金井恒太 五段vs阿部光瑠 四段 NHK杯 1回戦
解説 村山慈明 七段

今日は若手どうしの一戦か 激しい攻め合いが観れるかな
金井27歳、光瑠19歳、そして解説の村山29歳とのこと

金井はサウスポー、オーストリアのウィーンの生まれとのこと ここは事情を聞いてみたいものだ
金井の顔立ちからは、何か平民とは思えない気品が漂っている(笑)
2007年四段、竜王戦5組、C1 予選で田丸、伊藤能、戸辺に勝ち 4回目の本戦出場

光瑠は2011年四段、竜王戦6組、C2 成績優秀のため予選免除 3回目の本戦出場
こちらは青森の生まれとのことで、顔立ちから朴訥(ぼくとつ)さが漂っている(笑)

解説の村山「金井は本格的な居飛車党 指し手も格調高い 攻守のバランスの取れた棋風
光瑠は実戦的な指し手が多い 相手のイヤなところを突いてくる 早見え早指しで、今勢いのある若手 居飛車も振り飛車も指すオールラウンダー、攻め将棋」

事前のインタビュー
金井「阿部さんは早見え早指しで勢いがあって、特にこうした短距離の戦いに力を発揮するな、という印象です 阿部さんが最近戦術の幅を広げてまして、私がそれに対応という形になるかなと思います
NHK杯で後輩と対戦するのは初めてなんですけど、彼の勢いに負けないように自分の良さを出したい」

光瑠「金井さんはとても誠実な居飛車党という印象です 自分が飛車を振れば対抗形、居飛車だったら相居飛車だと思います 一つでも多く勝てるようにがんばります」

この2人は2年前に一局だけ対戦があり、先手光瑠の先手一手損角換わりで金井が勝っているとのこと
さて、先手金井で、戦型は横歩取りになった
村山「光瑠が後手番で横歩取りを誘うのは、けっこうめずらしい」
光瑠と言えば、第2回電王戦のときには、「自分は横歩取りはできないんで」と言っていたが、もう克服したのだろう さすが若手、1年で進化するね

後手の光瑠は例によって△3三角型で、△5二玉の中住まいにしている
村山「この形は、後手の指し方の幅が増えたのが、プロ間で広まっている理由」

光瑠、再度8筋の歩を交換する手筋で、飛車を中段に振り回している
ちなみに私はこういった指し方が全くできない(^^; 飛車は玉より大切な駒だと思っているので、飛車が狙われがちになるこういう手は真似できないのだ

角交換になり、光瑠はさっそく飛車をぶっつけて、飛車も交換になった
村山「一番強い手で来ました ここからは激しくなりますね」

金井は自陣に歩を打ってキズを消しておき、両取りに中段に飛車を打った
光瑠はそれを防いでの角打ち、これはどうなってるんだ・・・ 形勢判断の難しい将棋だ

と、ここで光瑠に才能きらめく一手が出た 取られるであろう桂を、不成でタダ捨ての一手!
うおお、こんな手が? 取らせて形を乱し、飛車を打ち込むスペースを作り出そうということか!
村山「これは奇手(鬼手の字かも)です 金井も読んでなかったでしょうね 力の入った攻防ですね」

この一発がヒットしたようで、光瑠だけ飛車を敵陣に打ち込んで竜を作ることに成功した
村山「光瑠がうまく攻めている印象 桂不成の奇手が効いたか」

大駒だけで話が進んでいるわけではなく、お互いに歩を使った細かい手が随所に出ている
清水「横歩取りというと、駒台に歩がたくさんあるイメージなんですが、お互いに歩切れですね」
村山「それだけ歩の手筋が盤上に現れてますね」

双方、考慮時間の残りが2回ずつか これからいよいよ寄せ合いだろう 光瑠が押し切るか?
村山「まだ一山も二山もあるが、お互いに早指しでもミスが少ないですから」

光瑠、香を入手し、金井の歩切れを突いての香打ちで銀取り これは厳しそう これは金井、苦しいか
したらば、金井、なんと銀を端に逃げた! うええー 玉の一路横の筋に香が直射、こえーー
清水が思わず、「かわし!」とびっくり そうだよね
村山「んー これはけっこう怖いですね 竜も香も直通ですから
 しかし、金井の表情は変わらないですね 苦しいという感じは見受けられないですね」

