渡辺大夢 四段vs藤井猛 九段 NHK杯 1回戦
解説 石田和雄 九段

今週も矢内の司会で始まった 矢内、すっかり大人の魅力になったな
今日は新鋭の渡辺大夢(ひろむ)と藤井! 大夢ってどんな棋士かな 
そして藤井の将棋が観れるのだ~ 始まる前からワクワクだ(^^)

大夢は石田門下の25歳、2012年四段、竜王戦6組、フリークラス 
予選で豊川、佐藤秀司、先崎に勝ち NHK杯本戦は初出場
藤井は1991年四段、竜王戦1組、B1 予選シード 20回目の本戦出場

矢内「今日は石田九段のお弟子さんの渡辺大夢四段が本戦初出場で」
石田「予選を勝つのは大変なんですけどねえ」
矢内「実力者相手に3連勝で」
石田「そうです そうです そうです そうです 今日は強豪相手にどこまでやれるか、師匠としてもドキドキワクワクで解説したいと思います」

事前のインタビュー
大夢「藤井先生は振り飛車党で独自の作戦を日頃から考えている先生だと思います また序盤の研究がすごいという印象があります 展開としましては、藤井先生の攻めに対し、私が受けに回る将棋になるかなと思います せっかくのNHK杯なので、思いっきり自分らしい将棋が指せたらと思っています」

藤井「渡辺四段とは、まだ指したことがなくて、練習でも手合いしたことがないので、どういう棋風なのかちょっとつかめていないので、その点が予想が難しいですね  昨年は出場できなかったという、ちょっと悔しい思いがありましたので、その分、今期はがんばりたいと思います」

インタビューを聞いていた矢内「渡辺四段は受け将棋なんですか?」
石田「受けですね 戦型はおそらく、藤井の角交換四間飛車になると思いますね 大夢君は受けなんだけど、穴熊はせず、急戦調のような将棋を指すんですね 中盤くらいから受けに回る」

先手大夢で対局開始 ▲2六歩△3四歩▲7六歩に、藤井の4手目が注目された 
藤井は迷うことなく△4四歩! おおー 角道を止めたノーマル振り飛車だ~! 
私としてはこれも観たかった戦型のひとつだ 藤井は飛車を四間に振り、早い9筋の端歩も突き、これは後手藤井システムだ 超、久しぶりだな~
石田「大夢君に聞いたら、まちがいなく角交換四間飛車で来る、とそう作戦を立ててきたんですよ 藤井にパッとはずされましたね」

大夢は▲5五角と飛び出し、▲3七角と引いて邪魔な角を右辺に移動させて囲う作戦だ
が、これが棋界随一の序盤巧者、藤井の攻撃アンテナに引っかかった
藤井はスキあり、とばかりに4筋の歩を伸ばして、角のラインで大夢の玉のコビンを狙う攻めを繰り出した
石田「大夢君、備えておいたほうが良かったんじゃないかなあ 一本取られた気がしないでもないですね 早くもね~」
ええ、まだ始まったばかりだぞ まだ大丈夫なんだろう?

だが、藤井の歩を使った攻めが大夢にヒットしているようだ
ボクシングで言えば、ジャブの連打を食らっているような大夢 おいおい、どうなってる
石田「そうやって、ちょこちょこやって来られると、思わしい展開じゃないんだよな~」
考慮時間も削られていき、苦しそうな大夢
大夢「いや~」 思わずボヤいた 
石田「『いや~』とか、しょっちゅう言ってるから、どうっちゅうことない」
ボヤきは師匠ゆずりということか

藤井の飛車が中段にパシーンとさばけてきた 振り飛車の理想的な展開だろう
石田「軽やかな手つきでしたね さばいてきましたねー」
しかし、大夢もまだ決め手は与えてない 藤井は飛車を細かく動かして攻めを継続させようとしてる、
それに対し大夢も懸命に受けてる まだ決定的な差ではない 一手一手、なるほどと感心する攻防だ

