丸山忠久 九段vs郷田真隆 九段 NHK杯 決勝
解説 森内俊之 竜王・名人 井上慶太 九段 (ダブル解説)

さあ、今期も最終戦を残すのみ、いよいよ決勝だ 共に準決勝で若手を倒してきた、実力者同士の一戦

郷田は第49回(1999年度)以来、2回目の決勝進出で、初優勝を狙う 
郷田「本当に久しぶりの決勝進出になります チャンスですので、がんばりたいと思っています」
丸山は第55回(2005年度)で優勝経験があり、2回目の優勝を狙う
丸山「少し緊張しているんですけど、大変楽しみにしています」
丸山は髪の毛が、相変わらずすごいことになっていて、ツバメか何かが巣でも作ったかのようだ

解説の森内「決勝は1年間の締めくくりですし、独特の緊張感がありますよね 楽しみにしています」
解説の井上「私はこういう舞台に経ったことがないので、ものすごい重圧を感じています」
矢内「私が緊張してもしょうがないんですけど、昨夜はあまり眠れませんでした」
真っ赤な着物で登場した矢内さん、対局場に花を添えている

郷田はここまで、2回戦で永瀬、3回戦で高橋、準々決勝で森内、準決勝で西川に勝ち
印象に残った一局は、の質問に、郷田「西川との対局は、初対局で手探りだった 作戦負けになってしまって、終始苦しい戦いを強いられた」
終盤で危ない場面があったとのことだった へー、そうか 私は郷田の完勝かと思ったあの一局、西川の攻めが完全に切れたかに見えたとき、美濃囲いの金を攻めに参加させる手があったのか なるほどなあ けっこう危なかったんだね

丸山はここまで、2回戦で飯島、3回戦で金井、準々決勝で三浦、準決勝で大石に勝ち
印象に残った一局は、丸山「三浦との一局です 難しい局面を考えるのも楽しいんで、非常に面白くもありましたね」とのこと ちなみに前局の大石戦は、相振り飛車で、わずかなスキを逃さず、角切り一発でリードを奪い、その後は怒涛の寄りきりで完勝している

井上が今期の印象に残った対局を2局挙げていて、井上「豊島vs西川は3本の指に入る好局だった」
そして、井上「羽生vs大石は、大石のラッキーパンチが当たったのではなく、堂々と渡り合って勝ち切った将棋なんで、すごかったと思いますね」とのこと

事前の両者のコメント
丸山「せっかくの決勝戦ですので、集中してがんばりたいと思います」
郷田「自分なりに一生懸命、いい対局をしたいと思っています」

振り駒で先手が丸山に決まった いざ、対局開始!
▲2六歩△3四歩▲7六歩から、横歩取り模様に進んだ
井上「めずらしくないですか」
森内「丸山が先手になったんで、角換わりになるかな、と思ったんですけど、予想できない進行でした」

森内「2人は年も同じで、四段になった日も同じ(ちなみに、郷田も丸山も森内も43歳) 実績もほとんど差はないんですけど、将棋のタイプが全然違うんですね 一言で言うと、郷田はロマンを追及していくのに対し、丸山の方は研究を重ねて現実的
どちらの良さが出るのか、注目です」

丸山は横歩を取った位置から飛車を動かさず、右桂を跳ねるのを急ぐ構え
郷田は中原囲いに囲う、という序盤だ
森内「横歩取りの中でも、今流行している最新の形ですね 飛び道具を使った早い攻撃が先手の狙い 郷田は、後手をもってあまり横歩取りは指さないのですが」

ここで、2人の対戦成績が出た 丸山30勝、郷田16勝とのこと ただ、最近は郷田が2連勝中だ
森内「丸山は先手を持って、角換わりで郷田に勝っていることが多い」

こう話していたところ、なんと、丸山がいきなり右桂を▲4五桂とポーンと跳ねていったではないか!
うわーすごい もう桂跳ね! もう、あっという間に中盤に突入だ 丸山、この手に優勝を賭けたか!
森内「うまく行くかどうか、非常に興味深いところですね」 
ちょっと森内も興奮ぎみだ ▲4五桂跳ねが成立していれば、今後の定跡手になるかもしれないもんね

森内「郷田は、受け方が難問になると思います ▲4五桂は短い時間で跳ねたので、間違いなく丸山の研究手と見ていいでしょうね 早くも勝負所だと思います」
長考に沈んだ郷田 さあーー、郷田の対応やいかに? ワクワクだ
森内「(この▲4五桂は)多分本なんかに書いている局面と思うんです 研究を深く積んでいる若手だとパッと指し手を決めていることが多いんですけど、郷田は現場で対応して、うまい手をひねり出す、それが郷田の強さなんです」

郷田、長考したままなかなか動かない すでに困っているのか・・・? 
角に当たっているんだから、とりあえず角を交換してから考えても良さそうなものだが、どうかな
そして、郷田の手が動いた なんと、郷田の手は、角を逃げずに、先手の銀頭に歩を叩く手だった!
森内「ひゃー これはすごい手ですね 私のデータでは新手です(笑)」
ひええええーー 角を逃げない手があるのか! 
ここで叩きを入れておけば、後々いいことがあるということか さすが決勝、レベル高い~!!

