ドキュメント電王戦のレビューの後編です

P224~ 電王戦プロモーション映像製作者の佐藤大輔さんのお話 
佐藤「最先端技術の象徴は宇宙開発だし、宇宙空間に放り出される宇宙飛行士=プロ棋士、みたいにすればイメージもダブるかなと。」

電王戦と言えば派手なプロモーションビデオ、もう定着してますよね 私も毎回楽しみです!

佐藤「電王戦って、言ってしまえば『エキシビジョン』ですよ。」

an exhibition game [match] 模範試合,非公式試合 という意味で辞書では出てきます 言わば「公式戦ではない、お好み対局」という意味ですね でも、そこにプロ棋士のプライドがかかっているんですよね

佐藤「それからやっぱり、『おい、みんな頑張れよ』ですね。」

米長会長の最期の言葉となりましたね・・・ 第3回こそはプロ棋士側が勝たなくては!

佐藤「観ている人もほぼ全員が棋士を応援しているわけで、その思いも背負い、将棋連盟全体の尊厳も背負い───ひいては人間の尊厳を背負っている。」

何で将棋って、ここまでなるんでしょうかね 負けるとこんなに悔しいゲーム、他にないですよね(^^;

P233~ 株式会社ドワンゴ会長の川上さんへのインタビュー
───たとえば、チェスの業界だったら、九十年代にすでにコンピュータが勝っちゃっていて、それ以降プロのチェスプレイヤーは賞金がガンッと下がっちゃったりっていう現象が起きたわけですよね。
川上「いまであればまだ人間が勝てるかもしれない。ならば『人間が勝てる可能性があるときに戦うべきじゃないか』と。」

このチェス業界のことを調べたいのですが、ネットのどこに載っているのか、私にはわかりませんでした

川上「『資本主義によって従来の牧歌的世界が破壊される光景』だったり、もしくは『社会の歯車のなかで押しつぶされる個人』、そういうのが十九世紀、二十世紀の文学の凄く大きなテーマだったと思うんですけど。で、僕は二十一世紀のテーマは何かと言ったら、 『機械、アルゴリズムのロジックに追いやられる人間』っていうのがテーマじゃないかなって。」

アルゴリズムは直訳すると算法(さんぽう)、ロジックは直訳すると論理
電王戦で、プロ棋士側をどうしても応援してしまうのは、「機械、アルゴリズムのロジックに、人間の魂が追いやられたと認めたくない」 これがプロ棋士vsコンピュータの背景にあるのでしょうね

川上「(生きていくうえで、色んなことを機械にまかせたほうが)楽なんだけど、それに対する反発だとかストレスっていうのがじつは溜まっていて。そこで『理屈じゃねえんだよ!』ってどっかで誰かに言ってもらいたいっていうのが、今の気分じゃないかと思っているんですよね。」

三浦八段がGPSの679台に勝っていれば、応援していたみんなが、「理屈じゃねえんだよ!」と叫ぶことができただろう ああ、それができていれば、どんなに痛快な気分だっただろうか・・・


P246~ 三浦八段へのインタビュー
───コンピュータを六百台以上つなげるのは、ずるいという発想はなかったですか。
三浦「GPS将棋は2012年のコンピュータ選手権で約八百台をつなげて優勝しています。それが認められている以上、われわれ棋士には『ずるい』という感覚はありません。将棋の伝統に、棋士は言い訳をしてはいけないというのがあります。」

言い訳をしない三浦、カッコイイです 勝っていればもっとカッコ良かったのだけど・・・orz

三浦「私の印象なので間違っているかもしれませんが、一台のコンピュータに入れたGPSは、『読み』の深さはそれほどでもなかったです。『形勢判断』に重きを置いているような気がしていました。正しい形勢判断をするGPSが六百台も連結すると、弱点だった読みが克服されて、恐ろしいことになるかもと考えていました。」

本当に、GPSの圧勝という、恐ろしい棋譜が出来上がりましたね・・・orz

三浦「率直に言うと、私はそれほど悪い手を指していないような気がしています。指し手に後悔があるかと言われると、あまりないんです。相手の強さに飲まれたのではなく、純粋に相手の強さに負けたと考えています。」

コンピュータは、A級の三浦にここまで言わせることができるようになったのですね

三浦「(今後のプロ界は)上手くコンピュータを利用しないと、プロ同士の対局においても取り残されてしまう時代になるのではないでしょうか。先日の第71期名人戦の最終局で、森内名人がコンピュータの発掘した手で羽生三冠を破っています。」

プロがコンピュータに学ぶ、もう、それが当然の時代がくるんでしょうか・・・

三浦「人間以上の存在が出てくると、将棋を支えていた根本の一つが崩されたという感じもあるんです。100メートル走なら、人間が車に負けても『当たり前じゃないか』と思えるのに、なぜ将棋では同じ気持ちになれないのか、自分でも不思議です。」

それは先ほど上に書いた「機械、アルゴリズムのロジックに、人間の魂が追いやられた」と感じるからでしょう それだけに将棋って、一手一手に魂がこもってるゲームと言えると思います

三浦「棋士は強くなければならないのと、でも勝てないものは勝てないので現実を受け入れなければならない、との矛盾に直面しています。」

今までは、プロ>アマという図式がありました 今後はコンピュータ>プロ>アマという図式に慣れていかなくてはいけないんでしょうね 私のような将棋ファンも、その現実を受け入れなければならないですね・・・ 

P268~ GPSの開発者、金子さんへのお話
金子「(GPSの)一秒間の探索局面数は、平均で約二.七億局面に達しました。」

うっへへええー(^^;

解説をした屋敷九段へのインタビュー
屋敷「三浦さんとは月一回くらいのペースで、一対一の研究会をやっています。 僕は、昔はまったく研究をしていませんでしたが、最近は少しずつやっています(笑)」

おーい、屋敷~ 今度の電王戦、ちゃんと研究してきてくれよ~(^^;

屋敷「コンピュータを使って研究した強いプロ棋士が今後はどんどん出てくると思います。 コンピュータがどんな新手をやったのか、あるいはコンピュータ同士の対局でどういう将棋が出たとか、そういったのもどんどん調べられていくと思います。」

屋敷も、三浦と同じことを言っていますね プロがコンピュータに学ぶ時代が来る、と・・・

P282~ 大崎善生さんの総括
大崎「(コンピュータが演算する様子は)これまで独り占めしてきた棋士たちの名誉や立場をことごとく簒奪(さんだつ)するためのように思えて、私は背筋を寒くした。」

やはりそうですよね 古くからの将棋ファンこそ、そう思いますよね

大崎「私の目にはコンピュータの指す手の方が斬新で力強いものに思えることが多かった。戦いの主導権はいつもコンピュータ側が握っているように見えた。」

でも、これは喜ばしいことかもしれません 今のコンピュータは攻めていきますよね(Bonanzaの影響でしょうが) もし逆で、どのソフトも受けてばっかりだったら、つまらないでしょう 将棋は攻めていけるゲームと認識できるのはいいことと感じます、私は攻めが好きなので(^^;

<私のこの本の総評>
第1回電王戦の米長会長の「われ敗れたり」のレビューで、私は「第2回電王戦の後もぜひこういう本を出版してください!」と書きました それを実現させてくれたのがこの本です 貴重な言葉が満載で、文句なく面白かったです 「符号や図面をできるだけ使わずに将棋の面白さを伝える」 これは当ブログのテーマでもあります この本に関わった著者の方、編集者の方、お疲れ様でした どうもありがとう! 第3回電王戦の後も、またこういう本を出してください!