居飛車党の級位者のための定跡講座、その2は、矢倉崩し右四間飛車(以下、右四間)編です

「その1」で取り上げた早石田に負けず劣らず、この右四間も恐ろしい「クソ戦法」です
矢倉側が無策に矢倉に組み、右四間側の一気の猛攻を食らい、一方的に矢倉が壊滅、という展開は低級ならずとも、よくあるのではないでしょうか

右四間で潰されないためには、どうしたらいいのか?
根本的な解決策、それは「角道を止めるな」ということです
自分の側から角道を止めると、相手に主導権を取られてしまうのは仕方のないことなのです

「角道を止めなければ矢倉に組めないじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、その通りです
「矢倉に組むからには、最初から右四間を受けて立つ覚悟がないといけない」
これは「居飛車党の常識」なんです
私のおじいちゃんの遺言、「心臓止めても角道止めるな」という言葉には、相手に右四間で攻められたくない、そういう意味が含まれているのです

ちなみに、あの山崎七段も、解説会で「僕は矢倉をやらないのは、右四間がイヤだからなんです」
と言ったほどです(2009.6.16のこのブログに記事あり) それほど右四間は恐ろしい戦法なんです 

もちろん、矢倉側も受け方を知っていれば、互角に戦えます
右四間で矢倉が必ず潰されるなら、矢倉という戦法自体、絶滅しているはずですからね
 
さて、実際に矢倉vs右四間になった場合は、矢倉側はどう受けるのがいいのでしょうか
(以下、先手が矢倉側、後手が右四間側で進めます)
それは「金銀を6筋に集中させ、徹底的に受けよ」 これが基本理念となります
ヘタに攻め合いなど考えないほうがいいです 
まずは右四間側の攻めを受け止めて、局面が一段落してから、それから反撃、そう覚えておきましょう

受けの駒組みは色々ありますが、次の3点が基本となります セットで覚えておきましょう
①△8五歩と突かれるまでは左銀を▲7七銀と上がらない(△8五桂が▲7七銀に当たってくるため)
②右銀は▲5七銀として受けに参加させる
③角は居角(引き角にせず、8八のままで6筋の受けに利かせておく)
この3点が駒組みのポイントとなります

では、女流の実戦譜を見てみましょう
伊奈川愛菓(いながわ まなか)女流1級と、中澤沙耶(なかざわ さや)アマの一局です 
これは矢倉vs右四間のほんの一例ですが、先手の駒組みは参考になると思います
①~③の3つがきちんと実践されているのがわかります
以下をコピペしてKifu for Windowsに取り込んで下さい