郷田はそれから角を交換し、盤中央に角を打ち据えて、逆に先手を攻め立てた 
一連の郷田の手、最強の手順、というやつだ ここで解説が森内から井上にバトンタッチ
あまりに激しい戦いになったので、井上「僕の出番がないまま終わるん違うかなと思った(笑) ヘタしたら、すぐ終わってしまいますよね 銀頭に叩きの歩は、郷田ならではですね」

丸山の銀が、さっき郷田に打たれた歩によって浮き駒になって当たっていたのだが、
丸山は無視して飛車を成りにいった もう両者、ノーガードでのパンチの打ち合いだ
井上「ほお~ 受けずに、という手がありましたか もういきなり終盤ですね! こうなるともうね、森内先生に訊かんとわからんのですけど(^^;」
ははは、井上さん、面白いな それにしても激しい将棋になった 
丸山は桂を取って竜を作り、郷田は銀を取って馬を作っている 形勢、どっちがいいんだ?

そんなときだった 郷田が、中段に浮いていた飛車を、一路スッと下げた ん? なんだこれは?
さっき跳ねた▲4五桂を取るつもりか ん、それだけの手か・・・ これは、手渡しの意味か?
井上「浮かびませんでしたけど、指されてみればいい手ですね 好手な気がします 丸山さんは、読みに入ってましたかね?」
ここで、丸山が大長考に沈んだ 持ち時間の残りが、4回、3回、2回と減っていく
うわ、4五の桂を助ける手がないのか! 桂を取った後の飛車の位置も最高なのか
ひえーー 飛車を一路引く手、相当な妙手だったっぽい
井上「丸山さん、ちょっとうっかりされたんじゃないかなー」
飛車を一マスだけ動かす手、浮かびにくいよねえ
「大駒は大きく使え」と言うけど、「大駒は小さく使う手に好手あり」の格言もあってもいいね

結局、4五の桂を助ける術はなく、郷田が攻め立てることになった 
丸山はほとんど裸玉状態になったが、早逃げするなどして、なんとか踏ん張っている
井上「郷田のほうを持って指してみたい 金銀と桂香の交換、郷田が駒得 郷田からは行ける、という雰囲気が感じられる 丸山は、ちょっとこれはしょうがないかな、みたいな」

うむ、流れは郷田だ 丸山も攻め合いに活路を求めたが、郷田は自陣に歩と銀をガッチリ投入、うっわー、堅い~! 金銀5枚の囲いだ 「優勝は逃さん」という郷田の声が聞こえてくるなあ

解説に森内も加わり、ダブル解説になった
井上「丸山、なんか粘りの手を出すんですかね」
森内「苦しい感じになってきましたけどね まだあきらめている様子ではないです」
そして丸山が着手したのは、自陣の歩を突き出す、という、玉の逃げ道を空けただけの手
森内「すごい辛抱です 常人には指せないです 自分からは負けない、という手ですね」
うっわー、これはツラそう さすがに苦しい・・・ でも郷田といえど、間違える可能性はゼロではないぞ

郷田玉にも、嫌味な、と金が迫ってきた おお? これは一応、一手違いか!?
さあ、郷田、優勝が見えてきたが、プレッシャーに勝てるか?
井上「何か明快な決め手がありそう」
森内「決め所ですね 寄せを読みきれば郷田の優勝です 最後、ギリギリになりましたね」
おおおー さすがに丸山、よくぞここまで追い込んだ どうなる、どうなる?? 郷田、どうか?

郷田の寄せ、それは、今期NHK杯の最後を飾るにふさわしいものだった
馬切りから、緩むことなく、丸山玉をピッタリで詰まし上げた
おおー、最後、桂2枚持ってるから、ちょうど、か! 持ち駒が何も余らずに詰み!
82手で郷田の勝ち、初優勝! うわー、お見事、パチパチパチ これは郷田の快勝譜だったなあ 
 
森内「予想より激しい将棋になったんですけど、斬り合いになった後、郷田がふわっと飛車を一つ引いた手が名手でしたね あれで丸山はしびれてしまったと思います その後も落ち着いてまとめて、見事な将棋だったと思います」
井上「郷田のその場の対応力の高さ、▲4五桂に対し角を逃げずに銀頭に歩を叩く切り返し、あれで流れを掴んだ 無駄のない将棋でハラハラドキドキしました」

感想戦で、郷田は歩の叩きは、「昔考えたことがあったような気がしたんです」とのこと
丸山は、郷田が飛車を一つ引いた手は「うっかりした それがあるなら何か他の手だったか」とのこと

局後のインタビュー
郷田「NHK杯の優勝は、棋士を目指してから一つの大きな目標でしたので、大変うれしいです 優勝カップは本当に重いですね 亡くなった師匠(大友昇)の名前も入ってるんで、本当にうれしい」

丸山「結果は残念だったんですけど、指したい手が指せたんで、それで満足しています」

うん、決勝にふさわしい、いい内容だったと思う
▲4五桂に対して、誰が角を逃げない手を考えつくだろうか? そして飛車を一つ引いた手も、お見事!
郷田が、勝つべくして勝った一局だった 価値ある優勝だ パチパチパチパチ
丸山も、ペースを完全に握られてから、よく粘って、形を作ったと思う

今期NHK杯は郷田の優勝で幕を閉じた
聞き手の矢内さん、記録の藤田さん、時計係の黒沢三段、関係者のみなさん、お疲れ様でした!
来期までしばし休憩ですね 来期も楽しみにしてますよ!!
そしてこのブログを見てくれてるみなさんも、お疲れ様でした! 
また来期もこのブログは続く予定ですよ~(^^)