羽生善治 三冠vs大石直嗣(ただし) 六段 NHK杯 3回戦
解説 山崎隆之 八段

今日は羽生だ ワクワクするなあ どんな勝ち方をしてくれるのだろう 
若手の大石相手に、まず不覚は取らないだろう 羽生は43歳、大石は24歳ということだ
山崎は、いつの間にか八段になってたのか 

羽生は1985年四段、竜王戦1組、A級 現在、王位、王座、棋聖の三冠 2回戦で木村に勝ち 
28回目の本戦出場 ちなみに2回戦の木村戦は、先手で角換わり相腰掛け銀から攻めをつなげての
危なげない快勝だった
大石は2009年四段、竜王戦4組、C2 1回戦で浦野、2回戦で行方に勝ち 3回目の本戦出場
1回戦の浦野戦は、浦野の無理やり矢倉を攻め倒して圧勝、
2回戦の行方戦はダイレクト向かい飛車で、行方のポカに助けられて勝っている
 
矢内「羽生三冠は、山崎八段にとってはどのような棋士で」
山崎「え? 僕にとっては? 僕にとっては迷惑な棋士なんですけど(^^;」
矢内「そんな ハッキリと(笑)」
山崎「いや あの 将棋界にこの棋士がいないと困ります 今日も控え室でソフトな感じのオーラに
 包まれているんですけども、対峙(たいじ)すると真剣を持っているような印象を受ける方で、
 魅力ある雰囲気に包まれている」

山崎「大石君は近年の活躍を見ると、もういつもこれくらいの成績を残してますし、
 誰に勝ってもおかしくない 若手の中でも有数の勢いがあります 楽しみな、頼もしい弟弟子
 大石の持ち味と言えば攻め
 『あ、こうやったら簡単に勝てるんだ』というようなうまい攻めがパッと出てくる」

事前のインタビュー
羽生「(今日の展開予想は)先後によってかなり違うと思うんですけど、最初からかなり激しい
 展開になるかなと思っています 大石さんは若手の伸び盛りの棋士だと思っていますので、
 私も元気な将棋が指せるようにがんばりたい」

大石「(今日の展開予想は)先手番なら相掛かりか横歩取りみたいな将棋で、
 後手番ならダイレクト向かい飛車みたいな力戦を指したいと思います
 将棋界を代表するスターの先生なので、自分らしく挑みたいと思います」

先手羽生で対局開始 羽生の居飛車に、大石が宣言どおりダイレクト向かい飛車に振ったところ、
羽生が▲6五角と打った 角交換の後、大石が飛車を7筋に戻し、袖飛車で対応 
山崎「ダイレクト向かい飛車の出だしなんですけど、これはもう相居飛車」

2人の対戦成績が出て、1戦だけしていて、銀河戦で羽生が勝っている
その将棋は先手大石の相掛かりで、羽生がかなり危なかった一局と私は記憶している
山崎「1年半前の銀河戦は、羽生がリードし、大石が追い上げたが届かなかった 
 『もう勝てないな』という印象を植え付けられた一局ではない」

駒組みが続く 羽生は矢倉に囲って自然 大石も矢倉風で、金銀を密着させて玉は堅い
雑談で、矢内「大石六段は普段はすごく物腰が柔らかくて勝負師という感じは・・・」
山崎「全くないんですけどね ボーッとしてて(笑) でも普段見るよりはTVで見ると大分違いますね
 対局姿は目つきが鋭い」
矢内「山崎八段は、なんと言ってもこのNHK杯、羽生三冠に勝って優勝されてますからね」
山崎「もうそれがなかったら、本当にもうー たぶん立ち直れないくらい負けてますので、
 その何十倍も負けてますのでね」
私は山崎が羽生にどのくらい負けているか、気になったので調べてみた
棋譜でーたべーすによると、羽生17勝、山崎2勝ということだ(非公式戦含む)うわ、負けてるな(^^;

さて、大石の右銀が出てきて、この銀を受けに使う様子だ 羽生がそこに目をつけた
▲6一角と敵陣深く打ち込み、続いて▲7二歩でこの角を助けようという構想だ
おおー、そんな手があるか あら? これは馬と、と金が作れちゃう? もう羽生がちょっといいの? 
山崎「この角はなかなかちょっと見えにくいですね 後手の飛車を攻撃に参加させない意味が9割」
と山崎はのんびり解説していたものだから、私は安心して見ていたのだ ところがどっこい!

大石がお返しとばかりに△6九角と打ち込んできたではないか え? 何これ・・・?
山崎「あれ! なるほど 指されるとこれが一番の手に見えます」
なんと、さっき打った羽生の角が、取られてしまうではないか! あ、ありゃりゃ???
駒の損得だけ見れば角を消し合い、交換で損得なしなんだけど、羽生玉の横に居たカナメの金が
居なくなって、かなり弱体化してしまった 
しかも羽生は右銀まで撤退を余儀なくされるという、すごい利かされ!
山崎「(羽生の右銀の撤退)これは非常手段という感じ 形的にはかなり悪い」
うおー、羽生がモロに技有り食らってるやん 大丈夫か? でもまあ、まだこれからだ、大丈夫だろう?

山崎「これは大石、局面的にはすごくチャンス 完全にペースを握ってると思いますね」
そして、大石の手はここからうまかった 
羽生の桂を跳ねさせ、それを銀で食いちぎり、その空いた空間に角打ち
これが飛車取り、さらに、と金を作る手を見て、実に厳しいではないか
げ、げぇ~ やめて~ 羽生をいじめないで~
山崎「これは並の棋士だったら、もう困っちゃってますね」
うむ、山崎、いい表現だ 羽生はもちろん並の棋士なんかではないからな!

