山崎隆之 八段vs有森浩三 七段 NHK杯1回戦
解説 井上慶太 九段

おお、清水さん、若返ってかわいくなったなー! と思ったら矢内さんだった
清水さんが女流王位戦に出るため、今週と来週は矢内が聞き手を担当するとのこと
今日は山崎と有森か 山崎は面白い将棋を指すし、有森も爆発力のあるタイプだ どうなるかな
有森はいつものようにマスクをつけて、首からチューブがかかっている

山崎は1998年四段、竜王戦1組、B1 予選シード 14回目の本戦出場
有森は1983年四段、竜王戦5組、フリークラス 予選で平藤、神崎、井上に勝ち 4回目の本戦出場

解説の井上「山崎さんはNHK杯戦の常連、優勝経験もある(2004年度) 早指しが特に強い 序盤の構想が非常に変わっている 他人が真似できない作戦を指す 有森さんは久しぶりの登場 、早指しが強い  両者力自慢の独特の将棋を指す、似たタイプ」

事前のインタビュー
山崎「有森七段は振り飛車党の力戦調の力勝負を挑んでこられる印象 ねじり合いになると思う 正確な手を指せる自信はないので、どこかで踏ん張って押し返せるような展開にできたらなと思います
前期1回戦で負けて、見る側にすぐ回ってしまったので、ぜひいい将棋を指して今期は1局でも多く戦えるようにしたいです」

有森「山崎八段とはこれまで1回もたしか勝ったことがないんで、まあ何とか1回くらい勝てたらいいなと思っております 展開としては、山崎さんは居飛車党なんで、私が居飛車をやるか振り飛車をやるかですね 
まあ勝てたらいいんですけど、相手が強いと勝てないですね まあがんばります!」

先手山崎で、相掛かりになった 相掛かりは山崎の十八番、それを受けて立つとは有森は勇気がある
山崎の引き飛車+▲3六銀型vs有森の△8五飛型だ
井上「有森は、予選の3局は全て振り飛車だった ふだんは振り飛車、居飛車はめったに見ない」
対戦成績が出て、山崎の5-0だった
井上「山崎は、対振り飛車の勝率が高いんですよ そこを見越しての有森の居飛車かも」

山崎の右銀の進出を防ぐために、有森はもう△3三桂と跳ねてしまった 角がまた2二に居るのに、だ
井上「どっちかというと有森が苦労する将棋 角が使いにくい 山崎が相掛かりを好むのは、構想力が問われて、そこで力を発揮するから」

雑談で、井上「山崎は昨年度から奨励会の幹事をしている 厳しい幹事というふうに聞いています 有森は喘息(ぜんそく)を持っている このところ体調も戻って、昨年度6割5分くらい勝率があった 有森は修行時代は早見えで強かった 2分切れ負けだと、勝てたのは福崎さんぐらい」
 
有森が7筋から仕掛け、戦いになった  山崎はカニ囲い、有森はまだ居玉だ
桂交換になると思われたが、有森はすぐ桂を取らず、力を溜める手を指した
井上「これは怖い手ですけどね 桂に逃げられる恐れがある 勝てば勝因、負ければ敗着みたいな手ですよ」
山崎はすでにここが勝負所と見たか、考慮時間を早くもあと4回まで減らして考えている

そしたら、井上の心配が的中、山崎は取られる寸前の桂を跳ね出し、馬を作ることに成功したではないか
ええー、有森、これが読み筋なのか? 大丈夫?
井上「激しくなりましたね 力がぶつかる将棋になりましたね」
有森は玉頭に馬を作られているわけだが、これが案外、まだ堅いという主張なのか? 
こんな大局観をする人は、今まで観たことがないが・・・

有森は、負担だった3三の桂を跳ね出し、勝負に出てきた
井上「有森の玉は大丈夫かな 有森のほうとしては気は楽 もう開き直って、山崎の手に合わせていくしかない」
形勢は山崎のほうがいいようなのだが、ここで考慮時間を使い切ってしまった 残り▲0回vs△7回に!
井上「山崎に何か攻めの手段がありそうに思いますけどね」

ここから、山崎の奇抜な手の連発が始まった 予想しても全然当たらなかっただろう
さかんに歩を使い有森陣を乱し、桂をそっぽに成り捨てという、ハッとさせる手を繰り出した
そうか、王手飛車狙いか んー よくこんな手が見えるもんだ
井上「読みにくい手順ですねー 意味がよくわからんなー(笑) 凝った手ですねー 山崎、ひねった手が続いてますね いいとは思っていないんでしょう」

形勢はどうなってるんだ(^^; なんか、流れが有森に来ている気がするのだが・・・
矢内もそう思ったようで、矢内「印象としては山崎が攻めあぐねている感じがしますが」 
井上「そうですね 有森としてはいかに凌ぐか」

山崎の一気の寄せはなさそう 王手飛車も大したことがなかったか?
矢内「ちょっと有森の手つきが、しなってきた気もするんですが」
そう言ったときだった 山崎、と金を2回引いて、5段目まで引き付けてきた うわ、もうなりふり構わず、だ
井上「山崎、かなり苦心の手ですね なんかうまくやれば有森が有利になると思います」
おお、井上が有森にチャンス到来と断言! そして有森はオーソドックスな攻めで寄せにいったー
井上「面白い将棋になりましたね」

ここがこの将棋の剣が峰、最大のポイントだった 山崎、王手され、どこに逃げるかというときに、
まさかまさかの王手飛車がかかる位置にわざと逃げたではないか! ▲4七玉! 
うおおー こ、これは? 絶妙手か? 大悪手か? ど、どっちだ
矢内「▲4八玉(王手飛車を回避する位置に逃げる手)だと思いました」 井上「そうやんなあ」
これには矢内も井上も、山崎の真意がわからない、とコメント

さっき5段目まで引いた、と金を頼りに、玉の上部脱出を図るという山崎のすごい構想! どうなる?
井上「と金が命綱ですね ・・・有森の飛車、金の持ち駒では寄せがないのか やっぱりこうなってみると、山崎のほうが優勢ですね 玉さばきがうまかった」
なんと、山崎の王手飛車をわざとかけさせて上部脱出の構想、見事成功、うわーすげえ・・・!

しかしまだ有森も玉も早逃げしてもう一勝負あるのだろう、と思っていると、有森はそれを逃し、一手パスの手を指してしまい、玉を上部から縛られて、たった一手で寄ってしまった
ああー、これはもったいない もっと粘って欲しかった 91手で山崎の勝ち

井上「何か、途中は山崎の手が、ん?という感じでしたけどね 何やかやで、山崎が玉さばきで乗り切った一局だった ようわからん一局でした」
井上さんですら途中はよくわからなかったか まあそうだったな(^^;

感想戦で、井上「優勢なはずなのに、(山崎の手は)何や面白い手がね」
山崎「自分で自分を迷わしてしまいました(^^;」
有森「やっぱり最後は俺が負ける運命かなと(思いながら指していた)」
山崎はさかんに途中がひどかったとボヤいていたが、それでも最後は勝つという実力の確かさを示した

途中はまあ置いておいて、本局の見所、それは終盤での山崎の玉さばきに尽きると思う
わざと王手飛車をかけさせるあの手(▲4七玉)、あれは凡人には指せないよ
山崎将棋と言えば居玉が代名詞だが、本局もほぼ居玉のような将棋だった 
終盤での玉さばきがうまいから、居玉で戦えるんだね 山崎、お見事だった

土俵際での山崎の強さ、やはり並でないものがあった プロの芸だった