大石直嗣 六段vs丸山忠久 九段 NHK杯 準決勝
解説 片上大輔 六段

矢内、結婚してからすっかり大人っぽくなったなあ 
さて今日は準決勝もう一試合、私は若手の大石(24歳)を応援して観ることにしようっと

大石は2009年四段、竜王戦4組、C2で9連勝し、C1への昇級を決めている
1回戦で浦野、2回戦で行方、3回戦で羽生、準々決勝で屋敷に勝ち 本戦は3回目の出場
ちなみに前局の屋敷戦は、ダイレクト向かい飛車で、うまいさばきを見せての会心譜だった

丸山は1990年四段、竜王戦1組、B1では8勝4敗で5位だった
2回戦で飯島、3回戦で金井、準々決勝で三浦に勝ち 本戦は23回目の出場
ちなみに前局の三浦戦は、横歩取りで激辛流を炸裂させて快勝している

解説の片上「大石は、森信雄門下の私の弟弟子(おとうとでし) 
 大石はプロになって最初は苦戦していたが、3年目くらいから力をつけてきて、
 今年度は本当に大活躍ですね 羽生三冠を破って期待以上の、すばらしい活躍だと思います 

 丸山は地味ながら、毎年高い勝率を上げている 今年のNHK杯はタイトルホルダーが消えて
 波乱含みと思うんですが、そういうところで勝負強く勝ち抜いてきそうな存在感のある棋士
 下位に取りこぼしが少ない印象があります 超一流棋士です
 2人とも、表情から形勢がわかりにくいという特徴がある」

事前のインタビュー
大石「丸山先生は、角換わりを得意とされている先生で、優勢になっても勝ちを急がず、
 激辛流で勝たれる先生だと思います 
 先ほどケーキをいただきまして、甘党で対抗したいなと思っております(笑)
 思い切り良く自分の力を出し切れるように、全力を出したいなと思っております」

丸山「大石六段は、角交換振り飛車を得意としているので、まあそのような展開になると思います
 いつもどおり、自然体で集中して本局もがんばりたいと思います」

先手大石で、居飛車の出だし 4手目に丸山が角交換してきた ん? 一手損角換わりか?
と思いきや、大石は早々に1筋の位を取り、2七に銀を持ってきてから、8筋に飛車を振り、
向かい飛車にした へえー 陽動振り飛車っぽいね めずらしいことをやるなあ 

だが、驚きはその次だった 丸山も2筋に飛車を振り、なんと戦型は、まさかまさかの相振り飛車に!
ひえー、丸山の振り飛車なんてめったに見れないぞ
片上「丸山はほとんど時間を使わなかったから、用意があったのだろう
 大石の銀冠を、向かい飛車でとがめてやろうという丸山の作戦ですね」

この先手側の大石の作戦は、片上によると、佐藤康光のアイデアだそうだ 
片上「前例のない展開 これは力比べですね 丸山がこういう変わった作戦を取るのはめずらしい」 
定跡がない力比べの将棋、いいよいいよー どっちが強いか、じっくり観させてもらおう 

駒組みが終わり、そろそろ開戦か 
片上「こうなって見ると、先手の大石の側を持ちたい 指した手に無駄がない 端も大きい
 大石がうまくやってるんじゃないですか」
と言った直後だった 丸山がいきなり先手陣深くに角を打ち込んできた! うわ、もう勝負手だな
矢内「こういうフワッとした手を指されると難しいですね」
片上「何をしていいか、わからなくなりますね 丸山はこういう難しい手が得意技なんですよ」 

丸山は何を狙ってるんだ? この角は先手の銀冠の金に当ててるけど、
まさかいきなり切るっていうのもムチャだろうし・・・ ぼんやりした角だなあ?
片上「解説の難しい、狙いの難しい将棋になりましたね」
丸山は何をするのか、って、丸山、いきなり角切ったーー!! おおーー! こ、これが成立するの??
映し出された丸山はポーカーフェイス、片上「これは普通は無表情でやる手ではないんですけど(^^;」

とりあえず大石陣の銀冠は形は崩れたが、角金交換の丸山の駒損だ
丸山の継続手が俄然、注目された そこで丸山が放った手、それは先手の銀の頭にベタッと金を打つ、
非常に考えにくい俗手だった! う、この金で歩を取って、先手を歩切れにしようということか!
矢内「金をかぶせていきましたね」
片上「え、あ、金? あ そんな手がありましたか ほー なるほど 
 こんな手がありましたか はあ~ うるさいですね これはたしかに」

