田村康介 七段vs稲葉陽 七段 NHK杯 1回戦
解説 中田功 七段

昨日の電王戦の敗戦も癒えないままに、今日はNHK杯だ 田村と稲葉か 田村の早指しが観れるかな

田村は1995年四段、竜王戦3組、B2 予選で岡崎、藤倉に勝ち 10回目の本戦出場
稲葉は2008年四段、竜王戦2組、B2 昨年度の銀河戦優勝のため、予選シード 2回目の本戦出場

解説のコーヤン「この2人は年齢が一回りくらい違うんでしたっけね(ちなみに、田村38歳、稲葉25歳) 両者早指しが得意で、実績がある(田村は2003年度の新人王)  田村さんは、人柄はけっこう優しくて、きっぷのいいタイプ 将棋も思い切りがいいです
稲葉さんはスポーツが得意みたいで、落ち着いていて、実力がありそうな感じです」

事前のインタビュー
田村「稲葉さんはすごい早指しが得意で、攻めが鋭い印象です 先手番だったら中飛車で行こうと思っているんですけど、後手番だったら作戦を立てていないので、出たとこ勝負で(笑) 稲葉さんとは1回対戦して40手くらいで負けちゃったと思うんで、1回戦突破を目標にがんばります」

聞いていたコーヤン「田村さんは今日は100手指すって言ってたんで、がんばるんじゃないですかね」

稲葉「田村さんは早見え早指しの棋士、勢いにのると手がつけられない棋士だな、という印象です 僕は基本的に居飛車を指すつもりなんですけど、対抗形や相振りももしかしたらあるかもしれない 今日は積極的に指したいと思います」

先手田村で、宣言どおりの中飛車 対して稲葉は、三間に振った 相振りだ
ちなみに、相振りで中飛車は少し損というのが常識だ 中央を攻めても、相手の守りが手厚いのだ
清水「相振りは、公式戦では出現頻度は?」
コーヤン「最近、増えてきてるんじゃないですかね」

先に手を止めたのは田村 稲葉の1筋の端歩の打診に、受けるかどうか考えている
田村にしては、序盤からけっこう長考だな、と思いきや、田村は左香を上げた!
狙いは飛車も9筋に回し、端から攻めますよ、ということだ 美濃に囲って戦機をうががう両者
したらば稲葉が「俺が先に攻める」、とばかりに、角交換から、桂を2つ跳ねて、
もうさっそく攻めてキター 一気に緊迫する盤上 飛車、角、桂だけの攻めだ 成立しているのか?

稲葉が馬を作って攻めの継続をはかるが、田村も角を打って受けた・・・ 田村の桂得になるのか?
と思ったら、ここで稲葉に奇手が飛び出した
飛車を、相手の銀の利きに横に一マス移動! なんと、銀の利きに!
清水「わざわざ銀が利いているところに!」
コーヤン「一目、いい手ですね」
うおっ こ、これは盲点 稲葉の才能、炸裂!!
これで流れは稲葉のものだな 見えないな~、この手は・・・ 

コーヤン「稲葉としては、自玉が美濃で堅いので、攻めがつながればいい」
馬と飛車を両方、叩き切って、攻めかかる稲葉 持ち駒の角を上から打ったのがまた良い手だったようだ
田村玉、美濃囲いのコビン攻めをされ、厳しそう~ 大丈夫か、田村! また40手で投了じゃないよな?
コーヤン「形勢はまだ難しいんじゃないですか」
そうか、まだ難しいか たしかに、歩が攻めに参加してないので、攻めもギリギリか

田村、苦しいかと思われたが、自陣の金を力強く上がって、コビン攻めを受けた
清水「おお、盤上の駒を活用するんですね」 
コーヤン「強い受けですね」
だがしかし、すべてバラバラに精算され、田村の玉は丸裸状態 自陣に駒がほとんどない(^^;
田村の持ち駒は飛、角、角、金、銀、桂と、超豊富だが、歩がない
稲葉に飛車で王手されたとき、歩の合駒がないのだ うわー、つらそう・・・