お互いに戦っている最中に、未完成だった囲いも整えた 大夢は矢倉風、藤井は美濃だ
さて、形勢は藤井が指しやすいがまだ決定的な手はないか、と思っていると、ここで藤井が好手を放った
△1三桂と跳ねたのが、絶品の一手だった 次の△2五桂がどうにもこうにも受けにくすぎる
△2五桂を食らったらもう将棋は終わりだ あわわわ・・・
矢内「2筋の突き捨てを逆用してきましたね」
石田「そうなんですよー あーこれで△2五桂が厳しいねー いかんなこれ まいったか?
 どーもペースをつかまれた感じですよ」

悪いことに、考慮時間の残りも▲0回vs△3回に、大夢、大ピンチ~ 
っていうか、もうこれ、終わってるだろ △2五桂、受からないじゃん 投了か?
石田「ちょっとヤバイんじゃないかなって感じですねー」
大夢、どうする あきらめるにも、まだ早すぎる・・・ が、大夢、飛車を強引にぶっつける一手を放った! 
石田「あー これは乾坤一擲(けんこんいってき)、勝負手ですね」
だが、藤井も落ち着いたもので、冷静に受けられた
藤井は角も盤上中央に飛び出し、石田「気持ちがいいですねー あーイカンわ ダメだ」

石田、ついにあきらめ宣言 まだ中盤だけど、大駒の働きが違いすぎる・・・
大夢もなんとかしようとしているのはわかるのだが、藤井が差を詰めさせない
大夢は何度も秒を9まで読まれてギリギリで着手するので、ちょっと心臓に悪い
矢内「藤井としても優勢だとは思っているでしょうけど、勝ちきるまでは道のりは長いですからね」
ここで藤井の残り時間も△0回になった! こりゃ、大夢にしてみれば唯一の明るい材料だな
盤上、藤井の駒得、無条件の桂香得だ これはダメだろう 本当の意味で無条件だもん
6筋に拠点があるくらいしか、大夢にはいいところがないもん

石田「とにかく、大夢としては飛車が成れれば1回くらい王手がかけれるだろうと」
石田師匠も、完全にあきらめムード 大夢は飛車を成ったけど、持ち駒が歩しかない
藤井は冷徹にも受けに回り、局面をはっきりと決めにかかった
石田「くあ~ 何にもさせないって感じですね まいったね」
矢内「藤井のさすがの指しまわしですね」
石田「貫禄の指しまわしといったところでしょうか」
あーあ、序盤の駒組みのスキをつき、中盤の鮮やかなさばき、終盤での激辛流、もう藤井の独り舞台・・・
大夢も勝負手を放ち続けているのだが、ことごとく受け流している藤井 見事だ

が、まだ大夢はあきらめない と金を作られたのを無視して、攻撃に出た! お~ムチャクチャだ(笑)
石田「もう普通じゃ勝てないですからね 何とかアヤを作って、必死の勝負手」
うわー、歩を叩いたり成り捨てたり、よくやるわ すごい根性だな 
でも現実は厳しいから、きっとダメだろう・・・ 藤井の底歩が堅いわ 今日の藤井はちゃんとしてる
石田「金を打ってからんでいけば大変か?」
え? そうなの? 大夢、師匠の声が聞こえたかのように、金でからんでいった 
んー しぶとい、実にしぶとい 藤井としては全く気が抜けない 
大夢、あの絶対不利の形勢からここまでやるとは・・・

大夢、すごい粘りだ 唯一の主張点だった、6筋の拠点を存分に活かして攻めをつなげてる
藤井が特に変な手をやったとは思えないが? ここまで食いついてこれるものか
藤井はたまらず自陣に角を投入、流れがちょっと変わってきた???