羽生、見るからに苦しいが、どうにかこうにか飛車を逃げ回っている
そして右銀も一段目(2九)に退却! うわ~ こんなん、見たことないわ
相居飛車で、三段目に居るべき攻めの右銀が2九に撤退って・・・
だが、ここはこれで最善のがんばりだったようだ 
山崎「さすが羽生 最小限の被害で抑えた 
 と金を作られたところからは、すぐにも敗勢に陥る危機だったが」
そうだろう、そうだろう NHK杯4連覇の羽生がそう簡単に負けるわけがないのだ
もちろん形勢はまだ悪いのだろうが、羽生ならなんとかしてくれる!

考慮時間を先に使い切ったのは、羽生のほうだった 残りが▲0回vs△1回 
山崎「羽生が先に使い切るのは、かなりめずらしいんじゃないですか」
羽生~ なんとかしてくれ~ 持ち駒に角金銀歩を持ってるから、羽生ならまだなんとか出来る!
そこで羽生がひねり出したのが、歩の突き捨ての連続から、▲6三角というわけのわからない、
ぼんやりした角打ちだった な、なんじゃこれは? どこにも利いていないような? 

この角が置かれた瞬間、盤上に一気に怪しいムードが漂った うお、これにはどう対処していいのやら? 
山崎「効いているような効いていないような角 羽生マジックの下準備ですね これは何でしょうね」
思わず最後の考慮時間を使う大石 大石にも「なんだこれは」という感がありありだ 
おおおお、これはいわゆる、羽生の手渡し! この終盤に来て、相手の手を訊くという一着、
一見ぼんやりした手で、相手の間違いを誘う手だ 出るか、羽生マジック・・・!!

が! ここで大石は玉の早逃げ! うわー なんと冷静な! あああ、それ、正着っぽい
羽生に手を渡し返して、絶対に損のない手だ あら~、大石、強えーぞ

大石の手が緩まない 冷静な、羽生の狙いを消す損のない手を連発してくる
山崎「いつの間にか、どちらが攻め勝っているかわからない状況になってますね」
そう言うが、しかし、玉の堅さが違う 羽生の玉は薄い 玉飛接近で、同時に攻められてしまうのが痛い
羽生ピンチ~ おい~ なんとかしてくれ~ 

羽生が「端玉には端歩」の格言どおり1筋を攻めたのだが、肝心の1九に香車がいない この攻めは?
もう他に手がなかったから、仕方なくか 
山崎「ん これは羽生が苦しい モニターでは大石には元気があるように見える 
 羽生はちょっと自信がないように見えますね」
流れが羽生のほうに来ないもんね ▲6三角の「羽生マジック」が見事にかわされた感がある

山崎「大石がちゃんとやれば勝つはずです チャンスが来てます」 
矢内「ドキドキしてきちゃった」
思わず矢内が羽生ファンの声を代弁、いや、それがNHK杯を観ている全将棋ファンの声だろう

おーい、羽生、負けるんかー まさか3回戦で負けるんかー
いよいよオーラス、山崎が「大石は飛車を取った後、どう羽生玉を縛るか」と解説していたら、
なんと大石は飛車を取りに行かない! 羽生の玉を逃がさない、縛りの歩打ちを優先!
うわ これ、いい手??
山崎「こういうところですね 大石君の優れているところはね 手自体は平凡に見えるんですけどね」

もう絶体絶命の羽生玉 うわー もうアカンわー 大阪弁になってるわー げえー 羽生先生ー
羽生玉が寄り筋に入り、山崎「僕がわかりますから、大石君が見落とすはずがないんです」
矢内「どうしてそんな自分を落とすんですか(笑)」
ここは笑った 山崎、自虐的なんだよね(笑) あああああ 香を打たれてもうそれまでか・・・
そして、大石は香を打った 羽生「あ 負けました」

「うおーーー」 羽生が頭を下げた瞬間、私は大声を発してしまった 
かなり前からこの結果は予見できていたのだが思わず(^^; 126手で大石の勝ち 

山崎「羽生先生らしく、相手の方針を決めさせて、戦機をうかがうという指し方をしたんですけどね
 うまく大石君らしい軽いカウンターで戦機を捕らえた が、さすがに羽生は一流の技で、どちらが勝つか
 わからないという状況まで持っていったんですけど、最後大石君らしい、簡単に勝ったように
 見えるんですけど、平凡な手に見えるすごさ、無心で実力を出し切り、見事な将棋だったと思います」  
 
たしかに、最後の大石の寄せでの、飛車を取りに行かずに、縛りの歩を打ったのは見事だったなあ
そして、その前の羽生が▲6三角と打ったときの羽生マジックが出るか、
という怪しいムードに包まれたときの玉の早逃げという冷静な一着、実に落ち着いていた
「羽生の手渡し」に対して、手渡しのお返しをしたんだもん

うわーー でも羽生が3回戦で消えたか 渡辺に続き、NHK杯で絶対王者の羽生が消えた
ああー 年が越せねえー(笑) NHK杯、来年もやるの? 羽生がいないのにまだ続くん?
羽生が負けたから、もう終わりじゃないの? 

えーっと、まだ放心状態なんですけど・・・(^^; 
羽生の生涯勝率が0.7223だから、4回やれば1回以上の確率で負けるんだけどね 
いやしかし負けるか・・・ 今調べてみたら、大石はC2で、今7戦全勝で単独トップなのか
そんな調子良かったのか それを早く言ってよ(^^;
羽生がベスト8に行けずに敗退したのは、第56回の深浦戦で負けたとき以来の7年ぶりということだ

渡辺が消え、羽生も消えた第63回NHK杯 こうなってくると、がぜん森内が有力か 
今期は波乱状態になって参りました (来週はNHK杯はお休みで、将棋の日の模様が放送されます)