開始日時:2013/7/12
棋戦:女流王将戦 
先手:伊奈川愛菓女流1級
後手:中澤沙耶アマ

▲7六歩
*持ち時間は25分、切れたら一手40秒未満 先手は伊奈川女流1級
△8四歩
*後手は中澤アマ 中澤さんは東海研修会に所属 
▲6八銀 △3四歩 ▲6六歩
*角道を止めた手 持久戦に持ち込める反面、相手に攻めの主導権を与える手でもある
△6二銀 ▲5六歩 △6四歩
*来た! この手で、もう相手の右四間を警戒しないといけない 先手が何もしないと、いきなり△6五歩の仕掛けがある
▲7八金
*がっちり受けるのが手堅い
△6三銀 ▲4八銀
*この銀を5七に上がって受けるのが手堅い 相手が速攻を狙っているので、先手は棒銀などで攻め合う展開ではない
*
*この▲4八銀で、先に▲5八金右としてしまうと、△6五歩▲同歩△8八角成▲同金△6六角で両取りの筋が発生するので注意したい
△7四歩 ▲2六歩
*飛車先を突いて自然だが、手堅く先に守りに手をかけるのもあった
△5四銀 ▲5七銀右
*このように、▲5七銀右とするのが受けの形
△6二飛 ▲2五歩
*先手は飛車先を一つ突いたからには、もう一つ突かなければ意味がない
△3三角
*後手は歩交換を受けたが、受けないで攻めに手をかけるのも有力だ
▲5八金
*金銀を6筋に集中させ、徹底的に受ける これが右四間に対する受けの根本的な考え方だ
△3二金
*後手は囲い方は色々あるところ △3二銀として、美濃に囲う手もあるし、何も囲わず、居玉のまま攻めてくるのもあるところ 
▲6九玉 △4一玉
*後手としては△3二金が壁になっているので、すぐに△6五歩とは行きづらい 
▲6七金右
*金も守りに参加させ、6筋が手厚い
*
*後手がもっと速攻で来たときには、△6七銀と上がって受ける手がいい手になることもある 
△9四歩
*様子を見た手
▲9六歩
*無難に受けておいた
△4二銀
*後手は壁が解消された
▲7九玉
*しかし、先手もこの玉を寄れて一安心
*これで△6五歩に堂々と▲同歩と取れる △8八角成に▲同玉と取れるからだ
△7三桂
*桂跳ねだが、やや早い気がする 右四間側としては、桂は攻める直前に跳ねるのがいい 桂頭を狙われる手がないからだ
▲4六歩
*先手はこの歩を突いて、徹底防戦の構え
*しかしここの歩を突くと、もう▲4六銀と出る筋がなくなるので、善悪は微妙だ 
*▲4六銀で△6五歩を誘い、以下▲5七銀上△6六歩▲同銀・・・といった展開も互角でありうる
△5一金 ▲1六歩 △3一玉
*後手は玉を固めている
▲3六歩
*先手は何かの折に、▲3七桂~▲4五桂で攻めたいところだ
△1四歩 ▲3七桂
*そろそろ駒組みが終わり どちらが動くか
*先手から動く手も難しい
△6五歩
*後手の中澤さん、攻めてきたが、先手としても待ち受けるところ
*後手としては、△6一飛など、何か一手パスして様子見という高度戦術もあった
▲同 歩
*本譜は▲同歩だったが、激指定跡道場3では、▲3五歩で攻め合うという手も有力とのこと これは難しいので省略します
△8八角成 ▲同 玉
*▲同金は形が悪いので、▲同玉と取りたい
△7五歩
*手を渡してきた 微妙な手だ
*ここで先手の伊奈川さん大長考
*感想戦で解説の稲葉六段が指摘したが、ここではいい手があった
*<ヒント>6筋に注目 軽い手筋の一手
▲6六角
*本譜はこう打ったが、ここでは▲6四歩の突き出しが有力だった △同飛には▲8二角の桂香両取りがある
*▲6四歩なら後手は身動き取れず、困っていた
*▲6四歩のような手はぜひ覚えておきたいところだ
△4四角 ▲同 角 △同 歩
*解説の稲葉六段は、なんで▲6六角を打ったんでしょうね?と不思議がっていたが・・・
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛
*このときの△3三角を防ぐために、伊奈川さんは△4四歩をあえて突かせていたのだった
△2三歩 ▲2八飛
*▲2六飛と下がるのも有力だった、と稲葉六段
△9五歩
*端に味付け
▲同 歩
*後手の中澤さんとしては、次の手があまり良くなかった
△6五桂
*この手が疑問手だった △6九角ならまだまだ難しかった
▲6六銀
*▲4八銀は、飛車の横利きが消えるので、あまりやりたくない手だ
△7六歩
*ここで、次の先手の手が当然の一手ながら厳しかった
▲7三角
*飛車取りで厳しい
*本譜は△6一飛と逃げたが、後手がハッキリ悪くなった
*稲葉六段によれば、ここでは勝負手として△7七桂成!があったとのこと(激指も同意見)
*
*△7七桂成▲同銀(どちらの銀でも)なら△同歩成で実戦より数段に得だし、△7七桂成▲同桂なら△6六飛で△3九角を見て勝負形、ということだった
△6一飛 ▲6二歩
*飛車を押さえ込んで、好手
△8一飛 ▲6四角成
*先手が良くなった この後、後手の中澤さんもがんばり、終盤かなり危うい局面までもつれたが、なんとか先手の伊奈川さんが逃げ切った (終局は125手)
*
*先手の矢倉側としては、序盤の駒組みと、取られる歩を突き出す▲6四歩の手筋の受けの一手を、ぜひ覚えておきたい


今回のまとめ
「右四間が怖いのなら、最初から角道を止めるな、矢倉はもうあきらめろ」
「相手が右四間で来たら、居角のまま6筋に金銀を集結させて徹底防戦」 

これで講座を終わります 早石田編、矢倉崩し右四間編、参考になれば幸いです
「クソ戦法」に潰されて将棋が嫌いになる人が少しでも減れば、と願っております