ところが、光瑠、今打った香の前に桂を打って攻めたのだが、これがどうだったのか 
香が働かなくなってしまったではないか?
村山「金井からも攻める手があるので、光瑠もゆっくりしてられない 金井はうまく粘っている」

お互いに銀を取り寄せ合いに、そして光瑠はその銀を、またしてもさっきの香と桂と同じラインに
打ったではないか ええー、これ、大丈夫? 香、桂、銀が大渋滞しているように見えてしまうんだけど?
そしてその私の心配は当たり、光瑠、攻めが続かなくなってしまった
村山「形勢、逆転したと思いますね 光瑠は自陣の角が狙われる駒になってしまっている 金井玉に迫る手も見えない」

ここからの金井は、非情~に落ち着いていた 
竜、馬といった大駒を好位置に動かす手で、村山を「盤面広く見てますね」と感心させた
一方の光瑠も自陣に持ち駒を投入、バリケードを作って長引かせ、さらに入玉狙いで必死に粘って抵抗
双方、相手の狙いを消す手の応酬、どっちも決め手を与えない
村山「金井の手は、相手に何もさせないという手ですね」

金井はさらに、ポツンと隅に残っていた光瑠の銀を、2手かけて取りにいった、うわ、そこまでやる!
でも、流れがそういう風になっているよね もうどっちの玉も寄らないもん(^^;
村山「金井は激辛ですね こういう棋風だったかなあ」
清水「NHK杯は人を変えますか」
うむ、ある程度変えるだろうね 1回負けたらそれで1年終わりだもんねえ

長い展開だ 相入玉もあるかもしれない そうなったら大駒4枚全てを持っている金井の勝ちだ
村山「金井は何十手前から指し方が一貫している 光瑠に入玉させても、点数で圧倒的に勝ってしまおうという方針です」

金井は駒をたくわえながら、自玉の形を整えるという、絶対負けないぞ宣言だ
清水「石橋を叩いて渡らない、という慎重さ(笑)」
村山「私が光瑠ならとっくに投げてると思います(^^;」

もう大勢は決したと思われた しかし、光瑠が相手の大駒を攻めながら金井玉に迫るという、最後の抵抗を見せ、おっ、ちょっと怖い、と思えるシーンがあった
もう金井としては圧倒的に勝ちなので、何もさせないで勝ちたい心理になるところだ 
が、それが危ないのだよね 金井は冷静に光瑠の攻めを振りきり、今度は逆に光瑠玉を寄せに行くという選択支もあったのだが、結局、相入玉の道を選んだ 
村山「光瑠が投げきれないのは、自分のほうが良かったのに、という気持ちがあるんでしょうね」

金井の駒台には駒が満載、数えたら17枚も乗っていた(笑)
村山「昔、タイトル戦で駒台に駒があふれて、駒の上に積んだみたいです」

金井の玉が3段目に入玉した時点で、光瑠がついに投げた 223手で光瑠、投了 長かった(^^;
村山「24点に満たないほうが負けなので」
点数を数えてみたら、光瑠は15点しかなかった さらに、そのうち2枚は取られそうな駒だった

村山「光瑠が桂不成の奇手からペースを掴んだと思うが、金井がうまく粘って逆転に成功した
 良くなってからの金井の落ち着いた指しまわしが光った」

金井、強かったなあ 不利なときも、有利になってからも、表情が全然変わらないんだもん
終盤は、手が広くて何を指したものか、というシーンが多かったが、
非常に冷静に好手を連発していた印象だ
光瑠にしてみれば、あの香打ちまでは良かったはずだけど、香、桂、銀を同じ筋に打ってしまい、攻めが重くてそれが原因で悪くなったんじゃないだろうか 長く粘ったけど、金井が強かったね

金井は延々秒読みの中、よく集中力が続いたなあ 私がプロの対局を観ていて、毎回のように感心することのひとつだ  金井が先輩の貫禄を示した一局だった 観たみなさま、お疲れ様でした(^^;