感心しきりの片上、大盤でこの金打ちをどう受けるか検討してみるが、うまい受けが見つからない
片上「どうするんでしょう 大石、ピンチですね」
うわー、角を打ったときからこれが読み筋か このベタ金、厳しい! 大石がんばれ、まだまだ中盤だぞ

大石は自陣放置で攻め合いを選んだが、丸山に歩で玉頭を攻められて、いかにも潰されそうだ
片上「受け方がわかりません 部分的にムチャクチャ厳しいですね」
考慮時間の残りも、▲0回vs△5回になってしまったではないか ああー大石、これはツライ!
片上「大石、これは大ピンチですね 丸山のベタ金打ちは気がつきにくい手でしたね」 

だが、大石も伊達にここまで勝ちあがってきたわけではなかった
銀を後手の桂が利いている筋にわざと捨てる受けの勝負手を放った 
片上「魅せますね~ 気がつきにくい、なかなかいい手だったと思います」
お、まだいけるか 大石、なんとか食らいつけ!
片上「しかし形勢は丸山が少しいいです」
まだわからんぞ 丸山がミスるかもしれん、粘れ、大石!

手の広いところで、丸山が考慮時間を使わずに指してきた
片上「丸山はノータイムだったから自分が勝ちと見てますね 時間を温存しているということですね
 んー、でも、そんな簡単かなあ? ただトップ棋士なら、もう読みきりという可能性もありますね」

大石が丸山玉を攻めて、相当迫ったかに見えたのだが、丸山は落ち着いて玉の早逃げ
片上「これがいい手なんですね そうかー」
うわ、もうホントにもう丸山は全て読みきってる?
大石は歩切れのため、自陣がうまく受からない 歩の代わりに金を代用して玉頭を受けたが、
これは見るからにツライなー とりあえず丸山の飛車を捕獲して、あとは丸山のミス待ちだ

丸山は持ち駒が角角銀桂歩5枚、駒をいっぱい持っていて、攻めの手段がすごく多いので、
まだ間違える確率が高いぞ 的確に寄せれるか? したらば、さっそく大石玉に詰めろがキター
う、受けにくい 30秒でどうする、大石? まさか投了か? と思って観ていると、
自陣に飛車打ち! おおー 根性の自陣飛車!
片上「おおー これはさすがですね この飛車は立派な手ですよ
 若いうちはこれくらいがんばらなきゃいけませんね」
そうだ、まだ粘れ、大石・・・! 

が、この日の丸山は鬼だった 全く間違える雰囲気がなく、一手ずつ追いつめていく
大石も遊び金を引いてがんばるが、丸山は何事もなかったように勝つための手続きを踏んでいく
片上「ちょっと差がついてしまいました、残念ながら」
画面に映し出された大石、残念そう・・・ 表情には出ないタイプの棋士と紹介されてたけど、
さすがに無念さが伝わってくる顔だ 一方、丸山は集中している顔 油断のかけらも見当たらない

そして最後、丸山はタダで取れる飛車には見向きもせず、決め手を放って、大石玉を討ち取った
大石は気持ちを整理するためだろう、ほぼ詰みまで指して投げた
104手、丸山の勝ち 丸山は考慮時間を3回余していた

片上「(中盤で)気がついたら形勢が飛んじゃってました 
 丸山のベタ金打ちのときに、うまい対処が必要だった
 ちょっとでもスキがあると、一気に寄り切られてしまうという、トップ棋士の怖さを見た将棋でしたね」

うわ~、丸山、つえええーーーーー 大石、ド完敗! 今回の丸山は鬼の強さだったなーーー
正直、格の違いを見せ付けられたっていう感じがした
全ては丸山の手の内で事が運ばれていた、という内容だったと思う 
角切りからベタ金打ちでバッサリ一刀両断、それでもう決まり! あとは間違える余地なし!
決して大石は弱かったわけじゃない、丸山が強すぎた・・・ 
丸山、超一流と呼ぶにふさわしい、すばらしい指しまわしだった!

感想戦で、矢内「今回の作戦というのは、予定ですか?」と訊いたのに対し、
大石「一度はやってみたかった戦法なんですけど、ちょっとあまり良くなかったですかね」
大石としては完敗だったので、もうこの作戦自体を今後指す気がなくなった、という空気すら感じられた
いや~、丸山、強かったなー 丸山、さすが名人も獲った棋士だ 丸山の会心譜、面白かった!
丸山が決勝進出者にふさわしい強さを見せつけた これで決勝は郷田vs丸山となった 楽しみだ(^^)

来週は、決勝の前に、来期の女流代表を決める、香川女流王将vs甲斐女流二冠が放送されるそうです
(この下の1つ前の記事に、林葉直子さんの「遺言──最後の食卓」のレビューがあります)