突然ですが、居飛車党の級位者のための定跡(常識)講座をやりたいと思います
先日、「将棋観戦記」というブログを拝見していて、そこで「クソ戦法対策」のコーナーをもうけたいという趣旨があり、ぜひやって欲しいというすごい数の拍手が集まっていました
私も楽しみにしていたのですが、なかなか始まりません(^^;
そこで私がやろうというわけです 簡単に習得できる講座です

居飛車党にとって、相手にやられてイヤな2大クソ戦法、
それは早石田と、矢倉崩し右四間ではないでしょうか
もちろん、プロでも指される戦法ではあります しかし、そのあまりにムチャクチャな攻めっぷりに、受けて立って潰されてしまうと、思わず「このクソ戦法が!!」と叫びたくなる、そういう戦法ではないでしょうか

この2つの戦法に比べれば、棒銀なんかはかわいいもんです
銀が交換になっただけで、致命傷にはまだ程遠いことはよくあることです
かたや早石田と矢倉崩し右四間、この2つの戦法の破壊力たるや、恐ろしいものがあります
始まって30手目くらいでもう敗勢、そんなこともしょっちゅうです
そうならないための簡単な対策を伝授しましょう

今回は早石田編です もういきなり結論から述べます 
「早石田に対しては、安直に飛車先を伸ばすな!!」
これが結論です 私が言いたいことはこれだけです 
これを覚えているだけで、短手数で潰される確率がガクンと減ります

今、女流王将戦の本戦トーナメントが囲碁将棋チャンネルで放送されています
香川愛生(まなお)さんが新しい女流王将になりましたね
つい先日放送された2回戦の中井広恵女流六段vs香川愛生女流二段が、▲居飛車vs△早石田でした
その翌週に放送された伊奈川愛菓女流初段vs中澤沙耶アマが、▲矢倉vs△矢倉崩し右四間でした
この2つの実戦を題材に、講座をやります
棋譜は囲碁将棋チャンネルのHPに行けば、動く盤面で見れます↓
http://www.igoshogi.net/shogi/Loushou/index.html

では、中井vs香川の戦いを見て行きましょう 以下をコピペしてKifu for Windowsに取り込んで下さい
とりあげた棋譜では42手目までのところですが、もうすでに後手の香川さんが勝勢になっています
「居飛車がぼんやりしてると、こうやって早石田に潰される」という、まさに典型の棋譜です
この一局、中井さんの負けた原因が、5手目の▲2五歩にあると言えば驚かれる方も多いでしょう