コーヤン「稲葉玉は堅いですねえ」
清水「田村さんは、まだ考慮時間が半分あるんですけど」
コーヤン「田村さんはいつもフォームが変わらないので、負けるときはそういう負け方をすることがあるんです 『たまには時間を使えばいいのに』って田村さんに言ったことがあるんですけどね 田村さんは『考えるのが嫌、自分には、向いてない』って言ってました 『よくプロ棋士になれたね』と私が言ったら、『自分でもそう思う』ってそんなことを言ってました(笑)」

コーヤン「攻め将棋どうしだと、お互いに力を出し合って攻め合いになることは少ないんです 逆にね 相振りは特に、どちらかが一方的に押し切るパターンになりやすいですから」

飛車を召し取られた田村、どう見ても苦しそうだが、盤上中央まで玉を逃げ、囲いを再構築させるべく、駒を投入してがんばっている まだ粘れ、田村! 簡単に勝たせるな~
コーヤン「田村さん、苦しいです 手付かずの美濃囲いは堅いです」
稲葉の玉が、△7一玉型というのがいい形、とのことだ 
△8二玉型だと、角のライン+吊るし桂の攻めで狙われる、とのこと なるほどな~
コーヤン「美濃囲いで、一番大事な駒は6四の歩なんですよ その攻め筋を防いでいる」
さすがコーヤン、美濃囲いに関しては一家言あるね

田村のほうが先に考慮時間を使いきり、もうダメムードが漂った
コーヤン「角頭に歩を打たれて催促されたら、もう田村は指す手がなくて投了するかも」
と、そんなこと言っていたときだった なんと、稲葉が手順前後で、後から歩を打ったではないか
田村にうまい攻めの一手、勝負手の角打ちが出て、なんか怪しいムードに!?
コーヤン「まだまだわからないですよ」 ええ? 大丈夫か稲葉? 
おおおお、これがわからなくなるのか ど、どうする稲葉 秒読みだ 5、6、7、8、9・・・

9、まで読まれて稲葉が指した手は、自陣に角を壁駒として投入する、根性の一手! うわーー
すげーー こんな手、よく指せる!! 9まで読まれて、私なら切れ負けしてるわ(^^;
コーヤン「すごい手ですねえ この角は誰も読んでないでしょうね」
この手を見た田村、思わず「うわー」と声を発した
コーヤン「稲葉さんも、何やってんだ俺は、っていう表情ですね」
面白い、これぞ人間どうしの戦い、楽しい!

まさかの逆転があるかと思われたが、まだ稲葉に勝ち運があったようだ
というか、根性の自陣角で、稲葉が自力で残した、というほうが正しい
稲葉はその後、丁寧に攻め、着実に寄せていった 田村としては、もうこれといった手がなかった
ひたいに手を当て、目をつぶり、うつむく田村
コーヤン「美濃囲いの堅さが残っていましたね」
100手ちょうどで、田村の投了となった 田村、偶然だろうが、宣言どおり100手までがんばった(^^;

コーヤン「どちらが先攻するかというときに、稲葉さんが桂跳ねからうまく攻めて、攻めをつなげた一局と思います」

感想戦では、田村「桂跳ねくらいならなんとかなると思ったんですが、銀の利きへの飛車寄りをうっかりして、そこからダメにしました 飛車寄りは驚きました」
うむ、あの飛車寄り一発で、流れが稲葉に傾いたね あれはお見事としか言いようがない
でも、終盤、手順前後であわや、といったアクシデントが発生したのも面白かった
稲葉の自陣角、あれはよくぞ指したものだ 田村も負けたけど、よく100手まで粘ったよ
展開的に、40手で終わっていてもおかしくなかった(^^;

それにしても、先週に引き続きだけど、やっぱり人vs人はいいなあ 人が勝つから(笑)
ミスする楽しさ、逆転の楽しさも期待できるしね コンピュータのミスしなさ加減と言ったら・・・
コンピュータも、秒に追われて、電王手君が9で指すところも観たかった

田村は早指しだけど、けっこう10回の考慮時間は使い切って終わっている印象がある
大きく残して終わることがある糸谷とは、そこが違うところだね
稲葉が銀河戦優勝者の名に恥じない一局で、見事に2回戦進出を決めた一局だった