうなってしまいますよね 実戦の内容も、1筋を受けなかったことが大きく響いたりしましたからね 逆に阿部光瑠が9筋の端の位を取ってリードしたのとは大違いです

佐藤「(疲れで)対局後に何をしゃべったかも覚えていないので、感想戦ができたかどうかは微妙です。 本当に、足が立たなかったんです。それに汗がひどくて、まっすぐ歩けませんでした。」

佐藤慎一四段、お疲れさまでした、としか言いようがないですね どれほどのプレッシャーだったのか、本人しか知りようがないですからね

柴田「将棋が学校教育に入ったら、将来、ものすごい棋士が生まれますよ。」
佐藤「そうなると、子供がみんなルールを覚えてくれますからね。」

私はこれには反対なんです 将棋人口は増えるでしょうが、将棋嫌いな人も増やしてしまうでしょう テストで次の一手とか詰将棋とかをやらされて、将棋=勉強 こうなってしまっては、元も子もないです 私はもし将棋を教育に入れるとするなら、囲碁と麻雀も入れないと、と思いますね これは電王戦とは直接関係ないので、機会があればまた別のときに述べますね

柴田「将棋の真理を追究する求道者としてはコンピュータも人間も同じ土俵に立っています。すべてを引っくるめて、将棋は面白くなるでしょう!!」

柴田先生、アツイです(^^; ちなみに私はハチワンダイバー、読んでないんです 巨乳とメイドっていうところが、私のツボと違ってまして・・・ これは電王戦とは直接関係ないので、機会があればまた別のときに述べま、せん(笑)

P100~ Ponanzaの開発者、山本さんへのインタビュー (山本さんは東大将棋部出身)
───(自分が作ったソフトに)負けたときはどう思いましたか。
山本「腹が立ちました(笑) 当時、自分が一番努力していたのが将棋だったので。」

ここは笑えました 面白いです

山本「なによりも勝つことを目標に挑みました。勝負なら全力で勝ちにいくのが礼儀ですから。」

これぞ、山本哲学! 名言ですね

山本「僕は、汚くみっともなくても、あがけばいいかなと思っていました。コンピュータらしい『気持ちの悪い序盤、粘り強い中盤、恐ろしい終盤』が出ればいいと思っていました。」

さすがに東大将棋部で強く、コンピュータ将棋の第一人者ですね 今のコンピュータの特徴をすごくよくわかっている表現です
そして、佐藤四段との一戦はまさにそのようにPonanzaが指したのではないでしょうか 
習甦の竹内さんが「投了するタイミングのなどの美学を深めて、ソフトに芸術性を持たせたい」と言っているのとは山本さんは正反対、個性があって面白いです

山本「いや、だって、あいつら(コンピュータ)はバカなんですよ。計算を覚えることだけはすごくできるので、それをいかに知能っぽく、将棋っぽくさせられるかというのが開発者の苦労ですね。」

コンピュータはバカ、コンピュータに精通している人だから言えるこのセリフ、一度は私も使ってみたい! けど、ワードもエクセルも使えない私には無理です(笑)

山本「あ、そうです、スポンサー絶賛募集中です(笑)」

私が金持ちとか企業の社長とかなら、絶対スポンサーになるけどなあ(^^; もう電王戦トーナメントで優勝したから、この発言の頃よりスポンサー料金が上がっちゃったか(笑)?

P110~ 第2局の解説を務めた野月七段へのインタビュー
野月「『人間がコンピュータに負けたら将棋の魅力がなくなる』と言う人はいますが、そうではありません。やはりトッププロがしのぎを削る姿は美しいです。」

アマチュアはコンピュータが強くなっても、特に困ることはないと思います 今でももうすでにそうなっていますしね 別に困りません 24でソフト指しが横行という悪影響はありましたが、まあそれくらいでしょう 問題は「プロ棋士よりコンピュータが強くなったら」なんですよね それはしっかり区別しないとダメですね たしかにトッププロへの興味はあまり薄れないかもしれません
でも、二流、三流のプロはどうでしょう? 私は明らかに興味、関心が薄れてしまいました・・・

野月「(プロ棋士は)ステージをより上げないといけないと考えています。(中略) 実際に、現代でも棋士の寿命は、平均寿命と比べると、圧倒的に短いんですよ。そう考えれば、もっと自分を律し、負けたらすべてを失う覚悟で対局しないと。」

ここの部分は野月七段はちゃんとわかっておられるようですね 私もNHK杯で、近年、常に高いレベルの内容を期待するようになりましたからね
とりあえずここまででいったんUPしておきます 後編へ続きます