 
開始日時:2013/7/12
棋戦:女流王将戦
先手:中井広恵女流六段
後手:香川愛生女流二段

▲2六歩
*先手は中井女流六段 
△3四歩
*後手は香川女流二段 この2回戦に勝ち、その後も勝ち進み女流王将を獲得することになります
▲7六歩 △3五歩
*来ました! 相手は早石田のようです 居飛車党としては、実はもうここが勝負所なのです 
▲2五歩
*中井さんは何気なく飛車先を伸ばしましたが、これがこの一局で実質上の敗因となりました 信じられないかもしれないですが、なんと、この5手目が敗因なのです この後の展開を見ていきましょう
△3二飛
*香川さんは三間飛車 ここから早い戦いになれば、総称して早石田と呼ばれます
*ここで先手から▲2四歩は、△3六歩~△1五角の王手飛車の筋があり無理筋 その変化は有名なのではぶきます
▲2二角成
*中井さんの対策は、早々の角交換 かなり早い段階での角交換ですが、いずれは角交換になることが多い戦型です
*▲6六歩といった手なら、すぐには潰されませんが、その後に相手に好きなように駒組みされるので、居飛車側としてはあまりやりたくない手なのです
△同 銀
*ここで居飛車としては▲6五角が考えられますが、それには△3四角の受けがあり互角です
*
*もしくは、▲6五角△3六歩▲同歩△5五角の一気の決戦策があり、この変化は居飛車側としては非常に怖いです 
▲8八銀
*中井さんの作戦は?
△6二玉
*ここで▲6五角はやはり△3四角があり、それで形勢は互角です
▲7七銀
*中井さんは持久戦策を選びました しかし、それが▲2五歩と早めに決めた手と矛盾することがこの後、明らかになります
△7二玉
*これでもう▲6五角の筋はなくなり、早石田側としては一安心です
*まだ居飛車側から▲2四歩とは行けません △1五角で王手飛車がかかりますからね
▲4八銀 △3四飛
*香川さんは浮き飛車にし、これで2筋も受かりました
*結局、中井さんは早々の乱戦での決戦にはいきませんでした それなら、▲2五歩を急ぐ必要はなかったのです
▲4六歩
*以下、少し駒組みです 
△8二玉 ▲4七銀
*中井さんも3筋を受けました
△7二銀
*香川さんは美濃に囲いました
▲6八玉 △3二金
*角交換の場合、後手は金がこちらに行くのがバランスがいいです
▲7八玉 △9四歩 ▲9六歩
*端歩を付き合い、まだまだ序盤のようにも思えます
△3三桂
*ところが、この桂がやっかい! 早石田は2五の歩を狙ってくるのです 仮にここで後手番だと、△2五桂と取ってくるのです ▲同飛に△1四角となったら居飛車側の敗勢です
*もう居飛車側は絶対に間違えられない局面なのです
▲5八金右
*4七の銀にヒモをつけた手 この手では手堅く▲3八金もよく見られます しかし、それだと居飛車側は堅く囲えません
*次に、香川さんが狙いの一手を放ちます
△1四角
*狙いはやはりこの角 2五の歩取りが受かりません
*▲1六角と受けても、△2五桂▲同角△2四飛で、居飛車困ります
*中井さんはここから時間を使いはじめます
*(この棋戦は持ち時間25分、切れたら一手40秒)
*香川さんのほうが手がわかりやすく、もうすでに早石田ペースと言っていいでしょう
▲5六角
*もうゆっくりしていられない居飛車側は何とか局面を互角に保とうとします
△5四飛
*いぜんとして、次の2五の歩取りが受かりません もう中井さんとしては戦いに持ち込むしかありません
▲3六歩
*これを△同歩なら▲同銀で、居飛車が調子がいいのですが
△2五桂
*当然、早石田側としては暴れてきます ここから香川さんの猛攻が始まります 
▲3五歩 △3六歩
*軽い好手 ▲同銀には△3七桂成があります 解説の稲葉六段も、この手にどう対応するべきか、迷っていました ▲3八飛、▲3八銀など色々考えられます 
*中井さん、時間を使わされ、もう雰囲気は完全に香川さんペースです 観ていてそれが伝わってきました
▲3八銀
*稲葉六段が一番手堅い受けと解説していた手
*(激指によれば▲3八飛もあったようです)
*ここから、香川さんの、いかにも早石田らしい攻めが炸裂します 
△5六飛
*うおっ
▲同 歩 △3七角
*ドッカーン! 強烈な打ち込み! これぞクソ戦法と呼びたくなる証のような攻め(笑)
*稲葉六段の解説では、これが成立しているとのこと 
*ここで中井さんが正解を指せば、まだ難しいとの解説でしたが・・・
▲同 桂
*稲葉六段のお勧めは▲1八飛の辛抱でした 実戦ではこの角を取ってしまったため、一気に中井さんが敗勢に陥りました
△同歩成
*こういう展開、ありがちですよね~(^^;
▲2六飛
*この手では▲同銀とし、と金をなくしたほうが良かったですが、盤上の空気がもう完全に香川さんペースなんですよね
△3八と
*ここで中井さん、はたと困った 持ち駒が大駒ばかりで、使いどころがないです 
▲7五歩
*つらい一手です
△3七桂成
*香川さん、乱暴狼藉してやったり 後は後手としては、と金と成桂を寄せていけばいいので、手がわかりやすいです
*以下、香川さんが押し切りました 正直、居飛車党としては、目を覆いたくなる内容でした(^^;
*
まで42手で中断


この一局、中井さんの敗因は何か? 事実上、それは5手目の▲2五歩にまでさかのぼるのです
早石田に対して、居飛車側が超急戦での決戦を望まないのなら、実は▲2五歩は不急の一手なのです
中井さんは持久戦を目指していたのですからね
香川さんの駒組みが終わったとたん、早石田の常套手段、△3三桂~△1四角で、▲2五歩が狙われてしまい、それがもう勝負に直結してしまっているのです

居飛車側は、▲2五歩の代わりに▲4八銀とでもしておけば、持久戦に持ち込めたのです
「すぐには飛車先を伸ばさずに他に手を回すべき、飛車先はいつでも伸ばせる」
それが早石田に短手数で潰されないための、一番簡単な居飛車側の心得です
居飛車側が後手番のときにも、この心得は使えます

今回の講座は、早石田に潰されないための講座であって、こうすれば居飛車側が有利になるというような、必勝講座ではありません そこは誤解のないようにお願いします

なお、後手早石田は、今期のNHK杯の▲中田宏樹vs△ハッシーでも出てきた戦法です 
(中田プロは5手目▲2五歩としていますが、その後△1四角を警戒して▲1六歩と様子を見るという、工夫をしています その指し方は高度です ▲2五歩とすぐに伸ばさないほうが簡単な対策です)

今回のまとめ「早石田に対しては、安直に飛車先を伸ばすな!!」 次は矢倉崩し右四間編です