藤井が受けておれんと、端攻めの攻め合いに出た あ、端が急所か
うーん これまた盤全体が見えてるもんだな したらば、大夢、端を放置で、桂跳ねで自玉を広くした! 
その桂はタダなのだが、もうおかまいなし、すげー よく思いつくな~
石田「藤井の意表を突かないとね よく頑張ってます 簡単に腰を割らないのが大夢流ですよ」
な、なんか、藤井の玉が異様に薄くなってる これ、駒の損得が関係ない将棋になってないか?
石田「よくがんばってますよー あれ~難しくなったんじゃないのー? けっこう大変になりましたね」
矢内「大変で済んでますか?」
石田「けっこう面白い将棋になりましたですね もう手も足も出ないと思いましたけど」

おいおいおいおい、藤井、どうしちゃったんだ 終盤のファンタジスタっていっても、ほどがあるぞ
桂香の丸得で、大駒の働きも有利だったじゃん
駒の損得は、銀と桂桂香の3枚換えで藤井が駒得 しかし、もうそんなことは関係ない局面に・・・
そこで事件は起こった これ、次に藤井としては△6四香と走りたいけど、それだと香の後ろに銀を
▲6三銀成とされて、受けにくそう~ まさか△6四香は指さないよな △6四香はきっと悪手だ
と思って見ていたら、藤井の指し手、それは△6四香ーーー!!

うわわわわ これはどうなるんだ 大夢はすかさず▲6三銀成! げえええええーー だ、大逆転か!?
石田「これは、大夢はやる気になってきたんじゃないですか」
そして、大夢は藤井玉に迫る 攻めまくる大夢 石田先生の口からついに寄せの言葉が!
石田「おお へえー? え? 寄せに行ってますね 詰み? えらいことになってきましたよ おどろいたね 事件? いやほんとに へえー ほおー こんなんなるんですねー いやいやいやいや 事件 事件 事件 おどろいたねー」

そして最大の勝負ところを迎えた 大夢がどう寄せるか 何か寄せがありそう! 
石田先生が有力な手を指摘していた しかし! 大夢はそれを指せなかった・・・
石田「藤井がまた落ち着きを取り戻した手つきですねー」
ああああーー 逃げられたーーー 大夢、惜しいーーー ここまで藤井を追いつめておきながら!
矢内「先ほど、石田先生の言った手ならどうだったのか」
石田「何か(違う攻め方が)あったかもしれませんね」 

終盤では大夢に押されっぱなしの藤井だったが、最後は藤井が魅せた
全く寄りがなさそうなところで、銀のタダ捨ての王手!
石田「あ 詰ましに行きましたか? 詰まなかったら事件ですよ 銀渡しちゃってますから」
そこから怒涛の王手ラッシュで、なんと19手詰み! すげえーー
160手で藤井が辛くも勝利を収めた  ふわー、なんという一局だ

石田「最初はどうなるかと思ってね 中押しで一方的だと思ったけど、途中から面白い将棋にしましたね すごい追い込みでしたね 勝負勝負でね しかしちょっと足りなかったのか、最後一瞬の勝機を逃したか 面白かったですね」

いやーー あっぶなかったなー藤井(^^; 藤井ファンは寿命が縮んだだろう 
でも、藤井が悪かったというより、大夢の追い込みがあまりにもすごかった一局で、見ごたえ満点だった
大夢、負けたけど、NHK杯の大舞台でしっかり名は売った! すばらしかったよ
勝負手が何回あったか数え切れないくらいあったね 
居飛車側は悪くなるとあまり粘れないとしたものなのだけどね

藤井は結果的になんとか勝って良かった 桂香の丸得の分かれから負けたら、何言われるか
わからんもんね(笑) 最後は連続王手の19手詰み、お見事だった
圧倒的な序盤力で絶対有利に立ちながら、終盤ギリギリまで追い込まれる、毎度のこういう勝ち方、
なんという藤井の人間味あふれる指しっぷり・・・(^^; これが「藤井のファン」の醍醐味なんだろう(笑)
ここのところ、CSの銀河戦では中押しの大差の将棋が続いていて、私は欲求不満だったのだけど、
この一局はそれを解消してあまりあった 久しぶりにいい将棋が観れた! 良かった! パチパチパチ