森内俊之 竜王・名人vs船江恒平 五段 NHK杯 3回戦
解説 阿部隆 八段

(訂正があります 1月10日の記事で、矢内さんのNHK杯の司会、4年目と書きましたが、
 5年目の間違いでした すいませんでした) 

3回戦もあと2局、森内竜王名人が登場 羽生と渡辺が負けた今期NHK杯、森内が残る唯一の
タイトルホルダーだ 対するは電王戦リベンジマッチで完勝した船江 とても楽しみな好カードだ
森内は1987年四段、18世名人資格保持者 2回戦で松尾に勝ち 25回目の本戦出場
ちなみに松尾戦は、相矢倉の難解な激戦で、森内の逆転勝ちだった
船江は2010年四段、竜王戦5組、C1 1回戦で糸谷、2回戦で深浦に勝ち 2回目の本戦出場 
ちなみに糸谷戦は、角換わりの176手の大熱戦 深浦戦は、相矢倉で85手の短手数だった

解説の阿部「横綱の森内の登場 2年くらい前のスランプを脱皮して、今は絶好調 重厚な受けの棋風
 対して船江は関西のノリにノっている若手 軽快な攻めの棋風 
 船江は私が奨励会の幹事をやっていたときに、初めて四段になった棋士 明るく明朗な人柄
 奨励会で苦戦したが、四段になって一気に花開いた C2を全勝で一期抜けした」

事前のインタビュー
森内「船江さんは居飛車の正統派で、しっかりした将棋を指すので、じっくりした中盤から、じわじわと
 押していけるような将棋が指せればいいなと思っています
 NHK杯も久しぶりですので、終盤までどちらが勝つかわからないような面白い将棋を指したいと
 思っています」

船江「森内先生も私も居飛車党ですので、相居飛車の将棋になると思っています 
 森内先生は非常に受けが強いので、自分は攻めの棋風ですので、
 自分の攻めがどれくらい通用するかというところを見て欲しいと思います」

先手森内で、横歩取りになった ▲中住まいvs△8四飛+△5二玉型の中原囲い
阿部「きびきび進みましたね」
本当にすごい早く手が進む(^^; 早く戦いが見たい私としてはありがたい
阿部「先手は一番オーソドックスに構えました 後手は一番流行している形
 船江はこの形のスペシャリスト この間、僕が似た形を先手を持って森内さんに負けたんですよ
 今日は指し方を解説者に教えてやる、という感じですね」

お互いに飛車を4段目に浮いていて、森内は7筋の位を取り、船江は1筋の位を取る作戦
阿部「もう前例がない 森内が研究でなく、力勝負を挑んでいる」
お互いに中段の飛車を転回、森内は飛車を7筋に振り、ヒネリ飛車風だ 対して船江は2筋に振ってきた 
船江が2筋方面を銀が上がって攻めようとしたところ、ここで阿部が早くも形勢について言及した
阿部「ここは実はもう船江ペースだと思いますよ あんまり森内側を持ちたくない」

おっ、船江、いけるのか・・・ しかし、森内にも返し技の7筋からの攻め合いがあった
これが実際に指されてみると、逆に船江が苦しそうではないか
阿部「決戦になっちゃうと、ちょっと、さっき打った船江の歩がボケてますね 
 しかし、船江は受け止めればいいわけですから、勝負所です」
矢内「形勢は?」
阿部「どうなんでしょうね 一手でペースが変わる将棋なんで」
一手指したほうが良く見える、という中盤だ 難しいな 時間は、残り▲5回vs△6回 いい勝負だ

互いに飛、角の大駒をどう使うかという難解な中盤が続き、まだまだここから長いと思われた 
が! ここで船江が、重大なミスを犯してしまった! 
飛車取りに角を当てられたのだが、飛車が逃げると馬を急所に作られてしまう、という、
あってはならない単純ミス! まさかこれが船江の読み筋とは思えない
阿部「うっかりしたんじゃないでしょうかね けっこうキツい気がするけど」
残り時間も▲4回vs△0回に、うわー 船江、もうダメなんでは?
あー、まだでも自陣角打ってがんばるか つらそうだけどなあ 
なんと言っても相手が森内、いったんリードされると厳しそう・・・

そう思って見ていたところ、なんと、森内が今作ったばかりの馬を切って、強引に飛車を成りに行った!
阿部「はぁー! これはちょっと気がつきにくいけど」
うわあ、これで一気に決まっているのか? もう、いきなりの寄せがある? 森内の圧勝?
しかし阿部は冷静に分析をしだした 矢内もなんかおかしいと思っているようだ
矢内「森内も持ち駒が金だけですからね」
阿部「いや、これは大変だと思います」
検討するが、森内にいい寄せが見つからない
阿部「これ、森内はちょっとやりすぎたんじゃないですかね 
 切れない攻めをやらなきゃいけないんですけど、なかなか」
おおお、あのピンチの局面から一転、船江にチャンスが、森内、まさかの決め急ぎ!

森内、作った竜を逃げざる手を余儀なくされ、明らかに変調だ
矢内「スリリングな終盤になってきましたね」
阿部「これは船江が優勢ですね」 キター、阿部の断言!
いけいけ船江、森内に勝ってしまえ! 竜王名人を食ってしまえ!

だがしかし? 森内が玉の上部脱出路を作られてみると、寄せが意外とない? ど、どうなってんの
阿部「これ、けっこう大変ですね 森内の粘り、すごいですね」  
ええー、船江がいいんじゃないのか(^^; 船江は急所に飛車を打って迫る
阿部「はぁー! これやっぱり、船江、さすがっていう手ですね 自玉が詰まないのを見切ってですね」
お互いに完全に30秒将棋、これは面白い終盤になった!

森内が玉を引いて飛車に当て、船江が飛車を逃がして香を詰めろで取ったときだった
森内の自陣角、これが阿部いわく、詰めろ逃れの詰めろの盤上この一手! 
阿部「森内のすごいふところの深さですね だって、森内持ちですもん、この局面」
げええ どこで逆転したんやー 受けの森内、本領発揮! 森内の角がピッカピカに光っている
この玉引きから自陣角は森内将棋の真髄!

船江の攻めが完全に攻めが切れ、万事休す 117手、森内の勝ち
あああー、船江、あといっぽ及ばなかったか あー、船江、勝てた将棋だったかも・・・

阿部「森内がダメな局面かと思ったんですけど、そこからのふところの深さというか、しっかりしてる
 大局観というか読みというか、それが光った一局でしたね
 船江は残念な一局だった、よくここまで追いつめたと思います 一時は勝勢かと思ったですけどね」

終局後、森内は開口一番、「ちょっと悪かったですね」
感想戦が5分しかなかったが、こうやれば船江が勝っていたんでは、という手順をやっていた
ううー、船江、惜しい・・・

阿部の解説では形勢判断が2転3転していたが、実際の形勢もそのとおりだったんじゃないかと思う
中盤で森内が馬を作ったところでは明らかに森内が良さそう、その馬を切ってしまったのは
早計で、逆転したと思う それで船江が攻めを間違えて再逆転、というのがこの一局ではなかったか

詰めろ逃れの詰めろが出たスリリングな終盤で、楽しめた一局だった
森内の勝ちの決め手となった自陣角、こういうのが指せたら気持ちいいだろうなあ 将棋の醍醐味だね
それにしても、竜王名人の森内をもってしても、若手を相手にギリギリの勝負、勝つのって大変だ(^^;